バイトテロを防ぐためにとれる対策は?発生原因や事後対応のポイント

バイトテロを防ぐためにとれる対策は?発生原因や事後対応のポイント

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バイトテロが発生する原因はどのようなものでしょうか。また、万が一バイトテロによってSNSが炎上した場合、どのように対処すれば良いでしょうか。

本記事は、バイトテロの発生原因と事後対応について弁護士の視点から解説します。

バイトテロとは

バイトテロとは、大手飲食店やコンビニチェーン店で勤務するアルバイト従業員によって引き起こされるデジタルリスクのひとつです。

店舗内の設備や食品を不衛生に扱う様子がSNSに投稿されることを指し、炎上に発展するケースがほとんどです。SNS上で掲載されたコンテンツは、スクリーンショットなどを通じて他のメディアにも転載され、様々なサイトに拡散され続けます。

バイトテロの歴史

2013年に飲食店などの従業員による不適切投稿が連続して発生したことを受けて、バイトテロは社会的な問題になりました。

元々「バイトテロ」という言葉は馴染みのある言葉ではないですが、アルバイト従業員が投稿することが多かったことから、従業員の不適切行為は「バイトテロ」として世間に広がることになります。

2013年のバイトテロは、Twitterから不適切な写真を投稿するケースが多かったため、投稿者は「バカッター」とも呼ばれました。この言葉は2013年の流行語ともなり、同年は「第1次バイトテロブーム」と呼ばれるようになります。

その後もバイトテロは何件も発生しますが、特に被害の数が目立ったのは2019年でした。この年は写真ではなく動画による投稿が多くなり、「第2次バイトテロブーム」と呼ばれています。

2019年のバイトテロは、動画を扱うコンテンツの多様化を受けて、TwitterだけではなくInstagramやツイキャスなどのSNSから投稿されるケースが増えました。

実際に起きたバイトテロの事例

実際にSNSで投稿されたバイトテロが炎上したケースを紹介します。

ステーキ店の従業員が冷蔵庫に入る写真を投稿した事例

2013年、東京都のステーキ店「ブロンコビリー」のバイト従業員が、店の冷蔵庫に入る写真をツイッターに投稿しました。

この投稿はSNSですぐに広まり、従業員の名前が専門学校名とともに拡散されることになります。しかし、批判を受けた従業員がネット上で反論し、事件はさらに炎上。運営会社は店を一時的に閉めて、清掃・消毒にあたります。

同時に、該当の従業員を解雇しましたが、数多くの批判を受けて同店は閉店することを決定しました。

回転寿司チェーン店の従業員がゴミ箱に捨てた魚をさばいた事例

2019年、「無添くら寿司」の大阪府守口市の店舗で、バイト従業員Aがゴミ箱に捨てた魚を拾ってさばき、バイト従業員Bがその様子を撮影、さらにInstagramのストーリーに投稿しました。

Instagramのストーリーは、投稿者のフォロワーしか見れない上に、24時間経過すると自動的に投稿が削除されます。また、Bは学校の先輩に注意を受けて投稿から約3時間後にストーリーを削除しました。ですが、その投稿を見たBの友人Cが動画を保存し、Twitterに投稿したことで大炎上に発展しました。

事態を重く捉えた企業側はバイト従業員AとBを退職処分とし、刑事・民事の両方で法的措置をとると発表しました。その結果、大阪府警は動画に映っていたバイト従業員Aを偽計業務妨害幇助容疑で、バイト従業員Bと動画を拡散したBの友人Cを偽計業務妨害容疑で書類送検しました。

POINT
バイトテロで実際に訴訟に至ったケースはほとんどありませんでしたが、この事件では関係者3人が書類送検される異例の事態となりました。

バイトテロが発生し拡大する理由

ではなぜこのような悪質なバイトテロが発生するのでしょうか。その理由について解説します。

インターネットにおける危機意識の低下

近年はスマートフォンの普及によって、誰もがSNSのような公共性の高いネット環境にアクセスすることができます。また、最近のSNSは140文字以内の短文で投稿するTwitterや、画像中心で発言するInstagramなど、気軽に情報を発信できるメディアが増えています。

そのため、SNSを利用するハードルは非常に低く、十分なネットリテラシーを身につけてない人の不適切発言が多く見受けられるようになりました。

SNSでは様々な情報を見ることができるため非常に便利なツールです。ただし、こちら側の投稿内容は不特定多数の人に見られることを忘れてはなりません。

現在の若者世代は、幼い頃からインターネット環境を利用しているため、「多くの人に見られている」という意識が薄れがちです。

その結果、自分の投稿を見た人がどのような気持ちになるか想像できず、炎上リスクのある発言をしてしまうのです。

SNSの情報拡散性

SNSの発言はスクリーンショットなどで保存できるため、証拠保存性と情報拡散性が非常に高く、一度リスクのある発言をしてしまうと取り返しがつきません。

また、Twitterのリツイート機能のように情報の拡散を目的とする機能も存在するため、炎上騒動やネガティブな話題は一瞬で拡大してしまいます。本人にとっては、身内に向けた冗談半分の投稿のつもりでも、それに悪い印象を抱いた第三者に発見されると炎上騒動に発展してしまいます。

 特に、バイト中に不適切行為が含まれる写真や動画を投稿すると、情報の分析に秀でた「特定班」と呼ばれる人によって、その店舗や個人情報が特定されてしまいます。匿名の発言であっても、特定されて取り返しがつかなくなるケースがあることを覚えておきましょう。

「目立ちたい」という心理的な欲求

アメリカ人心理学者のマズローによると、人間には「他者から認められたい」という承認欲求が備わっています。承認欲求の中でも「目立ちたい」「多くの人に反応してほしい」という自己顕示欲は、バイトテロ行為の発生に大きく関わっています。

不適切投稿をすることで様々な人から反応を得られるため、自分が世界の中心人物であるといった感覚に陥るのです。

また、SNS上での影響力が大きいインフルエンサーやYouTuberなどへの憧れの気持ちから、例えば「自分もHikakinさんのように人気を集められるのでは」と勘違いし、悪い意味で注目の的になる発言をしてしまうのです。

バイトテロがおよぼす影響

バイトテロが発覚するとどのような影響が生じるでしょうか。本人に及ぶ影響と店舗や企業に及ぶ影響に分けて説明します。

本人への影響

バイトテロ投稿が炎上して大きな騒動になると、所属する学校や勤務先に多大な迷惑がかかります。所属先の判断によっては、退学や解雇といった厳しい処分を言い渡される場合もあるでしょう。

また、バイトテロ行為を投稿すると、ネット上の「特定班」が、投稿者の氏名、所属先、居住地等をくまなく調べ上げます。個人が特定されると、自宅に悪意のある野次馬が押しかけてくるなど、自身や家族に危険が及ぶ場合もあります。

就職活動では事前に応募者の情報を調査する場合も多く、過去の炎上騒動を理由に選考で除外されてしまう可能性も十分に考えられるでしょう。

さらに、アルバイト従業員が雇用上での契約違反を犯した場合、民事で賠償責任を追及されるケースもあります。行為自体が違法性の高いものであった場合、刑事上の責任が問われ、偽計業務妨害罪や器物損壊罪にあたる可能性もあります。

刑事で有罪判決が確定すると、バイトテロを起こした本人は犯罪者となり、今後の生活に大きな支障が生じます。

たとえバイトテロの投稿を削除しても、拡散性が高いネット上では取り返しがつきません。「デジタルタトゥー」として半永久的に情報が残り続けます。軽い気持ちでとった行動によって、今後の人生が台無しになる可能性があることを忘れてはいけません。

店舗や企業への影響

バイトテロが発生すると店舗や企業にも被害が発生します。SNSでバイトテロが炎上すると、従業員が所属する企業のブランドイメージは著しく下落します。その結果、風評被害や誹謗中傷が増えてしまい、顧客の減少や売り上げの低下を招くことになります。

コンビニエンスストアや飲食チェーン店の場合は、フランチャイズ契約を解除されて、店舗の存続にかかわる事態に陥る場合もあるでしょう。実際にバイトテロが発生したことに対する責任として、休業あるいは廃業に追い込まれた店舗も多くあります。

バイトテロが起こった場合の事後対応

不適切行為の証拠が一度広がってしまうと、投稿者が所属する企業にも被害が及びます。そのため、バイトテロが発生した時はとにかく早期に対応することが大切です。

もちろん、ガセ情報であれば、弁護士を通じて削除対応することができますが、そうでない場合は、企業の評判が下落してしまいます。ブランドイメージを取り戻すためには、企業としての透明性を高めるために正しく情報発信をしましょう。

まず、会社がバイトテロの情報を把握した場合、すぐにその証拠を収集・保全し、関係のある従業員に聞き取りをします。

バイトテロを行った社員に対しては、刑事告訴や懲戒処分、損害賠償請求をすることで、実害の一部回復と再発防止を図ることができます。

POINT
また、何より大切なことは消費者や取引先との信頼回復です。ホームページ等に速やかに謝罪文を掲載し、具体的な再発防止策を公表することを最優先しましょう。

バイトテロを未然に防ぐ方法

一度バイトテロが発生すると取り返しがつかない事態になります。そのため、そもそもバイトテロが発生しないように対策を講じることが大切になります。ここからは、バイトテロを未然に防ぐ方法を解説します。

SNSについてリスク教育を実施する

バイトテロは、当人内の悪ふざけの延長線上で行われており、炎上に発展した後の事態を想定していない場合がほとんどです。

そのため、軽率にバイト中の不適切行為を投稿するとどうなるかを、過去の事例などを交えながら、アルバイト従業員に理解させることが大切になります。

SNSでの炎上が店舗、企業、自分自身に与える被害や影響に関する研修を実施すると良いでしょう。

スマートフォンの持ち込みを禁止する

就業時間中においてスマートフォンの持ち込みを禁止することで、SNSで炎上発言をするリスクを減らすことができます。なるべく仕事現場にスマートフォンを持ち込ませない職場環境をつくりましょう。

勤務開始前に身だしなみチェックを取り入れて、従業員同士でスマホを所持していないか確認すると効果的です。また、そもそも制服にポケットをつけないことで、物理的にスマートフォンの持ち込みを防ぐことができます。

SNSの投稿を監視する

日頃からSNSの投稿を監視することで、自社ブランドや店舗名に関する書き込みをいち早く発見することができます。監視する際は自社の名前やサービス名でキーワード検索する「エゴサーチ」が有効です。

問題のある内容を早期に発見できれば、その後の対応を迅速に行うことができます。また、炎上自体を未然に防げる場合もあるでしょう。自社で投稿を監視することもできますし、人員を割く余裕がない場合は、外部の業者に監視作業を委託することも可能です。

採用時に身元保証書の提出を求める

バイトテロを防ぐための方法として、採用時に身元保証書の提出を求めることが挙げられます。身元保証書には、「入社する人物が問題なく働けることを第三者が保証する」「従業員が会社に何らかの損害を与えた場合に、保証人に対して損害賠償を求める」などの役割があります。

特に、企業に与えた損害の賠償責任を保証人に負わせることは、本人のバイトテロを抑止する面で効果的といえます。

バイトテロを起こしそうな人を採用しない

バイトテロを未然に防ぐには、職場でトラブルを起こしそうな人を採用しないことが大切です。

トラブルを起こさない人だけを採用するためには、採用基準を高くしなければなりません。そのためには、一定の応募者がいることが必要です。応募者の数が少ないと、問題のある人材も採用しなければならず、結果としてバイトテロや早期離職につながるリスクが高くなります。

POINT
応募者を増やすためには、求人募集の段階から応募数を増やす工夫をする必要があります。たとえば、求人ページに職場環境や待遇などの情報を詳しく記載し、自社の魅力を発信するといった方法が考えられます。

まとめ

バイトテロはどのような職種でも起こりうるデジタルリスクです。軽い気持ちでやった不適切行為を投稿してしまうと、本人も企業も多大な被害を受けることになります。

特に、企業側は一度ついたマイナスイメージを回復するのは容易ではありません。そのため、日頃からバイトテロを防ぐための対策を講じることが大切です。研修制度や就業規則の見直し、SNSの監視など、多方面からバイトテロの発生を予防しましょう。

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