ネット上の誹謗中傷は法律に引っかかる?実例と罪名を紹介

ネット上の誹謗中傷は法律に引っかかる?実例と罪名を紹介

ネット上で他人から誹謗中傷をされた場合、どのように対策をすれば良いのでしょうか。そもそも、誹謗中傷とはどのような言葉を意味し、どのような法律に抵触するのでしょうか。

この記事では言葉の意味を解説し、実際にネット上で誹謗中傷をされた場合の対策法についても説明します。

そもそも誹謗中傷の定義とは?

まずは誹謗中傷の意味から確認しておきましょう。「誹謗」は他人の悪口を言うこと、「中傷」は根拠のない事を言いふらして、他人の名誉を傷つけることを意味します。

すなわち「誹謗中傷」は、これらの言葉の意味の組み合わせにより、「事実と違うことや根拠のない悪口を言いふらして他人の名誉を傷つけること」と定義されています。

例えば、「バカ」や「アホ」などの抽象的な悪口や、「タレントの◯◯さんは浮気している」などのデマの情報を用いた悪口も誹謗中傷に当たるとされています。

誹謗中傷は法律に触れる?実際の例

侮辱罪の容疑で書類送検された実例

元AKB48のメンバーでタレント・実業家の川崎希さんは数年前からネットの匿名掲示板などで、自身や家族に対する悪質な嫌がらせを受けていました。

川崎さんは本人のブログで、妊娠発表後に「嘘つくな」「流産しろ」といったメッセージが毎日届いていたことを告白。

その後、弁護士に依頼して裁判所を通じ、誹謗中傷の書き込みについて発信者情報開示請求を行い、名前と住所を特定した上で刑事告訴。女性2人が侮辱罪の容疑で書類送検されました。

脅迫罪の容疑で書類送検された実例

舌がんで闘病していたタレントの堀ちえみさんは、2019年2月、手術を受ける前日にブログのコメント欄で「死ね消えろ馬鹿みたい」というコメントが書き込まれました。

その後も食道がんの手術を受けた4月以降には「癌なのにあちこちでたたかれて笑えるわ。次はどんな病気?(笑)」「死ねば良かったのに」などのコメントが数ヶ月にわたって何度も投稿されました。

これを受けて堀さんの関係者は警視庁に被害届を提出。同年6月、誹謗中傷のコメントを書き込んだ北海道在住の50代主婦が脅迫罪の容疑で書類送検されました。

偽計業務妨害の容疑で書類送検された実例

俳優の西田敏行さんは、一般人が作成したブログ(まとめサイト)に「西田敏行が違法薬物を使用している」「女性に対し日常的に暴力をふるっている」「海外で現地の女性に大金を支払って暴力を振るっている」などの事実無根の情報を掲載される被害にあいました。

これらを受けて、所属事務所は2016年8月に赤坂署に被害届を提出。事務所はホームページに「書き込みは全くの事実無根。刑事、民事の責任追及を進める」などとする異例の告知文を掲示しました。

この影響で西田さんの仕事の打ち合わせが一部延期になるなど、事務所の業務に深刻な実害が発生。2017年7月、赤坂署は偽計業務妨害容疑で中部地方に住む40~60代の男女3人を書類送検しました。

 送検された男女3人は、興味を引くような記事を掲載してブログの閲覧数を伸ばし「広告収入を増やしたかった」などと供述しました。

書込みの内容が真実なら違法にならない?

ただし,名誉棄損罪については,①名誉棄損行為が公共の利害に関する事実に係り,②その目的が専ら公益を図ることにあり,③摘示した事実が真実であることを行為者が証明できれば,名誉棄損罪は成立しません(刑法230条の2第1項)。

また,この刑事上の考え方は民事上も援用され,名誉毀損行為が,公共の利害に関する事実に係り,もっぱら公益を図る目的に出た場合,①摘示された事実が真実であることが証明された場合は違法性がなく,②もし事実が真実であることが証明されなくても,行為者において事実を真実と信ずるについて相当の理由がある場合は故意・過失がなく,どちらの場合も不法行為は成立しないとされています(最高裁昭和41年6月23日判決)。

このように、書込みの内容が真実だった場合は違法・不法行為にならない場合があります。

他にもこんな罪に!誹謗中傷で問われる罪名

誹謗中傷をした際に問題になる罪の代表例は名誉毀損罪ですが、それ以外にもたくさんの罪に問われるおそれがあります。有名な罪名をそれぞれ個別に解説します。

名誉毀損罪

公然と事実を摘示し、相手の名誉を貶めるような書き込みを行った場合に適用される犯罪です。名誉毀損にあてはまる条件として「公然」と「事実を摘示」して相手の名誉を傷つけた場合に限られます。

公然」とは、不特定または多数人が知る可能性がある状態です。特定かつ少数への一斉メールなどの場合でも「伝播可能性」があればここでいう「公然」にあたります。

次に、「事実を摘示」は事実として周囲の人に物事を伝えることを指すため、真実であるかは問題となりません。すなわち、たとえ本当のことを言っていたとしても罪に問われる可能性があります。

侮辱罪

公然と他人を侮辱するような書き込みをしたときに適用される犯罪です。侮辱罪も名誉毀損罪と同様に「公然」の要件を満たす必要があります。

名誉毀損罪との大きな違いは「事実を摘示」する必要がないことです。すなわち、「バカ」「ゴミ」などの抽象的な誹謗中傷や「ハゲ」「デブ」などの身体的特徴を誹謗中傷をした場合は、侮辱罪に問われるおそれがあります。

信用毀損罪

わざと嘘の情報を流すことによって他人の信用を貶めた場合に適用されるのが信用毀損罪です。

この場合の「信用」とは、個人の支払い能力や会社の資産などの経済的な信用を意味しますが、それに限定されず、商品やサービスの品質に対する信用も含まれると解されています。

例えば、「あの会社は経営状態が悪く、すぐに潰れる」や「あの飲食店は腐りかけの食材を使って料理を提供している」などの虚偽の情報を流した場合は信用毀損罪にあたる可能性があります。

脅迫罪

相手の生命や身体、財産などを傷つけると言って脅した場合に適用される犯罪です。「お前を殺す」などネット上での殺害予告は脅迫罪に該当する可能性が高く、相手の家族や親族を対象にした場合も罪になります。

相手を畏怖させるのに十分と判断されれば、相手が実際に恐怖を感じたかどうかに関係なく罪に問うことができます。

業務妨害罪

その名の通り、他人の業務を妨害したときに成立する犯罪です。業務妨害罪は、妨害の手段によって「偽計業務妨害罪」と「威力業務妨害罪」に分かれます。

偽計業務妨害罪虚偽の情報を流して業務を妨害したときに成立します。具体的には「あの店は品質管理をおこなっていない」などのデマを流す場合などがあげられます。

威力業務妨害罪「威力」を使って相手の業務を妨害した場合に適用される犯罪です。「威力」とは単に「強い威勢を示す」ことであり、店内で大声を出して怒鳴ったり騒いだりしたときに威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

法的対応ができない場合もある

これらの法定刑に該当する場合においても、必ずしも法的対応が可能なわけではありません。一定の事情が認められる場合には、犯罪が成立しない場合があります。

代表的なものは刑事事件における加害者の実名報道です。実名報道は、加害者側の名誉やプライバシーなどの人格権(憲法13条)と、報道する側の表現の自由・報道の自由(憲法21条)が対立するので、それぞれのメリット・デメリットを比較衡量して犯罪の成否が決まります。

そして、裁判所が実名報道によって被る加害者の不利益より、国民の重大な関心事である事件の内容を報道する利益が優越すると判断した場合は、プライバシー侵害などの不法行為にあたらないとされます。

このように、他の人権と衝突した際に、プライバシーの侵害や名誉毀損にあたる内容が報道された場合においても、違法性が阻却され法的対応ができなくなるケースがあります。

インターネットやSNSで誹謗中傷されたらやるべきこと

1証拠を保存

インターネットやSNSで誹謗中傷を受けた場合は、まず掲示板やサイト、SNSの規約を確認し、証拠を保存しましょう。

2削除要請

次に、サイト管理者や管理している企業に削除要請をします。

3開示請求

削除要請に応じなければ投稿者を特定するために、SNSや掲示板の運営会社にIPアドレスの開示請求をおこないます。

さらに、入手したIPアドレスの利用者の氏名や住所を、ネット回線提供会社に開示請求することで、誹謗中傷の発信者を特定することができます。

これらの発信者情報の開示請求手続きは、裁判所を通じて求める流れになります。投稿者を特定したあとは、通常の民事・刑事手続きによって慰謝料・損害賠償請求、ならびに刑事責任追及をします。

芸能人でも一般人でも、このような手順で訴訟をおこないます。ただし、匿名の発信者を特定するには、IPアドレスの開示請求と氏名、住所の開示請求をする必要があり、これらは裁判をしなければなりません。

個人で訴訟を提起することもできますが、手続きが煩雑で高度の専門知識を要します。そのような場合は、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

自分だけで裁判を進行するのは大変ですし、不明な点はいくらでも相談できるので、困ったときは弁護士などの専門家を頼りましょう。

まとめ

インターネットが発展するにつれて、誹謗中傷が発生する事例はどんどん増加しています。そして、普段からSNSや掲示板を利用する方であれば、誰しも誹謗中傷の被害にあうリスクがあります

実際に誹謗中傷の被害にあった場合は、正しい対処法をとることで、加害者に法的責任追及をすることができます。

また、裁判の進行は法律の知識が必要なため、わからないことを聞きたいときは、弁護士などの専門家に相談することがおすすめです。

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