交通事故の死亡事故での慰謝料の相場は?遺族が請求できる損害賠償

交通事故の死亡事故での慰謝料の相場は?遺族が請求できる損害賠償

交通事故で被害者が亡くなると、加害者側から損害賠償金が支払われます。損害賠償金には、死亡慰謝料以外にも葬儀費用などの様々な費目が含まれています。

本記事では、死亡事故で慰謝料以外に請求できる損害賠償の種類について解説します。

交通事故の死亡慰謝料とは

死亡慰謝料がどういったものか知らない方は多いのではないでしょうか。まずはじめに、死亡慰謝料についての詳しい内容を見ていきましょう。

死亡慰謝料は死亡事故の精神的苦痛を補償するもの

死亡慰謝料とは、交通事故で他界した本人が受けた精神的ショックを補償するための賠償金です。

また、事故で被害者が死去すると、残されたご遺族たちは多大な精神的ショックを受けることになります。そこで、遺族の方についても、加害者に対する慰謝料請求が認められます。

死亡慰謝料は亡くなった本人分と遺族分がある

死亡慰謝料には、「被害者本人の慰謝料」と「近親者固有の慰謝料」の2種類があります。これだけではわかりにくいと思うので、それぞれの内容について詳しく解説します。

被害者本人の慰謝料

死亡事故の被害者は、事故当時に受けた苦痛を金銭に換算し、加害者に対して慰謝料請求することが認められています。とはいえ、被害者本人は既に他界しています。そこで、被害者の相続人が慰謝料請求権を獲得することで、加害者に対して慰謝料請求することができるようになります。

近親者固有の慰謝料

交通事故で被害者が死去すると、被害者の両親や配偶者といったご遺族も多大なショックを受けます。そこで、このような遺族の方にも、被害者本人の慰謝料とは独立した固有の慰謝料請求権が認められます。

慰謝料の他に請求できるもの

死亡事故が発生すると、慰謝料以外にもさまざまな損害が発生します。死亡事故において、慰謝料の他にも認められる賠償項目は以下の通りになります。

死亡逸失利益

逸失利益とは、交通事故が起こったことで、本来被害者が得られるはずの労働収入を失ったことによる損害を意味します。被害者が亡くなると、それ以降は労働で収入を得られなくなるため、その分の損害の補填を加害者に求めることができます。

葬儀関係費用

葬儀費用とは、被害者の通夜・告別式を行うにあたって必要な費用を指します。これに加えて、墓碑建立費や仏壇仏具の購入費、遺体運送費なども加害者に請求できます。

 ただし、弔問客接待費や香典返し(弔事返礼品)にかかる費用は、葬儀費用そのものではないとして請求が認められていません。

入通院にかかる損害

事故が発生してから一定期間の入通院をした後に亡くなる方もいます。その場合、入通院の際に発生した費用について加害者側に請求することができます。具体的には、治療費や入院雑費、通院交通費などが請求可能です。また、入通院を強いられたことに対する精神的損害の補償として、入通院慰謝料を請求することも可能です。

弁護士費用相当額

弁護士費用とは、弁護士に紛争解決を依頼したときに発生する料金です。示談交渉が決裂して民事裁判に移行した場合、慰謝料や逸失利益などの賠償金に加えて、弁護士費用相当額(損害賠償額の10%程度)を請求できるようになります。

ただし、示談交渉の段階で弁護士費用相当額を請求しても、相手方保険会社が支払いに合意してくれることはありません。訴訟を提起したときに限って請求可能になります。

POINT
なお、ご遺族が弁護士特約(ご遺族が加入している保険会社が弁護士費用を補償する特約)を利用した場合であっても、加害者は弁護士費用相当額の賠償義務を免れることはできません。弁護士費用相当額の保険金は、保険料の対価として支払われるものであるからです。

遅延損害金

遅延損害金とは、返済期日までに金銭債務を履行しなかったときに発生する利息のようなものです。本来、交通事故の加害者は、事故発生日に損害賠償しなければなりません。しかし、実際にはお金が支払われるまでにはタイムラグがあります。そこで、賠償金が支払われるまでの期間に応じて遅延損害金を請求することができるのです。

ただし、弁護士費用相当額と同様に、保険会社が遅延損害金を支払ってくれることはありません。遅延損害金を請求するためには、示談ではなく民事裁判を起こす必要があります。

死亡慰謝料はだれが請求する?

死亡慰謝料には、「被害者本人の慰謝料」と「近親者固有の慰謝料」があります。ここからは、これらの慰謝料を誰が請求するかについて詳しくみていきます。

被害者本人の慰謝料を請求できる者

「被害者本人の慰謝料」を請求するのは被害者の法定相続人になります。交通事故で被害者が亡くなると、第一に被害者本人が加害者に対する損害賠償請求権を取得します。しかし、被害者本人は既に他界しているため、法律で定められた相続人に損害賠償請求権が相続されます。

では、この法定相続人には誰が当たるのでしょうか。まず、被害者に配偶者がいたときは、配偶者が常に相続人の1人となります。他の被害者の血族には優先順位が定められており、先順位の者が相続人になります。優先順位については以下の表をご覧ください。

優先順位血族の種類
第一順位子ども(いない場合は孫)
第二順位両親(いない場合は祖父母)
第三順位兄弟姉妹(いない場合は甥・姪)

先順位の者が1人でもいるときは、後順位の者は相続人になれません。つまり、被害者本人に配偶者、子ども、両親がいた場合、両親は相続人から外れることになります。

近親者固有の慰謝料を請求できる者

民法711条は、「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対して損害賠償しなければならない」と定めています。これは近親者固有の慰謝料と呼ばれるものであり、被害者の両親、配偶者、子どもが請求することができます。

では、なぜ被害者本人の慰謝料とは別に、近親者固有の慰謝料が認められるのでしょうか。被害者本人の慰謝料は、被害者の相続人が損害賠償権を相続します。

逆をいえば、相続人に当たらない者は慰謝料請求できないことになります。

しかし、死亡事故が起こると、遺族の方は皆等しく悲しい思いをします。そこで、民法711条は、相続人以外の遺族の方にも、近親者固有の慰謝料請求権を認めているのです。

内縁関係や婚約者でも死亡慰謝料は認められる?

内縁関係や婚約者であっても、法律婚と同程度の関係性であることが証明できる場合は、近親者固有の慰謝料を請求できます。具体的には、長年同居していた、被害者と扶養関係にあったなどの事情を証明する必要があります。

 ただし、法律上では死亡した本人の死亡慰謝料を相続する立場ではない為、請求できるのは近親者の慰謝料のみになります。

交通事故の死亡慰謝料の相場金額

死亡慰謝料の相場は、1,250万円〜2,800万円になります。慰謝料の計算方法や家族内における被害者の立場によって具体的な金額が変わります。ここからは、慰謝料の計算基準や、実際に死亡慰謝料を計算したときの例を紹介します。

死亡慰謝料の計算基準

死亡慰謝料の計算基準には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つがあります。どの基準を使用するかで最終的な金額が大きく変わるため、それぞれの基準の内容を詳しく知っておきましょう。各基準の詳細は以下の通りです。

自賠責基準

自賠責保険(共済)が用いる慰謝料の計算基準です。自賠責保険(共済)は、交通事故の被害者が最低限の補償を確保できるように、迅速かつ公平な保険金(共済金)等の支払いがなされます。

しかし、支払額は最低限に留まるため、3つの基準の中では慰謝料の受取額が最も低額になります。公開されている自賠責基準の計算方法は次の通りになります。

被害者本人の死亡慰謝料
400万円
近親者固有の死亡慰謝料
請求権者が1人の場合550万円
請求権者が2人の場合650万円
請求権者が3人の場合750万円
被扶養者がいる場合1名につき200万円が加算

なお、自賠責による保険金の支払限度額は、慰謝料や葬儀関係費、逸失利益などをすべて含めて3,000万円となっています。死亡事故に関する損害賠償金が3,000万円を超えた場合は、超過分を相手方の任意保険会社に請求することになります。

任意保険基準

加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の計算基準です。各保険会社が独自に基準を設定しており、計算方法の詳細については外部公開されていません。傾向としては、自賠責基準よりも若干高い慰謝料が支払われますが、後述の弁護士基準と比較するとかなり低額の基準になります。

参考までに、任意保険基準で計算したときの目安を掲載しますので、気になった方は確認してみてください。

被害者の家族内の立場死亡慰謝料の目安
家庭の生計を支えている1,500万円〜2,000万円
配偶者・専業主婦(主夫)1,300万円〜1,600万円
子ども・高齢者・その他1,100万円〜1,500万円

自賠責基準とは違って、「被害者本人」と「遺族」に分けず、被害者の家族内の立場によって死亡慰謝料の金額が判断されます。

弁護士基準(裁判基準)

過去の裁判例をもとにして設定されている慰謝料の計算基準です。弁護士や裁判所が実務で使用している基準であり、法的に適正な金額が支払われます。また、3つの基準の中で最も高額な計算基準となっています。弁護士基準で支払われる慰謝料の金額は以下の通りです。

被害者の家族内の立場死亡慰謝料
家庭の生計を支えている2,800万円
母親・配偶者2,500万円
子ども・高齢者・その他2,000万円〜2,500万円

任意保険基準と同様に、弁護士基準では被害者本人の慰謝料と遺族の慰謝料を合算して取り扱います。金額を見てみると、他の基準よりも高額の死亡慰謝料が設定されています。

自賠責基準よりも1,000万円以上高額になるケースも少なくありません。

死亡慰謝料の計算例

実際の死亡事故を例として、それぞれの基準でどのくらい死亡慰謝料が変わるかを解説します。

計算例① 被害者が働き盛りの男性のケース

被害者はサラリーマンの男性で、男性の遺族には専業主婦の妻と小学生の子どもだけがいるものとします。この事例における死亡慰謝料をそれぞれの基準で計算してみてみましょう。

自賠責基準で支払われる死亡慰謝料

自賠責基準では、被害者本人の死亡慰謝料は一括で400万円と定められています。近親者固有の慰謝料の請求権者は、妻と子どもの2人なので650万円になります。さらに、被害者には被扶養者が1名いるので、200万円が加算されます。

上記の金額を合わせると、自賠責基準では合計1,250万円の死亡慰謝料が支払われます。

任意保険基準で支払われる死亡慰謝料

任意保険基準では、死亡した本人の慰謝料と遺族の慰謝料を合算し、まとめて金額を算定します。今回の事例では、被害者が家庭の生計を支えている者なので、1,500万円〜2,000万円の範囲で死亡慰謝料が支払われます。

 ただし、各保険会社が個別に計算基準を設定しているので、実際に保険会社が算出するまでは具体的な金額を知ることはできません。
弁護士基準で支払われる死亡慰謝料

弁護士基準についても、死亡した本人の慰謝料と遺族の慰謝料を合算して金額を算出します。今回の事例では、被害者が家庭の生計を支えている者なので、弁護士基準の死亡慰謝料は2,800万円になります。

POINT
上記の計算例をみてみると、被害者が働き盛りの男性である場合、最低で1,250万円(自賠責基準)、最高で2,800万円(弁護士基準)の死亡慰謝料が支払われることがわかります。

計算例② 被害者が高齢者のケース

被害者は80歳の高齢者男性で、現在職に就いていないものとします。また、遺族には成人済みで、年収が130万円以上の息子が2人います。この事例における死亡慰謝料をそれぞれの基準で計算してみてみましょう。

自賠責基準で支払われる死亡慰謝料

被害者本人の死亡慰謝料は一括で400万円になります。近親者固有の慰謝料は、請求権者が2名なので650万円になります。今回の事例では、被害者に被扶養者がいないため、400万円+650万円=1,050万円の死亡慰謝料が支払われます。

任意保険基準で支払われる死亡慰謝料

被害者が高齢者の場合は、1,100万円〜1,500万円の範囲で死亡慰謝料が支払われます。この金額には、被害者本人の慰謝料と近親者固有の慰謝料が合算されています。ただし、任意保険会社次第では、上記の金額が変動する場合があります。

弁護士基準で支払われる死亡慰謝料

死亡した被害者が高齢者である場合、仕事をして家計を支えていた等の特段の事情がなければ、2,000万〜2,500万円の範囲で死亡慰謝料が支払われます。任意保険基準と同様に、この金額には、被害者本人の慰謝料と近親者固有の慰謝料が合算されています。

POINT
今回の事例では、被害者の高齢者は職に就いていないため、約2,000万円の死亡慰謝料が支払われると考えて良いでしょう。ただし、事故当時に無職であっても、そのときに求職中であったことを証明できれば2,500万円に近い死亡慰謝料を請求できる場合があります。

交通事故の死亡慰謝料が増額されるケース

慰謝料は精神的苦痛を補償するための金銭であるため、被害者やご遺族の精神的ショックが増大する特別な事情があるときは、慰謝料も増額することがあります。ここからは、実際に慰謝料が増額しうるケースについて解説します。

事故態様が悪質である

加害者の事故態様が極めて悪質だった場合、慰謝料が増額するケースがあります。具体例としては、下記のものがあります。

  • 無免許運転
  • 酒酔い運転
  • 著しいスピード違反
  • 信号無視
  • ひき逃げ(救護義務違反)

上記のように、運転中の加害者に重大な法令違反が見られたときに、慰謝料の増額が見込めます。

加害者の態度が不誠実である

事故後も加害者の態度が悪かった場合、慰謝料が増額することがあります。具体例としては、下記のものがあります。

  • 警察に虚偽の供述をした
  • 逃走して証拠を隠蔽しようとした
  • 示談交渉や裁判の場でも反省の色が見えない

このように、加害者の態度によって遺族の方が精神的苦痛を受けた場合、それが理由で慰謝料が増額するケースもあります。

被害者側に特別な事情がある

被害者側に特別な事情がある場合、慰謝料の増額事由になることがあります。具体的には、以下の例があげられます。

  • 妊婦の被害者が胎児と共に死亡した
  • 精神的ショックにより遺族が精神疾患(PTSDなど)を発症した
  • 精神的ショックにより遺族の学業などに悪影響が生じた

命の重みは平等ですが、上記のような特別な事情が考慮されることで、慰謝料が増額することがあります。

交通事故の死亡慰謝料の請求~分配までの流れ

死亡事故による慰謝料はいつ支払われるのでしょうか。死亡慰謝料が分配されるまでの手順を詳しくみていきましょう。

事故発生から死亡慰謝料を受け取るまでの流れ

死亡事故が発生してから死亡慰謝料を受け取るまでの流れは以下の通りです。

1、事故発生から示談開始まで

死亡事故が起こると遺族の方は多大な心痛を受けるため、すぐに損害賠償請求の話し合いをするのは酷なことです。また、損害賠償金には葬儀費用が含まれます。四十九日の法要までの葬儀費用については加害者に請求できるため、それまでは損害額が確定しにくいという問題があります。

したがって、示談交渉が開始するのは四十九日に法要が過ぎてからになります。

 なお、四十九日の法要が過ぎてからすぐに示談交渉をする必要はありませんが、長期間放置していると時効が成立してしまいます。時効が成立すれば、加害者に対する損害賠償請求権が消滅するため、余裕を持って示談を開始するようにしましょう。

2、示談交渉

交通事故の示談では、被害者と加害者との間で以下のことを話し合います。

  • どのような損害が発生したか
  • 損害賠償金はいくらになるのか
  • 支払い方法はどうするのか(分割払いの回数など)

示談が成立するには、当事者双方の合意が必要です。被害者と加害者がお互いの言い分に納得すれば、合意を交わすことで示談が成立します。

反対に、相手方の主張に納得がいかないときは、相手方の提案を拒否することができます。交渉が決裂すれば、裁判に移行して決着をつけることになります。ただし、遺族の方が示談交渉や裁判に参加するとなると、多大な心労を負うおそれがあります。

これ以上の精神的ストレスを抱えないためにも、示談交渉や裁判は弁護士に一任することをおすすめします。

3、賠償金の分配

被害者本人の死亡慰謝料は、法定相続人が代わりに取得することになります。法定相続人が複数いる場合は、法律で定められた遺産分割のルールに従って分配されます。

では、遺産分割のルールとはどのようなものでしょうか。以下の表にまとめましたので、気になった方は参考にしてください。

相続人分配の割合
配偶者と子ども(第一順位)配偶者;2分の1 子:2分の1
配偶者と親(第二順位)配偶者;3分の2 親:3分の1
配偶者と兄弟姉妹(第三順位)配偶者;4分の3 兄弟姉妹:4分の1

以上の法定割合に従いながら死亡慰謝料が分配されます。なお、両親、子ども、兄弟姉妹が複数人いる場合は、その人数に応じて均等に分配されます。

例えば、死亡慰謝料が3,000万円で、配偶者と子どもが2人いるケースでは、まずはじめに配偶者に2分の1の1,500万円を分配し、残りの1,500万円を2人の子どもに分配します。すなわち、2人の子どもは750万円ずつ取得することになります。

また、相続人全員が合意すれば、遺産分割の割合を自由に変更することができます。

困ったときは弁護士への依頼がおすすめ

上記のように、保険会社との示談交渉や相続問題については、法律の知識が必要になります。この点、弁護士に依頼すれば、示談交渉で争ったときに心強い味方になってくれます。また、弁護士であれば高額の弁護士基準で慰謝料請求してくれるため、慰謝料の金額を大幅に増やすこともできます。

POINT
遺族の方にとって、加害者側と示談交渉するのはストレスになりかねないため、弁護士に依頼して煩わしい手続きを一任してしまうのがおすすめです。特に、遺族の方が加入している自動車保険に弁護士特約がついている場合は、弁護士への依頼料が実質無料になりますので、積極的に弁護士に依頼するようにしてください。

まとめ

死亡慰謝料とは、死亡事故の精神的苦痛を補填するための金銭であり、被害者本人の慰謝料と近親者固有の慰謝料に分かれます。慰謝料の金額などは、遺族の方と加害者側との間の示談交渉で決まります。しかし、遺族の方は被害者が亡くなったことによるショックが大きく、すぐに示談交渉に参加できる状態ではないでしょう。

そのような場合は、弁護士に示談交渉を依頼して、煩わしい手続きを一任するのがおすすめです。弁護士に相談すれば、高額の弁護士基準で慰謝料請求することも可能です。

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