交通事故で使える弁護士特約とは?使い方や使えないケースとは?むちうちなどの軽症でも使えるのか

交通事故の被害に遭ったとき、弁護士に依頼すると様々なメリットがありますが、同時に気になるのが弁護士費用です。そんなとき、弁護士特約があれば、費用を気にせず依頼できるようになります。

本記事では、交通事故で使える弁護士特約を解説します。

弁護士特約とは

弁護士特約とは、任意の自動車保険についてくるオプションの1つで、弁護士への法律相談や依頼の費用を補償するものです。

自分が自動車を運転しているときや、日常生活で車にひかれるなど交通事故の被害者になったとき、ケガだけでなく車、モノへの損害に対する賠償請求に関して弁護士への法律相談料や示談交渉の依頼料を保険会社に代わりに負担してもらえ、場合によっては弁護士費用が無料になることもあります。

弁護士費用に含まれるものは、相談料・報酬・着手金・実費などで、弁護士事務所ごとに費用体系が定められています。

現在では、自動付帯になっていることも多く、その割合は全体の5割から7割といわれます。保険の加入者である「記名被保険者」はもちろん、家族も補償の対象となるため、事故の被害者になったときは自分だけでなく家族の保険にも弁護士特約がついていないか調べてみるようにしてください。

POINT
弁護士費用特約の補償対象者は、保険契約者(記名被保険者)だけではありません。被保険者、またはその配偶者と同居の親族や別居の未婚の子、内縁の者や同性パートナーを含む被保険者の配偶者まで補償の範囲が及ぶ可能性もあります。

もらい事故だと保険会社が交渉をしてくれない!?

被害者に全く責任のない、いわゆる「もらい事故」では、保険会社は加害者との示談交渉ができず、被害者だけでなんとかしなくてはいけません。この場合、保険会社が示談交渉を行うと、「金銭をもらって他人の法律事務を代行」することを禁止する弁護士法第72条「非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止」に抵触し、非弁行為になってしまいます。

ではなぜ、もらい事故以外では保険会社が交渉を担当できるかというと、双方に過失のある自動車事故では、保険会社自身が相手方に保険金を支払うためです。賠償金を支払うということは、保険会社自身も当事者になるので、交渉を行ったとしても他人の法律事務を代行していることに当たらず法律違反にならないのです。

もらい事故では、保険会社に示談を代行してもらえないため、被害者が自分自身の力で加害者側の保険会社と交渉しなければならなくなります。
しかし、法律知識や交渉経験がない被害者が独力で示談を行うのはかなり難しいといえます。

POINT
交渉で不利になることや保険会社の言いなりになって安い賠償金で示談してしまうことも考えられます。こうしたケースに備えるのが弁護士特約であり、弁護士に依頼できれば示談交渉を代理で行ってもらえ、適切な条件での示談が可能になります。

弁護士特約を使うメリット

弁護士特約とはどのようなものか分かったところで、次は実際に弁護士特約を使った場合の効果を説明していきます。交通事故の被害に遭ったとき、弁護士に依頼すると様々なメリットがある一方、費用面の負担がかかるデメリットがあります。

こうした悩みを解決してくれるのが弁護士特約です。特約を利用すると、以下のようなメリットがあります。

弁護士費用を気にせず依頼できる

特約を利用する一番のメリットが費用を気にせず弁護士へ依頼できるようになることです。交通事故で弁護士に依頼をすると、相談料や成功報酬など数十万円ほどの費用が必要になります。

相談料弁護士に法律相談を行う費用。正式に依頼する前に発生する費用。事務所によっては初回無料などのサービスをしているところもある。30分あたり5000円〜10000円程度。
着手金弁護士に依頼する際に発生する費用。金額は案件の内容によって変わる。事務所によっては着手金0円で成功報酬のみのところもある。10万円~
成功報酬依頼が成功した際に支払う費用。事務所によっては成功報酬をもらわず着手金のみのところもある。獲得した示談金の10~30%(+数万円)
その他出張時などに発生する日当や交通費、郵便物の切手代など実費

事故に遭うと、ケガで治療費がかかったり、仕事を休まなければならず、収入が減少したりすることもあります。そのため、金銭的な負担を気にして弁護士への依頼を躊躇する方もいます。

弁護士特約があれば、そうした心配も不要になり、費用を気にせず弁護士に依頼できるようになります。

賠償額の増額につながる

特約を利用して弁護士に依頼することで、相手方からもらえる慰謝料や賠償金の増額につながります。

交通事故の慰謝料には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準という3つの算定基準があり、それを用いるかで受け取る慰謝料額が変わります。このうち、高額な慰謝料を請求できるのが弁護士基準で、低額の自賠責基準と比べると2~3倍の金額になる場合もあります。

自分自身で示談交渉を行うと、適用されるのは自賠責基準か任意保険基準になるため、どうしてももらえる慰謝料は低くなってしまいます。しかし、弁護士特約があれば、費用をかけることなく慰謝料が増額される可能性があり、被害者にとって大きなメリットがあります。

早期解決につながる

特約を利用して弁護士に依頼すると、早期の示談成立にもつながります。

保険会社も民間の営利企業であるため、通常、交渉の際にも支払う保険金の額は少なくしようとするものです。しかし、弁護士がついていると、もし示談が上手くいかず交渉が決裂してしまった場合、被害者側が裁判に訴えることも可能になります。

保険会社としても訴訟になるのは避けたいところです。そのため、裁判等の結果も見越して普通よりも高めの金額を提示してくるようになり、示談交渉が揉めたり長引いたりすることもなく、スピーディな解決が期待できるようになります。

保険の等級が下がらない

利用しても保険の等級が下がらないのも、弁護士特約の大きなメリットです。事故を起こして保険を利用すると、保険の等級が下がり、次の保険料が高くなるので、弁護士特約でも同様に等級が下がってしまうのではと心配される方もいるかもしれません。

しかし、一般的には弁護士特約を利用すれば保険の等級には影響しませんし、保険料が値上がりすることもありません。保険料などの問題を気にせず、手軽に利用できます。

損をすることがない

弁護士特約は慰謝料増額などのメリットが大きい反面、特にデメリットといえるものがなく、使っても損をしないばかりか、むしろ使わないと損をする特約といえます。

弁護士特約は、使わずにとっておいたからといって翌年に持ち越されたり、等級が上がって保険料が下がったりすることはありません。保険料を払っているのなら、使えるときに特約を利用しないのはもったいないといえます。

精神的にラクになれる

特約を利用することで、示談交渉に関する精神的な負担を解消できます。保険会社との示談交渉は、慣れない被害者にとっては大きなストレスになります。もし、事故でケガをしているならなおさらです。

さらに保険会社は、専門用語を使ってあえて分かりにくい説明をしたり、被害者の過失割合を実際より高く見積もったり、配慮に欠ける言動をしたりと様々な方法で交渉の主導権を握ろうとしてくることがあります。

被害者が感じる精神的な負担はかなりのものになると考えられますし、諦めて低額な慰謝料のまま示談に応じてしまうこともあるかもしれません。

特約を利用して弁護士に依頼できれば、法律の専門家が味方になって交渉に臨んでくれるため被害者にとっては非常に心強くなります。精神的にラクになれるため、事故のストレスなどが相まって発症するうつ病などのリスクも軽減できます。

弁護士を選べる

弁護士特約では、原則として依頼する弁護士を自由に選べます。弁護士特約といっても保険会社によって様々なので、詳しくは約款を確認する必要がありますが、基本的には相談・依頼する弁護士は自分で決められます。

保険会社のオプションだからといって、保険会社が指定した弁護士にしか依頼できないということはありません。保険会社が弁護士を紹介してくれることもありますが、必ずその弁護士に依頼しなければならないとは決まっていません。

POINT
交通事故における弁護士選びは、もらえる慰謝料額にも関わる重要なポイントです。ぜひ、無料相談なども利用して、交通事故に強く、自分に合った弁護士を選ぶようにしてください。

弁護士特約で補償される範囲

続いて、弁護士特約の一般的な補償範囲を解説します。金額上限が決まっているため、特約を利用する際は注意しましょう。

法律相談料は10万円まで

弁護士への法律相談は1事故1人につき10万円までが限度額です。相談料は1時間あたり1万円程度が相場のため、おおよそ10時間の法律相談が可能です。

弁護士費用は300万円まで

実際に弁護士に示談交渉をお願いするときの着手金・成功報酬といった依頼関係費用は、最大300万円まで補償されます。重大な後遺症が残る大きな事故などでは、弁護士への依頼費用が300万円を超えてしまうケースもあります。その場合は、加害者から受け取る賠償金の一部を弁護士費用に充てることになります。

弁護士費用が300万円を超える大きな事故では、受け取る保険金も数百万から一千万以上と高額になる場合が多いので、あまり心配する必要はないでしょう。多くの弁護士は成功報酬による完全後払い制になっているので、賠償金受け取り後の支払いでも問題になることはありません。

POINT
ここで紹介した補償限度額は、多くの保険会社が採用している平均的な金額で、上限金額は各社で異なる場合があります。自分が加入している保険の上限がいくらになるかは、約款を確認するようにしてください。

弁護士特約は軽症でも使ったほうがいいのか

ここまで、弁護士特約の内容や利点について説明してきました。弁護士特約には多くのメリットがあることを理解していただけたと思いますが、どんな場合でも特約を使ったほうがいいのかを解説します。

弁護士特約はどのようなケースでも使えますが、軽症の場合など、ケガの程度が軽くても利用したほうが良いのでしょうか。

弁護士特約は軽症こそ使ったほうがいい!?

弁護士特約は、むちうちのように軽症の場合でも使うことができます。交通事故には、重いケガや後遺症を負う事故もありますが、なかには、むちうちなど軽症の事故もあり、軽いケガだとわざわざ弁護士を立てるほどでもないのでは、と考える方も多いようです。

しかし、実は弁護士特約は、軽症の場合こそ利用するメリットが大きいのです。

むちうちは保険会社に対応してもらえないことが多い

交通事故でむちうちが発生するのは、加害者の車に背後から追突された場合などです。被害者には過失がなく、上の項目でも説明したように非弁行為となるため、保険会社の示談代行サービスが使えないことが多く、被害者自身の示談対応が必要になります。

しかし、自身での示談交渉は不利になる可能性が高く、ここで弁護士特約が使えると被害者にとって頼もしい存在です。むちうちは交通事故でも軽症に分類されるため、弁護士に依頼しても慰謝料の増額幅が少なく、弁護士費用との兼ね合いから依頼を諦める人もいますが、弁護士特約があればそうした心配もなくなります。

むちうちでも慰謝料増額の可能性がある

むちうちは軽いケガだと思われがちですが、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求すれば、賠償金の増額も可能です。むちうちでは後遺障害等級14級または12級の認定を受けると慰謝料請求が可能になります。

等級症状慰謝料(自賠責基準)慰謝料(弁護士基準)
12級13号局部に著しい神経症状94万円290万円
14級9号局部への神経症状32万円110万円

しかし、交通事故で後遺障害慰謝料を請求するには、後遺障害等級の認定を受ける必要があり、むちうちの場合はこの等級認定を受けるのが簡単ではありません。一貫した症状を訴えることやきちんと病院に通院することなど、きちんとポイントを押さえていれば、認定を受けることはできるのですが、一般の方だとどうすればいいのかわからず、認定に苦労することも考えられます。

弁護士に依頼すれば、認定を受けるためのポイントを押さえた対策などのアドバイスをもらうこともできるようになり、より高額な慰謝料を受け取れるようになります。

弁護士へ依頼すると、示談交渉だけでなく、慰謝料など賠償金増額のため、あらゆる面でサポートを受けられるようになり、より満足のいく条件での示談が成立しやすといえます。

軽症だからといって遠慮することなく、むちうちなどの場合でも積極的に弁護士特約を利用し、弁護士に示談交渉を依頼するようにしてください。

弁護士特約が使える場合・使えない場合

最後に、弁護士特約を実際に使用する際の注意点を解説します。まずは弁護士特約が使えるケースと使えないケースについて整理していきます。

使えるケース

弁護士特約は、大部分の交通事故で使用可能です。追突事故など契約者の過失割合が0で保険会社が対応できない事故はもちろん、契約者が100%加害者ではなく双方に過失のある事故でも使用できます。

そのほか、物損事故や相手が無保険(任意保険に加入しておらず、自賠責保険のみ)の場合など、保険会社が示談交渉できない場合に限らず、様々な事故に対応しています。

使えないケース

では、弁護士特約が利用できないのはどのようなケースでしょうか。まずは、契約者本人の故意・重過失が原因で事故が発生した場合です。

  • 無免許運転
  • 酒気帯び運転
  • 薬物の使用により正常な運転ができない状態だった場合
  • 自殺や犯罪行為
  • 盗難車運転中の事故
  • 車から身を乗り出す、人数オーバーなどの危険行為

など被害者本人の故意や重過失が原因になって損害が発生したときは弁護士特約の適用範囲外となる可能性があります。

また、台風や洪水、地震、津波、噴火など自然災害や天変地異などによって発生した被害事故の場合も弁護士特約は使えません。ほかには、事業用の車を運転していた場合や自転車やバイクなど自動車以外を運転していた場合の事故も適用外となります。

弁護士特約の使い方

続いては、実際に弁護士特約を使う方法について解説します。

1、自分の加入している保険に弁護士特約がついているかを確認

はじめに、加入している自動車保険に弁護士特約がついているか確認します。弁護士特約は家族の保険でも利用できる場合があるほか、火災保険やクレジットカードの保険に付帯していることもあるので、細かいところまで見逃さないようにしましょう。

2、依頼する弁護士を決める

保険会社から了承を受けたら、実際に示談交渉を依頼する弁護士を決めます。保険会社から紹介されることもありますが、弁護士は基本的に自分で探すことになります。

弁護士選びのポイントは交通事故に強い弁護士かどうか。弁護士事務所のホームページを見れば、これまでの実績や得意分野が見られるので、確認しておきましょう。

初回の法律相談は無料の事務所も多いですから、実際に自分で足を運んで話を聞きながら、信頼できる弁護士を見つけてみてください。

3、保険会社に弁護士特約の利用を連絡

弁護士特約の利用には、事前に保険会社への連絡と承認が必要になります。加入している保険会社に弁護士特約を利用したい旨を伝え、同意をとりましょう。

弁護士にも弁護士特約を利用することを伝え、保険会社には依頼する弁護士事務所を、弁護士には保険会社の名前と担当者の連絡先を教えます。保険会社、弁護士ともに特約の利用を拒否されることは基本的にないと考えていいです。

POINT
連絡先を伝えておけば、あとは保険会社と弁護士で連絡を取り合ってくれるので、契約者は特に手続き等を行う必要はなくなります。

弁護士特約はいつ使える?

弁護士費用特約は、交通事故の直後からいつでも使うことができます。
どのタイミングで依頼したらよいのか迷うかもしれませんが、病院での初診後から示談成立前までであればいつでも使えるため、早ければ早いほどよいでしょう。早めに弁護士に依頼した方が、さまざまなトラブルに対処してもらえたり、サポートを受けられます。

まとめ

弁護士特約は、交通事故の被害者になったとき、多くの人が弁護士への依頼をためらう理由となる費用面の問題を解決してくれる強い味方です。
示談交渉を弁護士に依頼すると、慰謝料の増額や交渉の負担を軽減できるなど数多くのメリットがあり、むちうちなど軽症の場合でも非常に有効です。

事故に遭った際は、積極的に弁護士特約の利用し、交通事故に強い弁護士に示談交渉を依頼するよう検討してみてください。メールや電話で24時間、無料相談の受付も可能です。

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