交通事故で弁護士費用特約が使えないケースとは|過失があると使わせてもらえない?

交通事故で弁護士特約が使えないケースとは?

交通事故という不測の事態に直面した際、非常に心強い味方となるのが弁護士特約(弁護士費用特約)です。しかし、この便利な特約も、事故の具体的な状況や内容によっては例外的に利用できないケースが存在します。

”豊川弁護士”
本記事では、弁護士特約が適用されない具体的なケースをはじめ、被害者側に過失がある場合の取り扱い、補償される金額の上限など、知おいて損はない重要なポイントをプロの視点から詳しく解説します。
執筆・監修者

執筆・監修:豊川祐行

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。 あまた法律事務所へのお問い合わせはこちら

弁護士特約の基礎知識と概要

弁護士特約(弁護士費用特約)とは、交通事故や日常生活のトラブルで被害者となった際、解決のために必要となる弁護士費用を保険会社が代わりに支払ってくれる非常に利便性の高い制度です。

主に自動車保険のオプションとして広く知られていますが、火災保険や医療保険、あるいはクレジットカードの付帯サービスなどにも組み込まれていることがあり、不慮の事態に備える心強いシステムとなっています。

この特約を利用すれば、被害者ご自身の懐を痛めることなく、実質的な自己負担ゼロで法律の専門家に相談・依頼ができるという点が最大のメリットです。

弁護士特約が使える費用

弁護士特約の補償範囲には、主に以下のような弁護士費用が含まれます。

着手金

弁護士へ正式に事件の解決を依頼した段階で、初期費用として発生する金員です。
これは弁護活動の対価として支払われるため、最終的な交渉結果の成否(成功・不成功)に関わらず、原則として返還されません。

成功報酬金

事件が望ましい形で解決に達した際、その成果に応じて支払う費用です。
交通事故の事案においては、弁護士の介入によって慰謝料などの損害賠償金を増額できた場合に、その利益の度合いに応じて発生します。

報酬には一部の成功(一部増額など)も含まれ、獲得できた利益の割合に準じて清算されます。そのため、万が一裁判で全面敗訴したり、示談金を1円も上乗せできなかったりした場合には、成功報酬を支払う必要はありません。

実費

事件の処理を迅速に進める上で、実際に外部への支払いに要した各種の必要経費です。
裁判を起こす際に裁判所へ納める収入印紙代や、相手方・保険会社へ重要書類を郵送するための郵便切手代(レターパックや内容証明郵便代など)がこれに該当します。

”女性”
また、弁護士が実況見分への立ち合いや裁判所への出廷のために事務所を離れる際、必要となった交通費や宿泊費なども実費としてカバーされるのが一般的です。
日当

弁護士が特定の案件のために出張し、長時間を拘束されたことに対して支払われる手当です。
出張によって弁護士が事務所を不在にすると、他の通常業務の処理が制限されてしまうため、その時間的な拘束への対価として算出されます。

法律相談料

正式な委任契約を結ぶ前段階で、弁護士に法的なアドバイスを仰ぐ際に発生するタイムチャージ費用です。
どのようなトラブルであっても、いきなり解決を依頼するのではなく、まずは面談や相談を通じて見通しを立てるのが基本プロセスとなります。

POINT
弁護士特約の適用範囲は広く、保険の契約者(記名被保険者)本人のみならず、配偶者や同居している親族、さらには別居している未婚の子供までカバーされるケースが多くあります。ご自身やご家族の保険に特約がついている場合は、一切の躊躇なく弁護士へ相談されることを強くお勧めします。

弁護士特約のメリット

弁護士特約を導入する最大の恩恵は、まとまった弁護士費用を完全に抑えられる点にあります。さらに、法律の専門家が前面に立って交渉することで、慰謝料などの損害賠償金を法的に適正な最高水準へと引き上げ、被害者にとって圧倒的に有利な解決を導くことが可能になります。

費用をかけずに弁護士に依頼できる

特約を利用する上で最も分かりやすいアドバンテージは、やはり被害者ご自身の金銭的な持ち出しを一切なくして弁護士を雇える点に尽きます。

通常、弁護士費用は回収できた賠償金の額に比例して算出されます。大怪我を負ってしまったり重い後遺障害等級が認定されたりした場合、獲得できる金額が大きくなる一方で、弁護士への手数料も100万円単位と高額になりがちです。そのため、費用の支払いを恐れるあまり、プロへの依頼を諦めて自分一人で示談を終わらせようとしてしまう被害者の方も少なくありません。

しかし、弁護士特約を適用すれば、これらの高額な諸費用をすべて保険会社が肩代わりしてくれるため、コストリスクを完全にゼロにしながら最上のリーガルサポートを受けることができます。

万が一特約に未加入の状態で依頼すると、当然ながらすべての費用を自費で清算しなければなりません。特に、むち打ちなどの比較的軽微な怪我で全体の賠償額が低く抑えられてしまうケースでは、獲得できた示談金よりも弁護士費用のほうが高くついてしまう、いわゆる「費用倒れ」の現象が起きるリスクがあります。

自動車保険にこの特約を付帯させるには、毎月の掛け金にわずかなオプション料金が上乗せされます。しかし、弁護士特約の保険料は月々わずか100円〜300円程度であり、年間を通しても1,500円〜3,000円ほどの極めて少額な負担で済みます。交通事故はいつ誰の身に降りかかるか予測できませんので、このわずかなコストで絶大な安心を手に入れられると考えれば、外すべきではない特約と言えます。

”豊川弁護士”
弁護士費用は決して安価なものではありませんが、特約によって最高300万円までの費用が補償されると考えれば、わずかな掛け金の上乗せを考慮しても費用対効果は抜群です。怪我の程度(軽傷・重傷)を問わず、実質無料でいつでもプロに相談できる環境が整うのは非常に魅力的です。

受け取る示談金額を増額できる

特約を使ってプロの弁護士を交渉の席に立たせることで、保険会社から提示される最終的な示談金を大幅に引き上げることが可能になります。これは、最も有利な算定方式である「弁護士基準」の適用が可能になるためです。

交通事故の慰謝料計算には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」という3つの異なるレイヤーが存在します。このうち被害者が受け取るべき最も正当かつ最高額の算出を可能にするのが弁護士基準です。逆に、国の最低限度補償である自賠責基準が最も低く、保険会社が自社規定で算出する任意保険基準も、自賠責基準に毛が生えた程度の低額なものに留まります。

一般的に、加害者側の保険会社は被害者個人に対して「任意保険基準」をベースにした、会社にとって都合の良い低めのアプローチをしてきます。専門知識がないままこの最初の提示を鵜呑みにしてサインしてしまうと、本来得られるはずだった正当な金額を大きく取りこぼす結果になってしまいます。

被害者ご自身が単独で「弁護士基準の満額で支払ってほしい」とどれほど強く要求したとしても、プロの保険会社がその主張を真に受けて満額回答してくることはまずありません。しかし、弁護士が代理人として交渉の窓口になった途端、彼らの対応は一変します。

弁護士が介入するということは、相手方にとって「これ以上不当な引き留めを続ければ、即座に民事裁判へと持ち込まれる」という強力なプレッシャーを意味します。裁判になれば当然、裁判所は弁護士基準の適用を認めますので、保険会社側に勝ち目はありません。余計な時間やコスト(訴訟費用など)がかかる裁判を避けるため、保険会社は示談交渉の段階で、弁護士が提示する適正な増額要求に応じざるを得なくなるのです。

POINT
弁護士が主導権を握ることで、被害者自身が交渉していた初期の提示額に比べて、最終的な賠償金が2倍、3倍へと膨れ上がる事例は決して珍しくありません。特約が付帯していることが確認できたら、その特約をフルに発揮させるためにも、速やかに専門弁護士へ依頼するのが鉄則です。

実質無料で被害者の負担を減らせる

特約を活用することでもたらされるもう一つの大きな救いは、金銭的な負担を一切気にすることなく、事故に伴う膨大かつ複雑な事務手続きをすべてプロに一任できる点にあります。これにより、被害者の方の精神的・肉体的な負担は劇的に軽減されます。

不意の事故に巻き込まれると、被害者は怪我の激痛に耐えながら、加害者本人や高圧的な相手方保険会社との終わりの見えない連絡のやり取りに追われることになります。それだけでなく、仕事への影響を補填する休業損害の精緻な申請手続きや、就業中の事故であれば労災保険への各種給付金請求など、専門的な処理を同時並行で進めなければなりません。

さらに、懸命な治療の甲斐なく身体に痛みや麻痺などの後遺症が残ってしまった場合は、さらなるハードルとして「後遺障害の等級認定」という公的な申請手続きが立ちはだかります。

 この後遺障害等級の申請手続きには、極めて高度な法律的ノウハウに加え、カルテや画像データを的確に分析する医学的な深い知見が必要不可欠です。専門知識のないまま保険会社の言いなりで進めたり、不適切な書類で申請を出してしまうと、本来認められるべき正しい等級が却下され、受け取れるはずの後遺障害慰謝料や逸失利益を一切失ってしまうという致命的なリスクを伴います。

交通事故事案の解決実績が豊富な弁護士であれば、後遺障害等級認定をはじめとしたさまざまな手続きを適切に行ってくれます。

”女性”
交通事故の被害に遭われた方が最優先すべきは、何よりも怪我の治療に専念し、心身の平穏を取り戻すことです。弁護士特約さえあれば、そうした煩わしくストレスの溜まる手続きのすべてを、実質的な費用負担ゼロでプロに一任することができます。

示談代行サービスが使えないときに役立つ

弁護士特約の非常に重要かつ強力なメリットとして、ご自身の保険の「示談代行サービス」が機能しない特殊な交通事故おいても、確実にその効果を発揮してくれる点が挙げられます。

多くの方が「事故が起きても、自分が加入している保険会社が相手と話し合ってくれるはず」と思い込んでいます。しかし、被害者側の過失(責任)が完全にゼロである追突事故や赤信号無視による衝突といった、いわゆる「もらい事故」のケースでは、自分の保険会社は一切交渉の表舞台に出てくれません。

過失がないと被害者側に損害賠償義務が発生しません

当事者双方に何らかの過失がある事故であれば、お互いの保険会社が「自社の支払いを減らす」という明確な利害関係(利害の当事者)を持つため、代理人として交渉の席に着くことが認められます。しかし、被害者の過失が完全に「ゼロ」の場合、被害者側の保険会社は1円も身銭を切る必要がないため、法的な利害関係を失ってしまいます。

この「利害関係を持たない状態」であるにもかかわらず、弁護士資格を持たない保険会社の担当者が他人の金銭交渉を代行する行為は、弁護士法第72条に抵触する「非弁行為(ひべんこうい)」という重大な法律違反に該当してしまいます。そのため、過失ゼロのクリーンな事故であるほど、保険会社特有の示談代行サービスは法律の壁によって完全に使えなくなってしまうのです。

POINT
このように「もらい事故」という被害者に全く落ち度がない最も不条理な事故においてこそ、法律の壁を合法的に突破できる弁護士特約の存在が真価を発揮します。特約を使えば、法律の正規の代理人である弁護士を実質無料で立てることができるため、保険会社の示談代行に代わって、すべての交渉を完全に任せることが可能になります。

弁護士特約が適用されない具体的なケース

非常に万能に見える弁護士特約にも、あらかじめ定められた不適用条件(使えないケース)がいくつか存在します。

事故内容によっては、弁護士特約が使えない可能性があるのは注意点でしょう。

被害者の過失が大きいケース

事故が起きた原因が被害者側の重大な非にある場合、保険会社の規約によって特約の利用が制限・拒絶されることがあります。

一般的な特約約款には、適用条件として「不測の事態や過失のないもらい事故等によって損害を被った場合」を想定しています。そのため、規約に「被害者の故意、または重大な過失に起因する損害は補償対象外とする」という免責条項が盛り込まれていることが多く、被害者自身の違法な運転や極めて危険な行動が事故を引き起こした主因である場合、弁護士特約の適用は認められない仕組みになっています。

例えば、以下のような法を逸脱した危険なケースでは、特約の利用を断られる可能性が極めて高くなります。

  • 飲酒運転や酒気帯び運転をしていた場合
  • 無免許運転、または免許停止期間中に運転していた場合
  • 麻薬や危険ドラッグ等の薬物を摂取し、正常な運転が不可能な状態だった場合
  • あおり運転や極端な過速度運転など、著しい危険・不法行為を行っていた場合
  • 被害者自身が管理・所有する車両の致命的な整備不良や欠陥が原因で発生した損害

このように、被害者側における「法律を無視した重大な不注意や悪質な不法行為」が認められる交通事故については、弁護士特約の恩恵は受けられないと考えておくべきです。

自転車事故のケース

一言に「乗り物の事故」と言っても、自転車同士の衝突事故や、歩行中に自転車にはねられたといったケースでは、通常の自動車保険に付いている弁護士特約は使えません。

自動車保険に付帯する弁護士特約が適用されるのは、「運行中の『自動車』によって生じた事故」に厳格に限定されているためです。

この「自動車」の定義には、普通乗用車だけでなく、トラックなどの大型車両、さらには原動機付自転車(原付)や単車といった各種バイクまで含まれます。しかし、法律上「軽車両」に分類される自転車は、保険の定義における『自動車』には該当しません。そのため、自転車が主因となる衝突事故やトラブルは、自動車保険の弁護士特約の枠組みから外れてしまうのです。

もし自転車の事故に対しても同様の手厚いリーガル補償を備えたい場合は、自動車保険の特約を「日常生活事故補償型」にアップグレードするか、別途「自転車保険(自転車専用の総合保険)」へ加入する手続きが必要です。また、ご自身が契約している火災保険や医療保険に「個人賠償責任特約(法律相談補償付き)」が付帯していれば、そこから自転車事故の費用を賄えるケースもあります。

その他のケース

上記のほかにも、以下のような特定の特殊なシミュレーションにおいては、弁護士特約の利用が免責(不適用)となるため注意が必要です。

  • 地震、噴火、津波、大型の台風や洪水といった、予測不能な天変地異(自然災害)を主因として発生した損害
  • 損害賠償の請求相手が、被害者自身の極めて身近な親族(配偶者、実の父母、実の子など)や、自身が乗っていた車の所有者である場合
  • 営業用の緑ナンバー車など、完全に「事業目的」で使用される車両が事故を起こした場合(※ただし、特約の契約プランによっては法人・事業用でも適用を認めている保険会社もあります)

弁護士特約が適用される範囲

弁護士特約の素晴らしい特性として、被害者ご本人が保険を契約していなくても、同居する家族が加入している保険の特約をそのまま流用できる点が挙げられます。

実を言うと、交通事故の被害に遭われた方の多くが、「自分は特約に入っていない」と思い込み、せっかく利用できる権利があるのに見落としてしまっているケースが非常に多く見受けられます。特約の補償範囲は想像以上に広く設定されており、家族の誰か一人が保険に特約をつけていれば、以下の範囲に属する親族全員の事故費用をカバーすることができます。

  • 保険契約者(記名被保険者)の配偶者
  • 契約者、またはその配偶者と寝食を共にする「同居の親族」(法的な6親等内の血族・3親等内の姻族にまで及びます)
  • 進学や就職などで親元を離れて別の場所で暮らしている、戸籍上「未婚の子供」
”豊川弁護士”
弁護士特約は、毎月の保険料にオプション料金を上乗せして維持している立派な権利です。このような幅広い適用シーンを知ずに放置してしまうのは非常にもったいないと言わざるを得ません。利用できるかどうかの判断に少しでも迷った際は、事故後速やかにご自身やご家族の保険会社へ連絡を入れ、契約のステータスを徹底的に確認してもらいましょう。

保険会社が弁護士特約の利用を渋る理由

交通事故の規模や被害の内容によっては、保険会社が弁護士の必要性が低いと判断し、弁護士特約の申請に対して難色を示したり、利用を渋るような態度を取ってくることがあります。

保険会社側の立場から見れば、契約者に特約を使われるということは、自社が多額の弁護士費用(最高300万円)を負担して外部へ支払わなければならないという「出費の発生」を意味します。そのため、本音を言えば「できれば特約を使わずに穏便に済ませてほしい」という思惑が働き、相談時に消極的なニュアンスを伝えてくるケースがあるのです。

しかし、被害者にとって必要であると判断したならば、保険会社の顔色を伺うことなく、毅然とした態度で特約の利用を突き通すべきです。契約者は毎月しかるべき保険料を支払ってこの権利を買っているのですから、利用を拒絶される筋合いは全くありません。一切の遠慮を捨てて、特約を行使する旨を明確に伝えましょう。

示談交渉が順調に進んでいる

相手方との話し合いが目立った紛糾もなくスムーズに流れている局面において、「トラブルが起きていないのだから、わざわざコストをかけてまで弁護士を介入させる必要はないのでは」と言われるケースがあります。

しかし、一見穏やかに進んでいる交渉であっても、その提示されている金額自体が「任意保険基準」の低いラインに据え置かれているという根本的な問題を見落としてはなりません。また、弁護士の役割は単なる喧嘩の仲裁ではなく、複雑な法的手続きの代行から適正な最高額(弁護士基準)の算出にいたるまで、被害者の味方となってあらゆる作業を包括的にサポートすることにあります。

POINT
たとえ現時点で相手方との間に激しい対立がなかったとしても、法律のプロを味方に据えて正当な補償額を勝ち取ることには極めて大きな価値があります。保険会社の担当者がどのような消極的なアプローチをしてこようとも、特約を適用する意思にブレを持たせないことが肝要です。

物損事故や軽微な人身事故

車両の破損のみが発生した物損事故や、むち打ち・軽微な打撲といった比較的軽症で終わった人身事故のケースにおいて、保険会社は特に特約の適用を嫌がる(制限しようとする)傾向が顕著になります。

こうした小規模な事故の場合、全体の損害賠償額のベース自体が低いため、弁護士がどれほど懸命に交渉しても、増額できる金額の絶対値は数十万円程度に留まることが予想されます。保険会社側としては「回収できる上乗せ額よりも、自社が支払う弁護士費用のほうが高くついてしまい、費用対効果が合わない」という採算上の理由から、利用を思いとどまらせようとするのです。

しかし、弁護士特約は「損害額が大きい事故でしか使ってはいけない」というルールはどこにもありません。たとえ数万円、数十万円の上乗せであっても、被害者が受けるべき正当な利益であることに変わりはなく、プロの手を借りてきっちりと回収すべきです。

”女性”
物損のみの事故や軽度な怪我であっても、保険会社の意向に流されることなく、自信を持って弁護士特約を申請してください。特約さえあれば、どれほど獲得できる金額が小さくても「費用倒れ」で赤字になる心配が一切ないため、安心してプロに実務のすべてを委ねることができます。

被害者側に過失がある事故での特約の可否

結論から申し上げれば、被害者側にも一定の責任(落ち度)が認められる過失割合ありの事故であっても、弁護士特約の利用が拒絶されることは原則としてありません。

実際の道路上で発生する交通事故の多くは、お互いの動いている車両同士の衝突であるため、被害者側にも「1割〜3割」といった少なからず過失が認定されるのが通常です。自分にも非があるからといって、それだけの理由で特約の利用を諦める必要は全くありません。

実務上、被害者側の過失割合が「50%」を超える、いわゆる過失割合の逆転(主たる原因を作った側)になる局面においては、保険会社による利用審査が厳しくなることがあります。しかし、そのような不利に見える展開であっても、個別の事情や特約の規約内容によっては、問題なく特約の決済が下りた事例は数多く存在します。先述した飲酒や無免許といった決定的な「重過失(法律上の免責事由)」に該当しない限り、こちら側の過失の有無を過度に心配せず、まずは利用可能かどうかを保険の窓口へ確認してみるのが最善の手です。

弁護士特約でカバーされる補償金額の上限

弁護士特約によって保険会社が肩代わりしてくれる補償金額には、あらかじめ規約上の「上限枠」が設定されています。

業界共通の標準的なルールとして、最初の「法律相談費用」は上限10万円まで、その後に正式に委任契約を結んだ後の「弁護士費用(着手金・報酬金・実費のトータル)」は最大300万円までと規定されています。この上限金額を超過してしまった分については自己負担(実費清算)となりますが、それでも特約を導入することの恩恵は極めて莫大です。

弁護士費用が300万円以上かかるケース

総費用が300万円の壁を上回る極めて重大な事案においては、超過分の金員について保険の枠内だけで処理することはできなくなります。

国内のほぼすべての弁護士特約規約において、1回の事故における補償額は被害者「1人あたり300万円」が絶対的な上限に据え置かれています。これはあくまで『1人につき』という計算であるため、例えばファミリーカーに家族3人が同乗している際に事故に遭った場合は、世帯トータルで最大900万円までの莫大な枠を確保することができます。

弁護士へ支払う着手金や成功報酬などの合計額がこの300万円の限度額をオーバーしてしまうシミュレーションとしては、弁護士の卓越した交渉によって相手方から回収できた総額(あるいは増額できた経済的利益)が数千万円規模に達するような、極めて重大な事故が挙げられます。

多くの法律事務所では、解決に要する報酬規程の相場として、かつて日弁連が定めていた「旧弁護士報酬規程」のパーセンテージを現在も大まかな目安として採用しています。そのかつての旧基準は以下の通りです。

経済的利益の額着手金報酬金
300万円以下8%(下限は10万円)16%
300万円超3,000万円以下5%+9万円10%+18万円
3,000万円超3億円以下3%+69万円6%+138万円
3億円超2%+369万円4%+738万円

現在ではこの統一の報酬基準は廃止され、各法律事務所が自由に弁護士費用を設定できるようになりました。ですが、旧報酬規定を参考にして弁護士費用の相場を定めている法律事務所は多いです。

この表を参考にすると、弁護士が相手方から勝ち取った賠償額(経済的利益)が約1,600万〜1,800万円を超えるような段階に達して初めて、日当や裁判実費などを含めた総費用が300万円の枠を突破する計算になります。裏を返せば、これほどの大金をもぎ取れるのは、被害者がお亡くなりになってしまった極めて痛ましい死亡事故や、介護を要するような重篤な後遺障害等級が認定された重大な事案などに限られます。一般的な事案であれば300万円の枠内で100%収まりますし、仮に上限を超えて自己負担が発生するような深刻な事案であっても、最初の300万円分を保険会社に肩代わりしてもらえるため、経済的な負担が劇的に軽減されるという事実には変わりありません。

”豊川弁護士”
万が一、総額が300万円の上限ラインを越えてしまったとしても、その恩恵によって弁護士費用の大部分を実質免除されている状態になります。持ち出し費用を最小限に抑えつつ、数千万円規模の正当な補償金を確実に手に入れられると考えれば、特約を利用するメリットは計り知れません。

相談費用が10万円以上かかるケース

本契約を結ぶ前段階で行う「法律相談」についても、特約による補償の上限は被害者1人あたり「一律10万円まで」と定められているのが一般的です。

相談にかかる単価は各事務所の規定によって様々ですが、昨今では「最初の30分は一律5,000円」、あるいは「初回相談のみ完全無料」といった親しみやすい設定にしている法律事務所が多く見受けられます。しかし、複雑な事案で2回目、3回目と相談を重ねたり、難解な法解釈を要するセカンドオピニオンを求める局面では、30分あたり10,000円〜25,000円といった専門的なプロ料金へ移行するケースも珍しくありません。

事故の状況や責任のなすりつけ合いが激しく入り組んでおり、正式に依頼を決める前に何度も綿密な法律相談を重ねる必要があるような特殊なケースでは、相談の段階だけで累計費用が10万円の壁に達してしまうことがあります。

上限の10万円を超過した相談料については特約の補償対象外となり、本人の手出しとなってしまいますが、そもそも「10万円分もの膨大な時間(時間に換算すればおよそ5時間〜10時間以上)」を最初からプロの弁護士にじっくりと費やしてアドバイスを貰えると考えれば、被害者にとってこれほど心強いことはありません。相談料の面から見ても、特約の利用価値は非常に高いと言えます。

”女性”
特約があるからと油断せず、最初の面談時に「こちらの事務所の法律相談料は30分あたりいくらか」を明確に確認しておきましょう。今現在の相談費用の累計がいくらになっているかを頭の片隅で把握しておくことが、賢く特約を使いこなすコツです。

特約が未加入の場合でも弁護士を頼るべき理由

万が一、ご自身やご家族の保険をくまなく調べた結果、弁護士特約がどこにも見つからなかった(未加入だった)という場合であっても、決して諦めることなく、まずは弁護士へ一度相談されることを強くお勧めします。

なぜなら、プロの弁護士を代理人に据えることで引き上げられる「弁護士基準の慰謝料」の増額幅は非常に大きいためです。特約が使えない場合は、最終的な回収金の中から成功報酬などの手数料を自費で精算することになりますが、「弁護士による増額分」が「支払う弁護士費用」を大幅に上回るケースが圧倒的多数を占めるため、結果として被害者の手元に残る純利益(最終手取り額)はプラスになるケースがほとんどだからです。特約の有無に関わらず、専門家に介入してもらう実利的なメリットは極めて絶大です。

POINT
現在、多くの法律事務所が「交通事故の初回法律相談・見積もり」を完全無料で実施しています。プロの弁護士が現在の事故状況を診断すれば、「弁護士を立てることで最終的にいくらの増額が見込めるか」という確実なシミュレーションを提示してくれます。もし怪我が軽度すぎて自費での依頼が費用倒れ(赤字)になる危険性がある場合は、相談の段階でその旨を正直に教えてくれますので、被害者がリスクを背負う心配は一切ありません。特約がないからと最初から諦めず、まずはリスクフリーの無料相談を活用してみるのが賢明な解決への第一歩です。

まとめ:弁護士特約を賢く活用して正当な解決を

実態を精査してみると、日常の一般的な交通事故において、弁護士特約が完全にシャットアウトされて使えないという極端なケースは滅多にありません。

飲酒運転や無免許といった違法性の高い重大な過失がある場合や、自転車同士の事故など一部の不適用条件はあるものの、通常の手続きや双方に過失がある一般的な事故であれば、問題なく特約の恩恵をフルに享受することができます。

社内の採算上の理由から、保険会社の窓口が特約の利用に対して消極的な姿勢を見せてくる局面もあるかもしれませんが、弁護士特約は被害者ご自身が毎月の掛け金を支払って維持してきた正当な権利(オプション補償)に他なりません。法律のプロを味方に据えることで、理不尽な示談金の買い叩きを防ぎ、すべてのストレスフルな実務手続きから解放されるという絶大なアドバンテージがあるのですから、利用できる環境であれば大いにこの制度を使い倒すべきです。

確実かつ正当な補償金を獲得し、後悔のない全面解決を迎えるためにも、少しでも不安を抱えられている方は、まずは交通事故トラブルの解決に特化した実績豊かな弁護士事務所へ、お気軽にお問い合わせください。

執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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