後遺障害で自賠責保険から受け取れる慰謝料はいくらなのか

後遺障害で自賠責保険から受け取れる慰謝料はいくらなのか

交通事故の被害者になり後遺障害が残った場合、相手方から支払われる保険にはいくつか種類があります。そのうち、自賠責保険(共済)から受け取れる慰謝料はいくらになるでしょうか。

自賠責保険の後遺障害慰謝料額について解説する先生
この記事では、自賠責保険(共済)の後遺障害慰謝料額やその他の補償について解説します。

自賠責保険から後遺障害の慰謝料はもらえるのか

交通事故の被害者になった場合に自賠責保険から受け取れる慰謝料には次の3種類があります。

「入通院慰謝料」……傷害慰謝料とも呼ばれ、交通事故により医療機関に通院または入院が必要となった場合にに生じる精神的苦痛に対する慰謝料です。
「後遺障害慰謝料」……事故によるケガで後遺症が残ってしまった精神的苦痛への慰謝料。
「死亡慰謝料」……事故により死亡させられた精神的苦痛に対する慰謝料で、本人分と遺族分の2種類が支払われる。

つまり、交通事故では「医療機関での治療を行った場合」「後遺障害が残った場合」「被害者が死亡した場合」の3つのケースで慰謝料を請求できるのです。それぞれの慰謝料の金額は以下のように計算されます。

入通院慰謝料

自賠責基準では、傷害慰謝料における入通院1日あたりの金額が4,300円と決められており、
①4,300×通院期間
②4,300×実通院日数×2

の2通りの計算を行い、金額の低い方が実際に支払われる慰謝料額となります。

例:入院1か月・通院3か月(月の通院日数12日)の場合
①4,300×4か月(30日×4=120日)=51万6,000円
②4,300×(入院1か月(30日)+(12日×3か月=36日)=66日)×2=56万7,600円

となり、金額の安い①の51万6,000円が適用されます。

後遺障害慰謝料

自賠責保険の後遺障害慰謝料は等級によって以下のように金額が決められており、32万円~1,850万円となっています。

【介護を要する後遺障害の場合】
等級慰謝料額
1級(要介護)被扶養者あり1,850万円
1級(要介護)被扶養者なし1,650万円
2級(要介護)被扶養者あり1,373万円
2級(要介護)被扶養者なし1,203万円
【介護を要さない後遺障害の場合】
等級慰謝料額
1級 被扶養者あり1,350万円
1級 被扶養者なし1,150万円
2級 被扶養者あり1,168万円
2級 被扶養者なし998万円
3級 被扶養者あり1,005万円
3級 被扶養者なし861万円
4級737万円
5級618万円
6級512万円
7級419万円
8級331万円
9級249万円
10級190万円
11級136万円
12級94万円
13級57万円
14級32万円

死亡慰謝料

死亡慰謝料は本人分と遺族分に分かれており、自賠責保険では本人分の400万円に加え、遺族の人数によって慰謝料額が変わり、金額幅は400万円~1,350万円となっています。

関係者死亡慰謝料
本人分400万円
遺族1人550万円
遺族2人650万円
遺族3人750万円
被害者に被扶養者がいる場合上記+200万円

例えば、夫と妻、子どもの3人家族で事故により夫が死亡した場合、
本人分400万円+遺族2人分(妻と子ども)650万円+被扶養者(子ども)200万円=1,250万円
となります。

自賠責保険から支払われる慰謝料額は大幅に低い

以上のように見ていくと、自賠責保険による慰謝料額は数百万から1,000万を超える場合もあり、かなり高額になるように思えます。しかし、実際には自賠責基準による金額は、交通事故で請求できる慰謝料の中では極めて安く、本来もらえる慰謝料の総額よりも大幅に低い金額しか受け取れなくなってしまうのです。

交通事故の慰謝料算定方法には、自賠責基準のほかにも加害者の任意保険会社の支払い基準である「任意保険基準」、弁護士に依頼した場合に適用される「弁護士基準」があります。

例えば、後遺障害慰謝料の場合、自賠責保険では、最高の1級要介護で受け取れる慰謝料は1,850万円ですが、弁護士基準なら2,800万円と1,000万円近くプラスになります。また、死亡慰謝料に関しても同様に「一家の支柱となる人物」が死亡した場合の慰謝料は2,800万~3,600万円と自賠責保険の2倍以上です。

自賠責保険の慰謝料について解説する先生
このように、自賠責保険の慰謝料は任意保険や弁護士に依頼をして対応した場合と比べて大幅に低く、被害者にとって、受け取れる金額が大きく不足しているといえるでしょう。

自賠責保険から後遺障害慰謝料以外にもらえる補償

自賠責保険では、慰謝料のほかにも次のように、さまざまな損害賠償の受け取りが可能です。

「治療費」……ケガの治療にかかった費用で、実費での請求が可能です。
「休業損害」……事故によるケガで仕事を休んでいた期間の収入に対する補償で、休業1日につき6,100円が支払われます。
「後遺障害逸失利益」……ケガによる後遺障害のために仕事を続けられなくなったり、これまでより労働力が低下してしまったりして収入面への影響が出た場合に、将来もらえるはずだった給与等に対する補償として請求できる賠償金です。

後遺障害逸失利益
「基礎収入」×「労働能力喪失率」×「就業可能年数に対するライプニッツ係数※」によって求められ、専業主婦や子ども、高齢者などでも請求できます。
※「ライプニッツ係数」……逸失利益の計算において、被害者による利息分のもらいすぎを防ぐために用いられる指数。

「死亡逸失利益」……被害者が死亡してしまったため、将来働いて得られるはずだった給与等の収入が失われてしまった損害に対する賠償金です。

死亡逸失利益
「基礎収入」×(1-「生活費控除率※」)×「労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」で計算され、専業主婦や学生であっても請求できます。
※「生活費控除率」……死亡により必要なくなった被害者の生活費相当分を逸失利益の請求から差し引くための控除。

「通院交通費」……ケガの治療で医療機関に通うためにかかった交通費で、実費で請求できます。
「入院雑費」……入院中に必要となる日用品などの購入費用で、1日あたり1,100円が支払われます。
「付添看護費」……入院や通院、自宅での看護が必要になった場合に、入院1日につき4,100円、通院1日につき2,100円が支払われます。

 なお、自賠責保険は対人での損害のみを補償する保険のため、車の修理費などの物損部分は補償を受けられません。

自賠責保険だけでは後遺障害慰謝料はかなり少ない

見てきたように、交通事故の被害に遭い、後遺障害が残った場合、自賠責保険からは入通院慰謝料や後遺障害慰謝料などの慰謝料を受け取れるほか、治療費、休業損害、逸失利益など、さまざまな補償を受けられます。

しかし、ほかの算定基準と比較して自賠責保険から支払われる賠償金は低額で、交通事故の損害賠償で非常に高額となる弁護士基準と比べると慰謝料が半分~3分の1程度の金額になるケースも少なくはありません。交通事故の慰謝料はケガの治療や今後の生活に関わる大切なお金です。

適正な慰謝料を受け取るためには、弁護士を立てて交渉を行い、弁護士基準で慰謝料を請求できるようにするのが望ましいといえるでしょう。

コメントする女性
交通事故の被害になり、慰謝料等の損害賠償を請求したいと考えている方は、自賠責保険のみで慰謝料を請求するのではなく、一度、弁護士に相談してみてください。

自賠責保険とは

改めて自賠責保険とは、交通事故による被害者を救済し、発生した事故に対する最低限の補償を行うための保険を「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)」といいます。

自動車事故の保険には大きく分けて加入が義務付けられている自賠責保険と任意で加入する任意保険の2種類があり、自動車を運転する全てのドライバーに加入することが求められている自賠責保険は法律によって義務化されており、強制保険とも呼ばれています。

自賠責保険により、自動車の運転によって他人を負傷させたり、死亡させたりした場合に、被保険者(保険の補償を受ける対象、具体的には事故の加害者で車の保有者または運転者)が負うべき損害賠償責任に対する経済的な負担が補填され、保険金等の支払いが行われます。

POINT
自賠責保険で補償の対象になるのは対人損害(人身損害、人損)のみであり、車の修理代など物損(物件損害)は補償を受けられません。そのため、自賠責保険から保険金を受け取れるのは人身事故の場合のみとなっています。

交通事故による後遺障害とは

交通事故の被害に遭い、ケガのために治療後も何らかの症状が残ってしまった状態を「後遺障害」と呼び、後遺障害と認められると自賠責保険から一定の保険金が支払われることになり、慰謝料などの補償も受けられるようになります。しかし、医師から後遺症が残るといわれた場合でも、必ずしも後遺障害の認定されるとは限りません。

日常生活では病気やケガの後に症状が残る状態を指して「後遺症」という言葉が使われますが、交通事故における後遺障害と後遺症は厳密には異なります。後遺障害は交通事故による後遺症のみを指す用語で、次のような定義が決まっており、以下の4つを全て満たす場合のみ認定を受けられます。

  1. 交通事故のケガによる症状が治療後も治りきらずに残存しており、将来的にも回復が難しいと考えられる。
  2. 障害と交通事故の間に医学的な相当因果関係(AとBの間に社会通念上の原因と結果の関係性が認められること)が証明できる。
  3. 後遺症の存在により労働能力の低下または喪失が生じている。
  4. 後遺症の程度が「自動車損害賠償保障法施行令」に規定される1~14級までの等級のいずれかに該当する。

つまり、単に後遺症が残るだけではなく、交通事故との関係性がはっきりしており、労働力に影響が出ていて、自賠責施行令に定められた等級に当てはまっていなければ後遺障害の認定は受けられないのです。

後遺障害の等級とは

後遺障害には1級~14級までの等級が定められており、それぞれで該当する症状や補償の内容が異なります。後遺障害等級は数字が小さいほど症状が重く、補償も手厚くなるのが特徴で、自賠責保険による後遺障害慰謝料も等級ごとに決められています。

後遺障害の認定とは

交通事故による後遺障害の補償を受けるためには、所定の機関(「損害保険料率算出機構」の「自賠責損害調査事務所」)に申請を行い、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

等級に該当する後遺症が残っていても自動的に認定されるわけではなく、申請を行っても認められず「非該当」になってしまえば慰謝料などは受け取れません。後遺障害の申請は「書面主義」が採用されており、審査は提出した申請書類の内容のみで行われます。

そのため、書類作成時は不備のないようしっかり行わなければならず、神経症状のように外見から判断しづらい障害の場合は、レントゲンやCT、MRIなどの画像資料や神経学的検査の結果などを添付する必要があります。

コメントをする女性
後遺障害の申請方法には次の2種類があります。

事前認定

相手方の任意保険会社に診断書などを送付して手続きを任せる方法です。面倒な書類作成などをすべて保険会社にやってもらえるため、時間や手間などの負担を最低限に抑えられ、画像資料など必要な医療情報の取得費用も保険会社が負担してくれます。

 反面、手続きが不透明になりやすく、認定を受けられなかったり、思っていたより低い等級で認定されてしまったりする恐れがあり、また、保険金が一括支払いになるため自賠責保険の前払い制度が利用できなくなるため注意が必要です。

被害者請求

相手方の自賠責保険会社を通じて、被害者自身が自分で申請を行う方法です。自分で全ての手続きを行うため、透明性が高く、納得のいく申請が行えますが、その分、書類作成などの手間がかかり、医療情報を入手するための費用も自己負担となります。

被害者請求について解説する先生
被害者請求では、自賠責保険の前払い制度が利用でき、示談が成立する前でも保険金の一部が受け取れます。

まとめ

交通事故でケガの治療後も何らかの症状が残ってしまった場合、後遺障害等級の認定を受けると、自賠責保険から後遺障害慰謝料や逸失利益などの補償を受けられるようになります。

しかし、自賠責保険から支払われる慰謝料や賠償金は、弁護士に依頼した場合と比べて非常に低く、被害者にとって十分な金額とはいえないのです。交通事故の被害者に遭われた場合は、弁護士への相談・依頼を行い、弁護士基準での慰謝料請求ができるようにすると良いでしょう。

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