Googleサジェスト機能とは
検索したいキーワードを入力したとき、検索窓の下に自動的に表示される検索候補のことを「Googleサジェスト」といいます。
サジェストには英語で「提案する」という意味があり、よく一緒に検索されている言葉をGoogleが提案してくれる機能です。2語目、3語目でのワードが自動で出てくるため、検索が容易となり、検索エンジンの利便性を高めています。
Googleサジェストが表示される仕組み
Googleサジェストはランダムに表示されるわけではなく、いくつかの基準によりGoogleが蓄積したデータをもとに決められています。
表示基準になるのは、
- 検索ボリューム(キーワードが検索エンジンで検索されている回数)
- 多くの人が検索しているか
- キーワードを含むサイトの数
- ユーザーが検索した場所
- ユーザーの検索履歴(他のユーザーが過去に検索したとき、一緒に検索したワードや直前に検索したワードなど)
とされています。
サジェストがもたらす影響
サジェストされたワードは一般的に閲覧者にクリックされやすい為、企業名や商品名を載せることができれば、知名度や販売数を上げる効果があると考えられます。
反面、サジェストにネガティブなワードばかりが表示されてしまうこともあり、「サジェスト汚染」といわれて、検索者に悪い印象を与える恐れがあります。
Googleサジェストにネガティブワードが表示される理由
どうして、サジェストにネガティブなワードが表示されるのでしょうか。
サジェストは自動で表示される
サジェストは検索アルゴリズムが自動生成で表示しており、人為的に操作されているものではありません。Googleが意図してこうしたワードを表示させているわけではないですし、誰かが評判を落とすために工作しているわけでもないのです。
サジェストの表示基準には、「検索ボリューム」のほかに「多くの人に検索されていること」という条件があり、少数の人間が何度も同じキーワードで検索してボリュームを増やしたとしても反映されにくく、工作が難しくなっています。
つまり、サジェストに「企業名+ブラック」と表示される場合は、多くの人が実際にその企業の名前とブラックというワードを一緒に検索していることになります。
事実かどうかに関わらずサジェスト汚染が起きることも
このとき、「企業名+ブラック」で検索している人は、必ずしもその企業をブラック企業だと考えているわけではありません。
例えば就職活動中の人が「今度面接を受けるこの会社、もしかして、ブラック企業だったりしないかな?」と不安に思って検索しているケースも多いと考えられます。
それでも、ブラックと一緒に検索する人が多くなれば、検索アルゴリズムからはニーズが高いと判断されてしまいます。サジェスト汚染は必ずしもユーザーの悪意によって起きているとはいえず、検索者が多くなれば、事実と異なる内容がサジェストに表示されてしまうこともあります。
Googleサジェストのネガティブワードによる悪影響
サジェストにネガティブワードが表示されるようになると、それが事実であるかどうかに関わらず、検索した人に悪いイメージを与える可能性があります。
検索者に悪影響を与えるサジェストの例
個人名に「犯罪者」「逮捕歴」「少年院」などのキーワードがセットになると、実際に罪を犯したかどうかに関係なく、社会的な信用が低下します。
就職などで不利になったり、離婚や婚約破棄の原因になったり、賃貸住宅への入居を断られるなど日常生活にも悪影響を及ぼす可能性がありますし、周囲からも白い目で見られ、家族や子どもにも影響が出るかもしれません。
「不倫」や「整形」「マルチ」といったプライベートに関するキーワードも社会的な信用低下につながります。プライベートな事柄だけに真偽がわかりにくく、結婚や就職、会社や学校での生活に影響を与えるだけでなく、本人にも大きな精神的ショックを与える可能性があります。
被害が深刻化すると、ネガティブな情報がネット上に残り続け、デジタルタトゥー化することも考えられます。
検索者は「この企業はブラック企業なのか」とよく調べもしないで思い込んでしまいます。もし就職活動中の検索者ならこの企業に応募するのをやめてしまうかもしれず、採用活動に影響を与える可能性があります。
企業イメージの低下にもつながり、外部の人間はもちろん、実際にその企業で働いている人たちのモチベーションを低下させる恐れもあるでしょう。離職率が高くなり、優秀な人が離れていく可能性もあります。
「セクハラ」「パワハラ」「過労死」などのワードにも同様の悪影響が考えられます。
本当に倒産する可能性があるかどうかに関係なく、検索者に「この企業は財務状況が悪くなっているかもしれない」「倒産するかもしれない」というイメージを与えます。
その結果、顧客離れや新規顧客の獲得が難しくなって売り上げが下がったり、信用が低下して融資を断られることで本当に財務状況が悪化してしまう可能性があります。
ネットでお店や商品の名前を検索したとき、「トラブル」「詐欺」「悪徳」などのワードが表示されると、実際には何もトラブルを起こしていなかったとしてもお店・商品の信用やブランドの低下、顧客離れにつながります。
食品で異物混入事件が発生すると、多くの人が「商品名+異物」などのワードで検索するため、商品名を入れるだけで「異物」や「異物混入」といった言葉がサジェストされるようになります。
Googleサジェスト削除の基準
検索で悪影響のあるサジェストが出てくる場合、そのキーワードを削除することは可能なのでしょうか。ここからは、Googleサジェストの削除基準について説明します。
サジェストの削除
Googleサジェストは表示されているキーワードに問題があることをGoogleに報告すれば削除される可能性があります。
Googleでは検索エンジンを便利に使用できるように、違法なコンテンツなどが表示されないようオートコンプリートポリシーを定めています。このポリシーに基づき、危険なコンテンツやハラスメントコンテンツ、露骨な性表現を含むコンテンツ、中傷にあたるコンテンツなどの表示を防ぐようになっています。
オートコンプリート固有のポリシーもあり、選挙に関する候補や健康に関する候補とともに、「名前を示された個人に関連する微妙で中傷的な言葉」が含まれています。名前を出された個人に対するいじめや脅迫に結びつくと考えられるものは検索候補から省かれるとされています。
Googleサジェストを削除する方法
Googleサジェストを削除する方法に関しては、Googleに申請を行う方法や裁判所を通じて法的手続きにより削除する方法などいくつかの方法があります。
専用フォームからGoogleに削除申請を行う
Google公式サイト内にある「法律に基づく削除に関する問題を報告する」フォームから削除申請が可能です。
フォームに「検索したキーワード」や「不適切と考える予測キーワード」「権利侵害にあたるコンテンツが表示される国とその国の法律に従って検索候補が違法になる理由」といった問題のあるコンテンツについての情報と「居住国・姓名・会社名・組織名」など申立者の情報を入力して送信します。
検索画面のスクリーンショットとデジタル署名も必要になります。申請手続き自体はそれほど難しいものではないのですが、コンテンツが表示される国(この場合は日本)の法律に照らして、サジェストの内容がどのように権利侵害しているのかを明確に説明する必要があります。
検索画面から不適切な候補を通報する
申請用フォームを利用する方法のほか、Googleでキーワードを入力したとき、サジェスト一覧の右下に表示される「不適切な検索候補の報告」からでも削除申請を行うことができます。ここをクリックすると、不適切な検索候補とその理由を問う選択肢が表示されるので、それぞれ当てはまるものを選んで送信します。
スマートフォンの場合は、検索候補を長押しすると「報告する」のウィンドウが出てきます。簡単な手続きで削除申請が行えますが、あくまでも第三者としての報告になり、フォームと違って、どのように法律に反しているか説明する欄もありません。
元の記事を削除する
サジェストの内容はキーワードが含まれるサイトの数によっても変化するため、検索候補が出てくる元になった記事を削除することでもサジェストからネガティブワードを排除することができます。元記事の削除には3つの方法があります。
1つ目は、記事が投稿されているサイトやSNSの管理者に連絡し、削除を依頼する方法です。
サイトによっては削除申請フォームを用意しているところもありますが、対応は運営によってまちまちで、なかには連絡してもまったく返信が来ず、削除もされない場合もあります。
2つ目は、プロバイダに送信防止措置依頼書を提出し、削除を依頼する方法です。
依頼書を受け取ったプロバイダは、記事の内容を審査し、権利侵害にあたると考えられる場合には削除を行います。ただ、プロバイダは表現の自由を守る必要もありますし、発信者の意見も聞くことになるため、この方法も必ず記事が削除されるとは限りません。
3つ目は、裁判所に削除仮処分の申立を行う方法です。
仮処分とは、裁判で結果が出るまで待つ時間的余裕がないときに、裁判所が決める暫定的な措置で、判決と同様の効果をもっています。通常の裁判が半年から1年ほどかかるのに対して、仮処分は申立から発令までは通常1~2か月程度と、裁判よりも早く結果が出るのが特徴です。
削除申請には専門家への相談を
Googleサジェストの削除には法律知識が必要になる場面が多く、実際に削除申請を行う場合には、弁護士など法律の専門家に相談しながら手続きを進めていくのが安心で効果的といえます。
削除フォームの記入くらいなら自分でもできるように思えますが、サジェストの内容が法的にみて、どのように権利を侵害しているか主張するためには法律知識が必要不可欠になります。
自分では違法と思っていても、専門家の観点では主張が難しいと考えられるケースもあるため、自己判断だけに頼らず、弁護士の意見を聞くほうが法的により有効な申請が行えます。
Googleサジェストを削除できない場合の対策
Googleサジェストを削除するための方法について紹介してきましたが、検索候補を確実に表示させなくするためにはGoogleに削除申請を行う方法しかなく、Googleの判断によっては削除されないこともあります。
一般的に、事実無根であれば中傷と判断されて削除されやすいのですが、サジェストや元記事の内容が真実である場合には、表示させる必要性があると認められるため、削除するのは難しくなっています。
もし、サジェストが削除できない場合、どのような対応をとればいいのか。ここからは、もしサジェストを削除してもらえなかった場合にはとれる対策について解説します。
訴訟によるサジェストの削除は難しい
Googleがサジェストの削除を認めないのであれば、裁判に訴えて削除させればよいのではと考える方もおられるかもしれませんが、裁判によってGoogleサジェストを削除するのは難しくなっています。
過去の裁判では「被害者側の不利益がサジェストを削除することで検索サービス利用者が受ける不利益を上回るとはいえない」として、サジェストのもつ公共性を重視する判決が出ています。
非表示を請け負う専門業者に依頼する
法的な削除が難しい場合には、サジェスト汚染対策を請け負ってくれる専門業者に依頼するのも1つの方法です。
Googleサジェストでは、表示されるサジェストワードの枠が最大8個までと決まっています。サジェスト汚染対策業者では、これを利用して、他のページの検索順位を上げ、悪評の書かれたページが検索されにくくすることで、ポジティブキーワードをサジェストに表示させ、現在存在しているネガティブキーワードをサジェスト枠から追い出す対策を行ってくれます。
費用は月5~10万円ですが、Googleサジェストは削除しても復活する可能性があるため、1回限りではなく、ある程度の期間、継続的にサービスを利用する必要があります。
サジェストが浄化されるまでには、更新頻度等の関係から数週間から2か月ほどかかるのが普通です。
削除業者の利用には注意が必要
対策業者の中には、クライアントの代わりに検索エンジンに削除申請を行ってくれるところも存在しています。ただ、こうした業者を利用する場合、弁護士でない者が法律事務を代行するのは非弁行為に当たる可能性があるため注意が必要です。
弁護士法では弁護士以外が報酬を得る目的で、法律事件に関する代理や仲裁、和解などの法律事務を行ってはならないと定めています。法律事務の範囲は、削除仮処分のように裁判所に訴えを起こす場合だけとは限らず、過去には、サイトの通報フォームを利用した削除依頼でも法律事務に当たるとする判決が出ています。
元の記事が残っているとサジェストが復活することも
業者による対策等で、一時的にサジェストからネガティブワードを無くすことはできますが、元になった記事がそのままだと、サジェストが復活してしまう可能性が残されています。業者によるサジェスト対策には限界があり、やはり、ネガティブな記事を削除するのが一番の対策といえます。
記事の削除には削除仮処分の申立が必要になりますが、こうした法律事務を代行できるのは弁護士だけです。そのため、元記事の削除をお考えの場合は、弁護士など法律の専門家に相談されることをおすすめします。
削除仮処分の費用の目安は、以下のようになります。
- 弁護士への相談費用……30分~1時間で5000円~10000円
- 仮処分申立の費用……20万~30万円(着手金、成功報酬など)
- 印紙代等……2000円程度
- 担保金……20万~30万円(仮処分申立の際、一時的に供託。金額は裁判所によって異なる)
こちらはあくまでも目安で、事務所によっては着手金なしで削除に成功した後で報酬を支払うところや、反対に着手金のみで成功報酬のないところなど様々です。依頼する場合は事前に各法律事務所の料金体系を調べておくようにしてください。
弁護士に相談すれば、記事の削除だけでなく、投稿者を特定して慰謝料の請求訴訟を起こすことなども可能になります。ネガティブなGoogleサジェストにお悩みの場合は、弁護士など専門家への相談を考えてみてください。
まとめ
Googleサジェストの汚染を放置しておくと、社会的な信用の低下や業績の悪化など取り返しのつかない問題を引き起こす恐れがあります。サジェスト自体を削除することは難しいですが、元記事の削除によりネガティブワードを非表示にすることができます。
記事を削除する際は、削除仮処分など法的手続きが行える弁護士など法律の専門家に相談するようにしてください。