飲食店への悪い口コミは名誉毀損や営業妨害になる?法に触れるのはどんな事例か

飲食店への悪い口コミは名誉毀損や営業妨害になる?法に触れるのはどんな事例か

削除請求の訴求バナー

飲食店を探すとき、多くの方が利用するインターネット上の口コミサイトやレビューサイト。それだけに、低評価の口コミがあると、店の売り上げにも影響する可能性があります。

この記事では、放っておくと名誉毀損や営業妨害に結びついてしまうような悪い口コミの対処法を解説します。

飲食店の口コミサイトの影響とは

インターネット上にマイナス評価の口コミが投稿されてしまったとき、一番懸念されるのは、店舗売り上げへの悪影響です。

例えば「食べログ」や「ぐるなび」、「ホットペッパーグルメ」といった飲食店を専門に扱った口コミサイトやレビューサイトが多数あります。ほかにもGoogleマップでも店舗の口コミを書き込むことができますし、最近ではSNSで自分が利用した店の感想を投稿する人も増えています。

現在はユーザーのなかでグルメサイトの口コミに対する信頼が低下してきたともいわれますが、最近のアンケートでも、依然として7割近くが飲食店選びの際に口コミサイトを参考にすると答えています。

また、GoogleマップやSNSなど他の情報源を利用する頻度が高くなっており、やはり多くのユーザーは他人の口コミや評価をチェックして飲食店を選んでいるといえるでしょう。

口コミの風評被害が与える悪影響

口コミサイトに「美味しくなかった」「価格がぼったくり」「店員の態度が悪い」など店の味やサービス、衛生面などで悪い口コミが投稿されていると、店の客足や売り上げに影響を与える可能性があります。

こうしたサイトの多くは、飲食店の検索や予約もできるようになっており、これから食べに行くお店を探すユーザーもたくさん利用します。

初めてのお客さんなら利用するのをやめたり、他の店に行ってしまったりするかもしれませんし、何度も悪い口コミが投稿されるようだと、常連客が離れてしまうこともあります。

店の社会的なイメージダウンにもつながり、テレビなどマスコミの取材が来たり、雑誌の特集で紹介してもらったりといった宣伝の機会が失われることも考えられます。こうした口コミの問題点は、見る人には真偽が分からないところです。

POINT
全く身に覚えのないものであっても、風評被害によって損害を受けることがあるため、ネット上の悪い口コミは放置せず、きちんと対処することが望ましいといえます。

飲食店への悪い口コミは罪になるのか

ネット上の悪い口コミが何らかの犯罪に該当するのであれば、投稿者への訴訟など、様々な対処がとれるようになります。口コミを書くこと自体が法に触れるケースはあるのでしょうか。

成立する可能性のある犯罪

口コミサイトやSNSで飲食店への悪い口コミを投稿した場合に成立する可能性のある罪には以下のものがあります。

名誉毀損罪

大勢の人が見たり聞いたりできるところで、他人の名誉を貶める発言や書き込みをしたときに成立する犯罪です。違反すると、3年以下の懲役・禁錮(拘禁されるが刑務作業がない刑罰)または50万円以下の罰金に処せられます。

名誉毀損の成立条件の1つに「事実の摘示」があり、「料理がまずかった」「店員の態度が気に入らない」など何らかの具体的な内容に基づいて悪い口コミを書いた場合に適用されます。

普段の生活で「事実」というと「真実」に近い意味がありますが、名誉毀損における「事実」は具体的な内容を意味し、本当か嘘かは関係ありません。嘘の内容を投稿した場合はもちろん、本当にあった内容を投稿していたとしても、それが店の社会的評価を低下させるものであれば罪に問われます。

侮辱罪

大勢の前で他人を侮辱した場合には適用される罪で、拘留(刑務作業のない刑罰で短期のもの)または科料(1万円未満の罰金)に処せられます。名誉毀損と似ていますが、こちらは具体的な事実を示す必要がなく、「バカ」「死ね」など単なる悪口に適用されます。

信用毀損罪

嘘の情報を流して店の信用を低下させたときに成立する犯罪で、3年以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられます。「料理の中に虫が入っていた」など、店の信用を傷つけるような嘘の情報を流した場合に信用毀損罪に問われる可能性があります。

業務妨害罪

店の業務を妨害する口コミを投稿した場合に適用され、信用毀損罪と同じく、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

業務妨害には2種類あり、嘘の情報を流して業務に支障を起こすものは偽計業務妨害と呼ばれます。「料理に虫が入っていた」という口コミは、店の信用を落とすだけでなく、実際に客足が減る可能性もあります。店の営業妨害にもつながっているため、信用毀損だけでなく、偽計業務妨害も成立するといえるでしょう。また、実際に売り上げが低下する必要はなく、営業妨害につながる恐れのある口コミであれば、偽計業務妨害に該当します。

もう1つは威力業務妨害といわれるもので、「営業を止めないと店に火をつける」など何らかの「威力」を使って相手を脅し営業妨害を行ったときに成立します。

威力には「他人の意志を押さえつける勢力」という意味があり、店内や店の前で大声を出して騒ぐなどの行為も威力にあたります。

どんな口コミが違法なのか

口コミサイトに飲食店に対する口コミを投稿するのはもちろん、法律上何の問題もない行為ですし、批判的な口コミを投稿したとしてもすべてが違法になるわけではありません。

店を否定する口コミであっても、表現の自由があるため、すべてが犯罪になるわけではないのです。法に触れる口コミと触れない口コミにはどのような違いがあるのでしょうか。

公益性があるか

口コミが違法といえるかどうかの大きな基準として公益性が上げられます。公益とは文字通り、公共の利益を意味します。口コミを投稿することで、サイトを閲覧した人が店の味や店員の接客に関する正確な情報を入手できることは社会一般の利益にかなうと考えられ、批判的な内容であっても公益性が認められます。

名誉毀損の場合は、内容が事実でも罪に問われるケースがありますが、このときも公益性があると判断されれば罪にはならないと考えられます。判断の目安は、口コミ内容が、他の利用者の参考になるよう店に対する評価を行っているかどうかといえるでしょう。

 嘘や悪口など、単に店の評判を落とすことが目的の口コミには公益性があるとはいえず、犯罪に該当する可能性が高いといえます。

事実に反する内容

特に味に問題があるわけでもないのに「あの店はまずい」と投稿したり、何もなかったのに「料理に虫が入っていた」と書き込んだり、店の評価を落とす目的で、ありもしないデタラメな口コミを投稿すれば、もちろん名誉毀損などの犯罪に問われると考えられます。

誹謗中傷

実際に料理が気に入らなかったり、店員の接客が悪かったとしても、「詐欺」「ボッタクリ」「行かないほうがいい店」「潰れてしまえ」などの書き込みは批判の範囲を越え、誹謗中傷に該当する場合があります。

ほかにも、従業員に対する悪口やプライバシーを侵害するような投稿は誹謗中傷にあたるといえます。

悪質な口コミ

内容自体は誹謗中傷とまではいえなくても、同じ店に何度も低評価の口コミを投稿するなどの行為は嫌がらせ目的で悪質と考えられるため業務妨害等にあたる可能性があります。

営業妨害となる悪い口コミに取れる対策

次に、口コミサイトで自分の店に悪い口コミがつけられたとき、とることのできる対策について解説していきます。

違法行為に当たるかどうか?

悪い口コミに対処する場合、対象の口コミが法律上の違法行為にあたる場合は投稿者に対して訴訟など法的措置を取ることができます。

しかし、なかには店の評価を落としていても、違法とまではいえない口コミも存在します。その場合は、高評価の口コミを増やすことで悪い評価を希釈化し、口コミの影響を最小限に抑えるのが効果的です。

星1つの評価は違法にならない?

グルメサイトやGoogleマップでは、口コミの文章を記入しなくても、星の数だけで店を評価することができ、星1つのレビューを投稿すれば店の全体的な評価まで低下することになります。しかし、こうした星1つのレビューを罪に問うことは難しいといえるでしょう。

名誉毀損は成立条件として「具体的な事実」を必要としています。星1つだけの評価だと、具体性がないと判断されるため、条件に該当せず、違法行為にならない可能性が高いです。

POINT
嘘や悪口を書いたわけでもないので侮辱罪や信用毀損罪等にあたるともいいにくく、仮に訴訟や発信者情報の開示請求を行ったとしても認められない可能性が高いと考えられます。

高評価の口コミを増やして希釈化する

こうした低評価の口コミには、高評価の口コミを増やして全体の評価を上げることで対処します。といっても、多くのサイトでは自作自演の口コミは禁止されているので、知り合いに頼んだり、業者を雇って高評価の口コミを書いてもらうのはやめましょう。

高評価の口コミは、地道な営業を行い、多くのお客様に満足してもらうことで自然と増えていくものです。評価の高い口コミが増えることで全体的な星の数も高くなり、(悪質な)低評価のレビューは相対的に希釈化されていきます。

悪質な口コミには法的措置も検討

もし、悪意ある投稿が故意に繰り返されるようであれば、訴訟などの法的措置も視野に入れて検討を行います。

とはいえ中には、名前を変えて同じ店に何度も低評価の口コミを投稿する悪質なユーザーも存在しており、こういった相手には、無視したり説得しようとしても上手くいかないケースが多いです。

執拗な誹謗中傷に悩まされている場合には、一度、弁護士など法律の専門家に相談するようにしてみてください。

飲食店の悪い口コミの削除方法

自分の店に書かれた口コミが明らかに違法行為にあたると思われる場合、

  • 口コミの削除依頼
  • 開示請求による犯人の特定
  • 警察への被害届の提出
  • 加害者への訴訟

といった対処法をとることができます。

サイト管理者への削除依頼

悪い口コミが残ったままだと、ネット上にネガティブな評価が残り続けることになるため、最初に口コミの削除を行います。

多くのサイトでは運営への問い合わせができるフォームを設けているので、そこから依頼してください。ほとんどのグルメサイトにはガイドラインがあり、これに反すると判断できる口コミであれば削除してもらえるでしょう。

 しかし、明確に違反しているといえない口コミや、サイト管理者が積極的に応じてくれないケースもあり、必ず削除してもらえるとは限りません。

発信者情報開示請求で犯人を特定

発信者情報開示請求とは、プロバイダ責任制限法第4条に基づく制度で、口コミの投稿者を特定することができます。

グルメサイトの口コミは匿名が基本のため、誰が書いたものかわからないのが普通です。しかし、犯人が判明していないと訴訟を起こすこともできませんし、警察も積極的に動いてくれません。そのため、まずは開示請求によって犯人を突き止めます。

開示請求は、通常、サイト運営者と投稿者が利用しているプロバイダに対して2回実施する必要があります。

サイト運営者への開示請求

まずはサイト運営者に開示請求を行い、加害者が利用しているプロバイダの特定に必要なIPアドレスとタイムスタンプの情報を開示してもらいます。任意で開示してもらえればいいのですが、個人情報に当たるため、消極的な管理者も多いのが現状です。その場合、削除依頼と同様、裁判所に開示仮処分の申立を行います。

口コミの内容が法律上、名誉毀損などの犯罪に該当するか、ある程度の違法性をもっているかが、開示が認められるかどうかの条件になります。開示仮処分にかかる期間は1か月程度が目安です。

無事、仮処分が認められれば、開示された情報をもとに犯人が契約しているプロバイダを特定できます。

プロバイダへの開示請求

続いて、特定したプロバイダへの開示請求を行います。請求を受けたプロバイダは投稿者に開示を認めるかどうかを尋ねる書面を送付しますが、加害者が承諾する可能性は低く、また、プロバイダ自身も個人情報を無闇に開示することには消極的のため、ここでも任意での開示は難しいと考えたほうがいいでしょう。

その場合は、ここでも法的手続きによって開示を求めます。プロバイダへの開示請求では仮処分ではなく、通常の訴訟を行います。ここで勝訴すれば、氏名や住所といった個人情報が開示され、犯人を特定することができます。

開示請求訴訟にかかる期間は、通常8か月から10か月が目安です。

プロバイダへの削除禁止仮処分

プロバイダに開示を求める場合、注意しなければならないのが、アクセス記録の保存期間です。ログは一定期間が経つと消され、もし削除されてしまうと、裁判に勝っても情報がないので投稿者の特定が不可能になります。

POINT
アクセス記録の保存期間はプロバイダによって様々ですが、一般的に3か月から6か月と裁判期間より短くなっています。そのため、プロバイダへ開示請求を行うときは、同時に、裁判所にアクセスログを保存するための削除禁止仮処分を申立てます。

申立は一般的に東京地裁に行い、決定までにかかる期間は2~3週間です。仮処分が出されれば裁判が長引いてもデータが消される心配がなくなるため、プロバイダに開示請求を行う際には合わせてこちらも実施するようにしてください。

投稿者を法的に訴えるば場合

犯人を特定した後は、刑事・民事の両面から法的責任を追及でき、刑事告訴や民事裁判での慰謝料請求が可能になります。

民事裁判で慰謝料を請求する

名誉毀損や業務妨害などの行為は民法上の不法行為に該当するため、加害者に対して損害賠償や慰謝料の請求が可能です。

一般的な慰謝料の相場は以下になります。

  • 名誉毀損……50万~100万(被害者が個人なら10万~50万円が相場。事業者のほうが金額は高くなる傾向にあります)
  • 侮辱罪……1~10万円
  • 信用毀損罪、業務妨害罪……1~50万円

上記はあくまでも相場であり、実際には口コミの内容や悪質さによっても変わってきます。詳しい金額については弁護士に相談するようにしてください。

警察に被害届や告訴状を出す

もう1つが刑事責任の追及です。警察に被害届や告訴状を提出して告訴することで、捜査がはじまります。

法律上の犯罪に該当すると判断されれば、犯人が逮捕されたり、起訴されて刑事裁判を受けることになり、有罪になれば懲役や罰金など刑罰に処せられます。

弁護士など法律の専門家への相談を

上記の手続きは、専門的な法律知識を必要とするものが多く、一般の人が自分だけで行うのは難しいといえるでしょう。そのため、口コミ投稿者に対する法的措置を検討している飲食店経営者の方は、一度、弁護士など法律の専門家に相談されることをおすすめします。

相手を訴えようと思っても、そもそも口コミの内容自体が法律上問題にならないケースもあります。弁護士なら専門家の立場から的確なアドバイスをもらえますし、仮処分申立や訴訟、警察への告訴状提出など様々な場面で力を借りることも可能です。

悪質な口コミに悩んでいる場合は、弁護士など法律の専門家に依頼し、相談しながら対応を進めていってみてください。

飲食店の悪い口コミが削除されない場合はどうする?

加害者を特定して訴訟を起こせたとしても、問題の口コミの削除ができなければ、ネット上に悪評が残り続けることになります。最後に、そうした消せない口コミに対してできる対処法を説明します。

口コミに返信する

グルメサイトの口コミには、ほとんどの場合、お店側から返信することができるため、低評価の口コミに対しても、普段から丁寧な返信を返すようにしてください。

批判的な口コミも見方によっては、店を改善するための貴重な意見といえます。不満をもった点に対しても誠意をもった説明を返すことで、ユーザーの心証が好転するかもしれません。

また、不都合な内容にもきちんと返信することで、口コミを見た他のユーザーが、店に対するネガティブな印象をもつことも避けられます。普段から口コミに対する積極的な返信を心がければ、ユーザーからも好印象をもたれ、集客に結びつくこともあるでしょう。

良い口コミを増やす

悪い口コミが目立ってしまうお店は、そもそも投稿されている口コミの数自体が少ないことも考えられます。そのため、口コミの総数を増やし、よい口コミを集めていく必要があります。

といっても、自作自演の口コミは発覚したときのペナルティが大きくやるのは危険です。チラシや店内のポスター、接客時のトークなどで口コミの投稿を呼びかけるなどして、来店したお客様に口コミを投稿してもらえるように誘導するほか、宣伝・広告に力を入れることも大切です。

店に来るお客様が多くなれば、自然と投稿される口コミの数も増えていくでしょう。

どうしても口コミを消したいなら削除仮処分を

どうしても低評価の口コミが残っているのが許せない、という場合には、裁判所に削除仮処分の申立を行って削除してもらう方法があります。仮処分とは裁判結果が出るまで時間的余裕がない場合に裁判所が出す暫定的措置で判決と同様の効果をもちます。

通常の裁判が半年から1年ほどの期間を要するのに比べ、削除仮処分は通常1~2か月と非常に早く結果が出るのが特徴です。申立の後、店側の主張が認められれば、裁判所から仮処分が発令され、口コミが削除されます。

POINT
なお、口コミを削除してしまうと、後の開示請求や裁判の際に証拠がなくなる恐れがあるため、削除するときは、あらかじめ口コミをプリントアウトしたりスクリーンショットにとっておくなど証拠を残すようにしてください。

まとめ

グルメサイトやGoogleマップ、SNSにおける飲食店への低評価の口コミは集客にも影響し、決して無視できないものです。低評価の口コミがすべて問題というわけではありませんが、なかには、営業妨害といえる酷いものも存在します。

悪質な口コミに対しては、削除依頼を行い、開示請求によって犯人を特定し、訴訟を起こすといった対処も必要になってきます。各手続きには専門的な法律知識が不可欠になるため、悪い口コミにお悩みの場合は、一度、弁護士など法律の専門家に相談してみることをおすすめします。

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