インターネット上の誹謗中傷は3年で時効?法律の定めについて解説

インターネット上の誹謗中傷は3年で時効?法律の定めについて解説

時効の期間は罪名によって異なります。また、時効とは別に告訴期間の制限といった制度も存在しており、訴えを提起する際はできるだけ早い対応が求められます。

この記事では、誹謗中傷の対応方法を知りたい人向けに、罪名ごとの時効制度を紹介します。

誹謗中傷には時効がある?

インターネット上で誹謗中傷を受けた場合、加害者に対して刑事上の責任追及をする刑事告訴や民事上の慰謝料請求をすることができます。

ただし、これらの請求権を行使する前に、一定期間が経過してしまうと訴えを提起できなくなる制度がいくつかあります。それらの制度について以下に解説します。

告訴期間の制限

成立する犯罪が、名誉毀損罪などの親告罪の場合、告訴がないと公訴できません。そして、親告罪の告訴は、犯人を知った日から6ヶ月以内に告訴期間が限定されており、これを経過した場合は告訴することができなくなります。

注意点として、告訴期間の起算点は「犯人を知った日」ですが、これは相手の住所や氏名などを詳細に認識していることまで要求されません。

そうであれば、被害者が、投稿者のアカウントなどの情報を知ったときに、告訴期間のカウントが始まるように思えます。

ただし、告訴期間が進行するには、犯罪行為が完了している必要があります。すなわち、投稿が残っている間は犯罪行為が継続しているとみなされます。

したがって、投稿が削除されない間は、投稿者の情報を入手していたとしても、告訴期間としてカウントされることはありません。

公訴時効

公訴時効とは、犯罪行為の発生を起算点とし、そこから一定の期間が経過してしまうと、公訴の提起ができなくなる制度です。

公訴時効が成立するまでの期間は法定刑によって異なり、名誉棄損罪だと投稿日から3年、侮辱罪だと投稿日から1年で公訴時効が成立してしまいます。

民事上の消滅時効

民事裁判手続きにおける損害賠償請求権にも時効の規定があります。「損害及び加害者を知った時」から3年が経過し、時効の効果を主張する者が時効を援用(時効の規定による利益を受ける旨の意思表示)した場合、損害賠償請求権を行使することができません。

また、不法行為の時から20年間権利を行使しないと損害賠償請求権を行使できなくなります。なお、この場合にも時効の援用が必要です。

名誉毀損罪

名誉棄損罪は、公然と事実を摘示し、他人の名誉を傷つけ、社会的評価を下げた場合に成立します。

「公然と事実を摘示」とは、不特定多数が認識できる状態で、具体的な事実としてその内容を広めること。真実かどうかは問われません。「他人」とは、団体や法人も含まれます。

名誉毀損罪は親告罪のため、告訴がないと公訴できません。告訴期間は6ヶ月です。また、名誉毀損罪の公訴時効は3年ですので、犯罪行為の発生から3年が経過すると公訴できません。

  • 法定刑は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下です。刑法上、未遂は規定されていません。
 例えば、インターネット掲示板などに、「〇〇は結婚しているのに、配偶者以外の異性と不倫している」などと書き込んだ場合、名誉棄損罪が成立する可能性があります。

侮辱罪

侮辱罪は、事実を摘示しなくても、不特定多数が認識できる状態で、他人を侮辱した場合に成立します。「バカ」、「アホ」など具体的事実を伴わない表現、「チビ」「デブ」などの身体的特徴に関する暴言などが含まれます。

名誉棄損罪と侮辱罪の違いは「事実の摘示があるかどうか」」です。しかし、どちらも「公然と」との規定があり、不特定多数の人が認識しうる状態で加害者の行為が行われる必要があります。

侮辱罪は親告罪になるため、告訴がないと公訴できません。告訴期間は6ヶ月です。また,侮辱罪の公訴時効は1年ですので、犯罪行為の発生から1年が経過すると公訴できません。ネット上で侮辱内容が含まれる書き込みを受けた場合は、すぐに対応する必要があります。

  • 法定刑は、拘留又は科料です。刑法上、未遂は規定されていません。
 例えば、インターネット掲示板などに、「〇〇はチビでバカである」などと書き込んだ場合、侮辱罪が成立する可能性があります。

信用毀損罪

信用毀損罪とは、嘘の情報を流し、騙したりすることによって、他人の信用・信頼を低下させた場合に成立します。

信用とは、経済的な信用を指し、商品やサービスの質も含むとされています。ネット上の誹謗中傷、産地偽装である粗悪品であるなどと虚偽の事実をネット上に投稿する行為などについて、信用棄損罪が成立する可能性があります。

信用毀損罪は親告罪ではなく、被害者本人からの刑事告訴がなくても訴追が可能です。また、非親告罪に告訴期間の制限はありません。ただし、公訴時効は3年ですので、犯罪行為の発生から3年が経過すると公訴できません。

  • 法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。刑法上、未遂は規定されていません。
 例えば、インターネット掲示板などに、「〇〇の取り扱っている商品は、産地を偽装しており粗悪品である」など虚偽の事実を書き込んだ場合、侮辱罪が成立する可能性があります。

プライバシー侵害

プライバシー侵害は、刑法で規定されていないため犯罪にはなりません。しかし、プライバシーが侵害された場合は、民事上の不法行為責任を追及することで、損害賠償請求ができます。

その場合、加害者を知った時から3年以内、またはプライバシー侵害に該当する誹謗中傷の書き込みをされてから20年以内に加害者に請求する必要があります。

投稿者の住所氏名の開示

誹謗中傷の加害者に対して損害賠償を請求するには、投稿者の身元を特定しなければなりません。そのためにはコンテンツプロバイダ(インターネット掲示板などのサイト運営者等)に対して、保有しているIPアドレスの開示請求をする必要があります。

しかし、IPアドレスなどのアクセスログには保存期間があり、一定の期間が経過するとアクセスログを消去されてしまいます。アクセスログの保存期間は各プロバイダに委ねられており、約3~6か月経過した時点で消去されてしまうケースが多いです。

次に、経由プロバイダ(ISP[携帯のキャリアなど])に対する情報開示請求をしていくことになりますが、携帯キャリアのログは、3か月程度で消去されてしまう場合もあります。この期間が過ぎると、投稿者を特定することが困難になります。

POINT
被害を受けてからすぐに開示請求をおこなうのがベストですが、プロバイダに対して接続元IPアドレスを含む、投稿者のアクセスログの保存要請または仮処分をすることで対処することもできます。

書き込みの削除

多くのユーザーが利用しているSNSや掲示板では、サイト内における利用規約や削除に関するガイドラインが決められており、違反内容が含まれている投稿には削除義務が課せられています。そのため、掲示板やSNSに誹謗中傷が書き込まれた場合は、自分で削除依頼をおこなうことが可能です。

また、書き込みの削除依頼は時効制度が存在しないので、投稿されてからしばらくたった書き込みにおいても、削除依頼をすることができます。

ただし、任意の削除に応じない場合、インターネット掲示板などのサイト運営者等に対して、投稿記事削除の仮処分命令を裁判所に申し立てしていくことになります。

投稿記事を削除したうえで、損害賠償請求したい場合、掲示板から発言を削除してしまうとIPアドレスの記録も消えてしまう可能性があるので、サイト運営者に対し、発信者情報消去禁止の仮処分を行ったうえで、削除をしていく方が安全です。

名誉棄損の日時がわかる証拠が必要

ネット上で誹謗中傷の被害に遭ったときは、必ずスクリーンショットや写真などで該当する書き込みの投稿日時や内容を控えておきましょう。

 証拠保全を怠ると、情報開示請求や損害賠償請求を行う時に不都合が生じてしまいます。

名誉を棄損する投稿により被害に遭った場合の手順

名誉を棄損する投稿により被害に遭った場合、刑事処罰を求めていくことと、加害者に対して損害賠償を請求していくのとでは手順が異なります。それぞれの流れを以下に解説します。

刑事告訴

刑事告訴とは、被害者など告訴権を有する一定の者が、捜査機関に対し、犯罪事実を申告して犯人の処罰を求めることをいいます。
刑事告訴をおこなう手順は、以下の通りです。

  1. 警察に相談し、被害届を提出する
  2. 警察が捜査し、犯人を特定する
  3. 特定後、6ヶ月以内に告訴状を提出する

名誉毀損罪の公訴時効は3年、告訴期間は6ヶ月です。ネット上の名誉毀損の場合、犯人を特定するために1年程度の期間がかかってしまうケースが多くありますので、よりスピーディーな対応が求められます。

また警察に相談しても、動いてくれない場合には、情報開示をして犯人を特定してから、再度警察に相談にしに行く場合もあります。

損害賠償請求

加害者に損害賠償請求(慰謝料請求)をすることができます。
損害賠償請求をおこなう手順は、以下の通りです。

  1. 弁護士に相談する
  2. 情報開示請求をおこない、加害者の身元を特定する
  3. 加害者に対して内容証明で損害賠償を請求
  4. 支払わない場合、民事訴訟によって損害賠償請求

民事訴訟の他にも、示談交渉や調停で損害賠償を請求することもできます。

示談交渉は当事者同士の話し合い、調停は裁判所の調停委員会を間に挟んだ話し合いで、当事者の同意が必要になります。双方の合意が取れない場合は、民事訴訟をしていくことになります。

誹謗中傷してしまった人ができる対策や対応

過去に誹謗中傷をしたことに心当たりがある方もいると思います。その場合、身元を特定されて訴えられる前に対策をとることが重要です。

はじめに、ネット上に該当の書き込みが残っている場合はすぐに削除してください。

投稿を削除しても不安な場合は、弁護士に相談すると良いでしょう。投稿内容をみてもらい、刑事処罰の可能性や損害賠償などの法的なリスクを確認できます。

もちろん、必要な対策を講じたとしても、誹謗中傷した事実が消える訳ではないので、法的責任を追及される可能性はあります。しかし、その場合でも弁護士に相談すれば、示談などで刑事事件に発展するのを防ぐように手助けしてくれます。

そのため、誹謗中傷したことに心当たりがある方は、どのような段階においても一度弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

誹謗中傷の相談はできるだけ早くスタートしよう

誹謗中傷の加害者に責任を追及するには、時効などの時間制限をクリアして訴え提起する必要があります。時効が過ぎてしまうと証拠が揃っていたとしても、起訴できなくなります。

POINT
自分だけで手続きを進めるのは大変ですので、困った場合は弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。いずれにしても、なるべく早くに手続きをスタートさせることが大切です。

まとめ

誹謗中傷の被害で訴えを提起する際は、時効などのタイムリミットを気にしなければなりません。

特に公訴時効は罪名によって期間が変わり、早いものだと1年で時効が成立してしまいます。また、ログの保存期間が過ぎると住所や氏名の開示もできなくなります。手遅れになる前に行動を起こしましょう

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