インターネットの誹謗中傷で訴えられたらどうする?対処法と心構えについて解説

インターネットの誹謗中傷で訴えられたらどうする?対処法と心構えについて解説

インターネットは手軽に情報を入手したり、SNSで多くの人と繋がれる便利なものですが、何気ない書き込みが誹謗中傷になってしまうこともあり得ます。

もし訴えられた場合、どのような罪に問われるのか、どんな対応をすればいいのかを解説します。

誹謗中傷で問われる罪とは?

もしあなたが他人を誹謗中傷するような投稿をしてしまった場合、刑事と民事の2種類の責任を問われることになります。

刑事上、犯罪になった場合には、懲役や禁錮、罰金などに処せられる可能性がありますし、民事では損害賠償や慰謝料の請求を受けます。刑事か民事の片方だけの場合もあれば、両方で責任を問われることもあります。

刑事ではどのような罪に問われるか

誹謗中傷で告訴や被害届を出されたさ場合、警察による捜査が始まる可能性がありますが、他人を誹謗中傷した場合の犯罪には以下のようなものが考えられます。

これらは刑法上の犯罪にあてはまるため、起訴されれば懲役や罰金など刑罰を受ける場合があります。

名誉毀損罪

名誉棄損罪は,公然と事実を摘示し、他人の名誉を傷つけ、社会的評価を下げた場合に成立します。

「公然と事実を摘示」とは、不特定多数が認識できる状態で、具体的な事実としてその内容を広めること。真実かどうかは問われません。「他人」とは、団体や法人も含まれます。

名誉毀損罪は親告罪のため、告訴がないと公訴できません。告訴期間は6ヶ月です。また、名誉毀損罪の公訴時効は3年ですので、犯罪行為の発生から3年が経過すると公訴できません。

法定刑は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下です。刑法上、未遂は規定されていません。

名誉棄損罪の例
インターネット掲示板などに、「〇〇は結婚しているのに、配偶者以外の異性と不倫している」などと書き込んだ場合、名誉棄損罪が成立する可能性があります。
侮辱罪

侮辱罪は,事実を摘示しなくても、不特定多数が認識できる状態で、他人を侮辱した場合に成立します。「バカ」、「アホ」など具体的事実を伴わない表現、「チビ」「デブ」などの身体的特徴に関する暴言などが含まれます。

名誉棄損罪と侮辱罪の違いは「事実の摘示があるかどうか」です。しかし、どちらも「公然と」との規定があり、不特定多数の人が認識しうる状態で加害者の行為が行われる必要があります。

侮辱罪は親告罪になるため、告訴がないと公訴できません。告訴期間は6ヶ月です。また,侮辱罪の公訴時効は1年ですので、犯罪行為の発生から1年が経過すると公訴できません。ネット上で侮辱内容が含まれる書き込みを受けた場合は、すぐに対応する必要があります。

法定刑は、拘留又は科料です。刑法上、未遂は規定されていません。

侮辱罪の例
インターネット掲示板などに、「〇〇はチビでバカである」などと書き込んだ場合、侮辱罪が成立する可能性があります。
信用毀損罪

信用毀損罪とは、嘘の情報を流し、騙したりすることによって、他人の信用・信頼を低下させた場合に成立します。信用とは、経済的な信用を指し、商品やサービスの質も含むとされています。

ネット上の誹謗中傷、産地偽装である粗悪品であるなどと虚偽の事実をネット上に投稿する行為などについて、信用棄損罪が成立する可能性があります。

信用毀損罪は親告罪ではなく、被害者本人からの刑事告訴がなくても訴追が可能です。また、非親告罪に告訴期間の制限はありません。ただし、公訴時効は3年ですので、犯罪行為の発生から3年が経過すると公訴できません。

法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。刑法上、未遂は規定されていません。

信用毀損罪の例
例えば、インターネット掲示板などに、「〇〇の取り扱っている商品は、産地を偽装しており粗悪品である」など虚偽の事実を書き込んだ場合、侮辱罪が成立する可能性があります。
威力業務妨害罪

威力業務妨害罪は、威力を用いて人の業務を妨害した場合に成立する犯罪です。

爆破予告、悪質なSNSの投稿、悪質なメール、迷惑電話、ビラ配布、バイトテロなどについて、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

最近では、衣料品店で購入した商品が偽物だと返品を迫り、その様子を動画撮影していたYouTuberが、威力業務妨害罪の嫌疑で逮捕されたケースもあります。

法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。刑法上、未遂は規定されていません。公訴時効は3年です。親告罪ではありません。

偽計業務妨害罪

偽計業務妨害罪は、不特定多数に嘘の情報を流したり、他人を欺いたりして業務を妨害した場合に成立する犯罪です。

事故や災害に便乗したデマ、試験中に不正な手段で入試問題をネット上に流す、大量の虚偽注文を行う、バイトテロ などについて、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下です。刑法上、未遂は規定されていません。公訴時効は3年です。親告罪ではありません。

脅迫罪

脅迫罪は、生命、身体、自由、名誉又は財産に対して、害を加えることを相手に告知し、脅迫した場合に成立する犯罪です。対象は、人間であり、会社のような法人は対象となりません。

「害悪の告知」は、一般に人を畏怖させるに足りる程度であれば成立します。

法定刑は、2年以下の懲役又は30万円以下です。刑法上、未遂は規定されていません。公訴時効は3年です。親告罪ではありません。

民事ではどのような責任を問われるか

上で説明した刑法上の犯罪に当たる場合、刑事とは別に、損害賠償・慰謝料を請求される可能性があります。

また、刑法上の犯罪に該当しない場合でも、損害賠償請求される可能性もあります。

たとえば、相手の写真を無断でアップした場合は肖像権の侵害になりますし、他人の個人情報を書き込んだりした場合はプライバシー権の侵害になり、刑罰法規に触れなければ犯罪にはなりませんが、慰謝料を請求されることがあります。

誹謗中傷で訴えられたらどうすればいい?

誹謗中傷で刑事、民事の責任を追及された場合、なにもせずに放置していると事態がどんどん悪化していく可能性があります。ここからは、責任を追及された場合、実際にどのように対処をすればいいかを解説します。

書き込みの削除依頼

訴訟を起こす前に、相手があなたの書き込みに対して削除依頼を行う場合があります。

ネットでの誹謗中傷では、いきなり訴訟を起こされることはまずありません。書き込みの投稿者は匿名が普通ですから、名前も住所もわかりませんし、相手の情報を特定したり、いろいろと事前準備が必要になります。

削除依頼自体は訴訟に直接かかわるものではありませんが、書き込みが放置されたままだと、相手にとってはずっと中傷を受け続けている状態になります。そのため、まずは問題となる書き込みの削除依頼を行うのです。

POINT
削除依頼は投稿したサイトやSNSに対して行われます。サイトによって、削除しても良いか尋ねてくることもあるかもしれません。間違った書き込みをしたと思ったら、問い合わせがあれば削除して良い旨伝え、また、謝罪して自分から削除することができる場合もあります。

相手が訴える前に示談にする

削除依頼後、被害者はサイトやSNSの運営者に対してIPアドレスの開示を求め、プロバイダを特定し、あなたの個人情報を開示させようとするかもしれません。もし、氏名や住所が明らかになれば、刑事告訴や損害賠償請求される可能性が高いです。

そうなる前に、被害者と話し合い、示談にもっていくのも一つです。示談にはいくつかのメリットがあります。

刑事事件、裁判になるのを防ぐ

示談がまとまれば、裁判を起こされたり刑事告訴されるのを防止することができます。

裁判になれば、法廷は公開が原則で裁判所の期日簿には名前が記載されますし、訴訟記録も残ります。訴訟記録は第三者による閲覧も可能で、いろいろな形であなたが裁判を受けたことが世間に知られてしまう可能性がありますし、有罪になればもちろん前科がつきます。

名誉毀損などの犯罪は親告罪のため、相手が告訴しない場合裁判にならないので、示談することでこうしたリスクを未然に防ぐことができます。

慰謝料の金額を低くできることも

示談は被害者との話し合いで慰謝料などを決定するため、交渉次第では裁判よりも慰謝料の金額を低くできるケースもあります。ただ、示談のほうが慰謝料が高くなることもありますし、普通の人が法律知識を踏まえて交渉を行うのは難しいと思われます。

そこで、示談を検討する場合は、法律の知識が豊富な弁護士などの専門家に相談するようにしてください。

なかには誹謗中傷問題を専門に扱っている弁護士もいますし、そうした弁護士は加害者側の依頼を引き受けた経験もあります。

これまでの経験とノウハウを活かして、スムーズに示談の話し合いをまとめてもらえるでしょう。

相談するタイミングはいつがいい?

弁護士には、被害者があなたを訴えようとしていることがわかったタイミングで相談するべきです。相手があなたの個人情報を知るため、開示請求を行うと、プロバイダから個人情報を教えていいかを尋ねてきます。

発信者情報開示に係る意見照会書」が自宅に届いたら、誰かがあなたを訴えようとしているサインといえます。この意見照会書自体は拒否しても問題ありませんが、相手は次に裁判で情報の開示を求めてくるでしょうし、専門家の力を借りる必要があります。

 もし、まったく身に覚えがない書き込みで訴えられたとしても放置はしないでください。あなたが忘れてしまっているだけかもしれませんし、事実無根の内容で訴えられていることもあるため、どちらにせよ放置は禁物です。

もし自宅にこうした書面が届いたら、すぐに専門家に相談するようにしてください。

「匿名だからバレない」は間違い

ネット上では匿名なら大丈夫だろうと思ってしまいがちですが、通信記録などが残っているため、軽く考えていると後々大きな問題になるおそれがあります。

ネット上における誹謗中傷の件数は年々増加する傾向にあり、過去数年では毎年1万件を超えています。本人は深く考えずに行った書き込みにより、訴えられるケースも増えています。

なかには投稿で問題を起こした場合に備えて「捨てアカ」などを作るユーザーもいますが、書き込みを行ったサイト・SNSにはIPアドレスとタイムスタンプといった発信者情報が残っています。

そのため、これらの情報が開示されるとプロバイダの特定につながり、最終的には個人情報も特定されます。

何気ない気持ちでした投稿が刑事・民事の訴訟につながり、人生にも大きな影響を与えてしまう可能性もあるため、たとえ本名でなくとも悪質な投稿は避けるようにしてください。

誹謗中傷で訴えられないためにできること

最後に誹謗中傷で訴えられることがないよう、ネットへ投稿をする上で心がけるべきことを解説します。

書き込む前に見直しを

投稿する前に、書き込みの内容をもう一度見直し、自分が同じ投稿をされたらどんな風に思うかを考えるようにしてください。最後に第三者視点に立って見返すことで、問題になりそうな書き込みかどうかを冷静に判断できるはずです。

もし過去に誹謗中傷をしてしまっていたら

過去の投稿で誹謗中傷にあたるような心あたりがある場合は、可能な限り速やかに、問題の投稿を削除するようにしてください。ネット上の書き込みは投稿者の意図しないところで拡散される場合もあるため、それを防ぐためにも削除するのが大切です。

ですが、投稿を削除すれば誹謗中傷をしても逃げられると考えるのは間違いです。削除しても発信者情報は残りますし、相手があなたの書き込みを保存して証拠にしていることもあります。

ネットの書き込みは一度投稿すると、完全に消すのが難しいため訴えられるのを防ぐには、投稿前の慎重な判断が重要といえます。

まとめ

ネットの掲示板やSNSでは、軽はずみな投稿が誹謗中傷として訴えられてしまうこともあります。もし訴えられてしまった場合には、なるべく裁判を避けられるよう示談での解決を目指したほうが良いといえるでしょう。

そうした事態を避けるため、普段から書き込みには慎重さが求められます。

相手側との交渉など一人では対処できないことも多いため、法律の専門家である弁護士に相談するとともに、誠意をもって相手と向き合うようにしてください。

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