後遺障害等級認定は、早ければ申請してから1ヶ月ほどで結果がわかります。ただし、事故やケガの状況によっては、3ヶ月以上経っても結果が出ないこともあります。

交通事故による後遺障害とは?
交通事故にあうと「後遺障害」が残ってしまうことがあります。では、「後遺障害」とは具体的にどのようなものでしょうか。
「後遺障害」と似た言葉に「後遺症」というものがあります。一般的に「後遺症」と「後遺障害」はほとんど同じ意味で使われていますが、実際には大きな違いがあります。それぞれの言葉の意味は以下の通りです。
後遺症
怪我や病気を治療したにもかかわらず、将来的に完治するのが見込めない機能障害や神経症状などのことを指します。後遺症の具体例として、交通事故のむち打ちがあります。むち打ちとは、交通事故によって首や背中などに強い衝撃が加わることで、背中、肩、首、手足に痛みや痺れが出る症状です。
後遺障害
後遺症のうち、交通事故が原因であることが医学的に証明されるとともに、労働能力の低下(あるいは喪失)が認められ、さらに、その程度が自賠責保険の等級に該当するものをいいます。
交通事故などが原因で生じた高次脳機能障害、手足の切断、関節の可動域の制限など、様々な症状が後遺障害として認定されます。なお、むち打ち症などの神経障害についても、等級認定を受ければ後遺障害として扱われます。
後遺障害の認定とは
後遺障害認定とは、交通事故で残った後遺症が、自賠責保険が定める後遺障害等級に認定されることをいいます。等級は症状に応じて1〜14級に分類され、1級に近づくほど症状が重いものとみなされます。
後遺障害等級は自動的に認定されるわけではなく、所定の審査機関に申請する必要があります。審査は基本的に書類で行われ、自賠責の認定基準を満たしている場合に限って等級が認定されます。特に、後遺障害診断書とレントゲンやMRIなどの画像検査の結果が重要となり、これらの記載内容が不適切だと適切な等級は認定されません。
等級認定を受けるメリットについて
後遺障害等級が認められるとどのようなメリットがあるのでしょうか。等級が認められることでできることについて解説します。
加害者に対して賠償金を請求できる
後遺障害等級が認定されると、加害者に対して「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」を請求できるようになります。後遺障害慰謝料と逸失利益の説明は以下の通りです。
「慰謝料」とは、加害者に与えられた精神的苦痛を慰謝してもらうための賠償金です。交通事故で後遺障害を負うと、被害者は以前と同じような生活を送ることができなくなるため、これらの苦痛や不安に対する賠償金として「後遺障害慰謝料」を請求できるようになります。
逸失利益とは、後遺障害によって労働能力が低下または喪失していなければ、被害者が将来得られるはずだった収入のことです。交通事故にあわなければ将来の収入が減少することはないため、将来の収入の減少分は加害者に対して請求することができます。

自賠責保険から保険金を先払いで受け取れる
通常、示談が成立するまでは交通事故に関する保険金を受け取ることはできません。しかし、被害者請求によって等級が認定されると、相手方保険会社と示談を始める前に、自賠責保険から一定の保険金を受け取れるようになります。
14級であれば75万円(支払限度額)、12級であれば224万円(支払限度額)を先払いで受け取れるので、治療費や入院費にかかる支出を賄うことができます。
その他の保険金を請求できる場合がある
等級が認定されると、相手方の自賠責保険や任意保険会社以外にも、ご自身が加入している保険会社から保険金を支払ってもらえる可能性があります。例えば、被害者の方が搭乗者傷害保険や県民共済に加入している場合、等級に認定を受けることで後遺障害に関する保険金や共済金を請求できることがあります。
後遺障害の等級認定の流れ
先ほどの説明の通り、交通事故で後遺障害を負ったときは等級認定の申請手続きに移ります。では、後遺障害等級の申請は、いつ、どこにすれば良いのでしょうか。また、申請方法にはどのようなものがあるのでしょうか。ここからは、後遺障害の等級認定の流れを解説します。
いつ申請するのか
等級申請のタイミングは、「症状固定」となった後になります。症状固定とは、「医学的に認められた治療を施しても、これ以上症状が改善されない状態」のことであり、症状固定を経てから等級認定を申請することになります。
症状固定の時期は、原則として医師が判断します。打撲は3ヶ月程度、むち打ちは6か月程度で症状固定になりますが、骨折は症状固定までに6ヶ月〜1年6ヶ月かかることもあります。
どこに申請するのか
症状固定になった後は、相手方の自賠責保険に後遺障害等級の申請をします。
自賠責保険が受け取った各種書類は、「損害保険料率算出機構」に送付されて審査が行われます。損害保険料率算出機構とは、損害保険料率算出団体に関する法律に基づいて設立された法人であり、任意保険会社等から独立して等級認定の調査を行う機関です。
等級の申請方法
後遺障害等級の申請手続きには、「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。それぞれの申請方法の説明は以下の通りです。
事前認定
加害者側の任意保険会社を介して自賠責保険に等級認定の申請を行う方法です。
・手間がかからない
・資料の収集などにかかる費用を節約できる
・適切な等級が認定されにくくなる
・自賠責から保険金を先払いで受けられなくなる
事前認定では、医師に後遺障害診断書を書いてもらったあと、それを加害者側の任意保険会社に提出します。その後の申請手続きは相手方保険会社が代わりに行ってくれるため、手続き面の手間や負担がかからないのが特徴です。
被害者請求
被害者本人が相手方の自賠責保険に直接等級申請を行う方法です。
・手続きの透明性を確保できる
・適切な資料を提出できれば等級が認定されやすくなる
・示談成立前に自賠責から保険金を受け取れる
・手間や時間がかかる
・資料を集める際に費用がかかる
・等級認定の知識が必要になる
被害者請求では、被害者自身が申請に必要な書類を全て揃える必要があります。そのため、事前認定よりも申請手続きに時間や手間がかかってしまいます。
一方で、被害者本人が書類を集めて提出するため、等級認定に有利な資料を選んで提出することができます。認定基準を満たす資料を提出できれば、適切な等級の認定が期待できます。

結果の通知
自賠責保険の損害保険料率算出機構による調査が終わると、等級認定または等級非該当の通知がなされます。被害者請求では自賠責保険から直接通知が届きますが、事前認定では任意保険会社を経由して結果が通知されます。
後遺障害が認定されるまでの期間は最短で何日?
後遺障害等級が認定されるまでの期間はどのくらいでしょうか。詳しく見ていきましょう。
早ければ申請から1ヶ月で結果がわかる
各書類が自賠責保険に送付された後、早ければ1ヶ月以内に等級認定の結果が通知されます。損害保険料率算出機構が公表している統計によると、73.8%の事案は30日以内に調査が完了するとされています。(参考:損害保険料率算出機構「2022年度自動車保険の概況」)
どうして等級認定に時間がかかるのか
ほとんどの場合、申請から2ヶ月以内に結果が通知されます。ですが、事故状況が複雑であったり、受傷状況から等級の判定が困難であったりすると、調査に3ヶ月以上かかることがあります。
また、任意保険会社が申請手続きを後回しにしていたり、医師の治療情報照会が遅れたりしていると、等級認定までに時間がかかることがあります。
被害者請求の方が早く認められる可能性がある
事前認定で相手方の任意保険会社に申請手続きを一任すると、手続きを後回しにされたり、書類の漏れが生じたりするおそれがあります。その結果、事前認定の方がかえって時間がかかってしまいます。
一方で、被害者請求を利用すると、症状を正確に伝えられるため、事前認定よりもスムーズに審査を進められる可能性があります。特に申請手続きに慣れている弁護士に依頼すれば、書類を集める作業を任せられるため、さらに手続きの時間を短縮できるでしょう。
後遺障害認定の期間について気を付けたいこと
後遺障害認定のポイントを押さえておくと、スムーズに等級が認定されやすくなります。ここからは、等級認定でかかる期間について気をつけておくことを解説します。
提出書類のチェックを欠かさないようにする
等級認定では、後遺障害診断書をはじめとする様々な資料を提出する必要があります。提出資料に不備があると等級が認められないため、事前にしっかりと確認するようにしましょう。書類不備などで時間をかけたくないときは、弁護士に相談してチェックしてもらうことがおすすめです。

期限に気をつける
後遺障害等級認定の申請には期限があります。期限を過ぎてしまうと、等級申請ができなくなってしまうため、それまでに所定の手続きを済まさなければなりません。
事前認定の期限
事前認定に期限はありません。ただし、任意保険に対する損害賠償(保険金)請求権には時効が定められています。任意保険会社に対する損害賠償請求権は、症状固定時から3年間になっています。
被害者請求の期限
被害者請求の時効期間は、症状固定時から3年間となっています。時効期間が差し迫っている場合は、自賠責保険に対して時効中断措置を取るようにしてください。方法としては、自賠責保険に対して「時効中断申請書」を差し入れることで、時効を中断することができます。
示談金を早く受け取る方法を確認する
相手方保険会社から示談金(賠償金)を受け取れる時期は、基本的には示談が成立してからになります。ただし、示談交渉を開始するためには、後遺障害認定を完了していなければなりません。これでは、示談金を得られるまでにかなり時間がかかるため、当面の治療費や生活費に困ってしまうでしょう。
このとき、「内払金」や「仮渡金」を請求することで、示談成立前に賠償金の一部を前払いしてもらえる可能性があります。
内払金
相手方の任意保険会社によっては、示談が成立する前に保険金の一部を内払金として支払ってもらえることがあります。ただし、全ての任意保険会社が内払い対応をしている訳ではないため、内払いを希望するときは事前にたずねておきましょう。
なお、以前は自賠責保険にも内払い制度がありましたが、平成20年10月1日に廃止されています。示談交渉前に自賠責保険に保険金の一部を請求したい場合は、仮渡金の請求を行う必要があります。
仮渡金
仮渡金とは、診断書を添付して自賠責保険に請求することで、示談金を受け取る前にまとまったお金を受け取れる制度です。加害者が加入している自賠責保険に対して、死亡の場合は290万円、傷害の場合は程度に応じて5万円、20万円、40万円を請求できます。
後遺障害認定が進まないときの対処法
ほとんどの事例では、等級認定を申請してから2ヶ月ほどで結果がわかります。しかし、中には等級認定の審査がなかなか進まないこともあります。では、等級認定が進まないときはどうすれば良いでしょうか。対象法について解説します。
保険会社に連絡して状況を確認する
事前認定で申請する場合、申請手続きに遅れが生じることがあります。というのも、申請手続きを担当する任意保険会社は、他にも多くの事故を取り扱っているため、優先順位によっては手続きを後回しにされることがあります。
また、任意保険会社としては保険金を支払う立場ですので、等級認定に有利な資料をきちんと収集してくれないこともあります。その結果、申請手続きに時間がかかってしまい、最悪のケースだと等級非該当の結果になることがあります。

被害者請求に切り替える
事前認定では、任意保険会社が適切な資料を揃えられているとは限らないため、書類の不備などが生じると手続きに時間がかかってしまいます。また、審査に通らなければその分の時間が無駄になってしまうでしょう。
そのような場合は、事前認定から被害者請求に切り替えて、自賠責保険に直接申請するようにしてください。被害者請求では、被害者自身が資料を準備しなければなりませんが、適切な資料を送付することでスムーズに審査を進められます。
まとめ
後遺障害として認められるためには、相手方の自賠責保険に申請して等級認定を受けることが必要です。
等級が認定されるまでの期間は早くて1ヶ月、遅い場合は2〜3ヶ月程度かかります。結果の通知が遅い場合は、保険会社に連絡して状況確認したり、弁護士に依頼して被害者請求に切り替えたりして対策しましょう。
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