ネットの書き込みで誹謗中傷の被害に遭ったとき、警察に相談するべきかどうか迷う方もおられるでしょう。
誹謗中傷の相談窓口はどこ?
現在、ネット上で誹謗中傷を受けた場合の相談窓口には、国の相談窓口、民間の相談窓口、法律事務所等の3つがあります。
国の相談窓口
1つ目は国や行政が設置している相談窓口です。国や官公庁の相談窓口には、以下のようなものがあります。
総務省「違法・有害情報相談センター」
ネット上の違法情報に関する相談や削除申請に関するアドバイスをもらえます。誹謗中傷だけでなく、個人情報を勝手に公開された場合なども相談できます。
法務省「インターネット人権相談窓口」
法務省人権擁護局が運営している人権相談の窓口で、インターネットから相談できます。相談フォームで相談内容等を送信すると,最寄りの法務局から後日,メール,電話又は面談により回答してもらえます。
日本司法支援センター「法テラス」
法務省管轄の独立行政法人日本司法支援センターが運営している法的トラブル解決のための総合案内所です。各都道府県に設置されていて、収入条件はありますが、無料での法律相談も可能です。
警察「警察相談専用電話 #9110」
#9110は警察専用の相談番号で、地域の警察本部に設けられた相談窓口へつながり、警察署まで直接行かなくても相談が可能です。
詐欺やストーカー被害など幅広い相談を扱っているため、誹謗中傷などネットでのトラブルに関する相談の場合は下のサイバー犯罪相談窓口にかけたほうがいいかもしれません。
警察「サイバー犯罪相談窓口」
ネット上での犯罪を専門にする警察の部署で各県警に相談窓口が設置されています。誹謗中傷だけでなく、フィッシング詐欺やコンピュータウイルスなどハイテク犯罪全般を扱っています。
上記のように、現在では国や官公庁による相談窓口も非常に充実しています。これらの窓口の一番のメリットは、ほとんどが無料で利用できることです。誹謗中傷を受けてどうしていいかわからないという時は、まずこれらの窓口に相談してみるといいでしょう。
民間の相談窓口
2つ目に、民間企業や法人などが開設している相談窓口やサービスもあります。
一般社団法人セーファーインターネット協会が開設しているネットでの誹謗中傷に対する相談窓口です。セーファーインターネット協会は有志のインターネット企業によって運営されている団体です。
IT企業やWebマーケティング企業には、誹謗中傷対策や風評被害対策のサービスを行っている会社もあります。
ネット上にある誹謗中傷の投稿を収集して証拠を保存してくれたり、企業や個人に対するネガティブな情報が検索上位に表示されないようSEO対策を行ってくれます。国の窓口や誹謗中傷ホットラインと違い、有料でのサービスになります。
民間の窓口を利用するメリットは、国の相談窓口と同様に無料で相談できるものもあります。
また、民間企業は弁護士ではないため、削除依頼や開示請求を代理で行うと非弁行為になってしまいます。そのため、できるのはあくまで投稿に関する情報収集のみで、法律関係の手続きは自分でやる必要があります。
法律事務所や弁護士の相談窓口
3つ目は法律事務所や弁護士に相談する方法です。
法律事務所のメリットは、法律の専門家である弁護士が相談に乗ってくれて、削除依頼や開示請求などの手続きもあなたに代わって行ってくれるところです。
なかにはネットトラブルに強い弁護士もいて、そういった弁護士に依頼すれば知識やノウハウも豊富で頼りになります。
デメリットはやはり費用がかかることです。多くの法律事務所は相談の段階から相談料がかかりますし、依頼するとさらに報酬を支払う必要があります。
警察に相談する場合の流れ
国や民間の相談窓口ではなく、警察に直接相談して事件として捜査してほしいと考える方もいると思います。警察に相談する場合の具体的な方法や流れを解説します。
まずネットの誹謗中傷の証拠となる画像、スクリーンショット、URLなどを保存しておき、それを持参して警察に被害届を出しましょう。
通常は、問題となる投稿とURLが印刷されたものがあれば十分ですが、投稿が削除されてたときのため、スクリーンショットやスマホで写真を撮るなどして証拠を残しておきます。
警察に被害届が受理されるためには、投稿内容が刑法上の犯罪に該当していることが条件になります。
警察が書き込みを犯罪行為にあたるものと思料すれば被害届が受理され、もし投稿が犯罪に当たらないと判断された場合は相談のみで終わることもあります。犯罪に当たるか微妙な場合、被害届を受理してくれないこともあります。
被害届が受理されると、書き込みは刑事事件として扱われることになり、警察による捜査が開始されます。捜査開始後、警察から必要な資料等の提示を求められた場合は、それに従って証拠を提出する必要があります。
被害届を出せるケース①名誉棄損罪や侮辱罪
警察に被害届が認められるケースの1つ目として、投稿が名誉毀損や侮辱罪にあたる場合があります。
公然と事実を摘示し、他人の名誉を傷つけ、社会的評価を下げた場合名誉毀損罪が成立します。
また、事実を摘示しなくても、不特定多数が認識できる状態で、他人を侮辱した場合に成立します。「バカ」、「アホ」など具体的事実を伴わない表現、「チビ」「デブ」などの身体的特徴に関する暴言などが含まれます。
被害届を出せるケース②威力業務妨害罪や偽計業務妨害罪、信用毀損罪
威力を用いて人の業務を妨害すると威力業務妨害罪が成立します。また、不特定多数に嘘の情報を流したり、他人を欺いたりして業務を妨害すると偽計業務妨害罪が成立します。
さらに、嘘の情報を流し、騙したりすることによって、他人の信用・信頼を低下させると信用毀損罪が成立します。
被害届を出せるケース③脅迫罪
他人の身体や生命、財産を傷つけると脅したときに適用されるのが脅迫罪です。相手を畏怖されるのに十分と考えられれば実際に恐怖を感じたかに関わらず罪に問われるます。例えば、殺害予告などは脅迫罪にあたる可能性があります。
以上、3つのケースでは警察に被害届を出すことができます。
警察に相談する前に専門家の無料相談などを利用するとスムーズ
ここまで、ネット上での書き込みに対して、被害届が出せることについて解説してきました。
しかし、実際に問題の投稿が法律上の罪に当たるかどうか、普通の人では判断に迷うこともあるでしょうし、警察に被害届を出せない場合についてもどう対処すればいいのか困ると思います。
そこで、警察に相談する前に、まず法律事務所で弁護士などの専門家に対して相談してみることをおすすめします。相談料がかかるので躊躇される方もいるかもしれませんが、無料相談を行っている事務所もたくさんあります。
無料相談を利用すれば、法律的にみて刑事事件が成立するケースかどうかを判断してもらえますし、警察に行く際、準備すべきものの指示などをもらえます。ほかにも、削除依頼の方法や書き込んだ相手の情報を知るための開示請求など幅広い相談に乗ってもらうこともできます。
弁護士事務所というと、一般の方には入りづらいイメージがあるかもしれませんが、正式に依頼をしなくても、相談にだけ乗ってもらうことも可能です。
まとめ
インターネット上での誹謗中傷に関しては、国や民間、専門家など様々な相談窓口が設けられており、中には警察の相談窓口も存在します。
ただ、警察に被害届を出せるのは書き込みが犯罪に当たる場合のみです。対応の仕方について分からないことがある場合は、事前に、弁護士事務所など専門家に相談するようにしましょう。
無料相談を行っている事務所もありますし、相談すれば絶対に依頼しなければいけないということもありません。ネットでの誹謗中傷を専門にしている弁護士もいますので、わからないことがあれば、気軽に相談してみてください。