交通事故の慰謝料は通院日数に関係する?骨折など軽症の場合はどうなるか

慰謝料の計算方法には、自賠責基準や弁護士基準など、さまざまな基準があります。基準によっては通院日数が慰謝料の金額に大きく影響します。

この記事では、相場など具体例をあげながら、通院日数がそれぞれの算定基準にどのように影響するかを解説します。

通院日数は交通事故慰謝料に影響する?

慰謝料」は、他人によって精神的苦痛を与えられた際に請求できる金銭です。交通事故で傷害を負うと苦痛が伴う上に、医療機関に通う面倒も生じます。すなわち、これらが精神的苦痛に該当するため、加害者に対して慰謝料を請求することができます。

では、受け取れる慰謝料はどのように決定するのでしょうか。原則として、ケガの重さの指標である「通院日数」が慰謝料の金額に大きく関係します。ただし、慰謝料の計算方法によっては、通院日数ではなく「通院期間」が影響する場合もあります。

ここからは、通院日数と通院期間の違いや、慰謝料の算定基準について解説します。

通院日数と通院期間の違い

慰謝料の算定には通院日数と通院期間が関係します。それぞれの言葉の意味は以下の通りです。

通院日数

怪我を治療するために実際に病院に通った日数を意味します。
例えば、2ヶ月間(8週間)に週2回のペースで通院した場合、通院日数は16日になります。

通院期間(治療期間)

治療を開始してから完治または症状固定(治療やリハビリを継続しても症状の改善が見込めない状態)までの期間を意味します。
例えば、4月1日より通院を開始し、6月30日に完治した場合、通院期間は3か月(90日)になります。

POINT
交通事故で通院した場合、通院日数や通院期間についての正確な情報を相手側の保険会社に証明する必要があります。この点、病院側が診断書、診療報酬明細書などの書類を作成し、相手方の保険会社に提出してくれますので、被害者側が証拠書類を用意する必要はありません。

慰謝料の計算方法について

慰謝料の計算方法には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3種類があります。ここからは、それぞれの計算基準について簡潔に解説します。

自賠責基準

自動車損害補償法に基づいて支払われる自賠責保険の金額です。自賠責保険とは、自動車やバイクを購入した際に強制加入する保険であり、人身事故の被害者への最低限の補償を目的とします。

最低限の補償が目的ですので、3種類の算定基準の中で一番低い賠償額になります。また、自賠責保険の上限は法律で120万円と決まっており、上限を超過した保険金は支払われません。上限を超えた分は、任意保険基準で計算することになります。

任意保険基準

加害者が任意で加入している保険会社が提示する慰謝料の支払額です。示談交渉で慰謝料を請求したときに加害者側の保険会社が提示する慰謝料額は任意保険基準になります。

任意保険基準での支払額は、保険会社が独自に設定していますので一定ではありません。また、任意保険基準は非公開であるため、具体的な計算方法を知ることはできません。自賠責保険よりやや高い金額が支払われますが、本来支払われるべき弁護士基準よりも低額になります。

弁護士基準(裁判基準)

日弁連交通事故相談センターが作成、公表している算定方法です。裁判実務で用いられるので、法的に正当な金額になります。裁判実務で用いられるだけでなく、依頼を引き受けた弁護士も弁護士基準で慰謝料請求します。

3つの算定基準の中で最も高額の慰謝料が支払われるため、正当な金額を請求したいときは弁護士に依頼するのがおすすめです。

交通事故での通院日数の慰謝料への影響

慰謝料にはいくつかの種類があります。ここでは、それぞれの慰謝料の解説や通院日数による影響を説明します。また、実例を用いて実際に支払われる慰謝料の金額を計算します。

交通事故の慰謝料の種類

交通事故で請求できる慰謝料は大きく分けて3種類あります。ここでは、それぞれの慰謝料について詳しく解説します。

入通院慰謝料

交通事故によって医療機関への入院や通院を強いられる精神的苦痛に対して請求できる慰謝料です。医療機関への通院を余儀なくされる傷害を負ったという意味で「傷害慰謝料」ともいいます。

金額の決定には、通院日数または通院期間が大きく影響します。通院期間が長くても、通院日数が少なすぎる場合や傷害の状況によっては、慰謝料額が減額されてしまいます。

なお、一度も通院していない場合は請求できませんが、1日でも通院していた場合は請求できる可能性があります。

後遺障害慰謝料

交通事故によって後遺障害が発生した場合に請求できる慰謝料です。後遺障害(後遺症)とは、外傷を治療した後も完治しない機能障害、運動障害、神経症状などをいいます。

後遺障害慰謝料を受け取るには、後遺障害等級が認定される必要があります。後遺障害等級は、後遺障害の程度によって1〜14等級に分類されており、重度の後遺症ほど高い金額を請求できます。

級ごとに請求できる慰謝料の金額が決まっていますが、必ずしも規定の金額が支払われるわけではありません。等級認定の際に怪我の治療経過についても考慮されるため、通院日数も金額決定の重要な要素になります。また、示談交渉次第で慰謝料の額を増額することが可能です。

死亡慰謝料

交通事故の被害者が死亡した場合、被害者の近親者が被害者本人への慰謝料と遺族への慰謝料を請求できます。これを死亡慰謝料といいます。

まず、遺族固有の慰謝料として、被害者の父母、配偶者、子は加害者に対して慰謝料を請求できます。さらに、被害者本人も慰謝料を請求を請求することができます。ただし当然ながら、亡くなった本人は請求できませんので、相続人が慰謝料請求権を引き継いで加害者に請求することになります。

なお、死亡慰謝料では本人が死亡しているため、通院日数は金額の決定に影響しません。

交通事故で入通院した場合に請求できる慰謝料の相場

入通院慰謝料は、怪我の治療費や入通院する際の負担や手間を賠償する金銭ですので、通院日数や通院期間が慰謝料の額に大きく関わってきます。また、計算基準によって請求できる金額が異なります。

では、具体的に請求できる金額はどのくらいになるでしょうか。今回は、「交通事故による骨折によって10日間入院、退院後に15日間通院し、完治するまでに2ヶ月間かかった事例」で具体的な計算方法を解説します。

自賠責基準での計算

自賠責基準で算出する場合、「対象日数×4,300円(2020年3月31日以前は4,200円)」で金額が決定します。

対象日数は、怪我の態様、実通院日数などを勘案して決まります。基本的には通院日数×4,300円ですが、場合によっては実通院日数以下しか認めてもらえない可能性があります。また、実通院日数だけではなく通院期間でも判断してもらえる可能性があります。

POINT
今回のケースでは骨折という重症案件なので、実通院日数よりも通院期間として、入院の10日間のほか、通院期間2カ月=60日、合計70日が対象日数になる可能性が高いです。したがって、自賠責基準を用いて計算した場合にもらえる入通院慰謝料は、70日×4,300円=301,000円になります。
任意保険基準での計算

現在、任意保険基準の具体的な計算方法は非公開になっています。しかし、平成11年6月30日以前は「旧任意保険基準」という算定基準が存在しており、全ての任意保険会社がこの算定基準にしたがっていました。

平成11年7月1日に、規制緩和によって旧任意保険基準は撤廃されましたが、現在もいくつかの保険会社は旧任意保険基準の一部または全部を踏襲した基準を使用しています。以下に旧任意保険基準を掲載しますので、興味がある方は参考にしてください。

旧任意保険基準(単位:万円)

 入院1月2月3月4月5月6月
通院 25.250.475.695.8113.4128.6
1月12.637.86385.6104.7120.9134.9
2月25.250.47394.6112.2127.2141.2
3月37.860.482102.2118.5133.5146.3
4月47.869.489.4108.4124.8138.6151.3
5月56.876.895.8114.6129.9143.6155.1
6月64.283.2102119.8134.9147.4157.6

表の見方としては、縦列を通院期間、横列を入院期間とし、該当する月が交わる箇所に記載された数字が旧任意保険基準で支払われる入通院慰謝料になります。実際の示談交渉では、慰謝料とは別に、病院に通う際に発生した交通費なども請求できます。

先ほどと同様に、骨折してから10日間入院し、通院期間が2ヶ月であったケースで計算してみましょう。

今回は入院期間が1ヶ月未満ですので、通院期間のみを参照します。通院期間は2ヶ月ですので、該当箇所に記載されている金額は252,000円になります。したがって、今回のケースを旧任意保険基準で計算すると、252,000円の入通院慰謝料が支払われます。

自賠責基準で計算したときの金額は215,000円だったので、旧任意保険基準の方がやや高額の慰謝料がもらえることがわかります。

弁護士基準での計算

弁護士基準は、財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「損害賠償額算定基準」(通称、赤本)に記載されている「入通院慰謝料算定表」を利用して計算します。

弁護士基準では、通常の怪我とむちうちなどの軽傷で使用する表が異なります。打撲や捻挫など、レントゲン、MRI等の画像上で特段の異常が見られない程度の怪我では軽症用の図を参照します。それぞれの表は以下の通りです。

入通院慰謝料算定表 通常の怪我用(単位:万円)

 入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
通院 53101145184217244266284297306314321
1月2877122162199228252274291303311318325
2月5298139177210236260281297308315322329
3月73115154188218244267287302312319326331
4月90130165196226251273292306316323328333
5月105141173204233257278296310320325330335
6月116149181211239262282300314322327332337
7月124157188217244266286304316324329334339
8月132164194222248270290306318326331336341
9月139170199226252274292308320328333338 
10月145175203230256276294310322330335  
11月150179207234258278296312324332   
12月154183211236260280298314326    

入通院慰謝料算定表 むちうちなどの軽症用(単位:万円)

 入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
通院 356692116135152165176186195204211
1月195283106128145160171182190199206212
2月366997118138153166177186194201207213
3月5383109128146159172181190196202208214
4月6795119136152165176185192197203209215
5月79105127142158169180187193198204210216
6月89113133148162173182188194199205211217
7月97119139152166175183189195200206212218
8月103125143156168176184190196201207213219
9月109129147158169177185191197202208214 
10月113133149159170178186192198203209  
11月117135150160171179187193199204   
12月119136151161172180188194200    

旧任意保険基準の表と同様に、縦列を通院期間、横列を入院期間とし、該当する月が交わる箇所を見ます。そこに記載された数字が弁護士基準で支払われる入通院慰謝料になります。

それでは、入院日数が10日で通院期間が2ヶ月の骨折事故の慰謝料を計算してみましょう。骨折はレントゲン画像ではっきりと傷害がわかる怪我ですので、通常の怪我用の表を使用します。入院期間は1ヶ月未満、通院期間は2ヶ月であるところ、該当箇所に記載されている金額は520,000万円になります。

したがって、今回の事例を弁護士基準で計算した場合、支払われる入通院慰謝料は520,000円になります。自賠責基準を用いて計算すると215,000円でしたので、2倍以上の慰謝料がもらえることになります。

修正計算式
入院:(530,000円÷30日)×10≒176,666円(A)
通院(退院後と仮定、期間請求):520,000円(B)
A+B=596,666円

ただし、個人で弁護士基準の金額を請求しても、相手方の保険会社は任意保険基準の金額しか支払おうとしません。その場合は、弁護士基準で慰謝料請求してくれる弁護士への依頼がおすすめです。

弁護士に依頼する際は弁護士費用がかかりますが、ご自身が加入している任意保険に「弁護士特約」がついていれば、保険会社が300万円を限度として弁護士費用を支払ってくれます。

最小限の費用で最大限の金額を回収できるため、積極的に弁護士特約を利用しましょう。

適切な通院頻度はどのくらい?

では、適切な通院頻度はどのくらいでしょうか。通院日数が少ないケースと多いケースを比較してみます。

1通院日数が少ないケース

入通院慰謝料の自賠責基準は「対象日数×4,300円(2020年3月31日以前は4,200円)」で金額を計算します。対象日数は「通院期間の全日数」と「実通院日数(入院した日数と通院した日数)×2」のうち少ない方になります。そのため、実通院日数が少ないと適正な慰謝料が支払われないことになります。

具体例として、交通事故で骨折したケースを見ていきましょう。通院期間が2ヶ月(60日)、入院期間なしで通院日数は8日とします。

自賠責基準で計算した場合、通院期間(60日)よりも実通院日数(8日)の2倍の方が少ないので、8×2=16に4300をかけます。16×4300=68800ですので、通院日数が8日の事例で支払われる入通院慰謝料は68,800円になります。

 このように、治療期間に比べて通院日数が少ない場合は、支払われる慰謝料が大きく減額されてしまうため注意が必要です。
2通院日数が多いケース

通院期間は同じ2ヶ月(60日)で、32日通院したケースを見ていきましょう。このケースでは、通院期間(60日)の方が実通院日数(32日)の2倍よりも少ないため、60に4300をかけます。60×4300=258000ですので、通院日数が24日の事例で支払われる入通院慰謝料は258,400円になります。

このように、実通院日数が8日のケースに比べて、24日の方が20万円弱ほど多く慰謝料をもらえることがわかります。一方で、実通院日数の2倍が通院期間を超えた分の慰謝料は請求できません。やみくもに毎日通院すればいいわけではないので気をつけましょう。

POINT
適切な慰謝料をもらうためには、軽傷の場合は週2〜3日程度、または月10日程度通うのが合理的になります。

交通事故の慰謝料が増額・減額される場合とは

必ずしも上記の計算方法で算出した金額が支払われるわけではありません。個々の事例の特別な事情を加味して金額が増額または減額することもあります。ここからは、交通事故の慰謝料が増額・減額するケースについて説明します。

慰謝料が増額するケース

交通事故による慰謝料が増額する要因について紹介します。

加害者に故意・重過失がある

交通事故の加害者が意図的に事故を引き起こした(故意)と認められた場合、請求できる慰謝料を増額できる可能性があります。

また、無免許運転、飲酒運転、ひき逃げなど、事故につながることが容易に予測できるにもかかわらず、加害者側に著しい注意不足があった(重過失)場合においても、請求できる慰謝料を増額できる可能性があります。

加害者の対応が不誠実である

交通事故を引き起こした加害者に十分な反省がみられなかった場合は、請求できる慰謝料を増額できる可能性があります。

被害者に誠意のある謝罪をしない、取調べの際に虚偽の供述をするなど、加害者の対応が不誠実であったときは請求できる慰謝料が増額できる可能性があります。

特別な事情がある

交通事故の発生により、被害者に特殊な被害が発生した場合は慰謝料の増額事由になる場合があります。

具体的には、被害者の女性が、交通事故で傷害を受けたことにより胎児を出産できなくなった場合や、外傷が理由で離婚に至った場合、被害者の親族が精神疾患になってしまった場合が該当します。

慰謝料が減額するケース

交通事故による慰謝料が減額する要因について紹介します。

通院日数が少なすぎる、または多すぎる

通院日数が少なすぎると、怪我の程度が小さいと判断されて支払われる慰謝料が減額されるケースがあります。また、通院の目的は「治療」ですので、過度な通院は必要限度を超えたものと判断されて、同じく減額されるケースがあります。

 特に、怪我の治療に整骨院に通っている場合は、必要以上に通院していると慰謝料が減額される可能性が高くなります。
被害者側にも過失がある

交通事故が発生した理由に被害者の過失があった場合は、過失割合に応じて支払われる慰謝料が減額します。これを過失相殺といいます。過失割合の決定は民事上の問題ですので、警察ではなく当事者が契約している保険会社が協議して決定します。

例えば、100万円の慰謝料が支払われるケースで、加害者側と被害者の過失割合が70対30であった場合は、30万円が減額されて70万円の慰謝料が支払われます。

なお、自賠責基準では、重過失でない限りは減額されません。自賠責基準は最低限支払われる保険金ですので、最低限のラインを下回る減額は基本的にありません。

怪我の拡大につながる素因を持っている

交通事故による怪我の発生・拡大の原因に、被害者の心身の状態(素因)がある場合、請求できる慰謝料が減額される場合があります。これを「素因減額」といいます。

素因には、精神的な疾患である「心因的素因」と、身体的な疾患である「身体的素因」があります。

心因的素因には、うつ病などがあります。うつ病によって事故後の通院回数が少なくなり、怪我の治療が遅れてしまうと素因減額される場合があります。

身体的素因には、椎間板ヘルニアなどの既往症があります。過去に患っていた椎間板ヘルニアが交通事故によって再発症した場合は、再発症した分まで慰謝料請求できるのではなく、一定割合で素因減額されます。

まとめ

交通事故の慰謝料の計算には通院日数が関係します。ただし、全ての慰謝料で通院日数が関係するわけではなく、慰謝料の種類や計算基準によって異なります。

自賠責基準では、通院日数が少なすぎると支払われる慰謝料が大きく減額されてしまいます。週に2〜3日のペースでの適度な通院が重要です。また、個々の事情に応じて、慰謝料額が増額・減額する場合があります。増額・減額事由に当てはまっていないか事前に確認しておきましょう。

さらに多くの金額を請求したいときは、弁護士基準で請求するのがおすすめです。加害者側の保険会社に納得してもらえるように、弁護士に依頼することでより高額の慰謝料を請求できます。 解決に向けてぜひ無料の相談なども検討してみてください。

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