交通事故の被害者になり、相手方に慰謝料・示談金を請求したとき、お金を受け取れるのはいつになるでしょうか。治療費や休職による収入低下など経済的に不安定になるので気になる点だと思います。
交通事故の慰謝料が支払われるのはいつ?
交通事故の被害に遭ってケガをすると、治療費がかかったり、仕事を休まざるを得なくなって収入が低下したりしてしまうため、慰謝料等のお金がいつもらえるようになるかは重要な問題です。
はじめに、交通事故での慰謝料はいつごろ支払われるかを解説します。
交通事故の慰謝料や損害賠償金の支払い日はいつ?
交通事故の被害者が受け取る慰謝料や損害賠償金は、示談が成立してから2週間ほど経過した日に保険会社から支払われます。
支払い日は事例や保険会社によって異なり、1週間程度のこともあれば、2週間以上かかることもあります。2週間と聞くと早いように思われますが、ここで注意するのは、支払日は「示談」の成立から2週間という点です。
つまり、示談が成立しないと、いつまでも慰謝料は支払われないことになります。
交通事故の示談はどれくらいで成立するか?
交通事故の示談は平均2~3か月で成立するとされています。ただ、これはあくまでも目安であり、被害者と加害者双方の事情によってさらに時間がかかる可能性もあります。
また、3か月程度で成立するにしても、事故によって金銭面で不安定になることを考えれば、かなりの期間を要するといえるでしょう。
交通事故で慰謝料支払いまでの期間を短くするには?
こうした事態を防ぐため至って良い手段といえるのが、弁護士などに示談交渉を依頼することです。交通事故の示談対応に慣れている弁護士なら、交渉をスムーズに進め、示談成立までの期間を短くすることができるでしょう。
また、交通事故の慰謝料には、金額の算定基準がいくつか存在し、弁護士に依頼することで受け取れる慰謝料が増額される可能性もあります。事故の被害に遭い、示談交渉や慰謝料支払いに関してお悩みの方は、一度、弁護士への相談を検討してみると良いでしょう。
交通事故の示談成立までの流れ
ここからは、示談とはどのようなものかもう少し詳しく説明した上で、交通事故の発生から示談が成立するまでの流れをみていきます。事故は加害者側が悪いのは当然ですが、被害者側も注意して行動しないと、もらえる慰謝料が結果として減額されることがあります。
示談とは
示談は紛争や法律問題を話し合いによって解決する手段で、交通事故以外にも離婚問題や刑事事件など様々なトラブルで行われています。示談が成立すると、加害者からの謝罪や示談金の支払いがあり、交通事故の場合、このときに示談金が保険金という形で相手方の保険会社から支払われます。
示談金は双方が納得できれば、特に法律上に規定はなく、合意した金額で決めて良いことになっています。しかし、交通事故では、被害者側はなるべく多くの慰謝料を支払ってもらいたいと考えますし、加害者側の特に保険会社はなるべく支払う保険金の額を低くしたいと考えます。
事故が起きてから示談成立までの流れ
実際に事故が起きてから示談成立までの流れを解説します。
交通事故の被害に遭ったときは、まず警察に通報するとともに、相手の連絡先を確認するようにしてください。交通事故では、どんな小さな事故でも必ず警察を呼ぶようにしましょう。
警察に通報して事故届を提出しないと人身事故として処理されず、自動車安全運転センターから発行される「交通事故証明書」をもらうこともできないので、示談交渉で不利になる可能性があります。加害者から警察に連絡しないよう頼まれても絶対に応じないでください。警察への通報は道路交通法に定められている義務です。
事故に遭ったら、当日に必ず病院へ行くようにしてください。もし自力で動けなさそうな場合は救急車を呼びましょう。
軽症の場合は、その日は特に痛みを感じないこともありますが、交通事故のケガでは後日、症状が出てくることもあるので、必ず病院で診てもらうようにしてください。初診時には、事故とケガの因果関係を証明する証拠として診断書を書いてもらうようにしましょう。事故後、しばらくしてから異常に気づいて病院に行くと、ケガと事故の関連性を証明するのが難しくなります。
診断の結果、入通院が必要と判断されれば、医師の指示に従って適切な治療を行います。家庭の事情や仕事が忙しいからといって通院するのをサボると、相手方に「本当に大したことのないケガなのでは?」と思われて慰謝料の交渉で不利になることがあります。
治療は医師から完治または病状固定と診断されるまで続けるようにします。「病状固定」とは、これ以上治療を続けても、症状が改善されない状態のことを指します。完治や病状固定になると、入通院への慰謝料や治療費、ケガで仕事を休んだことに対する休業損害の支払いは終了します。
病状固定後も何らかの後遺症が残った場合には、後遺障害等級の認定を受け、加害者に後遺障害慰謝料等を請求できます。どのような後遺症でも認められるわけではなく、「損害保険料率算出機構」への申請を行い、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。
医師から後遺障害診断者を書いてもらい、結果が出るまでの調査期間は通常1〜2か月とされます。後遺障害は1級から14級に分類され、1級が一番重く、数字が大きいほど軽症になります。
後遺障害が認定されると、後遺症が無ければ仕事などで将来発生したと考えられる収入の補填として逸失利益の請求もできるようになります。
相手方の加入している保険会社との間で示談交渉を行います。実際には、治療費などの話し合いがあるので、事故後、もっと早い段階で保険会社から連絡がきます。示談交渉の開始時期は、ケガが完治または病状固定して損害賠償額の目安が分かるようになってからのほうが望ましいです。
入通院慰謝料や後遺障害慰謝料の額がどの程度かが把握できないと、交渉がスムーズに進みませんし、相手の提示する慰謝料額も低いものになると考えられます。このとき、弁護士に依頼すると、弁護士があらためて慰謝料額を計算し、保険会社と交渉を行ってくれます。
交渉の結果、双方が合意に達した場合は示談成立です。最初の項目で述べたように、2週間ほど経過したところで、保険会社から保険金という形で損害賠償金が支払われます。
交渉しても相手方と金額の面で折り合いがつかず、示談が成立しないケースもあります。この場合は、裁判所に訴えを起こし、民事裁判による解決を行います。上で触れた「弁護士基準」は「裁判基準」とも呼ばれ、裁判を起こすとこちらの算定基準が適用されるため、請求できる慰謝料が高額になります。
以上が、交通事故が起こってから示談までの流れです。それぞれの段階で事情によりかかる期間はまちまちですが、交通事故で示談が成立するまでには数か月から1年程度と思っておいたほうがいいでしょう。
示談交渉自体は平均2~3か月といわれていますが、治療が終わらないと正確な損害額が分からないので、ケガの程度にも左右されます。さらに裁判を起こせば2年ほどを要することになります。出来る限り裁判ではなく示談での解決を目指し、交渉もなるべく早く進めることが望ましいといえます。
そうなると、やはり個人での交渉は難しいと考えられるため、法律に詳しい弁護士などへの依頼をおすすめします。
交通事故の慰謝料が支払われる方法は?
相手方との示談が成立し、慰謝料が支払われるときの方法はどうなっているのでしょうか。実際の損害賠償金の支払い方法を解説します。
慰謝料の支払いは一括振込が原則
交通事故の損害賠償金の支払いは、銀行振込による一括払いが原則です。通常は、保険会社から送られてくる示談書に被害者の銀行口座を記載する欄があり、そこに記入した口座が振込先になります。
示談成立から慰謝料支払いまでの流れ
示談が成立すると、相手方の任意保険会社から「示談書」が送られてくるので、内容を確認して署名・捺印を行い返送します。保険会社に到着後、事務手続きが行われ、賠償金・慰謝料が振り込まれます。
示談書の送付と返送にそれぞれ3日程度、保険会社での手続きに3~7日程度、計1~2週間ほどかかります。示談さえ成立すれば、しばらく待つだけでまとまった額のお金を手にすることができ、治療費や生活費に不安のある方には嬉しい支払い方法といえます。
加害者が任意保険に未加入だと支払いが遅れることも
加害者が任意の自動車保険に加入しておらず、自賠責保険だけの場合は、慰謝料が分割になって支払いが遅れる可能性があります。自賠責保険はすべての自動車に加入が義務付けられているものですが、交通事故における最低限の補償を目的としているため、支払われる保険金に限度額が決められています。
通常、これを越える金額については、加害者の加入している任意保険から支払われることになっているのですが、任意保険に未加入だと限度額以上の支払いができなくなってしまいます。
もちろん、この場合も慰謝料が免除されるわけでなく、加害者から直接払ってもらうことになるのですが、加害者に金銭的に余裕がないと直ちに払えない可能性があります。特に、大きな事故で賠償額が高額になるケースでは、これが原因となって示談交渉が遅れたり、一括で払えないので分割での支払いを提案されたりします。
分割でもきちんと払ってもらえるなら良いのですが、保険会社と違い、加害者から直接となると、支払いが遅れたり、途中で滞ってしまったりする恐れがあります。
また、加害者からの慰謝料の支払いが遅れているなどのトラブルに遭遇している場合は、弁護士などに相談するようにしてください。
交通事故の慰謝料支払いの前に受け取れるお金
ここまで、交通事故が起きてから示談が成立し、慰謝料が振り込まれるまでの一連の流れを説明してきました。しかし、事故発生から慰謝料の受け取りまでに数か月から1年ほどかかると聞くと、不安に思われる方も多いかもしれません。
事故でケガをしてしまうと、治療費がかかるのはもちろん、仕事を休む必要が生じて収入が減少することもあります。多くの方は事故後、なるべく早い段階でまとまったお金が欲しいと考えることでしょう。
治療費
入通院でケガの治療にかかる治療費は、示談成立前から支払ってもらうことが可能です。任意保険会社には、自賠責保険と任意保険の賠償金を一括して取り扱い、被害者に支払いを行う「一括対応」の制度があり、これを利用して治療期間中に治療費の支払いが受けられます。
任意保険会社に通院している病院の連絡先とともに一括対応してほしい旨を伝え、送られてくる書類に署名・捺印して返送します。この場合、治療費は被害者に対してではなく、病院に直接支払われます。
休業損害
休業損害は、事故によるケガで会社を休まなければならなくなり、収入が減少したことへの補償となるお金で、保険会社に申請することで示談成立前に支払いを受けられます。
申請を行うと保険会社から「休業損害証明書」が送られてくるので、勤務先に作成を依頼し、出来上がったものを返送します。休業損害は給料と同じように、毎月振り込んでもらうことが可能です。
通院交通費
病院への通院にかかった費用は実費で請求することができ、こちらも治療費や休業損害同様に示談成立前に受け取れます。交通費で認められるのは必要性のあるものだけで、電車やバスが使えるのにタクシーを利用した場合などは支払い対象外になることがあります。
仮渡金
自賠責保険の「仮渡金」制度を利用すると、賠償金の決定前に保険会社にまとまったお金を請求できます。交通事故の発生から示談交渉が成立し、慰謝料の支払いを受けられるまでには、短くても数か月、後遺障害等級認定の申請をする場合なら1年近くかかることもあります。
しかし、治療費などのお金は事故後から必要になりますし、被害者によっては経済的に余裕がない方もいます。そこで、自賠責保険には必要なお金を直ちに受け取れる仮渡金制度が設けられており、ケガの程度によって法令で受け取れる金額が決められています。
ケガの程度と受け取れる金額
傷害の程度 | 金額 |
---|---|
・死亡事故 | 290万円 |
・脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められるもの ・上腕または前腕の骨折で合併症のあるもの ・大腿または下腿の骨折 ・内蔵の破裂で腹膜炎を併発したもの ・14日以上の入院が必要な傷害で、30日以上の期間、医師の治療を要するもの | 40万円 |
・脊柱の骨折 ・上腕または前腕の骨折 ・内蔵の破裂 ・病院への入院が必要な傷害で、30日以上の期間、医師の治療を要するもの ・14日以上の入院が必要な傷害 | 20万円 |
・11日以上医師の治療が必要な傷害 | 5万円 |
もし、上記の表に該当するケガでない場合は仮渡金を請求することはできません。請求に必要な書類は以下になります。
・交通事故証明書
・事故発生状況報告書
・医師による診断書
・請求者の印鑑証明書
・委任状(代理人による請求時)
・委任者の印鑑証明書(代理人による請求時)
・戸籍謄本(死亡事故の場合)
請求から支払いまでは1週間程度ですが、仮渡金を請求できるのは1度のみと決まっている点には注意してください。また、仮渡金は保険金を仮に前渡ししているお金のため、最終的には示談後の保険金から支払われた分が差し引かれます。
被害者請求
被害者自身が相手からの自賠責保険会社に限度額の範囲内で保険金の支払いを請求する制度です。自動車損害賠償保障法16条1項では、「被害者は保険会社に対し、保険金額の限度において損害賠償の支払いを請求できる」と定められています。
この手続きは、示談の成立前であっても可能で、被害者にとっては示談途中でお金を手に入れるための有力な方法といえます。
仮渡金と似ていますが、こちらは支払い額があらかじめ定められておらず、自賠責保険の計算方法に基づいて決定されます。自賠責保険では入通院1日につき、賠償額4300円と決まっていて、以下の2つの計算方法のうち金額の少ないほうが適用されます。
自賠責基準の慰謝料の計算方法
①4300×治療期間
②4300×実通院日数×2
例えば、治療期間3か月で週に3日通院していた場合は、
①4300×30日×3か月=38万7000円
②4300×3日×4週間×3か月×2=309600円
となり、金額の少ない②の30万9600円が請求できる金額になります。後遺障害に認定された場合は、等級に応じて後遺障害慰謝料の請求もできます。
被害者請求に必要な書類は以下になります。
・交通事故証明書
・交通事故発生状況報告書
・医師による診断書
・診療報酬明細書
・交通費明細書
・付添看護自認書(付添看護があったとき)
・休業損害証明書(休業で収入が減少したとき)
・請求者の印鑑証明書
・委任状(代理人による請求時)
・委任者の印鑑証明書(代理人による請求時)
・後遺障害診断書(後遺障害分の請求時)
・レントゲン写真等(後遺障害分の請求時)
・戸籍謄本課(死亡事故)
通常は1週間程度で保険金が支払われ、限度額の120万円に達するまでは何度でも請求可能です。ただ、任意保険会社の一括対応中に被害者請求を行うと、一括対応を受けられなくなるので注意が必要です。
損害賠償金の内払い
加害者の任意保険会社から保険金を示談前に前払い対応をしてもらうことを内払いといいます。通常、加害者側の任意保険会社から示談成立前に受け取れるのは治療費など決まったお金だけですが、交渉次第ではそれ以外の項目の損害賠償金も支払ってもらえる可能性があります。先に述べた休業損害や交通費などは内払いによって受け取ることができるようになります。
保険会社も、実際に交通機関を利用して出費がはっきりしている交通費や収入の減少が証明できる休業損害は先払いしてくれることが多いです。一方、精神的苦痛への補償である慰謝料については支払いを渋る可能性が高いため、内払いを申請するときは、なぜお金が必要なのかを明確に説明する必要があります。
人身傷害保険の保険金を受け取る
被害者自身やその家族が人身傷害保険のある自動車保険に加入している場合、示談成立前に保険金を受け取れることがあります。人身傷害保険とは、自動車事故で運転者や同乗者が死傷した際、治療費や休業損害などを補償するものです。
搭乗者傷害保険の保険金を受け取る
こちらも被害者自身かその家族の加入している自動車保険に含まれるもので、搭乗者傷害保険付きであれば、契約車の搭乗者全員のケガや後遺症に対して保険金が支払われます。過失割合に影響を受けることもなく、人身傷害保険もついている場合は両方から保険金を受け取れます。
人身傷害保険との違いは支払い時期です。搭乗者傷害保険の場合、治療などにおける一時金としての役割もあり、入通院が5日以上になった時点で支払いが行われるため、かなり早くお金を受け取る可能性があります。
まとめ
交通事故の慰謝料は、一般的に示談成立から2週間ほどで支払われます。ですが、示談交渉自体に数か月から1年ほどの期間を要するため、事故発生から数えるとかなりの期間が経たないと慰謝料を受け取ることはできません。
治療費など一部のお金は成立前に支払いを受けることもできますし、賠償金の前払い制度もありますが、最終的な保険金から差し引かれるデメリットもあります。やはり何よりも良いのは、早期に相手方との示談を成立させることといえます。
そのためには、弁護士に依頼するのが一番確実な方法です。弁護士であれば、交渉期間を短縮できる上、弁護士基準が適用されて請求できる慰謝料も高くなります。交通事故の被害に遭い、慰謝料について悩んでいる方は、交通事故に強い弁護士への依頼を検討してみてください。
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