バイク事故による脊髄損傷の後遺障害等級はどうなる?

脊髄損傷の受動原因として多いのは「交通事故」です。

「脊髄損傷をしてしまうとどのような症状が出るのか?」
「完治できない場合は、どのような対応を行えばいいのか?」

交通事故の割合から言えば、多くが四輪の車による事故が原因となっていますが、利用人口が四輪と比較して圧倒的に少ないはずの、バイクによる事故が原因となっているケースがかなり見られ、バイクを利用する方にとっては決して無視できない統計となっています。

この記事では、バイク事故による脊髄損傷について解説します。

執筆・監修者

執筆・監修:豊川祐行

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。 あまた法律事務所へのお問い合わせはこちら

脊髄損傷はどのような症状?

脊髄損傷を負ってしまうとどのような症状が表れるのでしょうか?

症状について

人間は脳幹の直下からみぞおちの辺りまで、背骨に保護される形で脊髄が伸びています。それぞれ「頚髄」「胸髄」「腰髄」「仙髄」の4つの部位に分かれており、交通事故などの激しい衝撃を受けることで背骨が損傷し、中で保護されている脊髄までもが損傷を受けることにより、それぞれの脊髄がつかさどる神経に支障をきたし、痙攣などの症状を起こしたり、ある程度の運動能力が損なわれてしまう「不全まひ」の状態や、全く運動能力が消失してしまう「完全まひ」の症状が表れます。

原因

脊椎に対して強い衝撃が加わり、脱臼や骨折することによって、保護されている脊髄を損傷してしまうことが原因となります。高所からの落下や転倒などが原因となることもありますが、NPO法人日本せきずい基金の日本における脊髄損傷疫学調査によると、脊髄損傷の原因となるのは、交通事故が圧倒的に多く、その次に高所転落や転倒が続きます。

利用者人口の割合から考えると、交通事故の中でもバイクの運転中の事故により、脊髄損傷となってしまったケースがかなり目立っています。

改善の見込み

損傷した脊椎を手術で固定することはありますが、脊髄損傷の場合、永続的な重度の障害を引き起こす可能性があります。そのため、外傷が治った後も、長期のリハビリテーションを受けることが必要となり、身体機能の完全回復が見込めない場合は、車いすを使って自力で歩けるようにするとか、杖を使っての歩行ができるようにするのかなど、麻痺の程度に応じたゴールを決めてリハビリテーションに取り組む形になります。

脊髄損傷の後遺障害等級

脊髄損傷は後遺障害として認められています。後遺障害の程度によって等級が振り分けられて、各等級に対して支払われる保険金の額に違いがあります。

各等級への振分け目安

交通事故の後遺障害等級は、軽度の14級~重度の1級まで14段階に振り分けられます。
脊髄損傷は「神経系統の機能障害」となり、麻痺等が生じた部位及びその程度に応じて、第1、2、3、5、7、9、12級に該当する可能性があります。

等級該当するケース
第1級普段の生活の身の回りの動作に全面的な介助が必要となる
第2級生活維持のための動作に随時介助が必要となる
第3級身の回りの動作は可能だが、終始労務に就くことができない
第5級神経系統の後遺症や麻痺などで、特に簡単な仕事しかできない
第7級神経系統の後遺症や麻痺などが原因で、簡単な仕事しかできない
第9級仕事に就くことは可能だが、後遺障害により、就ける仕事に制限がある。
第12級労働には支障がないが、精神的神経的な後遺症が医学的に認められる

後遺障害等級認定の際に重要視されるもの

後遺障害等級認定の際に重要視されるのは、後遺症と見做される症状の直接的な原因が交通事故であるかどうか?と、後遺症に関しての医学的な所見になります。

脊髄損傷の場合、レントゲンなどの画像だけで判断することは難しいため、意識障害が起きているかどうかの診断や神経心理学的検査の実施によって、後遺障害の確認を行います。

脊髄損傷の損害賠償

脊髄損傷の損害賠償はどのくらい受け取ることが可能なのでしょうか?

慰謝料はいくらになる?

自賠責による慰謝料は以下の表の通りになります。

等級損害賠償金額
第1級2800万円
第2級2370万円
第3級1990万円
第5級1400万円
第7級1000万円
第9級690万円
第12級290万円

逸失利益についての計算方法、具体的な相場

逸失利益というのは、もしも被害者が交通事故の後遺障害がなければ、得られたと考えられる利益になります。

逸失利益の計算は

基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数で算定します。

・基礎収入額
基礎収入額は、サラリーマンなどの事業所得者であれば、事故に遭う前の収入金額、自営業などの事業所得者であれば、事故前の申告所得額になりますが、学生や子供など、収入がない方の場合は、原則として全年齢の平均賃金額を参考にして計算されます。

・労働能力喪失率
後遺障害によって、労働能力が失われてしまい、後遺障害の程度によって失われた利益を算出します。自賠責の労働能力喪失率表を参考にして算定されますが、最終的には、被害者の職業、年齢、性別、後遺障害の部位・程度、事故前後の稼動状況、生活状況などを総合的に判断して決められます。

等級労働能力喪失率
第1級100%
第2級100%
第3級100%
第5級79%
第7級56%
第9級35%
第12級14%

・労働能力喪失期間と中間利息
原則として、労働が可能な期間は67歳までとされており、事故の後遺障害によって能力が喪失したときから67歳までの期間が算定期間となっています。但し、67歳を超えても労働能力が認められることもあるため、最終的には、個別の事案によって判断が為されます。
逸失利益は原則として一括を前払いするものなので、その後発生する利息が計算されて控除されます。

その他、認められる損害賠償金

通院や入院による治療費、慰謝料、逸失利益の他にも、通院のために利用した交通費や、自営業の方や家事従事者の方が、後遺障害のために仕事ができなくなったことによる、休業補償も認められる可能性があります。

脊髄損傷の事故を弁護士に依頼するメリット

脊髄損傷の後遺障害となってしまった場合、損害賠償請求を弁護士に依頼することで、3つの大きなメリットがあります。

1.後遺障害等級が正しいかどうかの判断が可能

どの後遺障害等級に該当するのか?当事者が正確に判断することは難しいです。
前述したように、等級の振り分けには、各等級に該当する理由が明記されていますが、似たような言い回しが使われているものもあり、判断を誤って1等級下がることにより、数百万円も受け取れる金額が違ってきます。

交通事故の案件の対応経験が豊富な弁護士ならば、振り分けられた後遺障害等級が適切なものなのか?過去の事例を元にして正確に判断することが可能です。

2.受け取れる損害賠償金額が多くなる可能性がある

加害者側の保険会社が提示してくる損害賠償の金額は、裁判基準の賠償額よりもかなり低い金額であることが多いです。弁護士に依頼して適切な賠償金額かどうかの判断をしてもらい、相手側に請求することで、保険会社の提示金額を大きく上回る賠償金を受け取れる可能性が高いです。

3.相手側との交渉の負担が減る

相手側の保険会社と、休業補償や慰謝料の件などで交渉を行うことは、被害者にとって大きな負担となり強いストレスを感じることも少なくありません。ましてや、普通の状態ではなく、怪我に苦しんでいる中、保険会社や病院の対応を行うことは至難の業と言えるでしょう。

弁護士に依頼することにより、ほとんどの交渉を弁護士に任せることができるため、怪我の治療や回復に専念することができます。

バイク事故による脊髄損傷などの後遺障害についてまとめ

後遺障害等級の認定では弁護士へ依頼する事をおすすめしますが、どの弁護士事務所でもいいというわけではありません。弁護士事務所にもそれぞれ得意分野がありますので、交通事故関連を得意としている事務所を選ぶことが必要です。

無料相談などを利用して、交通事故関連の実績がどれだけある事務所なのか?依頼することにより、どのくらい金額が多く受け取れるかなどを確認してから、依頼費用とのバランスを考えて検討することをおすすめします。

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