インターネットの誹謗中傷で損害賠償請求された事例について解説

インターネットの誹謗中傷で損害賠償請求された事例について解説

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民法では、誹謗中傷などで精神的苦痛を受けた場合に、慰謝料を請求できる制度が規定されています。

この記事では、慰謝料請求の仕組みや金額の相場を確認しながら、実際に被害者から損害賠償請求されたときの対処法について解説します。

誹謗中傷で損害賠償請求はされる?

インターネットは匿名の世界のため、何を書き込んでも安全だと思われがちです。しかし、ネット上の書き込みといえども、法律に違反して他者の権利を侵害する発言をした場合は、身元が特定されて損害賠償請求されるおそれがあります。

ここからは、民法上の損害賠償と慰謝料の規定についてみていきます。

民法上の損害賠償請求の規定

民法709条は、「不法行為にもとづく損害賠償」を定めています。不法行為とは、故意や過失がありながら、違法行為によって他人に損害を与えることです。

そして、民法は、不法行為によって被った損害については、加害者に損害賠償請求ができると規定しています。

不法行為が成立するためには、

  • 行為によって他人の権利・利益を侵害したこと
  • その行為が故意や過失にもとづくこと
  • 被害者に損害があったこと
  • 行為と侵害および侵害と損害との間に因果関係があること

が必要です。

たとえば、名誉毀損をしたときや不倫をしたときや、人を殴ったとき、物を盗ったときなどに不法行為が成立します。なぜなら、これらは故意や過失に基づいており、違法行為によって被害者に損害を与えているからです。

誹謗中傷による慰謝料請求

ネット上で誹謗中傷された場合、民法709条の要件をみたすことを前提に、民法710条に規定されている慰謝料請求をすることになります。

ネットで誹謗中傷されると精神的苦痛を伴います。この精神的苦痛は、民法710条にいう「財産以外の損害」にあたります。そして、この精神的苦痛は、誹謗中傷をされたことが原因で発生したものですので、行為と損害との間の因果関係も認められます。

したがって、誹謗中傷の加害者に対して慰謝料を請求することができるのです。

誹謗中傷による慰謝料の相場

誹謗中傷によって名誉毀損が成立した場合に請求される慰謝料の金額は、一般的に個人で10~50万円、企業や事業主であれば50~100万円になります。侮辱にあたる場合は10万円程度です。

 もっとも、これらは一般的な相場ですので、この金額よりも高い慰謝料を請求される場合も当然あります。

誹謗中傷による損害賠償請求の流れ

誹謗中傷を受けた場合、どのような手順で損害賠償すれば良いでしょうか。

まず、損害賠償するためには発信者を特定しなければなりません。発信者の特定に成功すれば、裁判手続きに進むことができます。それぞれの詳細は以下の通りです。

発信者の特定(発信者情報開示請求)

誹謗中傷の発信者を特定することは困難と思われがちですが、法的な手順を踏めば、匿名で誹謗中傷した相手の特定をすることができます。

現行法で発信者を特定するには、プロバイダー責任制限法に定められている発信者情報開示請求をおこないます。

まず、プロバイダー責任制限法に基づきコンテンツプロバイダ(インターネット掲示板などのサイト運営者等)にIPアドレス等の開示請求をおこないます。

さらに、入手したIPアドレスの利用者の氏名や住所、電話番号について、経由プロバイダに開示請求することで、誹謗中傷の発信者を特定することができます。

内容証明郵便の送付

発信者を特定した後は裁判手続きに移ります。まず、発信者に対して内容証明郵便を送付し、損害賠償を請求する意思表示をします。

内容証明書とは、「誰が」「いつ」「どのような」内容の文章の手紙を、「誰に」発信して、相手が「いつ」受けとったか、を郵便局長が証明してくれる手紙の一種です。

内容証明郵便は手紙の一種ですが、厳格な形式であるため、受け取った相手方に「裁判になってしまう可能性がある」「請求から逃れられない」といった心理的圧迫を与えることができます。

また、裁判になったときに、内容証明郵便があることで、こちら側の主張が一貫していることの証拠になります。

示談交渉

裁判で損害賠償請求をする前に、多くの場合は示談交渉をします。示談交渉とは、裁判所の手は借りずに当事者の話合いによって損害賠償額を決める方法です。

示談のメリットは、費用がかからず、スムーズに進めば裁判より早く終わることです。双方が納得して合意証を取り交わすため、損害賠償もスムーズに支払われることが期待できます。また、相手方の言い分に納得いかない場合は異議を唱えることもできます。

ただし、示談は話し合いによってトラブルを解決する方法ですので、当事者双方の意見が食い違ったときは、示談の成立は困難になります。

妥協せずに自らの主張を通したいときは、示談ではなく裁判で解決させましょう。

損害賠償請求訴訟

示談交渉が決裂した場合は、損害賠償請求訴訟という裁判手続きによって、トラブルを解決します。裁判を始めるには訴状を提出する必要があります。

 請求する金額が140万円以下なら簡易裁判所、140万円を超えるときは地方裁判所に訴状を提出しなければならないので注意しましょう。

訴訟では、裁判所が当事者双方の主張内容を確認しながら判決が下されます。判決にはトラブルを終局的に解決させる効果があります。そのため、判決が確定したら、当事者は同じトラブルについて再び争うことが原則としてできなくなります。

判決が言い渡されると、その判決には執行力が認められます。執行力とは、強制執行を行うことができる力のことをいいますが、これがあると、相手が判決に従った支払いをしない場合に、判決書を使って相手の預貯金や不動産、給料等を差し押さえることができ、強制的に金銭を回収することができます。

損害賠償請求された具体的な事例

実際にネット上で誹謗中傷をしたことで損害賠償請求されたケースをみてきましょう。投稿の内容や損害賠償額をご自身が直面しているトラブルと比較して参考にしてください。

医師による誹謗中傷事件

福岡市で美容外科医院の院長をつとめる医師が、大阪市で勤務している美容外科医に対して誹謗中傷する書き込みをしました。

電子掲示板「2ちゃんねる」では、「独りよがりの考え」「口ばっかりで腕が伴っていない」「悪徳医」といった内容が書き込まれ、それを知った大阪市の美容外科医が損害賠償を求める訴訟を提起しました。

大阪地裁は、「投稿(書き込み)は原告(大阪の医師)の技能が低く、患者に多大な精神的ショックを与えるほどの失敗例があるという内容で、社会的評価を低下させた」という趣旨の指摘をし、福岡の医師に110万円の支払いを命じました。

女性ライター誹謗中傷事件

サイエンスライターの片瀬久美子さんが、森友・加計問題に関して「政府には説明責任がある」とツイッターに投稿したところ、それに反発した人達から言いがかりをつけられて炎上しました。

2017年7月から誹謗中傷をされるようになり、「昔淫売をやっていた」「娘にも淫売を強要している」「旦那は強姦魔」「研究費を着服した」「不正に学位を取得した」等の虚偽の情報を流布された上に、一方的にそれらが本当の事だと決めつけられました。

片瀬さんは、その中でも特に酷かったものについて法的対処に踏み切りました。情報開示請求によって本人を特定し、訴えを提起。判決では、被害者側の主張が全面的に認められ、投稿者に対して約260万円の支払いが認められました。

損害賠償請求されたらどうすればいい?

ここからは、逆に、誹謗中傷をした側の立場から、訴えられた場合にどのように対処すべきかを解説します。

あなたの元に、ある日突然、内容証明郵便が届き損害賠償を請求された場合、どのように対応すれば良いでしょうか。

おそらく、法律に詳しくない方は対処法が分からなくて戸惑ってしまうでしょう。ここからは、裁判に至る前の段階で、被害者から損害賠償を請求された場合にどのように対応すればよいのか解説します。

請求内容が正しいか確認する

まず、内容証明郵便が届いた場合は、請求内容が正しいか確認しましょう。

具体的には、不法行為に基づく損害賠償請求であれば、故意または過失があったかどうか、違法行為によって他人に損害を与えたかどうかを確認する必要があります。

そして、内容を確認した結果、法的に支払義務がなければ、損害賠償を支払う必要はありません。例えば、作品に対する批評を誹謗中傷と捉えられて賠償請求された場合、正当な批評は違法行為ではないため、損害賠償を支払う必要はありません。

もっとも、相手からの内容証明を無視した結果、訴えを提起されて損害賠償請求される可能性もありますので、慎重な対応が必要です。

金額が適正であるか確認する

請求内容が正しくても、損害賠償額が一般的な相場から逸脱している可能性があります。特に、誹謗中傷による精神的苦痛は人によって感じ方がさまざまであり、被害に遭った方が過剰な慰謝料を請求することもあります。そのため、相手の請求金額が妥当であるか確認することは大切になります。

POINT
特に、相手方に弁護士がついている場合には、通常よりも高い金額で賠償請求されるのが一般的です。請求額が不当であると判断した場合は、その後の示談交渉や裁判手続きで正当な金額を主張しましょう。

示談交渉する

提訴されて損害賠償請求されたり刑事告訴されたりするおそれがあるときは、裁判をする前に当事者同士で話し合う「示談交渉」によって、少しでも穏便にトラブルを解決することを目指します。

示談が成立すると、裁判に発展するのを防げるので、前科がつきません。また、慰謝料や損害賠償の額についても、交渉によって低くできる可能性があります。

弁護士に相談する

請求内容や請求金額の確認、示談交渉を進めるためには一定の法律知識が必要になります。

これらの手続きを自身で確認するのは大変と思うので、困った時は弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

中には、無料でカウンセリングをしてくれる法律事務所もあるので、迷ったときは気軽に電話相談から始めると良いでしょう。

まとめ

ネット上は匿名ですが、何を発言しても許されるわけではありません。今回紹介してきた通り、誹謗中傷がバレて損害賠償されたケースも複数あります。

もし、誹謗中傷がバレて被害者に損害賠償請求された場合は、内容と請求金額を確認しながら落ち着いて対処しましょう。不明な点が多くて一人で対処するのが困難な場合は、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。

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