インターネットの誹謗中傷の発信者情報開示請求にかかる費用はいくら?

インターネットの誹謗中傷の発信者情報開示請求にかかる費用はいくら?

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ネットで誹謗中傷の被害に遭った場合、発信者情報開示請求と呼ばれる手続きを踏むことで投稿者の個人情報を開示することができます。

本記事では、請求の流れやかかる費用について解説します。ネット上の誹謗中傷に悩んでいる方はぜひ一読してみてください。

発信者情報開示請求とは?

発信者情報開示請求とは、プロバイダ責任制限法第4条に基づき、書き込みを行った相手の個人情報の開示を求めることができる制度です。

法律で定められた手続きを踏むことで投稿者の情報を知ることができ、相手を特定して民事訴訟による慰謝料の請求などができるようになります。

現代社会ではSNSなどの浸透もあり、ネット上の誹謗中傷が表面化してきています。芸能人や著名人に対して誹謗中傷を行った発信者が実際に訴えられるケースも少なくありません。

特定の人物に対して誹謗中傷を行うことは違法行為で、これはネット上でも同様になります。また、内容によっては民事だけでなく、刑事上の責任を問われることもあります。

しかし、ネットの誹謗中傷は多くの場合、匿名のため誰が書き込んでいるのかがわからず加害者を訴えるのが難しいといった問題があります。

POINT
発信者情報開示請求は、被害者が泣き寝入りしないよう、投稿者を訴えるのに必要な情報を手に入れるための制度といえます。

開示される発信者の情報

発信者情報開示請求では以下の項目に関して開示を請求できます。

  • 投稿者の氏名
  • 住所
  • 電話番号
  • メールアドレス
  • IPアドレス
  • 携帯端末のインターネット接続サービス利用者識別番号
  • SIMカード識別番号
  • 投稿の発信時間(タイムスタンプ)

開示に必要な要件

上記の情報開示は、総務省令により定められています。そして、これらの情報を開示してもらうためには、以下の要件をみたす必要があります。

1特定電気通信による情報の流通

特定電気通信」とは、「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」と定義されています(プロバイダ責任制限法2条1号)。インターネット上のウェブサイトで行う、誰でも閲覧することができる情報発信のことを指しています。

2「自己の権利を侵害されたとする者」に該当すること

権利が侵害されたとする」とは、単に自らが被害を受けた旨を述べることで足りるとされています。

3権利が侵害されたことが明らかであること

権利侵害が存在すること、および、仮に権利侵害が存在するとしてもその違法性を例外的に無くしてしまう事情が存在しないこと、をいいます。

4正当理由の存在

発信者に対して損害賠償請求する民事上の責任を問う場合や刑事告訴するために発信者を特定する必要がある場合などが該当します。

5「開示関係役務提供者」に該当すること

開示関係役務提供者とは、特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者をいいます。たとえば、サーバーを提供している者、電子掲示板を管理している者、インターネットサービスプロバイダなどのことです。

6「発信者情報」に該当すること

投稿者の(氏名、住所、電話番号、メールアドレス、IPアドレス、SIMカード識別番号、タイムスタンプ等)をいいます。

7「保有」の要件

発進情報の開示の対象となる情報は、開示関係役務提供者が「保有」するものでなくてはならない。

発信者情報開示請求にかかる費用

発信者情報開示請求では、権利侵害を具体的に記載した書類や裁判所とのやり取りなど、法的な知識がないと一般の方には難しい手続きが多く、高度な法律知識や判断を必要とされます

個人で情報開示請求を行うことは不可能とはいえませんが、手間や必要時間を考えると得策ではありません。そのため、手続きに関しては、弁護士など法律の専門家に依頼するのがおすすめです。

専門家なら、各種必要書類の作成や手続きをすべて代行してくれますし、なかにはネットでの誹謗中傷問題に強い弁護士もいます。

弁護士に依頼する場合の費用

弁護士に手続きを依頼する場合、相談料や成功報酬などの費用が発生することになります。弁護士費用は高額というイメージがあり、こちらを気にする方もおられると思いますので、開示請求を依頼した場合の費用に関して説明します。

弁護士に支払う報酬には「相談料」「着手金」「成功報酬」「印紙代などの諸費用」などが含まれます。

・相談料 10000円~
弁護士に被害の内容や今後の対応について相談し、アドバイス等をもらう費用です。1時間1万円程度が相場ですが、初回相談無料にしている事務所もあります。

・印紙代など諸費用 数千円~
裁判所に開示の仮処分を求める場合、手数料の収入印紙や相手への書類送達にかかる切手代など諸々の費用がかかります。印紙代が2000円程度、切手代が1000円程度で金額的にそれほど高いものではありません。

ただ、こちらは仮処分の場合であって、経由プロバイダへの開示請求は通常の訴訟となりますので、手数料もそれに準じたものになり、請求額に見合ったものになります。

しかし、通常は請求額が確定できないとされ、一律160万円で計算されるため、印紙代はプロバイダ1社につき13000円となります。

・担保金 10万~30万
裁判所に仮処分を求める場合、法務局に担保金を供託する必要があります。もし訴えが不当なものであった場合、相手方が損害を被るのを防ぐのが目的です。

担保金の額は10万~30万円とケースによって異なりますが、通常は請求が認められれば返還を受けられます。

・着手金、成功報酬 30万~50万
弁護士に依頼する場合の着手金や訴訟に勝った場合の成功報酬は、弁護士事務所・法律事務所によって費用設定が異なります。

開示請求の場合は、着手金は20~30万円、成功報酬が10~20万円ほどで設定されているところが多いようです。

ただ、これはあくまでも相場であって、他の事務所と差別化するために相談料・成功報酬を無料としている事務所もありますし、着手金を安くしている事務所もあります。

・1件あたりの費用の相場
それでは、開示請求を行った場合の全体の費用はどれくらいになるのでしょうか。コンテンツプロバイダに対する仮処分を行う着手金・報酬金、そして経由プロバイダに対する開示請求訴訟が成功したときに着手金・報酬金を支払うことを想定した金額を示します。

弁護士への相談料や印紙代など約30000円+担保金50万円+着手金60万円+成功報酬40万円=153万円 が費用総額の目安になります。

ただ、費用はケースによって様々ですし、任意で開示してもらえたか、裁判に訴えたかによっても変わってきます。

上の計算では担保金や成功報酬などをすべて最大の金額で計算しているため、これより安くなる場合も多く、この金額はあくまでも目安として考えてください。費用に関しては実際に依頼する弁護士事務所で相談するのがいいでしょう。

依頼する際は、必ず複数の事務所を候補に挙げて費用を比較するようにしてください。最初から1つの事務所に絞ってしまうと、相場以上の金額を支払ってしまう可能性があるので、要注意です。

また、実際に依頼する際は弁護士事務所・法律事務所の評判・実績も確認するようにしましょう。

特にネットトラブルの場合、開示請求やアクセス記録の保全など特殊な手続きも多いため、なるべくネットの誹謗中傷問題に強く、これまでにも実績のある弁護士を選ぶのが望ましいといえます。

発信者情報開示請求の手順

開示請求の手順は、大まかに「コンテンツプロバイダへの情報開示請求」と「インターネットプロバイダへの情報開示請求」の2段階に分かれています。それぞれの手順について解説します。

コンテンツプロバイダへの情報開示請求

はじめに、実際に誹謗中傷を受けたサイトやSNSなどの運営者であるコンテンツプロバイダに対して開示請求を行います。ここでは、投稿者の個人情報そのものではなく、「IPアドレス」と「発信時間(タイムスタンプ)」といった経由プロバイダを特定するための情報を請求します。

コンテンツプロバイダの中には個人情報保護の観点から、請求に応じてくれないケースもあり、この場合は裁判所に開示のための仮処分申し立てを行う必要があります。

POINT
仮処分の決定は申立から2週間~2か月ほどで出され、発令された仮処分は、裁判所からの命令になるため、プロバイダは従わなくてはいけません。

経由プロバイダへの情報開示請求

コンテンツプロバイダから情報開示を受けたら、それをもとに投稿者が利用した経由プロバイダ(ISP:Internet Service Provider[携帯のキャリアなど])を特定していきます。

誹謗中傷の投稿を行う際は、いずれかのインターネットサービスを利用することになるため、IPアドレスをたどっていくことで、投稿者が利用したプロバイダを特定できます。

プロバイダが判明したら、加害者の個人情報開示を求めるのですが、その前に発信者情報消去禁止仮処分命令申立の手続きを行う必要があります。これは、プロバイダが投稿者のアクセス情報を消去してしまうことを防ぐためのものです。

申立の後、投稿者の氏名・住所などを開示させるための発信者情報開示請求訴訟へとうつります。

訴訟では、誹謗中傷の投稿内容が名誉棄損にあたるか否かが重点的に確認されます。違法な書き込みと判断されれば開示を認める判決が下されます。

開示された相手の個人情報をもとに投稿を行った加害者を特定し、民事での訴訟や刑事告訴ができるようになります。

 裁判手続きが完了するまでに6か月~1年程度かかり、すべての手続きを合わせると1年以上かかってしまう場合もあります。情報開示請求を行う場合は、なるべく早く手続きに動き出すことが肝要です。

ログ保存期間に注意

情報開示請求を行う際はプロバイダのログ保存期間に注意しなければなりません。ログとはサーバーやコンピューターに保存される通信記録のことで、この中にIPアドレスやタイムスタンプなどの情報が含まれます。インターネット上の匿名投稿はバレないと思われがちですが、実際はログ上に記録が残っている形です。

プロバイダの保有しているログは通常、3か月から半年で消されてしまい、それより短い期間で消去される場合もあります。

請求の手続きや裁判にこれ以上の時間をかけてしまうと、せっかく訴訟に勝っても開示を受けられず無駄になってしまうといった事態に陥ります。

発信者情報消去禁止の仮処分を求めることで、アクセス記録が削除されるのを未然に防ぐことができます。ネットで誹謗中傷の被害に遭ったときは、なるべく早く動かないと立証が困難になってしまう恐れがあります。

自身で手続きを進めると、ログの削除期限までに手続きを終えられないこともありますし、円滑に手続きを進めるのであれば、弁護士など法律のプロに依頼することがおすすめです。

ゆとりを持って弁護士・法律事務所に依頼をすれば、誹謗中傷の証拠が消えるまでに手続きを完了できる可能性は高くなります。

まとめ

ネット上で誹謗中傷の被害を受けた場合、発信者情報開示請求により書き込んだ相手を特定することが可能です。情報開示請求では法的な専門知識が求められるため個人では難しいと考えられ、手続きを円滑に進めるためにも弁護士に依頼するのがおすすめです。

発信者情報開示請求を弁護士に依頼する場合、仮処分命令の申し立て、発信者情報開示請求訴訟、それぞれ着手金が20~30万円、成功報酬が10~20万円ほどで設定されているところが多いです。ただ、弁護士事務所によって費用は異なってくるので、必ず複数の事務所を比較するようにしてください。

情報開示の手続きは、すべて完了させるのに1年ほどかかってしまうこともあります。誹謗中傷の投稿者を特定して訴えたい場合は、なるべく早く情報開示請求に動き出す必要があります。弁護士事務所を通じて、迅速に開示請求手続きを進めていきましょう。

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