交通事故の損害賠償金はいくらになる?基準や事例について

交通事故の損害賠償金はいくらになる?基準や事例について

交通事故で請求できる損害賠償の中には「慰謝料」があります。慰謝料には計算基準が複数あり、どの基準を適用するかで慰謝料の金額が大きく異なります。スムーズに増額させたい場合は、弁護士基準での慰謝料獲得を目指しましょう。

豊川先生
この記事では、賠償金を増やすために使うべき基準や、事故後に被害者ができることを紹介します。

交通事故の損害賠償とは

交通事故における損害賠償請求とは、加害者に対して治療費や慰謝料などを含む示談金を請求することを意味します。

交通事故の被害者は、相手方の安全運転の義務違反が原因で多大な損害を被ります。例えば、加害者が運転する車にぶつかって怪我をした場合、入通院にかかる治療費などが損害に含まれます。

民法709条・710条では、他人の権利ないし利益を違法に侵害し、損害を与えた者は、その損害の賠償責任を負うと規定されています。そのため、事故の被害者は加害者に対して、治療費、慰謝料、仕事を休んだ分の給料などについて損害賠償請求ができるのです。

交通事故の損害賠償金の種類

交通事故の被害者が請求できる損害賠償金はどのような種類があるのでしょうか。交通事故で被る損害には、大きく分けて「財産的損害」と「精神的損害」があります。

ここからは、交通事故における損害賠償金の種類について、財産的損害と精神的損害に分けて解説します。

財産的損害

財産的損害とは、衝突による車体の破損など、被害者の財産に生じた損害を指します。財産的損害は「積極損害」と「消極損害」に分かれます。

積極損害は、交通事故が原因で出費を余儀なくされた損害のことです。対して消極損害は、交通事故に遭わなければ得られたはずの利益のことです。

では、財産的損害を受けたときに請求できる損害賠償金はどのようなものでしょうか。ここからは、積極損害と消極損害で請求できる損害賠償金を紹介します。

積極損害で請求できる損害賠償金

財産的損害のうち、積極損害を受けたときは以下の損害賠償を請求できます。

治療費

交通事故による怪我を治療するために必要な費用です。診察費、検査費、手術費、薬代など、怪我の治療に必要なあらゆる費用が治療費に含まれます。

付添看護費

被害者が入通院する際に付添いが必要な場合にかかる費用のことです。付添看護費を受け取るには、付添いの必要性が認められなければならず、医師の判断や怪我の程度などから判断されます。

付添いの必要性が認められる場合、ヘルパーなどの専門家だけでなく、被害者の家族に付き添いを頼んだ場合でも付添看護費を請求できます。

入院雑費

入院中には治療費以外にもさまざまな雑費がかかります。例えば、日用品や栄養補給費、通信費などの支出があった場合、これらの出費を加害者に請求できます。

交通費

病院に着くまでにかかった交通費は加害者に請求できます。公共交通機関を使った際は、病院に着くまでに発生した交通費を原則として全額受け取れます。

女性
自家用車やタクシーを使った場合についても当該交通手段を使う必要性と相当性が認められる場合、一定の交通費が請求可能です。

葬祭費

交通事故で被害者が亡くなった場合には、葬儀や法要、墓碑の建立、仏壇・仏具を購入するための費用が発生します。これらをまとめて葬祭費とよび、一定の範囲内で加害者に請求できます。

家屋・自動車などの改造費

交通事故で後遺症を負うと、中には家屋や車両の改修・改造が必要なケースがあります。このとき、必要性が認められる程度で家屋・自動車などの改造費を加害者に請求できます。

物損

交通事故で車が損傷した際には、修理費用や買替費用を請求できます。さらに、修理したとしても修理歴・事故歴によって自動車の価値が下落したときは、その下落分についても加害者に請求できる場合があります。

消極損害で請求できる損害賠償金

財産的損害のうち、消極損害を受けたときは以下の損害賠償を請求できます。

休業損害

休業損害とは、交通事故の怪我が原因で仕事ができなくなったときに、本来受け取れるはずの収入がもらえなくなったことに対する損害を指します。実際に就業している労働者だけでなく、家事をおこなっている専業主婦も請求可能です。

POINT
休業損害の計算方法は、現実の収入額から算出された基礎収入額×休業日数で求めることができます。
逸失利益

逸失利益とは、交通事故に遭ったことで減少した将来の収入のことです。例えば、交通事故で後遺障害が残ってしまうと、将来の労働能力が減少します。労働能力が低下すると、本来もらえるはずの収入が減ってしまうため、減少した収入の補填として逸失利益を請求できます。

精神的損害

精神的損害は、心が傷つけられたことに対する損害を指します。交通事故に遭うと怪我による苦痛や入通院の負担を伴います。これらの精神的損害は加害者に損害賠償請求できます。

精神的損害の損害賠償金は、一般的に「慰謝料」と呼ばれます。では、慰謝料の金額はどのように決まるのでしょうか。ここからは、慰謝料の金額の算定基準について解説します。

慰謝料の算定基準

慰謝料の算定基準には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3種類があります。それぞれの計算基準の内容は以下の通りです。

自賠責基準

自賠責基準とは、「自賠責保険」が自動車損害補償法に基づいて支払う慰謝料の算定基準です。自賠責保険とは、自動車やバイクを運転する者の全てが加入することになる強制保険です。

POINT
自賠責保険は、人身事故の被害者に迅速に金銭を補償してくれますが、最低限の金額しか補償してくれませんので、3つの計算基準の中で他よりも低額の慰謝料になります。なお、自賠責保険の補償限度額は120万円と決まっており、この額を超えると任意保険から保険金が支払われます。
任意保険基準

任意保険基準とは、加害者側の保険会社が用いる慰謝料の算定基準です。示談交渉では、相手方の保険会社が慰謝料の金額を提示してきます。このときに提示される金額は、任意保険基準で計算したものになります。

任意保険基準は、各保険会社が独自に金額を設定しており、細かい提示金額は保険会社ごとに異なります。また、原則として任意保険基準は公開されておらず、外部の人は確認できません。

豊川先生
任意保険会社は営利企業である以上、自社の支出である保険金はなるべく減らそうとしてきます。それゆえに任意保険基準の金額は、自賠責基準よりは若干高いものの、本来支払われるべき弁護士基準の金額を大きく下回ります。

弁護士基準

弁護士基準は、過去の裁判例を参照した慰謝料の相場であり、日弁連交通事故相談センターが作成、公表しています。実際の裁判で認定される金額ですので「裁判基準」ともいいます。弁護士基準は、3つの算定基準の中で他よりも高額になります。

ですが、被害者本人が自力で弁護士基準の慰謝料を獲得するのは困難です。なぜなら、任意保険会社は自社の支出をなるべく抑えたいと考えているため、被害者の言い分を聞き入れてくれないケースがほとんどだからです。

このとき、弁護士に依頼すれば、弁護士基準の慰謝料を加害者側に請求してくれます。たとえ弁護士基準による慰謝料請求を断られたとしても、弁護士は民事訴訟を提起することが可能ですので、より確実に高額の慰謝料を獲得できます。

POINT
保険会社としては、民事裁判に発展するのは避けたいと考えるため、基本的に弁護士の増額請求が断わられることはありません。したがって、弁護士基準で慰謝料を請求したい方は、弁護士に依頼するのがおすすめになります。

損害賠償の弁護士基準による事例

弁護士基準を適用した場合、どのくらいの慰謝料を請求できるのでしょうか。いくつかの事例を参考に、弁護士基準の慰謝料を計算しますので、気になった方は参考にしてください。

事例① 骨折で3ヶ月通院したケース

交通事故の怪我で入通院を要する場合、被害者は加害者に対して「入通院慰謝料」を請求できます。入通院慰謝料は、治療期間によって請求できる金額が変動します。

弁護士基準で入通院慰謝料を計算する場合、日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している「損害賠償額算定基準」(通称、赤本)に記載されている「入通院慰謝料算定表」を使って計算します。

この算定表には、通常の怪我用とむちうちなどの軽症用の2種類があります。それぞれの表は以下の通りです。

入通院慰謝料算定表 通常の怪我用(単位:万円)

 入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
通院 53101145184217244266284297306314321
1月2877122162199228252274291303311318325
2月5298139177210236260281297308315322329
3月73115154188218244267287302312319326331
4月90130165196226251273292306316323328333
5月105141173204233257278296310320325330335
6月116149181211239262282300314322327332337
7月124157188217244266286304316324329334339
8月132164194222248270290306318326331336341
9月139170199226252274292308320328333338 
10月145175203230256276294310322330335  
11月150179207234258278296312324332   
12月154183211236260280298314326    

入通院慰謝料算定表 むちうちなどの軽症用(単位:万円)

 入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
通院 356692116135152165176186195204211
1月195283106128145160171182190199206212
2月366997118138153166177186194201207213
3月5383109128146159172181190196202208214
4月6795119136152165176185192197203209215
5月79105127142158169180187193198204210216
6月89113133148162173182188194199205211217
7月97119139152166175183189195200206212218
8月103125143156168176184190196201207213219
9月109129147158169177185191197202208214 
10月113133149159170178186192198203209  
11月117135150160171179187193199204   
12月119136151161172180188194200    

骨折で3ヶ月の通院を要するケースでは、通常の怪我用の算定表を使用します。すると、弁護士基準では73万円の入通院慰謝料を請求できることがわかります。

なお、自賠責基準で計算すると39万円程度しか請求できず、任意保険基準についても同等もしくは少し上回るほどの金額に留まります。したがって、弁護士基準で計算すると、自賠責基準や任意保険基準と比べて慰謝料が2倍近く増額することになります。

事例② 信号無視の自動車に衝突されたケース

慰謝料の計算には算定基準が設けられていますので、通常は各基準で算出した慰謝料を請求することになります。もっとも、信号無視やひき逃げなど、加害者に故意・重過失があるような悪質な事故では、各基準の慰謝料よりも高い金額を請求できます。

増額した例
信号無視の自動車に衝突されて、被害者が骨折、心筋挫傷、肺挫傷、両側血気胸を負ったケースでは、保険会社の提示額が100万円だったのに対して、弁護士の介入により1,200万円まで増額することに成功しました。

事例③ むちうち症状が残ったケース

むちうちで痺れや痛みが残った場合、入通院慰謝料に加えて「後遺障害慰謝料」を請求できます。

後遺障害慰謝料の金額は、審査機関に認定された「後遺障害等級」によって異なります。等級は1〜14級に分類されており、1級が何より高額の慰謝料になります。弁護士基準の計算で用いる後遺障害慰謝料の算定表は以下の通りです。

等級慰謝料額
第1級2800万円
第2級2370万円
第3級1990万円
第4級1670万円
第5級1400万円
第6級1180万円
第7級1000万円
第8級830万円
第9級690万円
第10級550万円
第11級420万円
第12級290万円
第13級180万円
第14級110万円

むちうちは後遺障害の中では比較的に軽く、基本的には14級に該当します。したがって、むちうちで後遺障害等級が認められた場合、請求できる後遺障害慰謝料は110万円になります。

一方で、自賠責基準で後遺障害慰謝料を請求する場合、14級の金額は32万円になります。

女性
弁護士基準と比べると大きく下回りますので、後遺障害を患ったときは是非とも弁護士に相談しましょう。

事例④ 被害者が亡くなったケース

交通事故で被害者が亡くなってしまうと、残された遺族の方たちが受ける悲しみは計り知れません。この精神的苦痛の賠償金として、遺族の方は加害者側に「死亡慰謝料」を請求できます。

弁護士基準で請求できる死亡慰謝料の金額は、被害者の家庭内の地位や属性によって異なります。死亡した被害者が一家の支柱である場合は2800万円、配偶者・母親の場合は2500万円、その他の場合は2000万円~2500万円の範囲で請求できます。

POINT
自賠責基準の場合、扶養家族がいなければ950万円〜1150万円しか請求できず、弁護士基準の方が2倍以上高額になるのが一般的です。

損害賠償金を増やすためにできること

交通事故で支払われる損害賠償の金額は、被害者の対応次第で増額できることがあります。ここからは、交通事故の損害賠償金を増やすためにできることについて解説します。

弁護士基準で慰謝料請求する

先ほどの説明の通り、弁護士基準で計算すると高額の慰謝料を請求できます。しかし、相手方の保険会社は交渉の熟練者であるため、自力で増額請求するのは現実的ではありません。

この場合は、弁護士に依頼することで弁護士基準の慰謝料を請求してくれます。面倒な書類作成や相手方との連絡についても一任できますので、スムーズに慰謝料を増額させたい方は弁護士に相談するのをおすすめします。

症状固定まで治療を続ける

医師が「症状固定」と判断するまでは、治療を続けるようにしてください。

症状固定とは
これ以上治療を続けても怪我の改善が見込めない状態を指します。そして、症状固定までは相手方の保険会社から治療費を受け取れます。

保険会社としては、なるべく治療費を支払いたくないため、症状固定の前に治療費の打ち切りを打診してくることもあります。しかし、症状固定までは治療を継続する必要がありますので、治療中は保険会社に治療費を支払ってもらいましょう。

中には、保険会社が一方的に治療費を打ち切ってくるケースもあります。この場合、治療費の支給がストップしたとしても、健康保険に切り替えて治療を継続することを検討すべきです。

 治療を止めてしまうと、怪我を十分に治療できなくなるだけでなく、通院期間が短くなることで入通院慰謝料が減額されるおそれがあります。そのため、症状固定までは治療を続けるべき場合があります。

請求できる費目を把握する

損害賠償金を正しく受け取るには、自分が請求できる損害賠償項目をしっかり把握する必要があります。被害者の方が損害項目を理解していなければ、それぞれの費目で賠償金を正しく計算できませんし、請求漏れが出るリスクもあります。

反対に、被害者の方が損害項目について理解できていれば、相手方の保険が提示している賠償金額と照らし合わせることができます。もし、提示額が低かったり、抜けている損害項目があったりしたときは、保険会社に間違いを指摘することで賠償金額を是正できます。

豊川先生
損害賠償金を増額させるためには、損害賠償項目について正しい知識を身につけることが大切です。万が一にも請求漏れを防ぎたいときは、弁護士に相談して賠償項目を確認してもらうと良いでしょう。

正しい過失割合で賠償金を計算する

過失割合とは、交通事故が起きた責任が加害者と被害者にそれぞれどのくらいの過失があるかを比較して示す数値のことです。
被害者にも過失割合がついた場合、その割合分、受け取れる総額が減ってしまいます。これを「過失相殺」と言います。

交通事故の発生原因に被害者の落ち度がある場合、被害者の過失割合に応じて賠償金が減額されます。しかし、相手方の保険会社は、過失相殺による減額幅をできるだけ大きくして支払う金額を減らすために、被害者側の過失割合をあえて高く設定していることが多く、大きく賠償金が減額されているケースがあります。

被害者の損害に見合った賠償金を受け取るためには、適切な過失割合を主張することになります。

ただし、一般の方が正しい過失割合を把握するのは簡単ではないため、弁護士への依頼がおすすめになります。弁護士であれば、正しい過失割合で損害賠償金を計算してくれるので、保険会社が低く見積った賠償金額を指摘・修正することができます。

後遺障害等級認定の申請をする

交通事故で後遺障害が残ると「後遺障害等級」の認定を受けることで「後遺障害慰謝料」を請求できます。後遺症の程度によって認定される後遺障害等級が異なり、後遺障害慰謝料の金額も変動します。

後遺障害等級の認定を申請する方法としては、被害者本人が申請する「被害者請求」と、加害者側の任意保険会社が申請する「事前認定」の2種類があります。基本的には被害者請求で申請するのがおすすめです。というのも、被害者請求では自分で書類を提出するため、後遺障害の症状や程度を的確に記載できるからです。

後遺障害等級は厳格に審査されるため、提出書類の書き方が悪ければ適切な等級認定が受けられません。このとき、弁護士に依頼すれば、必要な書類を収集してくれたり、正しい書類の書き方を教えてくれたりします。

POINT
後遺障害等級は、後遺障害慰謝料の金額に大きく関わってきますので、賠償金を増額させたい方は弁護士への依頼がおすすめです。

まとめ

交通事故の被害者は、交通事故で負った損害を加害者に対して賠償請求できます。損害賠償の中でも、慰謝料には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの計算方法があります。

ただし、自賠責基準や任意保険基準では低額の慰謝料しか請求できませんので、何よりも高額である弁護士基準での慰謝料をはじめとした示談金の獲得を目指しましょう。

このとき、弁護士に依頼すれば、弁護士基準で慰謝料請求できる可能性を大きく上げることができます。その他にも、賠償金を増額させるためにできることを教えてくれるので、迷ったときは弁護士への無料の相談などを活用してください。

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