
債務整理を検討しているものの、信用情報機関に登録されるのではないか、また、官報に掲載された場合、周りの人にバレてしまうなどのデメリットがあるのではないか、と心配になって、債務整理をする決心がつかないという方もいらっしゃると思います。

1 信用情報とは?
信用情報は、CIC(株式会社シー・アイ・シー)とJICC(株式会社日本信用情報機構)、そして、KSC(全国銀行個人信用情報センター)の3つの機関(=「信用情報機関」といいます。)により保有されています。これらの機関は、加盟業者や信用情報の保有期間において違いがあります。
CICやJICCには、主に、消費者金融や信販会社、そして、クレジット会社などが加盟しているのに対し、KSCには、主に銀行などが加盟しています。
また、信用情報の保有期間についても、CICやJICCはおよそ5年間であるのに対し、KSCではおよそ10年間とされています。
信用情報の保有期間
◆KSCはおよそ10年間
(1)信用情報とは?
「信用情報」とは、個人にかかる勤務先や年収、カードやローンの支払情報のことをいいます。具体的には、各種ローンの利用状況や返済実績などを信用情報として登録することにより、利用者と金融機関の信用取引が安全に行われるように図られています。
(2)信用情報機関に登録される情報とは?
信用情報は、信用情報機関にあるデータベースに登録されており、主に、信用情報機関に加盟するクレジット会社などから登録される情報と、信用情報機関が独自に集める情報の2つの種類があります。
信用情報機関に登録される信用情報は、具体的には、返済の延滞情報や残債額・請求額などといった支払状況、クレジットカードやローンの契約内容・返済状況などが挙げられます。
金融機関は、利用者から融資やローンなどの申し込みがあると、まずは、利用者にかかる信用情報を確認し、利用者が経済的に問題がないかなどを審査し、融資などの是非を判断します。
仮に、このような仕組みがとられていないと、支払能力に問題のある利用者に新たに融資を実行してしまうおそれもあり、その場合には不良債権が増える可能性があるなど、健全な取引を阻害することにもなりかねません。

(3)債務整理と信用情報
債務整理は、基本的に、何らかの事情により借金の返済が困難になった人が行うものです。そのため、債務整理をしようとする人の多くは、借金の返済が延滞していたり、返済そのものができなくなっています。
このように、借金の返済に問題が生じた場合には、「事故情報(いわゆる「ブラックリスト」)」として信用情報機関に登録されることになります。
「事故情報」は、主に、①返済が延滞している事実、②債務整理が開始された事実、③保証会社が債務者に代わって代位弁済をした事実、④自己破産・個人再生・特定調停を申し立てた事実を内容としています。
事故情報とは
②債務整理が開始された事実
③保証会社が債務者に代わって代位弁済をした事実
④自己破産・個人再生・特定調停を申し立てた事実
(4)過払金返還請求と信用情報
過払金が発生するケースとしては、利息制限法に定められる利率で引き直し計算をした結果、減額はされたものの借金が残るケースと、同じように、引き直し計算をした結果、既に過払いであったというケースです。
前者について、減額後の借金を対象として分割などの方法で返済をすると「契約見直し」として信用情報機関に情報が登録されることになります。
「契約見直し」とは、信用情報機関に加盟する貸金業者が債務者による過払金返還請求に応じたことを表す情報として登録されるものをいいます。
一方、後者では、「契約見直し」とはならず、特に、信用情報機関に情報が登録されることはありません。
(5)信用情報期間への登録期間
信用情報機関に事故情報が登録される期間は、先に見たように、機関によって違いはありますが、およそ5年間とされています。
そのため、債務整理を開始してから5年間は、信用情報機関に事故情報が登録されていることになるため、債務者にとっては、経済的な信用を失った状態が続くことになります。
また、5年が経過したことにより、信用情報機関から事故情報が抹消されたとしても、金融機関は独自に社内でその情報を持ち続けます(いわゆる「社内ブラック」)。

(6)信用情報機関に登録されることのデメリット
信用情報機関に事故情報が登録されてしまうと、その間は、クレジットカードの申し込みや新規での借り入れができなくなります。
そのため、新たにクレジットカードを申し込んだり、借り入れをしたい場合は、信用情報機関から事故情報が抹消されるのを待つほかありません。
もっとも、信用情報機関から事故情報が抹消されたとしても、社内ブラックとして事故情報が残っている金融機関との関係では、その後も、新たにクレジットカードを申し込んだり、借り入れをすることが難しい場合があります。
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2 官報とは?
債務整理には、大きく分けて、任意整理・個人再生・自己破産の3つの手続きがあります。このうち、任意整理を除く個人再生・自己破産の手続きをとった場合には、官報に掲載されることとされています。
(1)官報とは?
「官報」とは、法律や政令、条約などを公布する場合、国が機関として一定事項を報告する場合などに、その旨を公表するために発行される国の広報紙のことをいいます。
官報は、行政機関の休日を除き、独立行政法人国立印刷局により、毎日発行されています。
(2)官報に掲載される情報とは?
官報に掲載される情報には、さまざまなものがあります。
たとえば、国会に関する事項や皇室に関する事項、閣議の決定事項、破産や再生関係などの事項が挙げられます。
(3)債務整理と官報
このように、官報に掲載される情報の中には、「破産や再生関係」が含まれます。
そのため、自己破産や個人再生を申立てた場合には、その旨が官報に掲載されることになります。
具体的に、自己破産や個人再生を申し立てた場合、官報には、
①氏名・生年月日・住所(郵便番号を含む)、
②電話番号、
③自己破産か個人再生の種別、
④裁判所名、
⑤事件番号、
⑥自己破産や個人再生にかかる手続開始決定日、
⑦免責決定や再生計画の認可決定日
などが掲載されることになります。
(4)任意整理を除く債務整理が官報に掲載されるのはなぜ?
自己破産や個人再生に関する事項が官報に掲載される理由は、債権者に対し、各手続きへの参加の機会を確保するためです。
自己破産や個人再生の手続きでは、いずれも申し立て時にすべての債権者が記載された債権者一覧表を提出することになるため、基本的には、債権者に手続き参加の機会が確保されています。
しかし、債権者一覧表に記載漏れがないとは限らず、そのような債権者にも手続き参加の機会を確保する必要があります。
そのため、官報に掲載する方法で、債権者一覧表から漏れた債権者に対し、自己破産・個人再生の手続きが開始されていることを知らせることによって、手続き参加の機会を確保しているのです。
(5)官報に掲載されるタイミングと期間
自己破産では、破産手続きの開始決定と免責の許可決定が公告されてから2週間が経過したときにそれぞれその旨が官報に掲載されることになります。
一方、個人再生では、再生手続きの開始決定と書面による決議に付することの決定、そして、再生計画の認可決定が公告されてから2週間か経過したときにそれぞれその旨が官報に掲載されます。

(6)官報に掲載されることのデメリット
官報は、先に見たように、国の広報紙であり、インターネットや紙媒体で公開されていますので、誰でも見ることができます。
しかし、官報は、掲載される情報の内容からして、多くの人に購読されるものではなく、まして、一般人が購読する可能性は極めて低いといえます。
一般的に、官報を購読していると考えられるのは、信用情報機関や市役所の税務担当者などです。
仮に、購読している場合であっても、日々多数の情報が掲載される官報において、その情報の中から特定の個人を見つけ出すことはほとんど不可能であるといっていいでしょう。
そのため、自己破産や個人再生を申し立てたことで、その旨が官報に掲載された場合であっても、自己申告をしないかぎりは、債務整理をしたことが官報により外部に知られるということにはならないものと考えられます。
このように、信用情報機関に登録されることと比べ、自己破産や個人再生について官報に掲載されることは、債務者にとって、さほどのデメリットはないと考えられます。
3 まとめ
債務整理と信用情報・官報の関係は、いずれも債務整理を行うことにより、信用情報機関に登録され、官報に掲載される(任意整理は除く)という点で共通しますが、その意味合いは大きく異なります。
債務整理を検討している人は、できるかぎり、周りにそのことを知られたくないと思うのが通常でしょう。何かをきっかけに周りにバレるのではないか、と心配になって、先に進めずにいる方もいらっしゃると思いますが、今回見てきたように、信用情報機関や官報により債務整理をしたことが周りにバレる心配はほとんどありません。
