交通事故の転倒で手首を骨折したら慰謝料はいくら?相場と示談前の注意点

「転倒交通事故で手首を骨折したけれど、慰謝料はいくらもらえるの?」

「保険会社から提示された金額は、本当に妥当なの?」

このような疑問や不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。

保険会社の提示額は弁護士基準より大幅に低いことが多く、示談が成立すると原則として追加請求はできません。

手首の骨折は、車との接触で転倒し、とっさに手をついた際に起こりやすいけがです。

治療が数ヶ月に及んだり、可動域制限やしびれなどの後遺症が残ったりするケースも少なくありません。

本記事では、転倒交通事故で手首を骨折した場合の慰謝料相場、計算方法、後遺障害等級の目安、慰謝料以外に請求できる項目、過失割合の注意点、示談前のチェックポイントを解説します。

保険会社との交渉に臨む前の判断材料として、ぜひ参考にしてみてください。

執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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この記事の目次

転倒交通事故で手首を骨折したときの慰謝料相場

交通事故で手首を骨折した場合の慰謝料は、通院期間・入院の有無・後遺症の有無によって大きく変わります。

弁護士基準での目安は、入院なし・通院3ヶ月で73万円、通院6ヶ月で116万円。

後遺障害等級が認定されれば、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料も加わります。

ここで紹介する金額は、骨折に適用される弁護士基準(赤い本の別表Ⅰ)にもとづく目安です。

ここでは、入院の有無別・後遺症の有無別に、手首骨折の慰謝料相場を見ていきましょう。

入院せず通院のみで治療した人の慰謝料相場

入院なしの場合、通院3ヶ月で73万円、通院6ヶ月で116万円が弁護士基準の目安です。

手首の骨折をギプスなどで固定する保存療法で治療し、入院せずに通院した方向けの相場です。

弁護士基準では、通院期間が長くなるほど慰謝料も増えます。

ただし、期間が2倍になっても金額は2倍になりません。

通院期間自賠責基準(目安)弁護士基準(別表Ⅰ)
1ヶ月12万9,000円28万円
2ヶ月25万8,000円52万円
3ヶ月38万7,000円73万円
4ヶ月51万6,000円90万円
5ヶ月64万5,000円105万円
6ヶ月77万4,000円116万円

自賠責基準の金額は、実通院日数が十分にあり、1ヶ月を30日として計算した場合の数字です。

自賠責保険には傷害部分で120万円の上限があり、治療費などと合わせてこの枠に収まる点にも注意しましょう。

同じ通院期間でも、基準によって倍近い差が出ることがあるんですね。

手術や入院をした人の慰謝料相場

入院期間がある場合は、入院と通院を組み合わせて計算するため、慰謝料は高くなります。

骨がずれた骨折でプレート固定の手術を受けた方など、入院を経験した方向けの相場です。

弁護士基準の表では入院と通院を別々に数えるため、同じ治療期間でも入院がある方が高く算定されます。

入院期間通院期間弁護士基準(別表Ⅰ)
1ヶ月なし53万円
1ヶ月2ヶ月98万円
1ヶ月3ヶ月115万円
1ヶ月5ヶ月141万円

たとえば治療期間が同じ6ヶ月でも、入院1ヶ月・通院5ヶ月なら141万円、通院のみなら116万円が目安。

手術が必要になりやすい手首骨折の例
  • 骨が大きくずれた骨折(転位のある骨折)
  • 関節の中にまで骨折線が及んでいる骨折
  • 保存療法では骨がうまくつかなかった骨折

手術をした場合は後遺症が残るリスクもあるため、症状固定後の手続きも見据えておきましょう。

手術や入院の記録は慰謝料の算定に直結するので、大切に保管しておきたいですね。

後遺症が残った人に上乗せされる後遺障害慰謝料の相場

後遺障害等級が認定されると、入通院慰謝料とは別に後遺障害慰謝料を請求できます。

治療を続けても、手首の動きの制限やしびれが残った方向けの内容です。

手首骨折で認定される可能性がある主な等級は、10級・12級・14級。

弁護士基準では、10級で550万円、12級で290万円、14級で110万円が目安とされています。

等級ごとの症状の目安や申請方法は、後の章「手首骨折で認定される可能性がある後遺障害等級と慰謝料」で確認してください。

後遺症が残ると、慰謝料の総額が数百万円単位で変わることもあるんですね。

手首骨折で受け取れる慰謝料の種類と3つの計算基準

交通事故の慰謝料には「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類があります。

さらに、慰謝料の金額は「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」のどれで計算するかによって変わります。

保険会社の提示額が妥当かを判断するには、この2つの区別を押さえておくことが欠かせません。

慰謝料の金額は「種類」と「計算基準」の組み合わせで決まります。

ここでは、慰謝料の種類、症状固定の意味、3つの計算基準の違いを解説します。

入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の違いとは

入通院慰謝料は治療期間に対する補償、後遺障害慰謝料は残った後遺症に対する補償です。

2種類の慰謝料は別々に計算され、それぞれ独立して請求できます。

種類補償の対象請求できる時期金額を左右するもの
入通院慰謝料けがの治療で入院・通院したこと治療終了(症状固定)後入院・通院の期間、実通院日数
後遺障害慰謝料治療後も後遺症が残ったこと後遺障害等級の認定後認定された等級

入通院慰謝料は、手首を骨折したすべての被害者が対象。

一方、後遺障害慰謝料は、後遺障害等級の認定を受けた方だけが受け取れる慰謝料です。

慰謝料は損害賠償の一部にすぎず、治療費や休業損害は別に請求できる点も覚えておきましょう。

2種類の慰謝料は、受け取れるタイミングも違うんですね。

症状固定の意味と慰謝料への影響

症状固定とは、治療を続けてもこれ以上の改善が見込めないと医師が判断した状態のことです。

治療を続けている方や、保険会社から治療の終了を打診された方は、症状固定の意味を確認しておきましょう。

症状固定の時点で入通院慰謝料の計算期間が確定し、その後は後遺障害等級の申請に進みます。

手首骨折の症状固定までの期間は、骨折の程度やリハビリの経過によって大きく異なり、一律の目安はありません。

症状固定を急ぐと起こりやすいこと
  • 入通院慰謝料の計算期間が短くなる
  • 後遺症が十分に評価されないまま等級が判断される
  • 症状固定後の治療費は、原則として相手方に請求できない

症状固定の時期を判断するのは、保険会社ではなく主治医です。

保険会社から打診があっても、主治医に回復の見込みを確認してから対応を決めてください。

「そろそろ症状固定に」と言われても、まずは主治医に相談するのが安心ですね。

自賠責・任意保険・弁護士の3つの基準の違い

3つの基準のうち、もっとも高い金額になりやすいのは弁護士基準です。

保険会社から示談金の提示を受けた方は、その金額がどの基準で計算されたかを確認しましょう。

基準内容金額の水準
自賠責基準自賠責保険の支払基準。被害者への最低限の補償もっとも低い
任意保険基準各保険会社が独自に定める社内基準。非公開自賠責基準と同程度〜やや高い
弁護士基準(裁判基準)過去の裁判例をもとにした基準。通称「赤い本」に掲載もっとも高い

自賠責基準は国土交通省・金融庁の告示で定められ、2020年4月1日以降の事故では入通院慰謝料が1日4,300円となっています。

任意保険基準は公開されておらず、外部から金額の根拠を確かめにくいのが実情。

弁護士基準は、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)に掲載されています。

弁護士が交渉に入ると、弁護士基準をもとに増額を求めることができます。

保険会社に「どの基準で計算しましたか」と聞いてみるのも、一つの方法ですよ。

手首骨折の慰謝料を自分で計算する方法

弁護士基準の入通院慰謝料は、手順さえ知っていれば自分でも概算が可能。

計算に必要なのは、入院期間、通院期間、実通院日数の3つの数字。

自分で計算した金額と保険会社の提示額を比べれば、交渉の余地があるかを判断しやすくなります。

骨折の場合は、弁護士基準の「別表Ⅰ」を使って計算します。

ここでは、計算に使う数字の整理から、別表Ⅰの読み方、具体的な計算例までを解説します。

慰謝料計算に使う通院期間と実通院日数の違い

「通院期間」と「実通院日数」は別の数字なので、混同しないよう注意しましょう。

治療を終えて、これから慰謝料を計算する方は、まず2つの数字を整理しておきましょう。

通院期間と実通院日数の違い
通院期間:治療を始めた日から治療を終えた日(症状固定日)までの期間
実通院日数:実際に病院へ通った日数

弁護士基準の計算は、原則として通院期間がベース。

ただし、通院が長期にわたるのに実通院日数が少ない場合は、実通院日数の3.5倍程度を通院期間の目安とすることがあります。

たとえば通院期間が3ヶ月でも実際の通院が10日だけなら、10日×3.5=35日程度として扱われる可能性があります。

自己判断で通院を中断すると慰謝料が低く算定されるおそれがあるため、医師の指示どおりに通院を続けてください。

通院のペースは、主治医と相談しながら決めていくと安心ですね。

弁護士基準の別表Ⅰ(骨折用の早見表)の読み方

別表Ⅰは、入院月数と通院月数が交わるマス目の金額を読むだけで相場がわかります。

保険会社が示した計算の根拠を自分で確かめたい方は、別表Ⅰの読み方を押さえておきましょう。

弁護士基準には、骨折などに使う「別表Ⅰ」と、むちうちや打撲など軽傷に使う「別表Ⅱ」があります。

手首骨折には金額の高い別表Ⅰが適用されるのが原則です。

別表Ⅰの読み方
  • STEP1:表の「入院」の欄から入院月数を選ぶ(入院なしなら0ヶ月)
  • STEP2:表の「通院」の欄から通院月数を選ぶ
  • STEP3:2つが交わるマス目の金額を読む
  • STEP4:1ヶ月に満たない日数は、前後の月の差額から日割りで加える

保険会社の計算が別表Ⅱになっている場合は、骨折の診断書をもとに別表Ⅰでの計算を求めましょう。

やり取りはメールや書面で残しておくと、後の交渉で役立つでしょう。

骨折なのに軽傷用の表で計算されていないか、ぜひチェックしたいですね。

手首骨折で通院3ヶ月の慰謝料を計算する例

入院なし・通院3ヶ月・実通院30日の場合、弁護士基準で73万円、自賠責基準で25万8,000円が目安です。

ここでは、入院せずに通院だけで治療を終えた方を想定して計算します。

計算例の条件
入院:なし
通院期間:3ヶ月(90日)
実通院日数:30日

弁護士基準では、実通院日数が月10日程度あるため、通院期間の3ヶ月をそのまま使います。

別表Ⅰで入院0ヶ月・通院3ヶ月のマス目を読むと、慰謝料の目安は73万円。

自賠責基準では、通院期間90日と実通院日数の2倍(60日)を比べ、少ない60日を対象日数とします。

基準計算方法金額の目安
自賠責基準4,300円×60日25万8,000円
弁護士基準(別表Ⅰ)入院0ヶ月・通院3ヶ月のマス目73万円

同じ条件でも、基準の違いだけで約47万円もの差になるのは見逃せません。

自分で計算してみると、提示額との差がはっきり見えてきますね。

手首骨折で認定される可能性がある後遺障害等級と慰謝料

手首の骨折では、骨がついた後も動きの制限や痛み、しびれが残ることがあります。

後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料に加えて、将来の収入減を補う逸失利益も請求可能。

認定されるかどうかで、最終的な賠償額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。

後遺症が残っているのに申請しないまま示談すると、後遺障害に関する賠償を受け取れなくなります。

ここでは、手首骨折で残りやすい後遺症、等級と慰謝料の目安、申請方法を解説します。

手首骨折で残りやすい3種類の後遺症

手首骨折の後遺症は、機能障害・変形障害・神経症状の3つに分けられます。

治療を終えても手首に違和感が残っている方は、自分の症状がどれに当てはまるかを確認しましょう。

手首骨折で残りやすい後遺症
  • 機能障害:手首の曲げ伸ばしなどの可動域が、けがをしていない側より狭くなる
  • 変形障害:骨が曲がったりずれたりしたまま癒合(骨がつくこと)する
  • 神経症状:手首や指に痛み・しびれが残る

手首の骨折で多いのは、手首に近い前腕の骨が折れる「橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)」です。

この骨折では、関節が固まって動きが悪くなったり、近くの神経が圧迫されて指にしびれが出たりすることがあります。

複数の後遺症が残った場合は「併合」というルールで等級が繰り上がることもあるので、専門家に整理してもらうと安心でしょう。

自分の症状がどの種類に当たるか、主治医に聞いてみるのもいいですね。

手首骨折で認定される可能性がある等級と後遺障害慰謝料の目安

手首骨折では、主に10級・12級・14級の認定が想定されます。

これから後遺障害等級の申請を検討する方は、症状ごとの等級の目安を確認しておきましょう。

等級主な症状(認定基準の要旨)自賠責基準弁護士基準
10級10号手関節の可動域が、けがをしていない側の2分の1以下に制限される190万円550万円
12級6号手関節の可動域が、けがをしていない側の4分の3以下に制限される94万円290万円
12級8号長管骨(前腕の骨など)に変形を残す94万円290万円
12級13号局部に頑固な神経症状を残す(画像などで医学的に証明できる)94万円290万円
14級9号局部に神経症状を残す(医学的に説明できる)32万円110万円

表の自賠責基準は、2020年4月1日以降に発生した事故の金額。

12級13号と14級9号はどちらも痛みやしびれが残る場合の等級ですが、12級はMRIなどの画像で異常が確認できることが求められます。

14級でも、事故の状況や治療経過から症状を医学的に説明できることが必要です。

可動域は測定のしかたで数値がぶれることもあるため、複数回の測定記録を残しておくことが大切。

12級と14級では、弁護士基準で180万円も差があるんですね。

後遺障害等級を申請する2つの方法と注意点

申請方法には「事前認定」と「被害者請求」があり、提出書類を自分で選べるのは被害者請求です。

主治医から症状固定の診断を受けた方は、後遺障害診断書を作成してもらい、等級の申請に進みます。

後遺障害等級の申請の流れ
  • STEP1:主治医から症状固定の診断を受ける
  • STEP2:主治医に後遺障害診断書を作成してもらう
  • STEP3:事前認定または被害者請求で申請する
  • STEP4:損害保険料率算出機構の調査を経て、等級の認定結果が届く
申請方法手続きをする人メリットデメリット
事前認定相手方の任意保険会社被害者の手間が少ない提出書類を被害者がコントロールしにくい
被害者請求被害者本人(または代理人の弁護士)有利な検査結果などを自分で選んで提出できる書類集めの手間がかかる

12級13号のように客観的な検査結果が重要な等級を目指す場合は、被害者請求の方が必要な資料をそろえやすい傾向にあります。

認定結果に納得できない場合は、異議申立てをすることも可能。

ただし、同じ書類のまま再申請しても結果は変わりにくいため、新たな検査結果や医師の意見書を用意しましょう。

申請方法の選び方に迷ったら、弁護士に相談してみるのも一つの手ですよ。

手首骨折で慰謝料以外に請求できる損害賠償の項目

交通事故の損害賠償は、慰謝料だけではありません。

治療費や通院交通費、仕事を休んだ分の休業損害、後遺症による将来の収入減を補う逸失利益なども請求できます。

手首を骨折すると家事や仕事に長く支障が出やすいため、請求漏れがないように確認しておきましょう。

慰謝料は精神的な苦痛への補償であり、実際の出費や収入の減少は別の項目として請求します。

ここでは、治療費などの実費、休業損害、逸失利益について解説します。

治療費や通院交通費など実際にかかった費用

治療のために実際にかかった費用は、必要かつ相当な範囲で請求できます。

現在治療中の方は、領収書を保管しながら費用を記録しておきましょう。

請求できる主な実費
  • 治療費・入院費・手術費
  • 通院のための交通費(公共交通機関の運賃、自家用車のガソリン代など)
  • 装具やサポーターなどの費用
  • 入院中の日用品などの雑費

治療費は、相手方の保険会社が病院に直接支払う「一括対応」になっていることが多くあります。

交通事故のけがでも健康保険は使えるため、自己負担が大きい場合は病院に相談してみてください。

通勤中や仕事中の事故であれば、労災保険を使える場合もあります。

領収書は後からまとめて請求するときに必要なので、捨てずに取っておきましょうね。

仕事や家事ができなかった期間の休業損害

休業損害は、けがで働けなかった期間の収入減を補償するもので、主婦(主夫)も請求できます。

手首の骨折で仕事や家事ができなかった会社員・自営業の方、主婦(主夫)の方は、休業損害を請求できます。

休業損害の計算式
1日あたりの基礎収入 × 休業日数
職業別の基礎収入の考え方
  • 会社員:事故前3ヶ月の給与をもとに算出
  • 自営業:前年の確定申告の所得をもとに算出
  • 主婦(主夫):賃金センサス(国の賃金統計)の女性の平均賃金をもとに算出

利き手の手首を骨折すると、料理や洗濯などの家事にも大きな支障が出るでしょう。

収入がない主婦(主夫)でも家事労働には経済的な価値があると考えられているため、休業損害を請求可能。

保険会社が自賠責基準の1日6,100円で計算してくることもあるため、提示額の根拠を確認しましょう。

主婦の方も休業損害を請求できるのは、意外と知られていないんですよ。

後遺症で将来の収入が減る分を補う逸失利益

逸失利益は、後遺症によって将来得られなくなった収入を補償するものです。

後遺障害等級の認定を受けた方は、後遺障害慰謝料とは別に逸失利益の請求も可能。

逸失利益の計算式
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
等級労働能力喪失率
10級27%
12級14%
14級5%

ライプニッツ係数とは、将来の収入を前もって一括で受け取る分の利息を差し引くための数値です。

高齢の方でも、家事をしている方や仕事を続けている方は逸失利益が認められる場合があります。

一方、年金収入のみで生活している方は、逸失利益が認められにくいのが一般的。

14級や12級の神経症状では労働能力喪失期間が限定されることが多いため、計算の前提を弁護士に確認すると安心でしょう。

年齢や働き方で計算の前提が変わるのは、知っておきたいポイントですね。

転倒事故で問題になりやすい過失割合と相手の責任

転倒による事故は状況が複雑になりやすく、相手方から「被害者にも落ち度があった」と主張されやすいケースです。

車と接触していない事故や相手が自転車の事故では、そもそも誰に請求できるのかで悩む方も少なくありません。

過失割合は慰謝料だけでなく、治療費や休業損害を含む損害賠償の全体に影響します。

保険会社が提示する過失割合は、必ずしも確定したものではありません。

ここでは、過失割合が争われやすいケース、非接触事故、自転車事故、過失相殺の仕組みと対処法を解説します。

転倒事故で過失割合が争われやすいケース

歩行者よりも、自転車に乗っていた方が過失割合を争われやすい傾向があります。

歩行中や自転車に乗っているときに車と接触して転倒した方は、自分のケースが当てはまるか確認しましょう。

過失割合が争われやすいケース
  • 横断歩道以外の場所を横断していた
  • 車の直前に飛び出す形になった
  • 自転車で信号無視や一時不停止をしていた
  • 夜間に自転車を無灯火で走行していた

歩行者が横断歩道を青信号で渡っていた場合、歩行者の過失は原則としてゼロ。

一方、自転車は道路交通法上の「車両」にあたるため、交通違反があると被害者側にも過失が認められます。

保険会社が最初に示す過失割合は、根拠を確認せずに受け入れないようにしてください。

自分にも落ち度があったのかどうかは、自己判断で決めつけないことが大切ですよ。

車と接触していない転倒事故(非接触事故)で請求できるケース

車と接触していなくても、車の運転が原因で転倒したと認められれば損害賠償を請求できます。

急に近づいてきた車を避けようとして転倒し、手首を骨折した方は「非接触事故(誘因事故)」にあたる可能性があります。

非接触事故では、相手の運転と転倒との間に因果関係があるかどうかが争点。

相手から「ぶつかっていない」と主張されやすいため、事故直後に警察へ届け出て記録を残すことが重要です。

非接触事故で集めておきたい証拠
  • 警察への届出(人身事故としての届出)
  • ドライブレコーダーや防犯カメラの映像
  • 目撃者の連絡先と証言
  • 事故現場や車の位置の写真

相手の車が立ち去ってしまった場合でも、ナンバーや車の特徴を記録しておけば、後から特定できる可能性があります。

証拠の集め方に不安がある場合は、早めに弁護士へ相談してください。

ぶつかっていなくても請求できる場合があるのは、心強いですね。

自転車との事故で転倒した場合の慰謝料の請求先

相手が自転車の場合は自賠責保険がないため、相手の個人賠償責任保険などや相手本人に請求します。

自転車と接触して転倒し、手首を骨折した方は、請求先が車の事故とは異なる点に注意しましょう。

自転車には、自動車の自賠責保険のような強制加入の保険がありません。

相手が自転車保険や個人賠償責任保険に加入していれば、その保険会社と交渉することになります。

相手が保険に入っていない場合は、相手本人に直接請求しなければなりません。

自分の保険で使える可能性があるもの
  • 人身傷害保険(契約内容によっては自転車事故も対象)
  • 傷害保険
  • 弁護士費用特約

自分や家族の保険で補償を受けられる場合もあるため、保険証券を確認してみてください。

相手が無保険でも、自分の保険で補償を受けられる場合があるんですよ。

過失相殺で賠償額が減る仕組みと対処法

被害者にも過失があると、その割合に応じて損害賠償の総額が減額されます。

保険会社から過失割合を提示された方は、減額の仕組みを理解したうえで対応しましょう。

過失相殺の計算例(損害総額300万円の場合)
被害者の過失10%:300万円×(1−0.1)=270万円
被害者の過失20%:300万円×(1−0.2)=240万円

過失が10%違うだけで、受け取れる金額に30万円の差が生まれます。

過失割合に納得できない場合は、まず保険会社に根拠となる資料の提示を求めましょう。

過失割合に納得できないときの対処法
  • STEP1:保険会社に過失割合の根拠(参照した基準や事故状況の認定)を確認する
  • STEP2:ドライブレコーダーの映像や実況見分調書などの証拠を集める
  • STEP3:交渉がまとまらなければ、弁護士への依頼や交通事故紛争処理センターの利用を検討する

示談書に署名すると過失割合は原則として変更できないため、署名前に確認することが大切です。

過失割合が少し変わるだけで、受け取れる金額が大きく変わるんですね。

手首骨折の示談書にサインする前に確認すること

保険会社から示談の提案を受けると、早く解決したい気持ちからすぐにサインしたくなるかもしれません。

しかし、示談は一度成立すると原則としてやり直しができません。

手首骨折は後遺症が残るかどうかで賠償額が大きく変わるため、示談のタイミングと内容の確認が重要です。

示談書にサインした後は、原則として追加の請求はできません。

ここでは、示談の時期、提示額が低くなりやすいケース、サイン前のチェックポイントを解説します。

症状固定前に示談してはいけない理由

示談は、症状固定の診断と後遺障害等級の認定結果が出た後に進めるのが原則です。

治療中に保険会社から示談を持ちかけられた方は、すぐに応じないようにしましょう。

症状固定前に示談すると起こること
  • 示談後の治療費を請求できなくなる
  • 後遺症が残っても、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できなくなる
  • 再手術が必要になっても、費用は自己負担になる

手首骨折は、見た目には治っていても、しびれや動かしにくさが後から残ることがあります。

主治医から症状固定の診断を受けるまでは、示談に応じる必要はありません。

後遺症が残った場合は、等級の認定結果が出てから示談交渉に入るのが正しい順番です。

治療中は示談のことより、まず体の回復を優先したいですね。

保険会社の提示額が相場より低くなりやすいケース

通院の状況や後遺障害の申請の有無によって、提示額は相場より低くなりやすくなります。

保険会社から示談金の提示を受けた方は、次のケースに当てはまらないか確認しましょう。

提示額が低くなりやすいケース
  • 実通院日数が少なく、通院期間が短く評価されている
  • 医師の同意なく整骨院・接骨院に通院していた
  • 後遺症が残っているのに、後遺障害の申請をしていない
  • 骨折なのに、軽傷用の別表Ⅱで計算されている

整骨院や接骨院への通院は、医師の指示や同意がないと治療費や慰謝料の対象として認められにくくなります。

整骨院に通う場合でも、整形外科での定期的な診察は続けておくと安心です。

提示額が低いと感じたら、その金額がどの基準で計算されたのかを保険会社に確認してみてください。

整骨院に通いたいときは、先に主治医へひと言相談しておきましょうね。

示談書にサインする前のチェックポイント

示談書は法的な効力をもつ書類なので、金額の内訳と条項を必ず確認しましょう。

示談書が手元に届いた方は、署名・押印をする前に次の項目を確認してください。

示談書サイン前のチェックリスト
  • 慰謝料がどの基準で計算されているか
  • 治療費・休業損害・後遺障害慰謝料・逸失利益がそれぞれ含まれているか
  • 過失割合が適正か
  • 後遺症がある場合、等級の認定結果が反映されているか
  • 清算条項(今後一切の請求をしない旨の条項)の意味を理解しているか

清算条項は示談書に通常入っている条項ですが、署名すると追加請求は原則としてできなくなります。

内訳や計算の根拠がわからない場合は、その場でサインせず説明を求めましょう。

物損と人身の示談を分けて進める場合は、物損の示談書に人身部分まで含む文言が入っていないかも確認が必要です。

少しでもわからない項目があれば、サインする前に確認しておきたいですね。

弁護士に相談すると手首骨折の慰謝料が変わる理由

保険会社との交渉を弁護士に任せると、弁護士基準をもとにした金額で交渉できます。

被害者本人が弁護士基準を主張しても、保険会社が応じないケースは少なくありません。

弁護士が入ることで、慰謝料の増額だけでなく、請求項目の漏れや過失割合の見直しにも対応可能。

示談書にサインする前の相談が、適正な賠償を受けるための近道です。

ここでは、増額の目安、相談を検討したいケース、弁護士費用特約について解説します。

弁護士基準で交渉すると増額できる金額の目安

増額幅は、通院期間が長いケースや後遺障害が認定されたケースほど大きくなりやすいです。

保険会社の提示額に納得できない方は、弁護士基準との差を把握しておきましょう。

項目自賠責基準弁護士基準差額
入通院慰謝料(入院なし・通院6ヶ月)77万4,000円116万円38万6,000円
後遺障害慰謝料(12級)94万円290万円196万円
後遺障害慰謝料(14級)32万円110万円78万円

自賠責基準の入通院慰謝料は、実通院日数が十分にある場合の目安。

任意保険基準は非公開ですが、自賠責基準に近い水準で提示されることもあります。

ただし、通院期間が短い軽傷のケースでは増額幅が小さく、弁護士費用とのバランスを確認する必要があります。

依頼する前に、増額の見込みがどの程度あるかを相談で確かめてから判断しましょう。

後遺障害慰謝料は、基準によって約3倍もの開きがあるのですね。

弁護士への相談を検討したいケース

次のいずれかに当てはまる場合は、示談前に弁護士へ相談することを検討しましょう。

保険会社との交渉に不安がある方は、自分の状況が次のケースに当てはまるか確認してください。

弁護士への相談を検討したいケース
  • 後遺障害等級の申請を控えている、または認定を受けた
  • 保険会社から治療の打ち切りを打診された
  • 示談書へのサインを急かされている
  • 過失割合に納得できない
  • 非接触事故や自転車事故で、請求先や相手の責任が争われている

後遺障害の申請を被害者請求で行う場合、弁護士がつけば必要な検査や書類をそろえる段階からサポートを受けられます。

相手方の保険会社とのやり取りも任せられるため、治療やリハビリに集中しやすくなる点もメリット。

示談書にサインする前であれば、選べる対応の幅も広がります。

交渉を任せられると、気持ちの負担もずいぶん軽くなりますね。

弁護士費用特約を使って費用負担を抑える方法

弁護士費用特約があれば、弁護士費用の多くを保険でまかなえます。

自動車保険や火災保険などに加入している方は、弁護士費用特約が付いていないか確認してみてください。

弁護士費用特約の主なポイント
  • 法律相談費用は10万円、弁護士費用は300万円を上限とする商品が多い
  • 本人だけでなく、同居の家族などの特約を使える場合がある
  • 特約だけを使っても、翌年の保険の等級は下がらないのが一般的

歩行中や自転車に乗っているときの事故でも、特約の対象になる場合があります。

補償の範囲は保険会社や契約内容によって異なるため、保険証券や保険会社の窓口で確認しましょう。

特約がない場合でも、相談の段階で費用の見通しを確認してから依頼するかどうかを決められます。

家族の保険の特約が使えることもあるので、一度確認してみたいですね。

転倒交通事故の手首骨折の慰謝料に関するよくある質問

転倒交通事故で手首を骨折した方が抱きやすい疑問をまとめました。

治療中の対応から示談の進め方まで、迷いやすいポイントに回答します。

気になる項目から確認してみてください。

治療費や休業損害は慰謝料とは別に請求できますか?

はい、治療費や休業損害は慰謝料とは別の項目として請求できます。

慰謝料は精神的な苦痛に対する補償で、実際にかかった費用や収入の減少とは区別されます。

治療費・通院交通費・休業損害・逸失利益は、それぞれ独立した項目として請求可能。

示談前の方は、提示額の内訳にこれらの項目が含まれているか確認しましょう。

「慰謝料=受け取れるお金のすべて」ではないんですね。

治療中に通院をやめてしまうと慰謝料は減りますか?

自己判断で通院をやめると、入通院慰謝料が減る可能性があります。

入通院慰謝料は通院期間や実通院日数をもとに計算するため、途中で通院をやめると金額が下がるおそれがあります。

痛みが落ち着いてきても、骨や関節の回復が十分でないことも。

治療中の方は、主治医が症状固定と判断するまで、指示どおりに通院を続けてください。

痛みが引いてきた時期こそ、通院を続けることが大切なんですね。

後遺障害等級の認定を受けないと、後遺障害慰謝料はもらえませんか?

後遺障害慰謝料を受け取るには、原則として後遺障害等級の認定が必要です。

等級の認定を受けないまま示談すると、後から後遺障害慰謝料を請求するのは困難です。

症状固定後も手首の痛みや動かしにくさが残っている方は、示談前に申請を検討してください。

症状が残っているなら、示談の前に申請を考えておきたいですね。

交通事故で手首を骨折した場合も健康保険は使えますか?

交通事故によるけがでも、健康保険を使って治療を受けられます。

健康保険を使う場合は、加入している健康保険組合などに「第三者行為による傷病届」を提出します。

相手方の保険会社が治療費を払ってくれない場合や自分にも過失がある場合は、健康保険を使うことで自己負担を抑えやすくなります。

通勤中や仕事中の事故であれば労災保険を使える場合もあるので、勤務先に確認しましょう。

健康保険を使うときは、届出を忘れないようにしたいですね。

物損と人身の示談は別々に進めるべきですか?

物損と人身の示談は、別々に進めるのが一般的です。

自転車の修理費などの物損は、比較的早く金額が確定します。

一方、人身部分は症状固定や後遺障害の認定を待ってから示談するのが原則。

物損の示談書に「すべての損害について解決した」と読める文言が入っていないか、署名前に確認してください。

物損の示談書でも、文言のチェックは欠かせませんね。

転倒交通事故で手首を骨折したときの慰謝料のまとめ

転倒交通事故で手首を骨折した場合の慰謝料は、計算基準によって大きく変わります。

弁護士基準では、通院3ヶ月で73万円、通院6ヶ月で116万円が目安。

後遺障害等級が認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益も請求できます。

この記事のポイント
  • 骨折の慰謝料は、弁護士基準の別表Ⅰで計算する
  • 後遺症が残ったら、示談前に後遺障害等級を申請する
  • 休業損害や逸失利益など、慰謝料以外の項目も請求できる
  • 転倒事故では、過失割合や相手の責任が争われやすい
  • 示談書へのサインは、内容を確認してからにする

保険会社の提示額が適正かどうか迷ったときは、示談書にサインする前に弁護士へ相談してください。

一人で抱え込まず、専門家の力を借りて適正な賠償を受け取りましょう。

不安なときは、ひとりで悩まずに相談してみてくださいね。
執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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