「骨折で通院日数が少ないと、慰謝料は本当に減らされてしまうの?」
「保険会社の提示額をそのまま受け入れて大丈夫?」
保険会社が提示する金額は弁護士基準より低い水準で算定されているケースが多く、骨折という重傷であっても通院日数が少ないことを理由に減額を受けるリスクがあります。
適正額に近づけるための具体的な手順や弁護士費用特約の活用方法についても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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この記事の目次
通院日数が少ないと骨折の慰謝料が減る、は本当か
骨折しているのに通院日数が少ないと、保険会社から「慰謝料が低くなる」と説明されるケースがあります。
この説明は完全に正しいわけではなく、計算の仕組みを理解することで適正額を判断できるようになります。
通院日数が少ないことを理由に慰謝料を低く提示されている方は、その計算が本当に正当なものかを確認する必要があります。
ここでは、通院日数と慰謝料の関係を3つの観点から解説します。
慰謝料は通院日数だけで決まるわけではない
入通院慰謝料(傷害慰謝料)の計算には、「通院日数」と「通院期間」の2つの概念があり、どちらか一方だけで金額が決まるわけではありません。
- 通院日数:実際に病院へ行った日数
- 通院期間:事故日から治療終了日(または症状固定日)までの日数
慰謝料の計算でよく使われる方式には、通院日数に一定額を乗じる「日数方式」と、通院期間をもとに算出する「期間方式」の2種類があります。
保険会社が提示する金額は日数方式を採用していることが多く、通院が少ない場合に金額が低く算出されやすい構造になっています。
一方、弁護士が交渉の根拠として用いる裁判基準(いわゆる弁護士基準)では、通院期間を基本に計算するため、通院日数が少なくても一定の評価がされるケースがあります。
「通院日数が少ないから慰謝料が低い」という説明は、保険会社が採用している計算方式の前提に基づいた話であり、唯一の正解ではありません。

骨折の場合は「通院期間」が重視される理由
骨折のような重傷では、通院日数が少なくても通院期間が長くなりやすく、慰謝料の計算において期間が重要な指標になります。
骨折の治療は、ギプス固定や安静期間が必要なため、毎日通院するのではなく数週間に一度の経過観察が続くことが一般的です。
そのため、通院日数は少ないが通院期間は3〜6か月に及ぶというケースは珍しくありません。
裁判基準(弁護士基準)では、通院期間を軸にした算定表が用いられます。
この算定表は日本弁護士連合会が公表している「損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)に掲載されており、傷病の程度に応じた別表が設けられています。
- 別表I:骨折などの重傷ケース(他覚所見あり)
- 別表II:打撲・むちうちなど比較的軽傷のケース
骨折は原則として別表Iが適用されるため、同じ通院期間でも別表IIより高い金額が算出されます。
たとえば、骨折で通院期間が約3か月(90日程度)の場合、裁判基準の別表Iを参照すると、慰謝料の目安は概ね70万円前後とされることが多いです。
一方、保険会社が日数方式で算出した場合、実通院日数が少なければ同じ期間でも20〜30万円程度にとどまるケースもあります。

保険会社が使う基準と弁護士基準では金額が大きく変わる
保険会社が提示する慰謝料の計算基準と、弁護士が交渉で使う裁判基準は、同じ通院状況でも算出される金額が異なります。
骨折のような重傷かつ治療期間が長いケースでは、任意保険基準と裁判基準の差が数十万円以上になることもあるとされており、通院日数が少ないケースほどこの差が顕在化しやすい構造になっています。
保険会社の任意保険基準は、保険会社が独自に設定したものであり、公開されている基準ではありません。
一方、裁判基準は裁判所の判例をもとに積み上げられた基準であり、弁護士が交渉に入ることで適用を求めやすくなります。
- 裁判基準を根拠にした請求が可能になる
- 慰謝料だけでなく、休業損害・治療費・交通費なども含めた総額で適正額を主張できる
- 示談前に提示額が適正範囲にあるかどうかを確認できる
保険会社との直接交渉では、被害者が裁判基準を主張しても保険会社がそのまま受け入れることは少ないのが実態です。
そのため、裁判基準に近い金額を引き出すためには、弁護士を代理人として立てることが現実的な手段とされています。

仕事・家事で通院できなかった場合に保険会社が主張する減額の論理
骨折しているにもかかわらず、仕事や家事の都合で通院回数が少なくなってしまった場合、保険会社から慰謝料の大幅な減額を提示されるケースがあります。
仕事や家事を理由に通院できなかった事情は、保険会社に正確に伝えなければ慰謝料算定で不利に扱われる可能性があります。
示談書にサインする前に、保険会社の主張の構造と反論の方向性を把握しておくことが重要です。
ここでは、保険会社が持ち出す主張のパターンと反論の根拠を解説します。
保険会社が減額根拠として持ち出す主な主張
保険会社は、通院日数が少ない事実そのものを「損害の軽微さ」の証拠として扱い、慰謝料を抑えようとすることがあります。
この主張には一定のパターンがあり、事前に把握しておくことで冷静に対処できます。
- 「症状が軽かった証拠」と位置づける:通院日数が少ない事実を傷害の軽微さの根拠として使う
- 「通えたはずなのに通わなかった」自己責任論:通院しなかったことを被害者の責任として主張
- 治療費の打ち切りをほのめかす:症状固定の時期を早めに設定し対象期間を短縮
慰謝料の算定方式のひとつである自賠責保険の基準では、通院1日あたりの金額に実通院日数(または総治療期間の2分の1のいずれか少ない方)を掛け合わせる計算が行われます。
この仕組み上、通院日数が少ないと算出額が機械的に下がるため、保険会社にとっては通院日数の少なさを強調することが減額の根拠として使いやすい状況にあります。
特に注意が必要なのは「通えたはずなのに通わなかった」という主張です。
骨折の治療は医師の指示に従って行うものであり、被害者が任意に通院を減らしたわけではなく、仕事・家事・育児などの生活上の制約から物理的に通院できなかったケースも多くあります。
しかし保険会社はこうした事情を自動的に考慮してくれるわけではなく、被害者側から積極的に説明・証明しなければ、単純に「通院が少なかった事実」だけが評価軸になります。

やむを得ない事情がある場合に反論できる根拠
仕事や家事でやむを得ず通院できなかった場合、その事情を適切に示すことで保険会社の減額主張に対して反論できる場合があります。
反論の核心は、「通院できなかった理由が被害者の責に帰さない事情によるものであること」を示す点にあります。
- 医師の診断書・カルテ:骨折の程度と治療の必要性が記録されているもの
- 勤務記録・シフト表・業務上の証明書:通院困難だった事実を示す書類
- 育児・介護の記録:家事負担の具体的な状況を説明できる資料
骨折という傷病の性質上、たとえ通院回数が少なくても、骨折の程度・部位・治療経過によって損害の大きさは通院日数だけでは測れません。
裁判所が用いる算定基準(いわゆる弁護士基準)では、実通院日数ではなく治療期間全体を基準に計算が行われます。
仕事の都合で月に数回しか通院できなかったケースでも、骨折の治療として医師が必要と認めた期間が数か月に及ぶ場合には、その期間に応じた慰謝料額が認められる可能性があります。
また、休業損害の観点も重要ですが、一点注意が必要です。
仕事を実際に休んで収入が減少した場合は休業損害として請求できる可能性がありますが、仕事を休めなかったために通院を後回しにしたケースでは、収入の減少自体が発生していないため休業損害の対象にはなりません。
この場合は慰謝料の適正な算定を求める方向での交渉が中心になります。

骨折の慰謝料を決める3つの計算基準と差額のインパクト
慰謝料の金額は、どの計算基準を使うかによって大きく変わります。
骨折のような重傷ケースでは、どの基準を使うかによって慰謝料の差が数十万円単位になることも珍しくありません。
保険会社から提示された金額がどの基準に基づいているかを知るだけで、示談交渉の判断が大きく変わります。
ここでは、3つの基準それぞれの特徴と差額のインパクトを解説します。
自賠責基準:最低限の補償ライン
自賠責基準は、法律(自動車損害賠償保障法)に基づいて定められた最低限の補償水準です。
被害者が確実に一定額を受け取れるよう設定されており、計算方法はシンプルで機械的です。
慰謝料の計算は「実通院日数×2」と「総治療期間(日数)」のうち少ない方に、1日あたりの単価(4,300円)を掛けて算出します。
通院日数が少ない場合は「実通院日数×2」が採用されやすく、結果として慰謝料が低く抑えられる構造になっています。
- 実通院日数が15日の場合 → 15×2=30日分、約13万円が上限の目安
- 骨折で長期通院が必要でも、実際の通院日数が少なければ補償額は大幅に下がる
自賠責基準は「最低保証」であって「適正額」ではありません。
この基準だけで示談に応じると、本来受け取れるはずの金額を大幅に下回る可能性があります。

任意保険基準:保険会社が使う社内ライン
任意保険基準は、各損害保険会社が独自に設定した社内基準です。
自賠責基準よりはやや高めに設定されていますが、弁護士基準と比べると依然として低い水準にとどまることがほとんどです。
重要なのは、この基準が外部に公開されていない点です。
保険会社の担当者から提示される示談金額は任意保険基準に基づいていることが多く、被害者側には「この金額が妥当かどうか」を判断する材料が与えられないまま交渉が進みます。
担当者が「これが相場です」と伝えてきても、それは保険会社にとっての相場であり、法的に認められる適正額とは異なります。
受け取った提示額が任意保険基準かどうかを直接確認する方法は限られていますが、「算定根拠を書面で示してほしい」と担当者に求めることで、計算の前提(通院日数・単価・期間)を確認できる場合があります。
提示額の内訳が示されない場合や、根拠の説明が曖昧な場合は、弁護士基準との乖離が生じている可能性を念頭に置いておくとよいでしょう。

弁護士基準(裁判基準):最も高額になる計算方式
弁護士基準は、過去の裁判例をもとに構築された計算方式で、法的に認められる慰謝料の水準として最も高額です。
弁護士や裁判所が用いる算定表(いわゆる「赤い本」「青い本」)に基づいており、通院日数ではなく治療期間(月数)をもとに慰謝料額が算出されます。
仕事や家事の都合で通院回数が少なくなってしまった場合でも、治療期間(最初の通院から最後の通院までの月数)が一定あれば、弁護士基準では自賠責基準より大幅に高い慰謝料が認められる可能性があります。
- 通院期間3か月程度:軽傷でも数十万円台が目安
- 自賠責基準との差:数十万円に及ぶことも珍しくない
- 入院を伴う骨折で数か月の治療期間:差額が100万円前後に達することも
弁護士基準を使って交渉できるのは、弁護士が介入した場合に限られます。
被害者が自分で交渉しても、保険会社が弁護士基準での支払いに応じることはほぼありません。


2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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通院日数が少ない骨折ケースの慰謝料計算方法
骨折で通院日数が少ない場合、慰謝料がどう計算されるかを具体的な数字で把握しておくことが重要です。
2つの基準の差は、骨折のような重傷ケースほど開きが大きくなり、通院2回・5回・10回のケースでは基準によって数十万円単位の差が生じることがあります。
保険会社が提示する金額は多くの場合、自賠責基準か、それに近い任意保険基準で計算されています。
ここでは、基準ごとの計算式と通院回数別の目安額を解説します。
自賠責基準での計算式:実通院日数×2と通院期間の比較
自賠責基準では、慰謝料の計算に使う日数は「実通院日数×2」と「通院期間」を比較し、少ない方の数値を採用します。
1日あたりの単価は、自動車損害賠償保障法に基づく基準額(4,300円前後が目安)を掛けて算出します。
通院日数が少ないほど「実通院日数×2」の値が小さくなり、通院期間よりも少ない数値として選ばれやすくなります。
- 通院期間90日・実通院日数5回(10日分)の場合 → 90日ではなく10日が計算の基礎
- 骨折しているにもかかわらず通院日数が少ない場合に慰謝料が大幅に低くなるのは、この仕組みが主な原因
仕事や家事の都合で通院回数が少なくなったという事情は、自賠責基準の計算式そのものを変えるものではありません。
ただし、通院が少ない理由や医師の指示との関係は、弁護士基準での交渉において考慮される余地があります。

弁護士基準での計算式:通院期間を使った算定方法
弁護士基準(裁判基準)では、実通院日数ではなく通院期間そのものを軸に慰謝料を算定します。
この基準は、交通事故の損害賠償に関する裁判例を集約した算定表(いわゆる「赤い本」など)をもとに運用されており、自賠責基準と比べて大幅に高い金額が認められるケースが多くあります。
算定表では、骨折のような重傷(他覚症状あり)と、打撲・捻挫などの軽傷で別々の基準が設けられています。
骨折は原則として重傷の表を使って計算するため、同じ通院期間でも軽傷より高い金額が算出されます。
- 通院期間(月数・日数)をベースに算定するため、通院日数が少なくても期間が長ければ一定の金額が確保されやすい
- 骨折は重傷の算定表を適用するため、軽傷より高い慰謝料が認められる
- 自賠責基準との差は2倍から3倍程度に及ぶことがある
仕事や家事の都合で通院が少なくなった場合でも、医師から治療の継続が指示されていた事実や、通院が困難だった事情が記録されていれば、弁護士基準での交渉において通院期間が正当に評価される余地があります。
「通院日数が少ない=慰謝料が当然低い」という保険会社側の論理が常に正当とは限らず、骨折の重症度や治療の実態を踏まえた主張が可能な場合があります。

通院2回・5回・10回ごとの慰謝料目安額
通院日数が少ない骨折ケースで、自賠責基準と弁護士基準がどれほど異なるかを、通院回数別に確認します。
以下はあくまで計算式に基づく目安であり、実際の慰謝料は骨折の部位・重症度・治療経過によって変わります。
- 通院2回:自賠責基準は1万円台後半/弁護士基準は数万円〜十数万円
- 通院5回:自賠責基準は約4万円前後/弁護士基準は数十万円台
- 通院10回:自賠責基準は約8万円台後半/弁護士基準は60万円〜80万円程度
自賠責基準と弁護士基準の差が最も顕在化しやすいのが通院10回前後のゾーンであり、通院日数が少ないからといって示談金が低くて当然というわけではありません。
保険会社の提示額が極端に低い場合は、骨折の治療実態が十分に反映されていない可能性があります。
医師の診断書や通院の経緯を整理した上で、提示額の根拠を確認することが重要です。

骨折×通院日数別の慰謝料相場早見表
骨折の慰謝料がいくらになるかは、適用される算定基準と通院期間の組み合わせで大きく変わります。
保険会社から示談案を提示されている方にとって、提示額が適正かどうかを判断する具体的な目安がなければ、そのままサインしてしまうリスクがあります。
骨折の部位・重症度によって治療期間の目安が異なり、それが慰謝料の幅に直結します。
ここでは、弁護士基準による早見表・自賠責基準との差額シミュレーション・骨折の重症度別治療期間の目安を解説します。
弁護士基準による入通院慰謝料の早見表
弁護士基準(裁判基準)で計算した入通院慰謝料は、保険会社が最初に提示する金額より大幅に高くなる場合があります。
通院のみのケースでも、治療期間が3〜6か月あれば数十万円単位の差が生じることがあります。
| 通院のみ1か月 | 入院なし | 19万円前後 |
|---|---|---|
| 通院のみ3か月 | 入院なし | 53万円前後 |
| 通院のみ6か月 | 入院なし | 89万円前後 |
| 通院2か月 | 入院1か月 | 73万円前後 |
| 通院5か月 | 入院1か月 | 115万円前後 |
| 通院3か月 | 入院2か月 | 101万円前後 |
| 通院6か月 | 入院2か月 | 136万円前後 |
通院日数が少なくても、治療期間が長ければ慰謝料の計算上は有利に働きます。
通院頻度が著しく低い場合(治療期間に対して実通院日数が月2〜3回を大きく下回る水準)は、保険会社から「実通院日数」を基準に減額主張をされることがあります。
こうした減額主張に対して被害者側が対抗するためには、弁護士が介入して交渉する方法が有効とされています。

自賠責基準との差額シミュレーション
保険会社が最初に提示する慰謝料は、自賠責基準または任意保険基準で計算されていることがほとんどです。
弁護士基準との差額は、治療期間が長くなるほど拡大する傾向があります。
自賠責基準の計算方法は「1日あたり4,300円前後×対象日数」が基本です(自賠責保険の支払基準に基づく概算)。
対象日数は「治療期間の日数」と「実通院日数の2倍」のうち少ない方が採用されます。
- 自賠責基準:実通院日数30日×2=60日 → 60×4,300円前後=約26万円
- 弁護士基準:通院6か月・重傷扱い → 89万円前後
- 差額:60万円以上
- 自賠責基準:実通院日数12日×2=24日 → 24×4,300円前後=約10万円
- 弁護士基準:通院2か月・重傷扱い → 36万円前後
- 差額:25万円前後
通院日数が極端に少ないケースほど、自賠責基準の計算式では受け取れる金額が抑えられやすい構造になっています。
保険会社の担当者に「この金額は自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準のどれで計算されていますか」と直接質問するのが最も確実な確認方法です。

骨折の重症度別・部位別の治療期間の目安
骨折の治療期間は部位・重症度によって大きく異なります。
治療期間が長いほど慰謝料の計算上の基礎が大きくなるため、「どれくらいの期間が医学的に妥当か」を把握しておくことは重要です。
| 指・趾骨(単純骨折) | 1〜2か月前後 |
|---|---|
| 鎖骨・肋骨(単純骨折) | 2〜3か月前後 |
| 手首・足首(単純骨折) | 2〜4か月前後 |
| 腕・脚(長管骨・単純骨折) | 3〜6か月前後 |
| 骨盤・脊椎・大腿骨(複雑骨折) | 6か月以上 |
| 粉砕骨折・開放骨折 | 6か月〜1年以上 |
治療期間の目安と実際の通院期間が大きくかけ離れている場合、その理由が重要です。
仕事の都合・育児・通院交通手段の問題などで通院できなかった場合でも、医師の指示に基づく治療が継続していれば、適切な期間として主張できる余地があります。
- 医師の診察を定期的に受けていた記録(カルテ・診断書)
- 「治療継続が必要」との医師の指示が確認できる状態
- 示談前に主治医へ確認し、診断書・意見書として書面に残しておく

骨折で後遺症が残った場合の慰謝料
骨折の治療が終わっても、痛みや可動域制限が残ってしまうケースは少なくありません。
こうした後遺症が残った場合、「傷害慰謝料」とは別に「後遺障害慰謝料」を請求できる可能性があります。
通院日数が少ないと傷害慰謝料は低く抑えられがちですが、後遺障害慰謝料は別の基準で算定されます。
ここでは、後遺障害等級認定の基準と慰謝料の目安を解説します。
後遺障害等級認定は通院日数より症状・画像所見が重要
後遺障害等級の認定審査では、通院日数はほとんど考慮されません。
審査の中心は「症状の有無・程度」と「画像や検査で客観的に確認できる所見」です。
- 関節の可動域制限:健側(けんそく)の4分の3以下に制限されている状態
- 変形癒合(へんけいゆごう):骨が変形したまま癒合した状態
- 痛みやしびれ(神経症状):骨折部位に残る症状
- 偽関節(ぎかんせつ):骨がうまくくっつかない状態
これらはX線・MRI・CT画像や、医師が作成する後遺障害診断書によって客観的に証明できる症状です。
たとえ通院が数回しかできなかった事情があっても、画像所見や診断書の内容が適切であれば、等級認定を受けられる可能性があります。
重要なのは、症状固定のタイミングで後遺障害診断書を主治医に丁寧に作成してもらうことです。
症状固定とは「これ以上治療を続けても改善が見込めない状態」を指し、その判断は基本的に主治医が行います。
保険会社から「そろそろ症状固定ではないか」と打診されることもありますが、最終的な判断は医師に委ねられるものです。

等級別の後遺障害慰謝料の目安額
後遺障害等級は1級から14級まであり、等級が上がるほど慰謝料の水準も高くなります。
慰謝料の算定には自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)の3種類があり、弁護士基準が最も高くなる傾向があります。
| 12級 | 関節の可動域制限・変形癒合・画像で確認できる神経損傷 | 弁護士基準:290万円前後 |
|---|---|---|
| 14級 | 画像に異常がないが神経症状(痛み・しびれ)が続く | 弁護士基準:110万円前後 |
自賠責基準での支払額はこれよりも大幅に低く、12級で約94万円前後、14級で約32万円前後とされています。
弁護士基準と自賠責基準の差は、等級によっては3倍近くに及ぶことがあります。
後遺障害等級の申請方法には、相手方保険会社を通じて申請する「事前認定」と、被害者自身が直接申請する「被害者請求」の2種類があります。
被害者請求は手続きの手間はかかりますが、提出書類を自分でコントロールできるため、適切な等級を得やすいとされることがあります。

骨折で通院日数が少ない場合に慰謝料を適正額に近づける方法
骨折による慰謝料を適正額に近づけるには、正しい手順と正しいタイミングで行動することが重要です。
通院日数が少ないからといって、提示された金額をそのまま受け入れる必要はありません。
示談前に取れる行動を知っているかどうかで、最終的な受取額が大きく変わります。
ここでは、慰謝料を適正額に近づけるための3つの方法を解説します。
弁護士基準への切り替えで増額を目指す
保険会社が最初に提示する慰謝料は、弁護士基準(裁判基準)と比べて大幅に低い水準に設定されていることが多いです。
弁護士が交渉または訴訟を行うことで弁護士基準が適用され、慰謝料額が増額される可能性があります。
- 自賠責基準:「実通院日数×2」と「治療期間」のいずれか少ない方を採用。通院日数が少ないと金額が低く抑えられやすい
- 任意保険基準:保険会社が独自設定。自賠責基準に近い水準で詳細は非公開
- 弁護士基準(裁判基準):治療期間(月数)を主軸に算出。実通院日数が少なくても期間が一定あれば相応の金額が認められやすい
骨折のように通院が難しい傷病では特に差が開きやすく、「通院日数が少ないから慰謝料が少ない」という保険会社側の論理は、弁護士基準の観点からは必ずしも正しくないのです。
たとえば、治療期間が約3か月・実通院が10日程度のケースでは、自賠責基準では数万円台にとどまることがある一方、弁護士基準ではその数倍程度の水準になることが多いとされています。
通院日数が少ない理由が「医師の指示による安静」「仕事や育児の都合でやむを得ず通院できなかった」などの場合は、その事情を適切に説明・立証することで、慰謝料算定において不利に扱われる可能性を軽減するよう働きかけることができます。

示談前に弁護士に相談すべき理由(示談後は増額不可)
示談書にサインする前に弁護士へ相談することが、慰謝料を適正額に近づけるうえで最も重要なステップです。
示談が成立した後は、原則として慰謝料の増額を求めることができなくなります。
示談とは当事者間の合意による紛争解決であり、一度合意が成立すると、後から「金額が低すぎた」と主張しても法的には覆すことが非常に困難です。
- 提示された慰謝料が弁護士基準と比べてどの程度低いか
- 後遺障害の可能性があるかどうか(骨折後の痛みや可動域制限が残る場合)
- 休業損害・治療費・交通費など、慰謝料以外の請求漏れがないか
特に骨折の場合、治療が終わった後も痛みやしびれ、関節の可動域制限が残ることがあります。
手足の骨折では関節機能の障害、脊椎骨折では神経症状などが後遺障害の対象となることがあり、後遺障害等級が認定されれば、後遺障害慰謝料と逸失利益を別途請求できる可能性があります。
症状が残っている段階で示談に合意してしまうと、後遺障害に関する請求権も失われるリスクがあります。

弁護士費用特約があれば実質無料で依頼できる
弁護士への依頼を躊躇する理由として、費用の問題を挙げる方は少なくありません。
しかし、自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合、弁護士費用の大部分を保険会社が負担するため、実質的な自己負担がほとんど発生しません。
弁護士費用特約は、多くの自動車保険に標準またはオプションとして付帯されています。
法律相談費用・弁護士報酬ともに一定の上限額まで補償されるケースが多く、交通事故の慰謝料交渉や訴訟であれば多くの場合この上限内に収まります。
自分の保険証券や加入保険会社への問い合わせで、特約の有無と補償内容を確認しておくと相談前の見通しが立てやすくなります。
弁護士費用特約がない場合でも、多くの弁護士事務所では初回相談を無料で受け付けています。
また、成功報酬型の料金体系を採用している事務所では、増額分の中から費用を支払う形になるため、手元資金がなくても依頼しやすい仕組みになっています。


2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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「交通事故 骨折 慰謝料」に関するよくある質問
通院日数が少ない骨折のケースでは、慰謝料の金額や請求の進め方について判断に迷うことが多いものです。
保険会社の提示額が適切かどうか、自分の状況で何を請求できるのかといった疑問は、多くの方が抱えています。
ここでは、そうした不安や疑問に対して、知っておくべき基本的な考え方を整理してお伝えします。
それぞれの質問について、具体的にお答えします。
通院日数が2〜5回しかない場合、骨折の慰謝料はいくらになりますか?
通院日数が少なくても、適用する基準によって慰謝料の計算方法が異なります。
自賠責基準では、慰謝料は「実通院日数×2×4,300円」または「通院期間×4,300円」のいずれか少ない方が採用されます。
そのため、実通院日数が2〜5回の場合、計算上の慰謝料は1万7,200円〜4万3,000円程度にとどまることがあります。
一方、弁護士基準(裁判基準)では、通院期間をもとに慰謝料額を算出するため、実通院日数が少なくても通院期間が長ければ一定の金額が認められやすくなります。
たとえば骨折で3か月通院した場合、弁護士基準では実通院日数にかかわらず数十万円台の慰謝料が認められるケースもあります。

仕事が忙しくて通院できなかった場合、慰謝料は減額されますか?
やむを得ない事情がある場合、慰謝料減額の不当性を弁護士を通じて主張できる可能性があります。
仕事が忙しくて通院できなかった場合でも、保険会社から「通院日数が少ない」として慰謝料を減額されるケースがあります。
しかし、業務上の都合などのやむを得ない事情がある場合には、その減額が不当であると主張できる余地があります。
保険会社の提示額をそのまま受け入れる前に、弁護士に相談することで、状況に応じた反論が可能かどうかを確認することをおすすめします。

保険会社から提示された慰謝料が低すぎると感じたら、どうすればいいですか?
示談書へのサインを保留したうえで、弁護士への相談を検討することが重要です。
保険会社から提示される慰謝料は、弁護士基準(裁判基準)と比べて低い水準で算定されているケースがあります。
示談前であれば、弁護士基準をもとに慰謝料を再計算し、増額交渉を進めることが可能です。
一方、示談書にサインしてしまうと、原則として後から金額の変更や追加請求ができなくなります。
提示額に疑問を感じた場合は、サインをする前に弁護士の無料相談を活用して内容を確認することをおすすめします。

骨折で通院日数が少ない場合でも後遺障害は認定されますか?
後遺障害等級認定は通院日数だけでなく、症状の残存や画像所見が重要な判断基準となります。
骨折の場合、通院日数が少なくても、治療終了後に痛みやしびれなどの症状が残っており、レントゲンやMRIなどの画像で所見が確認できれば、後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。
認定の判断においては、通院回数そのものよりも、症状が医学的に証明・説明できるかという点が重視されます。
認定を受けた場合、等級によって慰謝料が大幅に上乗せされるため、通院日数が少ないからといって申請を諦める必要はありません。

慰謝料以外にも請求できるお金はありますか?
慰謝料は損害賠償全体の一部であり、それ以外にもさまざまな費用を別途請求できます。
治療費や通院にかかった交通費は、慰謝料とは独立した費用として請求できます。
また、骨折によって仕事を休まざるを得なかった場合は、休業損害として収入の減少分を請求することも可能です。
休業損害は会社員だけでなく、自営業者やパート・アルバイトの方にも認められる場合があります。
請求できる損害の種類は状況によって異なるため、慰謝料の金額だけに注目せず、請求できる費目全体を確認することが重要です。

弁護士に頼むと費用はどのくらいかかりますか?
弁護士費用特約があれば、弁護士への依頼は実質無料で行えます。
加入中の自動車保険に弁護士費用特約が付いている場合、多くのケースで300万円を上限として保険会社が弁護士費用を負担するため、自己負担なく依頼することができます。
まずは自身の保険証券や保険会社に特約の有無を確認してみることをおすすめします。
特約がない場合でも、成功報酬型の料金体系を採用している事務所が多く、示談金の増額分から費用を支払う仕組みが一般的です。
そのため、手元に費用がない状態でも依頼しやすい環境が整っています。

まとめ
交通事故で骨折した場合の慰謝料は、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」のどれを使うかで受取額が大きく変わります。
保険会社が提示する金額は多くの場合、自賠責基準または任意保険基準で計算されており、弁護士基準と比べて数十万円規模の差が生じることも珍しくありません。
骨折のような重傷では、通院日数が少なくても治療期間が長くなりやすく、弁護士基準(赤い本・別表I)で算定すれば実通院日数の少なさを理由とする減額に対抗できる可能性があります。
後遺症が残った場合は、後遺障害等級(12級・14級など)の認定を受けることで、後遺障害慰謝料と逸失利益を別途請求できます。
示談書にサインする前に、必ず弁護士基準との比較確認を行うことが、損をしないための最も確実な方法です。
あまた法律事務所では、交通事故の慰謝料交渉に関するご相談を承っております。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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