「自己破産したら、会社はどうなってしまうの?」
「勤め先に知られて、クビになったりしない?」
自己破産は裁判所に申し立てて債務の返済義務を免除してもらう法的手続きですが、「すべてを失う手続き」ではなく、影響する範囲と影響しない範囲は法律で明確に定められています。
- 経営者の自己破産は、原則として会社の経営権・財産に直接及ぶ
- 会社員の自己破産は、勤務先への通知義務がなく、解雇事由にも該当しない
- 自己破産以外にも、民事再生・個人再生・任意整理といった選択肢が存在する
自己破産以外の選択肢も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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この記事の目次
自己破産すると会社にどんな影響があるか:全体像
「自己破産したら、会社はどうなるのか」という不安を抱える方は少なくありません。
しかしその答えは一律ではなく、あなたが「会社の経営者」なのか「会社員」なのかによって影響の大きさがまったく異なります。
- 自己破産とは何か:借金がゼロになる代わりに生じる制約
- 「会社の破産」と「個人の自己破産」は法的に別の手続き
- 経営者と会社員では、会社への影響が大きく違う
自己破産に対して漠然とした恐怖を感じている方ほど、「影響する範囲」と「影響しない範囲」を正確に把握しておきましょう。
正しい全体像を知ることで不必要な不安を手放し、次の行動を冷静に検討できるようになります。
自己破産とは:借金がゼロになる代わりに失うもの
自己破産は、裁判所の手続きを通じて返済できない借金を原則としてすべて免除してもらう制度です。
免責が認められれば借金の返済義務はなくなるものの、それと引き換えにいくつかの制約も。
- 一定額以上の財産(不動産・車・預貯金など)は原則として処分される
- 手続き中は弁護士・司法書士・警備員など一部の職業に就けない期間がある(会社の取締役・代表取締役については後述)
- 信用情報機関に登録され、一定期間は新たな借り入れやクレジットカードの利用が制限される
免責が認められるまでの期間は事案によって異なり、借金の原因が明確でシンプルなケースでは比較的短期間で終わる傾向、財産の種類や債権者が多い複雑な事案では長期化する傾向があります。
概ね数か月から1年程度が目安とされていますが、自分のケースがどちらに近いかは専門家に確認するのが確実。
ギャンブルによる借金や財産隠しなど、免責が認められない「免責不許可事由」が存在する点にも注意が必要です。
重要なのは、自己破産があくまで「個人の借金を整理する手続き」だという点です。

「会社の破産」と「個人の自己破産」は別の手続き
個人の自己破産と会社(法人)の破産は法的にまったく異なる手続きで、どちらかを行ってももう一方に自動的に影響が及ぶわけではありません。
- 個人の自己破産:個人の借金・財産を対象とした手続き
- 会社の破産:法人格を持つ会社の債務・財産を対象とした手続き
たとえば経営者個人が自己破産をしても会社自体は存続し続けることができ、逆に会社が破産しても経営者個人の借金がそのまま免除されるわけではありません。
ただし現実の中小企業では経営者が会社の借金に対して「個人保証」を付けているケースが多く、この場合は会社の借金が経営者個人にも及ぶため、会社の破産と個人の自己破産を同時に進めるケースも少なくありません。
同時申請を行う場合は会社の破産手続きと個人の自己破産手続きをそれぞれ並行して裁判所に申し立て、会社の財産と個人の財産を分けて整理したうえで、個人については免責の可否が判断されます。
取引先への通知や従業員の雇用については、会社の破産管財人が対応を担います。
個人保証の有無や保証の範囲によって手続きの複雑さが変わるため、早めに弁護士へ相談しましょう。

経営者のケースと会社員のケースで影響が大きく異なる
個人の自己破産が「会社」に与える影響は、経営者と会社員とでは大きく異なります。
一般的に経営者の方が影響の範囲は広く、会社員の場合は直接的な影響が生じにくいとされています。
経営者の場合のポイント
経営者が自己破産をすると、会社の経営に直接関わる場面で影響が出ることがあります。
会社法では破産手続き開始決定を受けた期間中は取締役・代表取締役などの役員に就くことができないと定められており、手続き中は役員を続けることが原則としてできません。
ただし免責が認められた後は欠格事由が解消されるため、改めて役員に就任することは可能。
また、経営者が保有する会社の株式や出資持分は個人財産として扱われるため自己破産の手続きの中で処分対象となる場合があり、株式が第三者に渡ることで会社の支配権・経営権を失う可能性もあります。
会社を存続させたいと考えている場合は、株式の処分がどう扱われるかを事前に専門家と確認しておきましょう。
さらに個人保証がある場合は会社の債務と個人の自己破産が連動して処理されることになり、会社も同時に破産するケースでは取引先への債務弁済や従業員の雇用契約の扱いが破産管財人のもとで整理されます。
会社員の場合のポイント
会社員が個人の自己破産をしても、原則として会社への直接的な影響はありません。
自己破産の事実が勤務先に通知される仕組みはなく、解雇の法的な理由にもなりません。
労働契約法および解雇権濫用法理のもとでは、自己破産を理由とした解雇は合理的な理由がないとみなされる可能性が高く、有効な解雇とは認められないケースがほとんどです。
ただし就業規則に「自己破産を届け出る義務」が定められている会社も一部存在し、届け出た場合でもそれだけで解雇が認められるわけではありませんが、会社との関係に影響が生じる可能性はあります。
自社の就業規則を事前に確認しておきましょう。
また、経理担当者や金融機関勤務など信用を要する職種では、配置転換など職場内での処遇に変化が生じるケースが一部報告されている点も念頭に置いておくと安心です。

自己破産以外の選択肢も知っておく
自己破産は債務整理の手段のひとつに過ぎず、状況によっては別の方法で解決できるケースがあります。
- 任意整理・個人再生など、財産を守りながら債務を整理できる手段がある
- 法人と個人の債務を切り分けて処理する方法も存在する
- どの手段が適切かは、債務総額・収入・資産状況によって異なる
「自己破産しかない」と思い込んで判断を急いでしまうと、本来使えた手段を見落とすリスクも。
特に経営者の場合は法人と個人の両方に債務が絡むため、選択肢の整理を早めに行うことが重要です。
ここでは、自己破産以外の主な選択肢と、どの手段が自分の状況に合うかの判断基準を解説します。
任意整理・個人再生との違いと使い分け
自己破産・任意整理・個人再生はいずれも法的に認められた債務整理の手段ですが、財産への影響・手続きの重さ・残債の扱いがそれぞれ異なります。
特に経営者にとって重要なのは、任意整理・個人再生を選んだ場合は原則として役員資格を失わずに済む点です。
| 手段 | 役員資格 | 会社経営の継続 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 維持される | 原則として継続可能 |
| 個人再生 | 維持される | 原則として継続可能 |
| 自己破産 | 手続き期間中は制限あり | 一定期間、役員就任に制約が生じる |
従業員として勤務している方が個人の債務整理を行う場合も、任意整理・個人再生であれば職場に通知が届くことはなく、雇用関係に直接の影響は生じないのが一般的。
- 任意整理:裁判所を通さず、債権者と直接交渉して利息や返済額を減らす手続き(「このカード会社だけ」「住宅ローンは除外」といった選び方が可能。ただし債務総額が大きいと減額幅では対応しきれないことも)
- 個人再生:裁判所を通じて債務を大幅に圧縮し、残額を3〜5年で分割返済する手続き
- 自己破産:裁判所の許可を得て債務を全額免除するが、一定以上の財産は処分される
任意整理は手続きが比較的シンプルで、対象とする債権者を自分で選べる柔軟さがあります。
個人再生は住宅ローン特則を使えばマイホームを手放さずに債務を圧縮でき、安定した収入が見込める方に向いている一方、手続きが複雑で期間も長くなりがち。
自己破産は債務総額が非常に大きく返済の見通しが立たない場合に選ばれる手段で、免責が認められれば債務はゼロになりますが、一定額以上の財産の換価・官報掲載・信用情報への記録といった影響を伴います。

法人のみ破産させて個人の債務を残す方法
経営者の場合、「会社(法人)だけを破産させて、個人の債務は別途整理する」という方法を取れるケースがあります。
法人と個人は法律上別の存在であるため、法人の破産手続きと個人の債務整理は切り分けて進めることが可能です。
ただし、この方法が使えるかどうかは個人保証の有無と内容次第。
個人保証がある場合のポイント
中小企業の経営者の多くが、会社の借入に対して個人保証(連帯保証)を付けている状態。
この場合法人が破産しても個人保証人としての債務は消えず、法人破産後に金融機関などから個人に対して請求が来るため、個人としての債務整理も並行して検討する必要があります。
中小企業庁が公表している「経営者保証に関するガイドライン」では、一定の要件を満たす場合に個人保証債務を経営者の生活再建へ配慮した形で整理できる枠組みも。
- 法人と個人の財務が明確に分離されていること
- 財務状況を金融機関に誠実に開示していること
- 保証履行後に一定の生活再建資金が残せること
手元の借入契約書や決算書類を確認し、これらの条件に近い状況かどうかを事前に整理しておくと、専門家への相談がよりスムーズになります。
このガイドラインを活用することで、自己破産を回避しながら個人保証債務を整理できる可能性もあります。
法人のみ破産させる場合のポイント
法人破産の手続きは個人の自己破産とは別の法的手続きで、会社の資産を換価して債権者に分配し、会社は消滅します。
経営者個人に個人保証がなく、かつ個人名義の借入もない場合は、個人の債務整理手続きが不要となることも。
ただし、これは法人・個人の債務が完全に分離されているケースに限られます。
一方で、役員報酬の未払いや税金の滞納が個人に帰属している場合は、法人破産とは別に個人としての対応が必要になります。
自分の状況が該当するかどうかは、まず手元にある借入契約書や保証契約書で「個人保証の有無」を確認することが相談前の最初の一歩。
法人と個人の債務を正確に切り分けるには、弁護士による精査が不可欠です。

どの手段が自分に向いているかの判断基準
自己破産・任意整理・個人再生・経営者保証ガイドラインの活用など、選択肢は複数あります。
- 債務総額と月々の返済可能額のバランス
- 継続的な収入があるかどうか
- 守りたい財産(自宅・事業用資産など)があるかどうか
- 法人・個人の債務がどのように絡んでいるか
- 個人保証の有無と保証内容
- 会社経営や役員としての地位を維持したいかどうか
収入があり債務を圧縮すれば返済できる見込みがある場合は任意整理や個人再生が選択肢になり、これらの手段であれば役員資格を維持したまま手続きを進められるでしょう。
一方、収入が見込めず債務総額が大きい場合は、自己破産が現実的な解決手段になることが多いです。
また経営者の場合は法人と個人の債務が複雑に絡み合っているため、個人の状況だけで判断するのは危険。
相談前に「借入先の一覧」「個人保証の有無が分かる契約書」「直近の決算書や収支の概要」を手元に用意しておくと、専門家がより具体的なアドバイスをしやすくなります。
「どの手段が使えるか」は個別の事情によって異なるため、まずは弁護士への無料相談を活用して自分の状況に合った選択肢を確認しましょう。

社長・経営者が自己破産した場合、会社はどうなる
経営者個人が自己破産を申請したとき、「会社がそのまま消えてしまうのか」という不安を持つ方は少なくありません。
経営者の自己破産と会社の命運は、必ずしも直結するわけではありません。
ただし、いくつかの点で会社運営に影響が生じるのも事実です。
- 取締役の資格は破産手続き中に一時的に失われる
- 会社自体は経営者の破産だけでは即座に消滅しない
- 個人保証の有無によって、個人に生じる債務の規模が大きく変わる
- 法人と個人を同時に破産申し立てするケースも存在する
経営者として自己破産を検討している場合は、「自分個人の破産」と「会社の破産」を切り分けて考えましょう。
以下では、各論点を順に解説します。
取締役の資格は手続き中に失われる
自己破産の申し立てをおこなった経営者は、破産手続き開始の決定を受けた時点で取締役の資格を失います。
これは会社法と破産法の規定が重なる部分で、手続き中は役員として会社を代表する権限が停止される仕組み。
資格の喪失はこの手続き期間中に限られ、免責許可が確定すれば再び取締役に就任することも可能です。
- 手続き中に会社の代表者が不在になるため、後任の取締役を選任する必要がある
- 株主総会や取締役会の招集・議決など、会社内部の手続きが滞るリスクがある
- 金融機関や取引先との契約によっては、代表者変更を通知する義務が生じる場合がある
- 免責許可までの期間は申し立てから概ね3〜6か月程度が目安(負債規模や債権者の状況で前後する)
一人会社や同族会社など後任候補が社内にいないケースでは手続き期間中に代表者が不在となり、会社の意思決定や契約行為が実質的にできなくなる可能性もあります。
会社が事業を継続する意向であれば、破産申し立てと並行して後任取締役の選任を速やかに進めましょう。

会社自体がすぐに消滅するわけではない
経営者個人が自己破産をしても、会社という法人格はそのまま存続します。
会社は法律上、経営者個人とは別の「人格」を持つ存在であるため、個人の破産手続きが会社に直接の法的効力を及ぼすことはありません。
会社が消滅するのは、会社自身が破産手続きを申し立てた場合、または清算手続きを経た場合のみ。
- 経営者が個人で会社の資金繰りを支えていた場合、その資金供給が断たれる
- 代表者の変更により、金融機関が融資の継続可否を再審査する、あるいは取引先が新たな取引条件を求めてくる
- 経営者が唯一の株主である場合、後継者や後任役員の確保が難しくなる
なお官報を日常的に確認する取引先は限られますが、代表者変更の登記は法人登記簿に反映されるため、そこから状況が伝わる可能性はあります。
従業員の雇用・給与・社会保険については経営者個人の破産だけで直ちに影響が生じるわけではありませんが、会社の資金繰りが悪化している場合は給与支払いや社会保険料の納付に支障が出るリスクがあります。
経営者の破産後も会社を存続させるか会社ごと整理するかは、負債の構造・後任の有無・事業の見通しなどを踏まえて判断しましょう。

手続き中の会社口座・契約・日常業務への影響
経営者個人の破産手続き中、会社の銀行口座や契約・日常業務への影響は「個人口座」と「法人口座」を区別して考えることが必要です。
破産手続きの対象となるのはあくまで経営者個人の財産であり、会社名義の口座や契約は原則として破産財団に組み込まれません。
そのため、会社の法人口座が凍結されたり会社名義の契約が自動的に解除されたりすることは通常ありません。
- 経営者個人が連帯保証人になっている法人向け融資は、個人の破産手続きの対象となる
- 代表者が変わることで、金融機関が融資の継続可否を再審査する場合がある
- 取引先との契約書に「代表者の破産を解除事由とする条項」が含まれているケースがある
取引先との契約については、契約書の内容を事前に確認しておくことが重要です。
解除条項が存在する場合は、手続き開始前に取引先との関係をどう維持するかを弁護士と相談しておくと、トラブルを未然に防ぎやすくなります。

個人保証をしていた場合に個人債務が発生する仕組み
中小企業の経営者の多くは会社の借入に対して個人保証(連帯保証)を求められており、この個人保証が経営者の自己破産に大きく関わってきます。
会社が金融機関から融資を受ける際に経営者が個人として連帯保証人になっている場合、会社が返済できなくなった時点でその債務は保証人である経営者個人に請求されます。
つまり、会社の借金と経営者個人の借金は保証契約を通じて事実上ひとつながり。
この状態で会社が経営不振に陥ると経営者個人も多額の債務を抱えることになり、個人破産を検討せざるを得ない状況になりやすいといえます。
なお中小企業庁の「経営者保証に関するガイドライン」では、一定の条件を満たす場合に個人保証を外す交渉の枠組みが設けられています。
すでに保証債務が発生している場合でもこのガイドラインに基づいた対応が選択肢になり得るため、自分の状況が条件に当てはまるかは弁護士や認定支援機関への相談時に確認しましょう。

法人破産と個人破産を同時に申し立てるケース
経営者個人の自己破産と会社(法人)の破産申し立てを同時におこなうケースは、実務上よく見られます。
- 会社の債務と経営者個人の保証債務が一体化しており、個人だけ整理しても解決しない
- 会社の事業継続が見込めず、法人としての清算が必要な状態にある
- 個人・法人の両方を同時に整理することで、手続きのコストや期間を効率化できる
法人破産と個人破産は手続きとしては別々に進むものの、同一の弁護士が代理人として両方を担当することが多く、費用面・スケジュール面では一体的に進行するのが通例。
弁護士費用や裁判所への予納金は法人・個人それぞれに発生するものの、同時申し立てにより一部の手続きを共通化できるため個別に進めるより総費用を抑えられる場合があるとされています。
具体的な費用の目安は負債規模や債権者数によって異なるため、相談時に見積もりを確認しておきましょう。
一方で、法人だけ破産させて経営者個人は別途整理する、あるいは個人だけ破産して会社は存続させるという選択肢も状況によっては成立し、任意整理・個人再生・民事再生といった手続きが選択肢となる場合もあります。
どのパターンが適切かは負債の構造・事業の継続可能性・債権者との関係など複数の要素を総合的に判断する必要があるため、早い段階で弁護士に状況を整理してもらうことが最善の選択につながります。

経営者が自己破産した後の生活と再起
自己破産後の生活と再起可能性は、経営者にとって最も気になるテーマの一つです。
なおこのセクションは「自分で会社を経営している経営者」を対象としており、会社員として勤務している方への影響は次の章「会社員が自己破産した場合、職場にバレるか・解雇されるか」で解説します。
個人の自己破産手続きはあくまで「個人の債務」を対象とするもので、経営者個人が自己破産しても法人格を持つ会社そのものが自動的に倒産・廃業になるわけではありません。
ただし経営者が会社の連帯保証人になっている場合や会社の資金繰りが個人の信用に依存している場合は、会社の継続が実質的に困難になるケースも。
- 免責許可が下りれば、原則としてすべての借金がゼロになる
- 破産後も一定の生活費・財産は手元に残る
- 再び会社を設立したり、取締役に就任したりすることは可能
- 申立から免責許可まで、おおむね半年〜1年程度が目安
「破産したら一生終わり」というイメージを持つ方は少なくありませんが、法律上は再起の道が明確に用意されています。
このセクションでは、免責後の生活・再起・手続き期間の3点を順に解説します。
免責許可後は新たなスタートが切れる
免責許可が確定すると、手続き前に抱えていた借金の返済義務は原則として消滅します。
手元に残せるのは、法律が定める「自由財産」の範囲内の資産。
- 現金(裁判所が認める基準額の範囲内。東京地裁の運用では99万円以下の現金が目安とされることが多い)
- 生活に必要な家財道具・衣類
- 差押えが禁止されている退職金の一部
- 住居は賃貸なら継続して住み続けられるケースが多く、自己所有の場合は引き渡しが求められるのが一般的
不動産・自動車・預貯金など換価価値のある財産は、破産管財人によって処分される可能性があります。
注意したいのは、財産を隠したり特定の債権者にだけ優先して返済していた(偏頗弁済)と判断されたりすると免責不許可事由に該当する可能性がある点です。
経営者は通常の個人に比べてこうした問題が生じやすいため、手続き前に弁護士へ状況を正直に伝えましょう。
信用情報機関に事故情報が登録されるおおむね5〜10年程度は、新たなローンやクレジットカードの利用が難しくなります。

再び会社設立・取締役に就任できるタイミング
免責許可が確定すれば、取締役などの役員に就任できる制限は解除されます。
会社法上、自己破産の経歴そのものは役員就任の欠格事由ではありません。
ただし破産手続き開始の決定を受けてから免責許可が確定するまでの間は会社法の規定により取締役・監査役・執行役などの役員に就任できず、この期間中に役員として登記されていた場合は退任手続きが必要になります。
役員の退任にともなう実務対応も複数発生するため、弁護士や社会保険労務士と連携して早めに準備しましょう。
- 免責許可確定後は、法律上の制限なく会社設立・役員就任が可能
- 金融機関からの融資は、信用情報の回復を待つ必要がある
- 日本政策金融公庫の「再挑戦支援資金」など、廃業・再起を支援する公的融資制度が設けられている場合がある(利用には事業計画の提出や一定の要件を満たすことが条件)
- 取引先・仕入先との関係は法律ではなく相手方の判断に委ねられる
- 役員退任にともなう実務対応(取引先への説明・契約関係の見直し・従業員の雇用維持・社会保険の継続手続き)が発生する
事業再建の資金調達については、民間金融機関よりも公的支援制度を先に検討するのが現実的なアプローチ。
日本政策金融公庫の各支店窓口や各都道府県の中小企業支援センター(よろず支援拠点)に相談することで、利用可能な制度を確認できます。

申立から免責許可までの期間の目安
自己破産の手続きは、申立から免責許可確定まで一定の時間がかかります。
経営者の場合は事業規模によって手続きが複雑になりやすく、期間も変動しがち。
- STEP1:弁護士への相談・受任(受任後、債権者への受任通知が送られ、督促が止まる)
- STEP2:申立書類の準備・申立(受任から1〜3か月程度が目安)
- STEP3:破産手続き開始決定(申立後、数日〜数週間で決定が下りることが多い)
- STEP4:免責審尋・免責許可決定(開始決定から数か月〜1年程度)
負債の規模が小さく財産もシンプルなケースでは同時廃止(管財人を選任せずに手続きを終える方式)が適用され、比較的短期間で終了することがあります。
一方、事業規模が大きく財産・債権者が多い場合は管財事件として処理され、1年以上かかるケースも。
手続き期間中は弁護士・司法書士・税理士・宅地建物取引士などの士業資格は業務ができなくなるため、該当する方は早めに専門家へ確認してください。

会社員が自己破産した場合、職場にバレるか・解雇されるか
会社員が自己破産を検討するとき、「職場に知られてしまうのか」「クビになるのか」という不安は特に大きいものです。
結論から言えば、多くのケースでは職場への通知は行われず、解雇も法律上は認められていません。
- 会社への通知義務は原則として存在しない
- 官報への掲載はあるが、職場の担当者が実際に確認する可能性は低い
- 就業規則に解雇規定がある場合でも、そのまま解雇が有効になるとは限らない
- 給与・賞与への直接的な影響は基本的にない
なおこのセクションは「会社に勤める従業員」として自己破産する場合の影響を対象としており、自分が経営する会社への影響を知りたい方は「社長・経営者が自己破産した場合、会社はどうなる」をご確認ください。
自己破産は個人の債務整理手続きであり、勤め先との雇用関係とは原則として切り離されています。
ただし、職種や就業規則の内容によって注意が必要なケースも。
会社への通知義務は原則ない
自己破産の手続きにおいて、裁判所や破産管財人が勤め先の会社に通知を行う義務はありません。
手続きは基本的に申立人・裁判所・債権者の間で進むため、雇用主は当事者として関与しません。
給与を差し押さえられているケースでは勤め先に知られることがありますが、自己破産をすると差押えは停止されるため、むしろ手続き後に発覚リスクが下がる場合もあります。
- 本人が自ら申告する
- 同僚や知人が官報を偶然確認する
- 保証人になっている同僚・上司に債権者から連絡が入る
連帯保証人が職場の関係者である場合は、手続き開始後も債権者から連絡が入り間接的に知られるリスクがあります。
対応の方針は、弁護士など専門家に相談したうえで決めましょう。

官報に掲載されるが実際に見られる可能性は低い
自己破産の決定は官報に公告され、これは法律上の要件であり省略できません。
ただし官報は国の機関紙であり、一般の会社員が日常的に閲覧するものではありません。
実務上、一般の会社員の自己破産情報を職場の担当者が官報で発見するケースは稀です。
官報を定期的にチェックするのは、信用情報機関・金融機関・一部の士業など特定の業務上の必要がある組織に限られます。
- 金融機関・証券会社・保険会社に勤務している場合
- 警備業・士業・一部の公務員など、法令上の欠格事由が定められている職種
- 経営幹部や役員として登記されている場合
これらに該当する場合は職種ごとの法令要件について担当省庁や所管官庁へ確認するか、弁護士・社会保険労務士などの専門家に相談してみてください。

就業規則に「破産者は解雇」と定めがある場合の扱い
就業規則に「自己破産した場合は解雇事由とする」という条項が含まれていることがありますが、この規定があるからといって直ちに解雇が有効になるわけではありません。
労働契約法第16条は、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当でない解雇を無効と定めています。
自己破産という事実だけでは、多くの場合「客観的に合理的な理由」とは認められません。
裁判例においても、単に自己破産をしたことのみを理由とした解雇は無効と判断されるケースが多く見られます。
解雇が有効と認められやすいのは、破産の事実が業務遂行や信頼性に直接影響すると判断できる具体的な事情が重なったケースで、自己破産の事実単独では解雇理由として認められにくいとされています。
解雇が認められやすい場合のポイント
自己破産が解雇理由として認められやすいのは、破産の事実が業務遂行能力や信頼性に直接影響すると判断できる場合です。
たとえば経理・財務担当として多額の現金を扱う職務、顧客資産を管理する立場、あるいは破産に至る過程で業務上の横領や不正が発覚したケースなどが該当しえます。
職種や業務内容と破産の事実に具体的な関連性がなければ、就業規則の条項だけで解雇を正当化することは難しいでしょう。
欠格事由が定められている職種の場合
士業(弁護士・税理士・公認会計士など)や警備員など法律上「破産者は資格を有しない」と定められている職種では、自己破産によって資格・許可が失効し業務を継続できなくなる場合があります。
これは解雇とは異なりますが実質的に就業継続が困難になるため、該当する職種の方は事前に専門家へ確認しておきましょう。
ただし、資格の失効は永続的なものではなく免責許可が確定した後は多くの職種で資格・許可が回復します。
免責後の資格回復の時期や手続きは職種ごとに異なるため、所管官庁または専門家に確認してみてください。

給与・賞与への影響はあるか
自己破産をしても、給与や賞与の支払い自体には直接の影響はありません。
雇用契約に基づく賃金請求権は継続して発生し、会社が支払いを拒否する法的根拠もありません。
自己破産後に問題になりやすいのは、給与の差押えではなく財産管理の制限です。
破産手続き中は管財人が財産を管理しますが、給与のうち生活に必要な部分は自由財産として手元に残せます。
裁判所の運用では標準的な生活費の水準を目安に自由財産の範囲が判断されることが多く、具体的な金額は申立先の裁判所や管財人の判断によって異なるため、弁護士に事前に確認しましょう。
また社内融資は債権者として破産手続きに組み込まれる可能性があり、従業員持株制度の持分は財産として管財人の管理対象となりうるため、事前に専門家へ相談しておくと安心です。

会社が自己破産したら、従業員はどうなる
勤め先の会社が自己破産した場合、従業員の生活に直接影響が及びます。
- 雇用契約は原則として終了し、解雇・退職の手続きが行われる
- 未払いの給与や退職金は、一定の優先順位で支払われる債権として扱われる
- 国の「未払賃金立替払制度」を利用すれば、一部の未払い給与を回収できる可能性がある
突然の会社倒産は、収入の喪失と将来への不安が重なる非常に深刻な事態です。
ただし法律上の保護制度が複数存在するため、まずは状況を正確に把握することが最初の一歩。
このセクションでは、雇用・給与・退職金それぞれの扱いと、実際に取れる行動を解説します。
雇用契約は原則として終了する
会社が自己破産の申立てを行い裁判所が破産手続きの開始を決定した時点で、雇用関係は原則として終了します。
破産管財人が事業の継続を判断しない限り、従業員全員が解雇の対象となるのが一般的。
事業継続が判断されるのは事業譲渡や一部の業務継続が財産価値の最大化につながると破産管財人が判断した場合に限られ、多くのケースでは手続き開始後に事業は停止します。
労働基準法上、解雇には原則として30日前の予告または解雇予告手当の支払いが必要ですが、会社が経済的に破綻している状況ではこの手当が支払われないケースも少なくありません。
支払われなかった場合は労働基準監督署に申告することで対応を求められ、未払いとなった解雇予告手当は後述の未払賃金立替払制度の対象となる場合もあります。
解雇後は雇用保険(失業給付)の受給手続きを速やかに行い、ハローワークに「会社が破産した」という事実を証明する書類を提出すると、会社都合退職として自己都合よりも早く給付を受けられます。

未払い給与・退職金を回収する方法
会社が破産した場合でも、未払い給与や退職金は「優先的破産債権」として一般の借入債権よりも先に弁済を受ける権利があります。
ただし、会社に残っている財産が少ない場合は全額を回収できないことも多いのが現実。
破産手続きの中では、従業員が「破産債権の届出」を行うことで未払い給与・退職金の支払いを求める権利を主張できます。
届出には期限が設けられており、この期間を過ぎると権利が制限される場合があるため、通知が届いたら速やかに対応してください。
- STEP1:破産管財人から届く「破産債権届出書」に、未払い給与・退職金の金額を記入して提出する
- STEP2:給与明細・雇用契約書・タイムカードなど、金額を証明できる書類を揃える
- STEP3:労働基準監督署に相談し、未払い賃金の確認と記録を残しておく
退職金については、就業規則や退職金規程に基づいて計算された金額が債権として認められます。
退職金規程が存在しない会社の場合は債権としての認定が困難になるケースがあるため、規程の有無を早めに確認しておきましょう。

未払賃金立替払制度の仕組みと申請方法
未払い給与の全額を破産財団から回収できない場合でも、国の「未払賃金立替払制度」を利用することで一定額の補填を受けられる可能性があります。
この制度は独立行政法人労働者健康安全機構が運営しており、企業倒産により賃金が支払われなかった労働者を保護することを目的としています。
立替払の対象となるポイント
立替払の対象となるのは、退職日の6か月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来した未払い給与および退職金です。
立替払いされる金額には上限が設けられており、その額は退職時の年齢に応じて変動。
未払い総額が上限を下回る場合はおおむね8割程度が支払われ、上限を超える場合は上限額が適用されます。
未払い額が多いほど、上限額の影響を受けやすくなるでしょう。
申請の流れのポイント
申請には、企業が法律上の倒産状態にあることを証明する書類が必要です。
- STEP1:労働基準監督署に「未払賃金の確認申請」を行い、未払い額の証明書を取得する
- STEP2:労働者健康安全機構に対して立替払いの請求書を提出する
- STEP3:審査を経て、認められた金額が振り込まれる
申請期限は倒産認定日から2年以内で、期限を過ぎると申請できなくなります。
倒産の事実を確認したら、早めに動いてください。
未払い給与・退職金に関する相談や証明書の取得は労働基準監督署へ、雇用保険の受給手続きはハローワークへと窓口が異なるため、状況に応じて適切な窓口を選びましょう。

自己破産のデメリットと手続き中の制限事項
自己破産には借金を清算できるメリットがある一方、手続き中および手続き後にはいくつかの制限が生じます。
- 手続き中は一部の職業・資格が使えなくなる期間がある
- 一定額以上の財産は処分されるが、生活に必要な財産は手元に残せる
- 信用情報機関に事故情報が登録され、一定期間はローンやクレジットカードの利用が難しくなる
- 手続きにかかる費用は個人と法人で大きく異なる
経営者の方がとくに気になるのは「会社への影響」ではないでしょうか。
個人の自己破産と法人(会社)の破産は法律上、別の手続きです。
個人が自己破産しても、会社自体が直ちに倒産・消滅するわけではありません。
ただし経営者の立場や会社との関係によって影響の内容は異なり、会社員の方も状況によって影響の範囲が変わります。
これらの制限を事前に把握しておくことで、自己破産を選択するかどうかの判断材料が整います。
手続き中に就けない職業・資格制限の一覧
自己破産の手続き開始から免責許可が下りるまでの期間(おおむね数か月程度)、特定の職業・資格の就業・登録が制限されます。
免責が確定すると制限は解除されるため、永続的に働けなくなるわけではありません。
- 弁護士・司法書士・税理士・公認会計士などの士業
- 宅地建物取引士(宅建士)
- 保険外交員・証券外務員
- 警備員・後見人・遺言執行者
会社の取締役・役員については、会社法上自己破産して免責が確定していない期間は取締役等の欠格事由に該当するため、手続き期間中は役員を継続できません。
免責が確定すれば欠格事由は解消され、役員への就任は再び可能になります。
会社員として一般的な業務に就いている場合、この資格制限が直接影響するケースは多くありませんが、上記の資格を業務上使用している方は手続き期間中の業務継続について事前に確認が必要です。
なお公務員については法律上の資格制限には含まれていないものの、所属機関の内規によって扱いが異なる場合があるため、個別に確認しておきましょう。

処分される財産と手元に残せる自由財産の範囲
自己破産では一定基準を超える財産が破産管財人によって換価・配当されますが、生活再建に必要な「自由財産」は手元に残すことが認められています。
- 現金は一定額まで手元に残せる(裁判所の運用基準による)
- 生活必需品・家電・衣類などの日用品は原則として処分対象外
- 退職金の見込み額のうち一定割合が処分対象になる場合がある
処分の対象となりやすいのは、一定額以上の預貯金・不動産(持ち家を含む)・自動車(評価額が高い場合)・生命保険の解約返戻金・有価証券など。
一方、差押禁止財産として法律上保護されている財産や、裁判所が自由財産の拡張を認めた財産については手元に残せます。
なお個人が自己破産した場合でも会社(法人)名義の財産は個人の破産財団には含まれません。
ただし経営者が会社の債務について個人保証をしている場合は、その保証債務も個人破産の対象。
自由財産の範囲は裁判所ごとの運用基準や個別の事情によって異なるため、「何が残せるか」は手続き前に弁護士へ確認しておきましょう。

信用情報への影響(いわゆるブラックリスト)
自己破産の手続きを行うと信用情報機関に事故情報が登録され、この状態を一般に「ブラックリスト入り」と呼びます。
登録期間は機関によって異なりますが、おおむね5年〜10年程度とされています。
- 新規のクレジットカード発行が難しくなる
- 住宅ローン・カーローンなどの融資審査に通りにくくなる
- 携帯電話の端末分割払い契約が制限される場合がある
また自己破産の情報は官報(国の公告紙)に掲載されるものの、日常的に確認する人は限られており、取引先や勤め先の同僚が自動的に知ることになるわけではありません。
ただし金融機関や一部の取引先が官報を確認することはあるため、事業上の信用に影響が及ぶ可能性はあります。
デビットカードや電子マネーは信用情報とは無関係に利用でき、登録期間が経過すれば情報は削除されて通常どおり金融サービスを利用できるようになります。
信用情報機関はCIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター(KSC)の3機関があり、自分の情報がどの機関に登録されているかは各機関への開示請求で確認しましょう。

個人・法人それぞれの破産費用の目安
自己破産の手続きには裁判所に納める費用と弁護士費用の2種類がかかり、個人と法人では費用の規模が大きく異なります。
個人破産の場合のポイント
個人が自己破産を申請する場合、裁判所への予納金は数万円程度が一般的です。
弁護士費用は事務所によって異なるものの、おおむね数十万円の範囲に収まるケースが多め。
財産がほとんどなく管財人が選任されない「同時廃止」になると、費用は比較的低く抑えられます。
法人破産の場合のポイント
法人が破産申請を行う場合、管財人への予納金が個人よりも高額になる傾向があります。
負債総額や資産規模によって費用は変動し、数十万円から数百万円程度になることも。
弁護士費用も案件の複雑さに応じて個人より高くなるのが一般的です。
なお経営者が個人として自己破産する場合と会社(法人)として破産申請する場合は別々の手続きとなり、両方を同時に進めるケースでもそれぞれに費用が発生します。
費用を抑えるためのポイント
費用面が不安な場合は、法テラスの立替制度を最初に確認しておくと選択肢が広がります。
法テラス(日本司法支援センター)の審査を通過すれば弁護士費用の立替制度を利用でき、収入・資産が一定基準以下の方が対象で毎月分割で返済する形式です。
費用面が不安な場合は、まず法テラスへの相談を検討してみてください。

弁護士への相談の流れと費用を抑える方法
自己破産を検討しているなら、まず弁護士への相談が具体的な出口につながります。
「何を話せばいいかわからない」「費用が払えない」という不安は多くの方が持つものの、準備次第で相談はスムーズに進み、費用面でも公的な支援制度を活用できるはず。
なお弁護士への相談では、「経営者として申請する場合」と「会社員として申請する場合」で確認すべき内容が異なります。
- 初回相談は無料で受け付けている事務所が多く、準備物は手元にある書類で十分
- 弁護士費用の総額は30万円〜60万円前後が一般的な目安
- 費用が用意できない場合は、一定の収入・資産要件を満たすことで法テラスの立替払制度を利用できる
- 相談から申立まで数か月単位で進むため、早めの行動が重要
- 経営者:会社の継続可否・役員資格・会社資産の扱いを初回相談で確認する
- 会社員:解雇リスクや職場への通知の有無を初回相談で確認する
費用や手順への不安から相談を先送りにすると、その間に債権者からの取り立てが続き、返済総額が膨らんだり精神的な消耗が続いたりしかねません。
「自己破産以外に選択肢はないか」と感じている場合は任意整理や個人再生という手段もあり、どの方法が適切かは借金の総額・収入・資産状況によって異なります。
まずは弁護士への相談を通じて比較検討することが、判断の出発点。
無料相談で伝えるべき情報と準備するもの
弁護士への初回相談では、「借金の全体像」と「収入・資産の状況」を伝えることが最優先です。
この2点が揃っていれば、弁護士は自己破産が適切かどうか、他の手続きと比較した場合のメリット・デメリットをその場で判断できます。
- 借入先の一覧(消費者金融・銀行・カードローン・知人など)と残高の概算
- 直近の収入がわかるもの(給与明細・確定申告書など)
- 不動産・車・預貯金など主な資産の概要
- 毎月の生活費の大まかな内訳
完璧に揃っていなくても相談は始められるため、「手元にある書類で構わない」というスタンスで予約を取りましょう。
相談の場では弁護士が必要な情報を質問しながら整理してくれるため、すべてを事前に把握していなくても問題ありません。
また会社を経営している場合は個人の借金と会社の借金が混在していることが多いため、どちらの名義で借りているかを事前に分けて整理しておくと弁護士が方針を立てやすくなります。
個人名義の借金のみが自己破産の対象となり、会社名義の借金は別途対応が必要になるため、この区別は特に重要です。

弁護士費用の目安と法テラス(立替払制度)の活用
弁護士費用の総額は事務所によって異なりますが、自己破産(同時廃止)で30万円〜50万円前後、管財事件になると50万円〜80万円前後が一般的な目安です。
- 同時廃止:財産がほとんどない場合に該当しやすい
- 管財事件:一定以上の財産や複雑な事情がある場合に、裁判所が管財人を選任して財産を調査・換価する
経営者や個人事業主は事業用資産や取引関係の調査が必要となるため、管財事件に該当しやすい傾向があります。
これに加えて、裁判所に納める予納金(同時廃止は数千円程度、管財事件は20万円前後〜)が別途必要。
- 分割払いに対応している事務所を選ぶ(多くの事務所が対応している)
- 法テラス(日本司法支援センター)の審査を通じて立替払制度を利用する(単身世帯は月収の上限が概ね20万円台前半。生活保護受給中なら返済が猶予・免除されるケースも)
法テラスの立替払制度は、収入・資産が一定水準以下の方を対象に弁護士費用を立て替え、後から分割で返済する仕組みです。
なお個人事業主や小規模な会社経営者の場合は事業収入が判定の基準となるため、収入の計算方法について法テラスまたは弁護士に事前に確認しておきましょう。
要件を満たさない場合は、分割払いに対応した事務所を選ぶことが現実的な代替手段。
法テラス利用の流れのポイント
法テラスを利用する場合は、法テラスに直接電話・Web予約で問い合わせるか、弁護士事務所経由で申請する方法があります。
審査に必要なのは、収入証明書・住民票・資産状況を示す書類。
審査が通れば弁護士費用の立替が開始され、月5,000円〜1万円程度の分割払いで返済します。
手続き中は弁護士が窓口になるため、書類の準備も弁護士と一緒に進められるでしょう。
弁護士に依頼した時点で弁護士から債権者へ「受任通知」が送付され、この通知が届いた後は債権者から直接取り立てが来ることが貸金業法上禁止されるため、精神的な負担が大きく軽減されます。
費用の準備に時間がかかる場合でも、まず相談・依頼を進めることが状況の改善に直結するので、無料相談を活用して現状を専門家に伝えることから始めてみてください。

自己破産と会社に関するよくある質問
自己破産を検討するとき、会社や事業への影響について不安を感じるのは自然なことです。
手続きの流れや実務上の扱いは複雑なため、何から確認すればよいか迷われる方も少なくありません。
ここでは、経営者・会社員が自己破産を考える際に生じやすい疑問に対して、基本的な考え方を整理してお伝えします。
一つひとつの疑問を解消することで、今後の判断をより落ち着いて進めるための参考になるはず。
社長が自己破産しても会社の事業を続けることはできますか?
社長個人の自己破産と会社の破産は別の手続きであり、会社自体が破産申立をしていなければ事業を継続することは可能です。
ただし自己破産の手続きが開始されると社長は取締役の資格を失うため、そのまま代表者として会社を経営し続けることはできません。
そのため、別の人物が新たな代表取締役に就任する必要があります。
会社が連帯保証債務を負っている場合など社長個人の破産が会社の財務状況に影響を与えるケースもあるため、会社の状況も含めて専門家に相談してみてください。
詳しくは「社長・経営者が自己破産した場合、会社はどうなる」で解説しているので、事業を継続したい場合は後任の代表者をあらかじめ検討したうえで手続きを進めましょう。

自己破産すると取引先との契約はどうなりますか?
個人として自己破産しても、会社が締結している取引先との契約はそのまま継続されるケースが多いです。
自己破産はあくまで個人の債務整理手続きであり会社の法人格とは切り離されるため、通常の取引契約への直接的な影響は限定的。
ただし経営者が連帯保証人になっている融資契約については、破産手続きの開始により保証債務が問題になる可能性があります。
契約書に「破産申立てを解除事由とする条項」が定められている場合、その契約は相手方から解除される可能性があります。
取引先との契約内容を事前に確認し、懸念がある場合は弁護士に個別の契約内容を確認してもらいましょう。

自己破産の手続き中も給与は受け取れますか?
自己破産の手続き中も、給与を受け取ること自体は認められています。
給与は生活維持に必要な収入として扱われるため、手続き中の受け取りも問題ありません。
ただし受け取った給与を手元に現金として保有する場合、99万円を超える現金は自由財産の範囲を超えるとみなされ破産管財人に差し押さえられる可能性があります。
自由財産とは破産後も手元に残すことが認められた財産のことで、現金については一定の上限が設けられています。
給与の受け取り自体が制限されるわけではないものの受け取り後の保有額には注意が必要なため、財産の扱い方については弁護士や司法書士に事前に確認しておきましょう。

法人破産と個人破産を同時に申し立てるとはどういう意味ですか?
中小企業では、法人と経営者個人を同時に破産申立てするケースが一般的です。
経営者が法人の借入に対して連帯保証人になっているケースが多く、法人が破産すると保証債務が個人にも及ぶため。
手続きとしては弁護士が法人・個人それぞれの申立書類を作成し、裁判所に同時または近いタイミングで提出するかたちになります。
費用面では法人分と個人分それぞれに裁判所への予納金や弁護士費用が発生するため、事前に概算を確認しておきましょう。
同時申立てが必須というわけではなく、個人に保証債務がない場合や資産状況によっては別々に進めるケースもあります。

破産手続きの費用が用意できない場合はどうすればいいですか?
費用が用意できない場合は、法テラスの立替制度を活用できる可能性があります。
法テラス(日本司法支援センター)が設けているのは、弁護士費用を立て替えてもらえる民事法律扶助制度。
収入や資産が一定の基準以下であると審査で認められた場合に利用でき、立て替えてもらった費用は後から分割で返済する形になります。
審査基準は収入・資産の状況によって異なるため、自身が対象となるかどうかは実際に相談して確認することが重要です。
費用の工面が難しいからといって手続きを諦める必要はないので、まずは法テラスや弁護士事務所の無料相談窓口に問い合わせてみてください。

自己破産すると会社の銀行口座や法人カードはどうなりますか?
個人の自己破産は、原則として会社名義の銀行口座や法人カードに直接の影響を与えません。
自己破産はあくまで個人の債務整理手続きであるため、法人名義の口座や法人カードはそのまま維持されるのが原則です。
会社の資産や契約は、個人の破産手続きとは別枠。
ただし経営者個人が会社の借入に対して連帯保証人となっている場合は、その保証債務も破産手続きの対象となるため、関連する融資や口座に影響が及ぶ可能性はあります。
自身の状況に応じて影響範囲が異なるため、手続き前に弁護士へ個別に確認してみてください。

まとめ
自己破産が会社に及ぼす影響は、「経営者か会社員か」でまったく異なります。
経営者の場合は破産手続き開始から免責確定までの間、取締役などの役員資格を失い、保有する株式が処分対象となって経営権を失う可能性もあります。
一方、会社員の場合は勤務先への通知義務がなく、自己破産を理由とした解雇は法律上認められていません。
会社(法人)の破産と個人の自己破産は別の手続きで、経営者個人が破産しても会社の法人格がただちに消滅するわけではありませんが、個人保証があると会社の債務が個人に及ぶため同時申立てになるケースも。
手続き中は一部の職業・資格に制限がかかり、一定額を超える財産は処分され、信用情報にも5〜10年程度の記録が残ります。
自己破産以外にも任意整理・個人再生・経営者保証ガイドラインといった選択肢があるため、自分の立場でどの手段が使えるかは、あまた法律事務所へお気軽にご相談ください。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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・初回相談【無料】
・ご相談内容によっては【着手金無料】
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1.交通事故の無料相談窓口
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