「交通事故で休むために有給休暇を使ったけれど、休業損害は請求できるのだろうか」
「給料が減っていないのだから損害はない、と保険会社に言われてしまった」
有給休暇は、労働者が働くことで積み上げた権利です。加害者の不法行為によってその権利を消費させられた事実そのものが損害にあたり、裁判例でも繰り返し認められてきました。
- 有給使用でも請求できる法的根拠と、保険会社の「損害なし」主張への反論方法
- 雇用形態ごとの日額の出し方と、休業損害の計算方法
- 休業損害証明書への有給休暇の正しい記載方法と、請求手続きの流れ
保険会社の提示をそのまま受け入れる前に、ぜひ参考にしてみてください。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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この記事の目次
交通事故で有給を使っても休業損害は請求できる
交通事故で仕事を休んだとき、有給休暇を使ったからといって休業損害の請求権が消えるわけではありません。
有給休暇は労働者が積み立てた権利であり、加害者の免責理由にはなりません。実際に給料が減っていないケースでも、裁判所は多くの事案で休業損害を認めてきました。
- 有給休暇は労働者が積み立てた権利であり、加害者の免責理由にはならない
- 給料が実際に減っていない場合でも、損害として認められる
- 裁判所は有給休暇を使った場合の休業損害を、多くのケースで認めている
- 保険会社が「損害なし」と言っても、そのまま受け入れる必要はない
この考え方を知らないまま示談に応じると、本来受け取れる補償を取りこぼすことになります。ここでは、損害と認められる理由・労災との違い・裁判所の判断根拠の3点を解説します。
給料が減っていないのに損害になる理由
有給休暇は、労働者が一定期間働くことで法律上蓄積される権利です。旅行・家族の看護・自己啓発など、本来は自分の意思で使うために取っておいたもの。それを加害者の不法行為によって強制的に消費させられた点が、損害の本質です。
交通事故の損害賠償で問われるのは、「事故がなければ得られていたはずの利益・権利」と現状の差。有給休暇は金銭そのものではありませんが、金銭的価値を持つ権利として評価されるため、損害の対象になります。
「給料が出たから損はない」という保険会社の主張は、有給休暇の法的性質を無視した論理といえます。

休業損害と休業補償(労災)の違い
休業損害と休業補償は名前が似ていますが、根拠となる制度は別物です。違いを押さえておくと、請求先で迷いません。
| 項目 | 休業損害 | 休業補償(労災) |
|---|---|---|
| 根拠 | 民事上の損害賠償(民法709条) | 労働者災害補償保険法 |
| 請求先 | 加害者・加害者側の保険会社 | 労働基準監督署(国の制度) |
| 有給取得日の扱い | 請求できる | 「休業していない日」として対象外になることがある |
交通事故が業務中・通勤中に起きた場合は、労災保険の休業補償給付を受けられることがあります。労災給付と加害者への損害賠償請求は別制度なので、原則として両方の請求が可能。ただし同じ損害を二重に受け取ることはできず、一方から受け取った分は他方から控除する調整が行われます。
調整の内容は事故の状況や給付の種類で変わるため、自分のケースに当てはまるかどうかは専門家に確認してください。

裁判所が有給休暇の損害を認める根拠
有給休暇は、労働基準法によって労働者に保障された権利。加害者の行為でその権利を強制的に消費させられた以上、日数分に相当する賃金額の賠償を求められます。
この考え方は裁判例で繰り返し踏襲されており、実務上も確立した扱いです。請求にあたっては、有給取得の事実と収入を示す書類を揃えておきましょう。
- 勤務先が発行する休業損害証明書(休業〈休暇〉証明書)
- 有給取得日が記載された給与明細
- 出勤簿・勤怠記録・有給休暇管理簿
弁護士に依頼すれば、有給分の休業損害を正確に計算したうえで請求書類の作成を任せられます。

請求できる根拠がわかったところで、次は保険会社から実際に「損害なし」と言われた場合の対処法を確認しましょう。
保険会社に「有給だから損害なし」と言われたときの対処法
保険会社から「有給休暇を使ったのだから損害はない」と言われても、その主張を受け入れる必要はありません。
「給料が減っていないから損害はない」という考え方は、法的に正しくありません。有給休暇は労働者が本来自由に使える権利であり、交通事故でその権利が消費されたこと自体が損害と判断されています。
- 有給休暇を使った場合でも、休業損害の請求権は法的に認められている
- 任意保険と自賠責保険では、対応の窓口と手順が異なる
- 主張が通らない場合は、弁護士への相談が有効な手段になる
保険会社の担当者は交渉のプロ。知識がないまま対応すると、正当な権利を失うリスクがあります。ここでは、窓口別の対応方法と弁護士相談の目安を解説します。
任意保険・自賠責保険それぞれへの対応方法
- 任意保険:加害者側の保険会社に対して書面で異議申し立てを行う
- 自賠責保険:被害者請求(直接請求)という制度を使って自ら申請する
- どちらの場合も、有給取得の事実と給与明細・出勤簿を証拠として提出する
有給休暇を使った日の休業損害が認められる根拠は、裁判例の積み重ねにあります。担当者の口頭説明がこれと異なる場合は、法的根拠に基づいて異議を申し立てましょう。
保険会社から書面で拒否の回答が届いた場合や、1か月以上回答が出ない場合は、日弁連交通事故相談センターや交通事故紛争処理センターへの申し立ても選択肢に入ります。
- STEP1:必要書類(交通事故証明書・診断書・休業損害証明書・給与明細など)を揃える
- STEP2:加害者の自賠責保険会社の窓口に書類を提出する
- STEP3:審査を経て支払い決定が通知される
自賠責保険の支払基準では休業損害の1日あたりの金額に上限が設けられていますが、有給休暇を取得した日も対象に含まれます。

主張が通らない場合に弁護士相談を検討する目安
- 保険会社から書面で「有給分は支払えない」と明示された
- 休業損害の提示額が、実際の給与水準と大きくかけ離れている
- 交渉開始から1か月以上経過しても回答が出ない
弁護士が介入すると、保険会社が提示額を見直すケースがあります。法的根拠に基づいた請求書を作成し、示談交渉の代理人として対等に交渉できるためです。
一方、損害額が小さい場合や過失割合に争いがない場合は、弁護士費用との費用対効果を確認したうえで判断するのが現実的。交通事故案件を扱う弁護士の多くは初回相談を無料で受け付けており、相談時に「費用に見合う請求が見込めるか」を確認できます。
「交渉に自信がない」「提示額が妥当かどうか判断できない」という段階から相談しても構いません。

対処法が整理できたら、次は「実際にいくら請求できるのか」という計算方法を確認しましょう。
有給休暇を使った場合の休業損害の計算方法
有給休暇を使った日数分の休業損害は、給与の実際の減少がなくても請求できます。計算の基準になるのは「1日あたりの損害額(日額)」。算出方法は雇用形態によって変わります。
- 給与所得者は「事故前3か月の給与総額 ÷ 90日」で日額を算出する
- 自営業者は「前年の事業所得 ÷ 365日」を基本とする
- 半日有給の場合は日額の2分の1を基準に損害を算定する
- 給与が全額支給された場合でも、有給という財産を消費した損害として請求できる
計算式を理解しておけば、保険会社から提示された金額が適正かどうかを自分で確認できるはず。ここでは、雇用形態ごとの計算方法と、よくある疑問への回答を順に解説します。
給与所得者の日額計算(事故前3か月の給与 ÷ 90日)
ここでいう「給与総額」には、基本給だけでなく残業代や各種手当も含まれます。税金や社会保険料を差し引いた手取り額ではなく、税込みの総支給額を用いる点に注意してください。
3か月分の給与明細が基礎資料になるため、事故前3か月分は必ず手元に確保しておきましょう。勤務日数が少ない月が含まれると日額が下がることもあり、90日ではなく実労働日数で計算するよう求める交渉も行われています。
賞与を基礎収入に含めるかどうかは争点になりやすく、判断に迷う場合は弁護士に確認するのが確実です。

パート・アルバイト・自営業の場合の計算方法
パート・アルバイトや自営業の場合も、日額に休業日数を掛ける考え方は同じ。ただし収入の証明方法と計算の根拠が異なります。
| 雇用形態 | 日額の算出方法 | 主な証明書類 |
|---|---|---|
| 給与所得者 | 事故前3か月の給与総額 ÷ 90日 | 給与明細・源泉徴収票 |
| パート・アルバイト | 直近3か月の収入 ÷ 90日(実労働日数で計算する場合もある) | 給与明細・タイムカード |
| 自営業・フリーランス | 前年の事業所得 ÷ 365日 | 確定申告書・帳簿類 |
パート・アルバイトは、実労働日数で割ると日額が高く出ることがあります。どちらの方法で計算するかは保険会社との協議で選べる場合があるため、両方の数字を出して有利な方を主張してください。
自営業は経費の計上状況によって所得が低く見え、実態との乖離が生じやすい点に注意が必要。申告所得が実態より低い場合は、複数年分の確定申告書を提示して平均値をもとに交渉する方法があります。

半日有給を取得した場合の扱い
たとえば日額1万円の給与所得者が半日有給を取得した場合、5,000円前後が休業損害の対象になります。半日勤務した分の賃金が実際に支払われているかどうかで、計算の調整が生じることも。
半日分の給与が通常どおり支払われ、かつ半日分の有給が消化されている場合は、消化した半日分に対応する損害額を請求できます。
- 勤務記録・出勤簿
- タイムカード
- 半日有給の消化が記載された給与明細
保険会社によっては、半日有給の扱いを曖昧にしてくるケースも少なくありません。その場合は上記の書類を提示し、「半日分の有給が消化されている」という事実を具体的に主張するのが有効です。

給与が全額支給された場合でも請求できる理由
有給を使って給与が全額支払われると、「損害がない」として休業損害を否定されることがあります。しかし、この主張は法的に正しくありません。
有給休暇は労働基準法上、労働者に認められた権利であり、将来使えるはずだった「財産」です。交通事故でその財産を消費させられた事実そのものが損害であり、給与が支払われたかどうかとは別の問題として扱われます。
- 有給休暇は財産的価値を持つ権利であり、消費した分は損害として認められる
- 給与が支払われていても、有給という「資産」が減少した損害は残る
- 給与の支払いは請求権を消滅させる理由にならず、法的に反論できる
「有給休暇は労働者の権利として認められた財産であり、その消費は給与の有無とは別に損害として請求できます」と伝えるのが基本的な対応。それでも認められない場合は、弁護士への相談を検討する段階と判断してよいでしょう。

休業損害として認められないケースと注意点
有給を使った場合でも請求できる原則は確かですが、すべてのケースで認められるわけではありません。
- 事故との因果関係が不明確な場合、保険会社から請求を否定される可能性がある
- 法定外の特別休暇は、年次有給休暇と同一の扱いにならないケースがある
一方で、事故直後から通院中に有給を使ったケースは、休業損害として認められやすい状況にあたります。認められにくい状況を先に把握しておくことが、泣き寝入りを防ぐ第一歩。ここでは、例外的に問題が生じやすい2つのケースを整理します。
事故からかなり時間が経過した後の有給使用
事故直後から通院中の段階で取得した有給は、一般的に因果関係を問われにくい状況です。一方、相当期間が経過してから休んだ場合、保険会社は「事故による休業ではなく別の理由ではないか」という立場から、時間的なずれを請求否定の根拠として指摘してきます。
- 事故から長期間が経つほど、医療記録や診断書との整合性を問われやすくなる
- 「治療は終わっているのに、なぜ今になって休んだのか」という疑問を持たれる
- 通院記録や医師の指示内容と休業時期が一致していないと、立証が困難になる
リスクを下げるには、休業した時期に医師から「安静が必要」「業務制限が必要」という指示を受けていたことを、診断書や診療録で示せる状態にしておくことが重要。事故直後から継続的に通院記録を残し、休業のたびに医師の指示内容を書面で確認しておきましょう。
事故後しばらく経ってから症状が悪化するケースも実際に存在します。症状の経過と休業の必要性を医師が記録していれば、因果関係の説明はしやすくなります。

特別休暇・慶弔休暇など法定外休暇の扱い
企業が独自に設けている特別休暇や慶弔休暇を交通事故のために使った場合、年次有給休暇と同じように認められるかどうかは、個々の状況によって変わります。
| 区分 | 根拠 | 休業損害としての扱い |
|---|---|---|
| 年次有給休暇 | 労働基準法(法定の権利) | 消費した分が比較的明確に認められやすい |
| 特別休暇・慶弔休暇 | 就業規則など企業独自の制度 | 制度内容によって扱いが分かれる |
法定外休暇が認められにくい理由は、主に2つ。給与の支払い形態や取得条件が企業ごとに異なるため「損害」として評価しにくい点と、慶弔休暇などは本来の使用目的が定められており、交通事故による休業への転用を保険会社が認めない点です。
ただし、実際に給与が支払われたうえで休業し、その休業が交通事故に起因すると証明できれば、休業損害として主張できる可能性があります。重要なのは休暇の種類そのものではなく、「事故がなければ就労していたか」という損害の実態。
- 就業規則における当該休暇の定義と給与の扱い
- 休暇取得日と通院・治療記録の対応関係
- 上司や人事担当者からの休暇取得に関する指示・確認の記録
これらの記録は、後から休業損害証明書に記載する際にも役立ちます。

休業損害証明書への有給休暇の書き方
休業損害を正しく請求するには、休業損害証明書に有給休暇の使用を適切に記載することが欠かせません。
証明書は勤務先が記入する書類ですが、担当者が有給の扱いを知らないまま記入すると、有給取得日が休業日数から漏れてしまいます。
- 有給休暇を使った日は「休業日数」として記載し、損害として請求できる
- 会社の担当者が書き方を知らないケースがあるため、依頼時に具体的な指示が必要
- 「全額支給」と記載されていても、請求権を失うわけではない
- 会社が証明書を書いてくれない場合も、代替手段がある
請求が認められるには「事故との因果関係」が明確であることが条件。具体的には、交通事故による傷病であること、その傷病が原因で休む必要があったこと、実際に有給を取得した事実が記録で確認できることの3点が揃っている必要があります。
ここでは、依頼方法から記載内容の確認、会社が対応しない場合の対処まで解説します。
会社に記入を依頼する際のポイント
休業損害証明書は会社(雇用主)が記入・押印する書類です。依頼の際に「有給休暇を使った日も休業日数として記載してほしい」と明確に伝えてください。
- 有給休暇を取得した日は「休業日数」の欄に含めて記載すること
- 備考欄に「有給休暇取得」と明記すること
- 有給取得日の給与が支払われた(有給消化)旨も記載すること
担当者が書き方を知らないまま記入すると、有給取得日が「出勤日」として処理され、休業日数から漏れる場合があります。保険会社から指定された書式には「有給休暇」の記載欄が別に設けられているものもあるため、書式を事前に確認して担当者に渡すとスムーズ。
依頼は口頭だけで終わらせず、メールや書面で記録を残しておきましょう。

「全額支給」と記載されている場合の対処
有給を使って給与が全額支払われていると、保険会社から「損害はない」と判断されるリスクがあります。
しかし、給与が支払われていても有給休暇の消化は損害として認められるのが原則。有給という労働者の権利が事故によって失われた事実に基づくものであり、給与の支払いとは別の問題として扱われるためです。
- 備考欄や特記事項欄に「有給休暇を取得したことにより支給されたものであり、有給休暇を消化した」と明記してもらう
- 有給休暇の残日数が減少した事実が分かる書類(有給休暇管理簿など)を別途添付する
「全額支給」の記載だけが残ると、保険会社は「通常どおり出勤して給与を受け取った」と解釈しかねません。有給を消化したという事実を証明書上で明確にすることで、請求根拠を確保できます。
有給休暇管理簿の写しは会社に依頼すれば取得できるケースが多いため、証明書と合わせて準備しましょう。

通院以外(自宅療養・リハビリ)で有給を使った日の書き方
通院日だけでなく、自宅療養やリハビリのために有給を取得した日も、交通事故による傷病が原因で休む必要があったと認められる場合は休業損害の対象。ただし、「交通事故による傷病のために休んだ」という因果関係を証明書上で示す必要があります。
- 休業理由の欄に「交通事故による傷病のため(自宅療養)」「同(リハビリ通院)」と具体的に記載する
- 通院日・自宅療養日・リハビリ日を区別して日付ごとに記録する
- 医師の診断書や通院記録と日付が一致していることを確認する
自宅療養やリハビリについては、医師が「安静が必要」と判断した旨が診断書に記載されていると、休業の必要性を裏付けやすくなります。証明書の記載と医療記録の整合性が取れているかを、提出前に照合してください。

会社が証明書を書いてくれない場合の代替手段
会社が証明書の記入を拒否したり、対応が遅れたりするケースもあります。その場合でも、代替となる書類を揃えることで請求を進められます。
- 給与明細・源泉徴収票:収入を証明するために使用できる
- 有給休暇管理簿・勤怠記録:有給の取得日と残日数の変化を示す
- 雇用契約書・就業規則:基本給・日給換算の根拠を示す
- 会社からの書面による拒否の記録:交渉や法的手続きの際に役立つ
ただし、代替書類だけで保険会社がすんなり認めるケースばかりではありません。複数の書類を組み合わせて有給取得の事実・収入・因果関係を多角的に示すことが、認められやすくなるための基本的な考え方です。
会社が正当な理由なく発行を拒否する場合、労働者の正当な権利行使を妨げるものとして問題になり得ます。対応が難しい場合は弁護士に相談し、会社への働きかけや代替書類による請求方法のアドバイスを受けてください。

休業損害の請求手続きの流れ
証明書の準備から保険会社への提出・支払いまで、手順を把握しておくと手続きがスムーズに進みます。
- 請求に必要な書類は複数あり、事前に揃えておく
- 自賠責保険と任意保険では、提出先・書類の扱いが異なる
- 提出から支払いまでには一定の期間がかかる
- 請求には時効があるため、早めに動く
書類の不備や提出先の誤りがあると、支払いが遅れたり請求が認められなかったりするおそれも。ここでは、必要書類の一覧・提出先の整理・支払いまでの期間と請求期限の3点を順に解説します。
必要書類の一覧
休業損害の請求に必要な書類は、「損害の発生を証明するもの」と「収入を証明するもの」の2種類に大別されます。どちらが欠けても審査が進まないため、早い段階から準備を始めてください。
- 休業損害証明書(勤務先が作成・記名押印するもの)
- 源泉徴収票または給与明細(事故前3か月分程度が目安)
- 診断書(通院・入院期間を証明するもの)
- 交通事故証明書(警察への届出に基づき発行されるもの)
- 印鑑・本人確認書類(保険会社の指定様式がある場合も)
このうち、有給を取得した場合は休業損害証明書の記載方法が特に重要。有給取得日が「欠勤」ではなく「有給休暇」として記載されていても、休業損害の請求対象になります。
勤務先の担当者には「交通事故による通院のために有給休暇を取得した日付を、欠勤日と区別して日付単位で記載していただけますか」と具体的に伝えてください。
総務・人事担当者が書き方に不慣れな場合もあるため、保険会社から取得した記載例を一緒に渡すと手続きが早く進みます。

自賠責・任意保険どちらに何を提出するか
提出先は「自賠責保険への被害者請求」か「任意保険への一括払い請求」かによって変わります。
| 請求ルート | 提出先 | 特徴 |
|---|---|---|
| 自賠責保険(被害者請求) | 加害者が加入する自賠責保険会社 | 傷害による損害の補償上限は120万円。手間はかかるが支払いは比較的安定している |
| 任意保険(一括払い) | 加害者側の任意保険会社 | 手続きは一本化されるが、保険会社の査定基準で計算される |
被害者請求では、自賠責所定の請求書・診断書・休業損害証明書・源泉徴収票などを揃えて保険会社に郵送または持参します。一方の一括払いでは、任意保険会社が指定する書式・提出先に従って書類を提出。担当者から案内が来ることが多いものの、有給分の休業損害が計上されているかは自分で確認する必要があります。
どちらが有利かは、損害額が自賠責の上限(120万円)を超えるかどうか、相手方の任意保険の内容、示談交渉の状況によって変わります。判断に迷う場合は、弁護士に相談するのが確実な進め方といえるでしょう。

提出から支払いまでの期間の目安と請求期限
書類の不備・追加確認・審査の混雑状況によっては、さらに時間がかかることもあります。任意保険の一括払いでは、担当者との交渉や示談成立のタイミングに左右されるため、期間が読みにくい場合も少なくありません。
| 請求先 | 時効期間 | 起算点 |
|---|---|---|
| 自賠責保険への被害者請求 | 3年 | 事故発生日(後遺障害は症状固定日) |
| 加害者・任意保険への損害賠償請求(人身) | 5年 | 損害および加害者を知った日 |
請求先によって時効期間が異なる点に注意してください。「まだ時間がある」と先延ばしにすると、書類の収集が困難になったり、交渉が不利になったりするリスクがあります。治療終了または症状固定の診断が出た段階で、速やかに請求手続きに入りましょう。
有給分の休業損害が正確に計上されているか不安な場合は、提出前に弁護士に内容を確認してもらうと安心です。

有給を使わずに欠勤扱いにする選択肢について
交通事故で休む際、有給休暇を使うか欠勤扱いにするかで、休業損害の請求方法と手取り額が変わります。
- 欠勤扱いにすると給与が減るが、休業損害で直接補填される
- 有給を使うと給与は維持されるが、有給の消費分を休業損害として請求する必要がある
- 有給を温存しておくと、事故とは無関係の将来の用途に使える
ここでは、欠勤扱いと有給使用の計算上の違い、および有給を温存するメリットを整理します。
欠勤扱いにした場合と有給使用の計算上の違い
欠勤扱いの場合、給与が実際に減額されるため「損害が発生した」という事実が明確で、保険会社への請求において争点になりにくい実務上の利点があります。
一方、有給を使った場合は給与が支払われるため、見かけ上は損害がゼロに見えます。しかし有給休暇は労働者が将来使えるはずだった財産的権利であり、事故によってその権利を消費させられたこと自体が損害。給与が減っていなくても、請求は法的に認められています。
| 選択肢 | 請求額の考え方 | 交渉での争点 |
|---|---|---|
| 欠勤扱い | 実際の減収額がそのまま請求額になる | 争点になりにくい |
| 有給使用 | 有給を使った日数分の日額相当額を請求する | 「損害なし」と主張されることがある |
どちらの方法でも、1日あたりの計算基準は原則として同じ。事故前3か月分の給与をもとに算出した日額に休業日数を掛けた金額が、請求の基本になります。
- 会社が発行する休業損害証明書(有給取得日を明記したもの)
- 事故前3か月分の給与明細
- 事故との因果関係を示す診断書または通院証明

有給を温存しておくことのメリット
有給休暇は、交通事故の休業とは別に、病気・育児・家族の介護・私用など、さまざまな場面で必要になる有限の資源。事故による休業に有給を充てると、その分だけ将来の選択肢が狭まります。
- 事故とは無関係の体調不良や急な用事に使える有給が残る
- 欠勤扱いにすることで、休業損害の請求手続きがシンプルになる
- 有給残日数が少ない方は、欠勤リスクや査定への影響を避けられる
特に年次有給休暇の付与日数が少ない方や、すでに残日数が少ない方は、欠勤扱いを選んで休業損害で補填を受けるほうが実質的な不利益を抑えられる場合があります。ただし、欠勤扱いにするには会社側の協力が必要。すでに有給として処理されている場合は、会社に欠勤扱いへの変更が可能か確認してみてください。
変更が難しければ、有給使用分を休業損害として請求する方針に切り替えることになります。

交通事故で有給を使った場合の休業損害|よくある質問
交通事故後に有給を使って仕事を休んだとき、「給料が出ているから請求できないのでは」と感じる方は少なくありません。しかし実際には、有給を使った場合でも休業損害として請求できます。
ここでは、証明書の書き方や計算方法、請求期限など、手続きを進めるうえで迷いやすいポイントをまとめました。ご自身の状況と照らし合わせながら確認してみてください。
有給を使ったのに給料が減っていない場合でも、休業損害として請求できますか?
有給休暇は労働者が将来使えるはずだった財産的価値のある権利であり、事故によってその権利を消費させられた場合は損害として認められます。給与が維持されているのは有給という資産を取り崩した結果に過ぎず、「損害がない」とはみなされません。詳しくは給料が減っていないのに損害になる理由で解説しています。
請求にあたっては、有給を取得したことを示す勤務記録や給与明細などの証明書類が必要になる場合もあります。早めに会社から関連書類を取り寄せておきましょう。

休業損害証明書に「全額支給」と書かれていても請求できますか?
有給休暇は本来、療養以外の目的のために労働者が保有している権利です。交通事故による受傷のために消化せざるを得なかった場合には、損害として認められるのが一般的な考え方。証明書に「有給休暇を使用した」旨が明確に記載されていることが重要になります。
会社の担当者には、有給取得日数と取得理由を具体的に記入してもらうよう依頼してください。記載内容が不明確だと保険会社から支払いを拒否されるケースもあるため、「全額支給」と記載されている場合の対処も確認しておきましょう。

半日だけ有給を取った場合、休業損害はどう計算されますか?
有給を取得した日は本来の賃金が支払われるため、消化した半日分に対応する額が損害として認められる考え方が適用されます。ただし保険会社によって半日有給の取り扱いが異なり、計算方法や認定範囲について見解が分かれることも。
請求の際は、半日勤務・半日有給であることが確認できる勤怠記録や給与明細を準備しておくと交渉を進めやすくなります。計算の詳細は半日有給を取得した場合の扱いをご覧ください。

通院ではなく自宅療養で有給を使った日も請求できますか?
通院日だけでなく、医師から安静を指示された自宅療養の日についても、休業損害の請求対象となる場合があります。ただし、その日に実際に仕事を休む必要があったことを示す根拠が求められるため、医師に「自宅安静の指示があった期間」を診断書や意見書に明記してもらってください。
単に「体がつらかった」という主観的な理由だけでは認められにくく、医師の指示内容と症状の状態が客観的に確認できることが判断の前提。記載方法は通院以外(自宅療養・リハビリ)で有給を使った日の書き方で詳しく解説しています。

会社が休業損害証明書を書いてくれない場合はどうすればよいですか?
会社が作成を拒否・放置している場合でも、給与明細・タイムカード・有給取得記録といった書類を組み合わせれば、休業の事実や収入を証明できるケースがあります。これらは保険会社への提出資料として認められることもあるため、手元に保管しておきましょう。
代替書類だけでは証明が難しい場合や、会社が書類の提供自体を拒んでいる場合は、弁護士への相談が有効な選択肢。具体的な手段は会社が証明書を書いてくれない場合の代替手段にまとめています。

休業損害の請求にはいつまでという期限がありますか?
自賠責保険への被害者請求は事故発生日から3年、加害者や任意保険への人身損害の賠償請求は損害および加害者を知った日から5年が基本的な目安になります。起算点や条件は事案によって変わるため、早めに専門家へ確認してください。
時効が成立していなくても、給与明細・診断書・会社の休業証明といった証拠は時間が経つほど入手しにくくなります。詳しくは提出から支払いまでの期間の目安と請求期限をご覧ください。

翌年度の有給休暇が付与されなかった場合も請求できますか?
請求が認められるには、欠勤の原因が交通事故によるものであることを客観的に証明する必要があります。医師の診断書、通院記録、会社が発行する欠勤状況を示す書類などが証明資料になります。
付与されなかった日数の全額が認められるとは限りません。因果関係の立証度合いや個別の状況によって判断は分かれるため、事故からかなり時間が経過した後の有給使用も参考にしてください。

まとめ|交通事故で有給を使っても休業損害は請求できる
交通事故で有給休暇を使った場合でも、休業損害は相手方に請求できます。有給の消化は損害の填補にあたらず、消化した日数分の賃金相当額を請求できるという考え方が実務で定着しているためです。保険会社から「有給だから損害なし」と言われても、そのまま応じる必要はありません。
- 有給を使っても、休業損害の請求権は失われない
- 日額は「事故前3か月の給与総額 ÷ 90日」を基本に算出する
- 休業損害証明書には、有給取得日を「休業日数」として明記してもらう
- 時効は自賠責への被害者請求が3年、加害者への請求が5年
正しい知識と手続きを踏めば、消化した有給日数分の休業損害を受け取れます。提示額に疑問を感じたら、早い段階で弁護士に相談してみてください。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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