「ローンが残っている車も、自己破産したら差し押さえられてしまうの?」
「車がないと通勤できない…手元に残す方法はないの?」
これはローン会社が「所有権留保」という仕組みで完済まで車の所有権を持ち続けているためですが、ローンの残額や車の価値・用途によっては、手元に残せるケースも。
- 所有権留保の仕組みと、車が引き上げられる法的な理由
- 車を残せる可能性がある条件と、自己破産以外の選択肢
- 引き上げ後の生活への影響と、手続きの具体的な流れ
手続き中に絶対に避けるべき行動も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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この記事の目次
自己破産でローン中の車はどうなるか:まず結論を整理します
ローン返済中の車が自己破産でどうなるのか、まず全体像を整理します。
- ローン中の車は、原則としてローン会社に引き上げられる
- ただし、条件次第で車を手元に残せるケースも存在する
- 車を失っても生活を立て直せた人は数多くいる
- 自分のケースに当てはまるかどうかは、専門家への相談で確認できる
「車を取り上げられたら仕事に行けない」「生活が成り立たなくなる」という不安は、多くの方が最初に感じることです。
ただ、仕組みを正しく理解すれば、取れる選択肢は見えてくるはず。
ここでは、原則と例外の全体像をわかりやすく整理していきましょう。
原則:ローン中の車はローン会社に引き上げられる
自己破産を申請した場合、ローン返済中の車は原則としてローン会社に引き上げられます。
ローンで車を購入した場合、車の所有権は完済までローン会社に留保されているのが一般的で、毎月支払いをして乗っている車でも法律上の「持ち主」はローン会社です。
自己破産によりローンの返済が止まると、所有者であるローン会社は自分の財産を回収する権利を行使し、これが「引き上げ」と呼ばれる状態。
- STEP1:自己破産申請後、ローン返済が停止される
- STEP2:ローン会社が所有権に基づき車の返還を求める
- STEP3:車はローン会社に引き渡され、売却などにより残債が精算される
一方、ローンを完済している車は所有権がすでに自分に移っているため引き上げの対象になりませんが、自己破産では「自由財産」として認められる範囲を超える財産は処分の対象になります。
車の評価額がおおむね20万円前後を超えると売却して債権者への配当に充てられる可能性があるとされることが多いため、自分の車がどちらに該当するかは専門家に確認しておきましょう。
なお、車の売却額がローン残高を下回った場合に残る差額(残債)については、自己破産の免責が認められれば支払い義務が免除されるのが原則です。

例外的に車を残せるケースもある(詳細は後述)
車が引き上げられるのが原則ですが、条件によっては手元に残せる可能性もあります。
- ローンがすでに完済されており、かつ車の評価額がおおむね20万円前後以下とみなされる場合
- 家族名義の車であり、自分の財産とみなされない場合
- 個人再生など、自己破産以外の債務整理手続きを選択する場合
特に「個人再生」は一定の条件を満たせばローン中の車を維持しながら借金を大幅に減額できる手続きで、継続的な収入があり負債総額がおおむね5,000万円以内であることが前提条件とされることが多いとされています。
ただし、個人再生が利用できるかどうかは収入の安定性や負債の種類など複数の要素で判断されるため、収入があるだけで必ず選択できるわけではありません。
どちらの手続きが自分に向いているかは、弁護士や司法書士に相談して判断しましょう。
また、車を失った後の生活については、公共交通機関の活用や職場への通勤手段の相談といった形で対応している方も少なくありません。
「自分の場合は車を残せるのか」という疑問は専門家への無料相談で確認できるため、まず現状を伝えることが最初の一歩。

なぜローン中の車は引き上げられるのか:所有権留保の仕組み
ローン中の車が自己破産で引き上げられる理由は、「所有権留保」という仕組みにあります。
- 車のローンを組んだ時点で、所有権はローン会社に留まっている
- 車検証の「所有者」欄を見れば、自分の車かどうかを今すぐ確認できる
- 所有権がローン会社にある限り、自己破産後に引き上げを拒否することはできない
- ローンを完済して初めて、所有権が自分に移る
この仕組みを知らないまま手続きを進めると、想定外のタイミングで車を失うことになりかねません。
まず「自分の車の所有者が誰か」を確認することが、対策を考える出発点。
ここでは、所有権留保の仕組みと、それが自己破産にどう影響するかを順を追って説明します。
車検証の「所有者」欄で確認できます
車検証を手元に用意して、「所有者」欄を確認してください。
そこに自分の名前ではなくローン会社・信販会社・ディーラーの名前が記載されていれば、その車はまだあなたの所有物ではありません。
ローンを組んで購入した車の多くは、この状態にあります。
「使用者」欄には自分の名前があるため日常的には自分の車として乗れますが、法律上の所有者は別人で、この違いが自己破産の場面で大きな意味を持ちます。
- STEP1:車検証(自動車検査証)を取り出す
- STEP2:「所有者の氏名又は名称」欄を見る
- STEP3:自分の名前以外が書かれていれば、所有権留保の状態
なお、車検証が手元にない場合は、運輸支局や自動車検査登録事務所で再交付を受けましょう。
ローンの契約書にも所有権に関する記載があるため、あわせて確認しておくと確実です。

ローン完済後に初めて自分の車になる仕組み
車のローンでは「完済されるまで所有権を手放さない」という条件で融資するのが一般的で、これが所有権留保と呼ばれる仕組みの本質です。
購入者の立場から見ると毎月の返済を続けながら車を使えるため感覚的には「自分の車」として扱いがちですが、法的にはローンを完済した時点で初めて所有権が移転します。
完済前は、あくまでローン会社の所有物を「使わせてもらっている」状態。
この仕組みはローン会社にとってのリスク管理でもあり、返済が滞れば所有権を持つローン会社は車を引き上げて売却し、残債を回収できます。
自己破産の手続きにおいても、この原則は変わりません。
破産者の財産を清算する場面で、ローン会社は所有者として車の引き上げを求める権利を持ちます。

所有者がローン会社のままだと引き上げを拒否できない理由
所有権がローン会社にある場合、自己破産の手続き中に車を引き上げられても法的に対抗する手段はありません。
自己破産を申立てると破産者の財産は原則として換価・配当の対象となりますが、ローン会社が所有権を持つ車は「破産者の財産」ではないため、そもそも破産手続きの枠外に置かれます。
ローン会社は破産手続きとは独立して、所有者として車を回収できるのです。
引き上げが進むタイミングのポイント
自己破産の申立てを受けてローン会社が動き出すタイミングは、ケースによって異なります。
弁護士や司法書士に依頼すると、まず「受任通知」と呼ばれる書面がローン会社へ送付され、これを受け取った時点で引き上げの手続きを始める会社も。
一方、破産の申立て後に裁判所から通知が届いてから動き出すケースもあり、いずれの場合も手続き開始から数週間以内に引き上げの連絡が来ることが多いとされています。
手続きが始まった後に「やはり返す」と申し出ても、ローンの残債を一括で完済しない限り所有権は戻りません。
車を引き上げられた後の通勤や日常生活については、公共交通機関の利用・家族の車の活用・カーシェアリングの利用といった代替手段を検討することになります。
生活環境によって対応は異なりますが、自己破産後に車なしで生活を立て直している方は少なくありません。
使用者と所有者が異なる場合のポイント
車検証の「使用者」欄に自分の名前があっても、「所有者」欄がローン会社であれば引き上げを止められません。
日常の使用権と法的な所有権は別物であることを、改めて確認しておく必要があります。
なお、所有権留保が設定されていない車(現金一括で購入した車や、すでにローンを完済した車)については扱いが異なり、破産財団に含まれるかどうかは車の市場価値をもとに判断されます。
査定額が一定の金額水準(裁判所や地域によって異なりますが、概ね数十万円程度が目安とされることが多い)を下回る場合は、自由財産として手元に残せる可能性も。
ただし基準は運用によって幅があるため、具体的な判断は専門家への確認が必要です。

ローン中でも車を手元に残せる可能性があるケース
自己破産をしても、条件によっては車を手元に残せる場合があります。
- ローン完済が破産申立て前に間に合う場合
- 車の査定額が20万円以下と判断される場合
- 車が家族名義またはリース契約の場合
一方で「ローン残高がまだ多く残っており、査定額も20万円を超えそうな通勤用の車」というケースは、残念ながら原則として引き上げられることになります。
これが多くの方に当てはまる現実であり、まずその前提を理解したうえで、例外的に残せる条件があるかどうかを確認していきましょう。
これらの条件は「自分に当てはまるかどうか」が判断しにくく、専門家への確認なしに見誤りかねません。
ここでは、各ケースの仕組みと判断基準を順に解説します。
破産前にローンを完済できる場合
ローンを完済すれば、その時点で車は担保から外れます。
完済後は車に対する所有権が自分に移るため、破産手続きの中でも「残せる財産かどうか」という別の基準で判断されます。
残高が少なく、手元の資金で一括返済できる見通しがある場合に限り、この選択肢が有効。
完済後に車の査定額が20万円以下であれば手元に残せる可能性がさらに高まりますが、20万円を超える場合はその車は破産財団に組み込まれ、破産管財人によって処分される対象になります。
注意したいのは、破産申立て直前に無理な一括返済を行うと「偏頗弁済(へんぱべんさい)」として免責が認められなくなるリスクがある点です。
完済を検討する際は、必ず弁護士・司法書士に事前相談してください。

車の査定額が20万円以下の場合
査定額が20万円以下の車は、「自由財産」として手元に残せる可能性があります。
自己破産では一定額以下の財産は処分の対象外とされており、車もこの基準の対象。
年式が古い・走行距離が多い・事故歴があるなど、市場価値が低い車であればこの基準を満たすケースがあります。
ただし査定額の判断は申立人が自己申告するものではなく、裁判所や破産管財人が確認する仕組みです。
- 20万円という基準は、裁判所の運用基準として広く使われている
- 車種・年式・走行距離・状態によって査定額は大きく変わる
- 自己判断で「残せる」と決めてしまうと、後から問題になる場合がある
なお、管財人が選任されない「同時廃止」という手続きになる場合は運用が異なることがあるため、自分の手続きがどちらに該当するかは弁護士に確認しましょう。
査定額の見込みが不明な場合は中古車買取サービスの無料査定で市場価値を把握しておくと相談がスムーズですが、「査定で20万円以下と出たから残せる」と確定的に受け取らないよう注意してください。

査定額はだれがどのように判断するのか
査定額の最終的な判断は、裁判所が選任した破産管財人が行います。
管財人は中立な立場で財産を評価し、処分対象かどうかを決定します。
査定の基準となるポイント
管財人が車の価値を判断する際には、主に中古車市場の相場が参考にされます。
具体的に評価されるのは、車種・年式・走行距離・修復歴・現在の状態など。
自分で感じる「古い車だから価値がない」という感覚と、実際の査定額が一致しないこともあります。
申立人が準備できること
破産申立ての段階で車検証のコピーや市場相場がわかる資料(中古車買取サービスの査定結果など)を添付しておくと、管財人の判断材料として活用されやすくなります。
弁護士に依頼している場合は、どの書類を用意すべきかを事前に確認しておきましょう。
20万円ラインの扱いに注意が必要な場合
査定額が20万円前後のボーダーライン上にある場合、手続きの進め方によって結果が変わる可能性があります。
この場合は特に専門家への相談が重要で、自己判断での見込みは避けてください。

家族名義・リース車の場合の扱い
車が家族名義またはリース契約の場合、自己破産の対象財産にはなりません。
破産手続きで処分されるのは「破産者本人の財産」であるため、他者名義の財産は対象外。
- 名義は家族でも実質的に破産者が支払いをしている場合は問題になる可能性があり、財産隠匿や否認権の行使(管財人が実態に基づいて取引を無効とする手続き)の対象とみなされることがある
- リース車はリース会社の所有物であるため、リース契約の継続可否はリース会社の判断による
- 破産後にリース契約が解除されるケースもあり、その場合は車を返却する必要が生じる
「名義が違うから安心」と思い込まず、購入時の支払い状況や名義変更のタイミングなど実態に即した確認を、必ず弁護士に先に行うことが重要です。
車を残せるかどうかは、車の状態・ローン残高・名義・査定額など複数の条件が絡み合います。
自分のケースに当てはまるかどうかは、弁護士・司法書士への無料相談で確認するのが最も確実な方法。

車を引き上げられるまでの流れと、手続き中に注意すること
自己破産を決断したあと、「車はいつ取られるのか」「手続き中も乗っていいのか」という疑問は、多くの方が抱える切実な不安です。
- 引き上げの動きは、弁護士・司法書士への依頼と同時に始まる
- ローン会社への通知から実際の引き上げまでは、数週間〜数ヶ月の幅がある
- 手続き中に車に乗り続けることは、原則として可能だが注意点がある
- 名義変更・売却・ローンだけ払い続けるといった行動は、手続きを大きく損なうリスクがある
引き上げの流れを正確に把握しておけば、生活の準備や代替手段の確保も冷静に進められるはず。
ここでは、依頼から引き上げまでの各ステップと、手続き中に絶対に避けるべき行動を順に解説します。
弁護士・司法書士に依頼した時点から動き始める
自己破産の手続きは、弁護士または司法書士に依頼した瞬間から実質的に動き出します。
依頼を受けた専門家はローン会社を含む各債権者へ「受任通知」を送付し、これが届いた時点でローン会社は債務者への直接の取り立てを止める義務を負う仕組み。
ここで理解しておきたいのが「所有権留保」で、ローン返済中の車は完済するまで法律上はローン会社の所有物として扱われます。
この仕組みがあるため、ローン会社は受任通知を受け取った段階で、自社の所有物として車の引き上げを求める権利を持つことに。
受任通知が届くと督促の電話や郵便が止まるため依頼直後から生活上の負担は軽くなりますが、ローン会社側では「残債の一括回収」に向けた準備も同時に始まります。
「まだ依頼しただけだから大丈夫」という感覚は誤りで、依頼と引き上げの準備は事実上セットで動くと理解しておきましょう。

ローン会社への通知から引き上げまでの目安期間
受任通知の送付から実際に車が引き上げられるまでの期間は、数週間から数ヶ月程度が一般的な目安です。
ただし、この期間はローン会社の対応方針や手続きの進捗次第。
期間の幅が生じる主な要因はローン会社の規模や社内手続きの違いで、大手信販会社は対応が定型化されており比較的早い傾向、地域の信用金庫や小規模な貸金業者は交渉・調整に時間がかかる場合があります。
- STEP1:受任通知の送付(依頼直後)
- STEP2:ローン会社から引き上げに関する連絡・調整
- STEP3:引き渡し日の確定と車の返還
ローン会社が担保権(所有権留保)を持っている場合、法律上は通知後に速やかに引き上げを求められますが、実務上は日程の擦り合わせがあるため即日引き上げになるケースはほとんどありません。
通勤に車が不可欠な場合は、担当の専門家に「自分のケースではどの程度の期間が見込まれるか」を早めに確認しておきましょう。
期間に一定の幅があることを踏まえ、早めに代替の移動手段を検討しておくことが現実的な備えになります。

手続き中に車に乗り続けることはできるか
受任通知が送付されてから実際に引き上げられるまでの間、車に乗り続けること自体は法律上禁じられていません。
引き渡しが完了していない以上、弁護士・司法書士の指導のもとで日常的に使用を続けることは一般的に行われており、「今日依頼したから明日から乗れなくなる」ということもありません。
- 引き上げの日程が決まったら、速やかに応じる義務がある
- 遠方への長距離移動や、車を隠すような行動は問題になる
- 事故を起こした場合の責任関係が複雑になることがある
担当の弁護士・司法書士から「引き渡しの準備をしてください」と伝えられた段階では、速やかに対応することが求められます。
乗り続けること自体は認められていても、引き上げを意図的に遅らせるような行動は免責が認められにくくなるリスクにつながります。
生活上どうしても車が必要な期間がある場合は、引き渡し日について担当者に具体的な事情(通勤距離・公共交通の利用可否など)を伝え、日程の調整が可能かどうかを相談しましょう。
車がなくなった後の通勤手段についても、この段階から公共交通機関への切り替えやカーシェアの利用可能性を確認しておくと、引き渡し後の生活への備えになります。

絶対にやってはいけない行動
手続き中に取ってはいけない行動があり、これらは自己破産の手続きを大きく損ない、場合によっては免責が認められなくなるリスクにつながります。
不安から単独で動くのではなく、気になることがあれば先に専門家へ相談することが、こうしたリスクを避ける最も確実な方法。
名義変更・売却をしてしまう場合のリスク
車をローン中に第三者に名義変更したり、売却して現金化したりする行為は、財産隠匿とみなされる可能性があります。
自己破産における免責不許可事由に該当するリスクが高く、「借金をなくしたい」という目的が達成できなくなる事態を招きかねません。
「家族名義に変えれば大丈夫」という考えも同様で、家族への贈与や名義変更は否認権の対象になることも。
ローンだけ払い続けることの問題点
他の借金の返済は止めながら車のローンだけを払い続けることも問題で、自己破産では原則としてすべての債権者を平等に扱う必要があります。
特定の債権者(ローン会社)にだけ返済を続ける行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と呼ばれ、これも免責不許可事由になり得ます。
「ローンさえ払えば車を残せる」という考えは、法律上通用しないと理解してください。
手続き前後の行動が審査に影響するポイント
裁判所は、申立て前のおおむね数ヶ月間にさかのぼって財産の動きを確認します。
手続きを始める前に急いで車を処分したり資産を移したりする行動は、申立て後に問題として浮上することも。
「バレなければいい」という判断は非常に危険で、専門家への相談なしに単独で行動することは避けてください。

車を残したいなら、債務整理を選択する
自己破産を選ぶと車は原則として手放すことになりますが、債務整理にはほかの方法もあります。
- 個人再生:借金の総額を大幅に減らしながら、車を手元に残せる可能性がある
- 任意整理:車のローンだけを手続きの対象から外して、ほかの借金だけを交渉できる
- 保証人の有無:車のローンに保証人がいる場合、手続きの選び方で保証人への影響が変わる
「どうしても車が必要」という事情がある方にとって、自己破産が唯一の選択肢ではありません。
ただし、どの方法が使えるかは収入・借金額・ローンの残高などの条件によって異なります。
これらの手続きはいずれも「自己破産を回避できる可能性がある選択肢」であり、借金総額や収入状況によっては自己破産が現実的な選択になるケースもあるでしょう。
個人再生:車を残しながら借金を減額する方法
個人再生では裁判所を通じて借金の総額を一定の割合まで圧縮し、残額を3〜5年かけて返済しますが、自己破産と異なり財産をすべて処分する必要がないため、条件が合えば車を手元に残したまま手続きを進められます。
- 安定した収入があること(継続的な返済が見込めること)
- 借金の総額がおおむね5,000万円未満であること(住宅ローンを除く)
- 車のローンが完済済みか、または車の評価額よりローン残高が上回っている状態であること
多くの方にとって借金総額の上限を超えることは少ないため、借金総額の面では対象になりやすい手続き。
ただし車にローンが残っている場合、多くのローン契約に含まれる「所有権留保」により、個人再生の手続き中であってもローン返済が滞れば引き上げられるリスクがあります。
一方で、ローンがすでに完済している車や、車の評価額がローン残高を下回っている場合(オーバーローン状態)なら、手元に残せる可能性は高まるでしょう。
「財産価値がゼロ」とは市場で売っても価値がない車という意味ではなく、ローン残高を差し引いた手取り額がゼロ以下になる状態を指すため、車自体は走行できる状態でもこの条件に該当することがあります。
- STEP1:中古車買取サービスなどで、車の現在の査定額を把握する
- STEP2:ローン契約書や残高照会で、現在のローン残高を確認する
- STEP3:「査定額 − ローン残高」がゼロ以下ならオーバーローン状態
個人再生を検討する際は、この確認を事前に行っておきましょう。

任意整理:車のローンを除いて交渉する方法
任意整理は裁判所を介さずに債権者と直接交渉して返済条件を見直す手続きで、最大の特徴は「どの借金を整理の対象にするか」を自分で選べる点にあります。
車のローンを対象から外し、クレジットカードや消費者金融などの借金だけを交渉の対象にできるため、車のローンは従来どおり返済を続けながらほかの借金の利息カットや返済期間の延長を交渉できます。
ただし、「車のローンを除外すれば確実に車を残せる」とは限りません。
任意整理の手続きを開始すると弁護士や司法書士から各債権者へ受任通知が送られ、車のローン会社がこれを受け取った時点で契約条件に基づいて車を引き上げる対応をとることもあります。
除外の意向を伝えていてもローン会社側の判断によって結果が変わる場合があるため、事前に専門家と対応方針を確認しておきましょう。
任意整理が有効なケース
車のローンを除外した任意整理が現実的な選択肢になるのは、「車のローンの月々の返済額は払えているが、ほかの借金の返済が追いつかない」という状況です。
車のローンだけは滞りなく返済を続けられる収入がある場合に限り、この方法が機能します。
車のローンも含めて全体的に返済が苦しい状況では、任意整理だけでは解決しないケースもあるため、専門家への相談が必要。
任意整理の限界のポイント
任意整理はあくまで返済条件の見直しであり、借金の元本そのものを大幅に減らす効果は限定的です。
個人再生のように元本を圧縮する仕組みではないため、借金総額が大きい場合には月々の返済額が依然として重くなることもあります。
「車を残したいから任意整理を選ぶ」という判断をする前に、借金の総額と収入のバランスを確認しておきましょう。

保証人がいる場合、車のローンへの影響
車のローンに保証人が設定されている場合、債務整理の手続き選択が保証人の生活にも影響するため、事前に把握しておくことが重要です。
自己破産・個人再生・任意整理のいずれの場合でも、主債務者(本人)が返済を止めるとローン会社は保証人に対して残債の一括請求を行う可能性があります。
手続きの種類によって保証人への影響が変わるわけではなく、引き金になるのは「ローンの返済が止まる」という事実そのもの。
任意整理では車のローンを対象から外して返済を継続することで保証人への影響を回避できる場合がある一方、個人再生や自己破産ではローンの返済が止まるため保証人への請求が発生しやすくなります。
保証人が家族や知人である場合は、手続きを選ぶ前に保証人への影響を弁護士や司法書士に確認しましょう。
なお、車のローンに保証人がいない場合は、この点を考慮する必要はありません。

車がなくなっても生活できるか:引き上げ後の見通し
前のセクションで説明したとおり、ローン中の車は所有権留保の仕組みにより原則として引き上げられますが、ここではその後の生活をどう立て直すかという視点で整理します。
- 車なしで日常生活を維持するための現実的な代替手段
- 自己破産後に再びローンを組めるようになるまでの期間の目安
- 車を失った後の生活設計で意識しておくべきポイント
「車がなければ仕事にも通えない」「生活が成り立たなくなる」という不安は、多くの方が抱える正直な気持ち。
実際には交通手段や生活動線を見直すことで、車なしの暮らしに対応できるケースもあります。
一方で、通勤距離が長い・公共交通がほとんどない地域では、代替手段だけでは対応が難しいのも現実。
そうした場合は、自己破産以外の選択肢(個人再生など)を含めて専門家に相談することで、車を手元に残せる可能性も出てきます。
車なしで生活を維持するための現実的な方法
車を失っても、交通手段の組み合わせと生活動線の見直しによって日常生活を維持できる可能性は十分にあります。
まず確認したいのは「車が必要な理由」が何かという点で、通勤・通院・買い物・子どもの送迎など、用途によって代替手段は変わります。
それぞれの用途に合わせた選択肢を把握しておくことが、生活再建の第一歩。
通勤・移動手段のポイント
公共交通機関が整っている地域であれば、電車・バスへの切り替えが現実的な選択肢になります。
都市部では定期代の負担はあるものの、車の維持費(駐車場代・保険・ガソリン代・税金)と比較すると月々の支出が減るケースも多くあります。
地方在住で公共交通が乏しい場合は、原動機付自転車(原付)や自転車の活用、カーシェアリングサービスの利用が選択肢。
カーシェアリングは、週に数回だけ車が必要な方にとってコストを抑えやすい手段です。
通勤距離が片道30分以上・最寄り駅まで数キロある環境では、代替手段だけで日常生活をまかなうことが難しい場合もあります。
その場合は、個人再生など車を維持できる手続きについて弁護士や司法書士に相談してみてください。
買い物・生活インフラのポイント
ネットスーパーや宅配サービスの普及により、日用品・食料品の調達は車がなくても対応しやすくなっています。
近隣のスーパーへの徒歩・自転車圏内への引っ越しを検討することも、長期的な生活設計として有効。
住居と職場・生活拠点の距離を見直すことで、車依存度そのものを下げる発想も持っておくとよいでしょう。
仕事への影響が出る場合のポイント
営業職や配送業など業務上どうしても車が必要な職種の場合は、まず会社の社用車を使えるかどうかを確認することが先決です。
自己破産によって職を失うわけではなく、社用車の使用は個人の財産とは別の話。
仕事の性質上、車の確保が業務継続の条件になっている場合は、自己破産ではなく個人再生などの別の手続きも含めて検討しましょう。
職種の見直しや転職は、そうした手続き上の選択肢を検討したうえでもなお難しい場合に視野に入れるものとして位置づけておくと安心です。

自己破産後に再びローンを組めるまでの期間の目安
自己破産後すぐにローンを組むことはできませんが、一定期間が経過すれば再び利用できるようになり、その期間は信用情報機関に登録される「事故情報(いわゆるブラックリスト)」の保有期間によって決まります。
| 信用情報機関 | 事故情報の保有期間の目安 |
|---|---|
| CIC・JICC | おおむね5年程度 |
| 全国銀行個人信用情報センター(全銀協) | おおむね10年程度 |
| 自己破産の場合の傾向 | 登録期間が上限に近くなる傾向がある |
この期間中はクレジットカードの新規発行やローンの審査が通りにくい状態が続きますが、期間が明ければ信用情報機関上の事故情報は削除され、新たに審査を受けられる状態に戻ります。
なお、金融機関によっては社内の審査基準として独自の記録を保有している場合もあるため、「期間が過ぎれば必ずローンが組める」と断言はできません。
それでも多くの場合は審査対象として扱われるようになり、実際に自己破産を経験した後、数年をかけて生活を立て直し再び車のローンを組めるようになった方も一定数います。
自己破産は「永久にローンが組めなくなる手続き」ではありません。
- 現金一括で中古車を購入する(比較的安価な車種を選ぶ)
- カーリースやカーシェアリングを利用する
- 家族名義で車を用意してもらう(ただし手続きのタイミングや方法によっては詐害行為とみなされるリスクがあるため、事前に専門家へ確認が必要。なお、家族の信用情報そのものへの影響は原則ありません)
信用情報の回復を待ちながら、生活費の中から計画的に貯蓄を進めておくことが、再スタートへの現実的な道筋です。

車とローンの問題は、一人で判断しないほうがいい理由
自己破産でローン中の車がどうなるかは、個別の事情によって結論が大きく変わります。
- ローン残高と車の価値のバランスで、手元に残せるかどうかが変わる
- 家族名義・職業上の必要性など、状況によっては交渉の余地がある
- 手続きの選択(自己破産か任意整理かなど)によっても車の扱いが異なる
- 誤った判断で動くと、車だけでなく手続き全体に影響が出るリスクがある
まず前提として押さえておきたいのは、ローン返済中の車は法的にはローン会社の所有物であるケースが大半という点です。
これを「所有権留保」といい、完済されるまで車の所有権はローン会社が持ち続ける仕組み。
そのため自己破産を申請すると、ローン会社は所有権に基づいて車を引き上げることができます。
ただし、こうした判断を法律の知識なしに自分だけで見極めるのは難しいのが実情。
「どうせ取られる」と諦める前に、まず専門家に状況を整理してもらいましょう。
「自分のケースで車を残せるか」は専門家でないと判断できない
ローン中の車を残せるかどうかは個別の事情を精査しないと答えが出ない問題で、一般的な情報だけで「どうせ無理」と判断してしまうのは早計です。
自己破産の手続きでは、車の価値・ローン残高・使用目的・家族構成・収入状況など、複数の要素が絡み合います。
たとえばローン残高が車の査定額を上回っている場合、ローン会社が車を引き上げても回収できる金額が限られるため、実際には引き上げが行われないケースも。
これは例外的な状況ではありますが、ローン残高と査定額の差が大きいほどその可能性は生じやすくなります。
また、仕事での使用が不可欠と認められる状況では裁判所の判断に有利に影響することもあり、公共交通機関が整備されていない地域での通勤・営業職や訪問介護など、車がなければ業務が成立しない職種がその例として挙げられやすい傾向があります。
こうした見極めは法律の専門家が状況を聞き取ったうえで初めて可能になるため、ネットの情報や口コミだけで「自分には無理だ」と決めつけないようにしてください。

手続きの選択を誤ると、取り返しがつかない場合がある
自己破産だけが債務整理の手段ではなく、任意整理や個人再生といった方法では車を手元に残しやすいケースもあります。
| 手続き | 車への影響 | 向いている方 |
|---|---|---|
| 任意整理 | 車のローン会社を対象から外すことで、手元に残せる可能性がある | 車のローンは払えているが、ほかの返済が苦しい方 |
| 個人再生 | 借金を大幅に圧縮しながら資産を守れる可能性がある | 一定の継続的な収入がある方 |
| 自己破産 | ローン中の車は原則として引き上げられる | 返済の見込みが立たない方 |
注意が必要なのは、一度手続きを開始すると途中で変更が難しくなる点です。
特に裁判所への申立てを行った後は、手続きの種類を変更することが困難。
申立て前の段階であれば選択の余地がありますが、動き出してからでは軌道修正に追加の時間と費用がかかる場合も。
最初の選択がその後の生活設計に直結するため、専門家への相談は「入口の選択ミス」を防ぐうえでも重要です。
弁護士や司法書士は依頼者の状況に応じて複数の選択肢を比較し最適な方向性を提示してくれるので、まず話を聞いてもらうだけでも十分な意味があります。

無料相談を使えば、リスクなく現状を整理できる
多くの法律事務所や司法書士事務所では、初回相談を無料で受け付けています。
相談したからといって、その場で契約や手続きが強制されることはありません。
「話を聞いてもらうだけ」でも、現状の整理や疑問の解消に役立ちます。
電話やオンラインでの相談に対応している事務所も多く、夜間や休日でも問い合わせを受け付けているところも。
- 車のローン残高と現在の車の状態(年式・走行距離など)
- 車が自分名義か、家族名義かどうか
- 車を仕事や通院・通学などに使用しているかどうか
- 借金全体の総額と、主な債権者の内訳
これらを事前にメモしておくだけで相談の質が上がり、より具体的なアドバイスを得やすくなります。
一人で判断を先送りにするほど選択肢は狭まるため、まず無料相談で自分のケースを確認してみてください。

自己破産とローン中の車に関するよくある質問
自己破産を検討するとき、ローン中の車をどう扱えばよいのか判断に迷う方は少なくありません。
車は日常生活に欠かせない場合も多く、「本当に手放さなければならないのか」という不安を感じるのは自然なことです。
ここでは、手続き中の車の扱いや破産後の生活再建に関わる疑問について、要点を整理してお伝えします。
一つひとつ確認することで、先行きへの見通しが少し立てやすくなるはず。
車のローンだけ払い続けて、他の借金だけ自己破産することはできますか?
自己破産では、車のローンだけを除いて他の借金を免除してもらうことは原則できません。
手続きでは特定の債権者を選んで対象から外すことができず、車のローン会社を含むすべての債権者が対象。
申立て前に特定の債権者だけに優先して返済する行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」とみなされ、免責が認められない原因になるケースもあるため注意が必要です。
車のローンを残しつつ他の借金を整理したい場合は、交渉する債権者を自分で選べる任意整理が選択肢になり、詳しくは「車を残したいなら、自己破産以外の債務整理も選択肢になります」で解説しています。
どの手続きが適しているかは、弁護士や司法書士に相談のうえ判断しましょう。

10年落ちの古い車でも引き上げられますか?
車の年式よりも「ローンの残債の有無」と「査定額」が判断の核心になります。
ローンが残っている場合は10年落ちの古い車であっても原則として引き上げの対象となり、これはローン会社が所有権を留保しているためで車の価値や年式は関係ありません。
一方、ローンをすでに完済している場合は査定額が基準となり、査定額が20万円以下であれば自由財産として認められ手元に残せる可能性があります。
査定額の判断は管財人や裁判所によって異なる場合があるため、残債の有無と査定額の両方を弁護士に確認したうえで手続きを進めてください。
判断の基準は「ローン中でも車を手元に残せる可能性があるケース」でも詳しく整理しています。

自己破産の手続き中でも、車に乗り続けることはできますか?
手続き中に車に乗れるかどうかは、ローン会社が車を引き上げるタイミングによって異なります。
弁護士・司法書士に依頼してからローン会社が車を引き上げるまでの間は、引き続き車を使用できるケースが多いです。
ただし引き上げのタイミングはローン会社や状況によって異なるため、いつまで乗れるかは一概には言えません。
手続き中に車を勝手に売却したり名義変更したりすることは厳禁で、こうした行為は財産隠しとみなされ免責が認められなくなるリスクがあります。
引き上げまでの具体的な流れは「車を引き上げられるまでの流れと、手続き中に注意すること」で解説しているので、依頼した弁護士・司法書士にも事前に確認しておきましょう。

自己破産の手続き前に車を家族名義に変えることはできますか?
手続き直前の名義変更は「財産隠し」と判断され、免責不許可につながる可能性があるため絶対に行ってはいけません。
破産手続きでは一定期間さかのぼって財産の移動が調査されるため、直前の名義変更は容易に発覚します。
免責不許可となった場合、借金が法的に免除されないまま手続きが終了してしまい、自己破産の目的を果たせなくなります。
「家族に車を残したい」「生活上どうしても必要な車がある」といった事情がある場合でも、自己判断で名義変更を行うことは厳禁。
特別な事情がある場合は手続き前に必ず弁護士や司法書士へ相談し、合法的な対応策を確認するようにしてください。

自己破産後、どのくらいで車のローンを組めるようになりますか?
自己破産後に車のローンを組める目安は、信用情報から事故情報が削除される概ね5〜10年後です。
免責決定が確定するとCIC・JICC・全銀協などの信用情報機関に事故情報が登録され、この情報が削除されるまでの期間が経過すると審査に通る可能性が出てきます。
ただし削除直後は保証人なし・一括払いといった条件を求められるケースもあるため、通常のローン審査と同じ感覚で臨むのは難しい場合も。
信用情報の登録期間は機関や状況によって異なるため、削除のタイミングは一律ではありません。
期間中の車の確保方法は「車がなくなっても生活できるか:引き上げ後の見通し」で紹介しているので、ご自身の状況に合わせた判断は弁護士や司法書士に確認しましょう。

まとめ
自己破産を申立てると、ローン返済中の車は原則としてローン会社に引き上げられます。
完済まで所有権がローン会社に残る「所有権留保」の仕組みによるもので、自分の車がどちらに当てはまるかは車検証の「所有者」欄で今すぐ確認できます。
例外的に残せるのは、破産前にローンを完済できる場合・査定額が20万円以下と判断される場合・家族名義やリース契約の場合、そして個人再生など自己破産以外の手続きを選ぶ場合の4つ。
引き上げは弁護士・司法書士への依頼と同時に動き出し、受任通知の送付から実際の引き渡しまでは数週間〜数ヶ月程度が目安です。
絶対に避けたいのは名義変更・売却・車のローンだけを払い続ける行為で、いずれも財産隠匿や偏頗弁済とみなされ、免責が認められなくなりかねません。
車を失っても信用情報は5〜10年で回復し、再びローンを組めるようになりますので、ローン中の車と自己破産についてお悩みでしたら、あまた法律事務所へお気軽にご相談ください。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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