交通事故の歯の慰謝料相場|後遺障害等級とインプラント費用を解説

「交通事故で歯が折れたけど、慰謝料はいくらもらえるの?」「インプラント代は相手の保険会社に払ってもらえる?」

歯のケガは、補綴(クラウンや入れ歯などで歯を補う治療)をした本数によって後遺障害等級の対象になります。

保険会社の提示額のまま示談書にサインすると、原則としてあとから追加請求はできません。

後遺障害等級(治療後も残った症状の重さを1〜14級に区分したもの)は、歯の場合「補綴した歯が3本以上」から認定の対象です。どの基準で計算するかによって、慰謝料が3倍前後変わることも珍しくありません。

本記事では、請求できる賠償金や等級別の慰謝料相場、インプラント費用と示談前の注意点を解説します。

保険会社から提示額が届いた方や、これから治療を進める方は、ぜひ参考にしてみてください。

執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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この記事の目次

交通事故で歯を損傷したときに請求できる賠償金の種類

交通事故で歯を損傷した場合、請求できる賠償金は慰謝料だけではありません。

治療費などの実費に加えて、通院に対する慰謝料や、後遺症が残ったときの賠償もあります。保険会社の最初の提示では、これらが十分に計上されていないケースも少なくありません。

歯の損傷で請求できる主な賠償金は「治療費」「入通院慰謝料」「後遺障害慰謝料」「逸失利益(将来の収入減の補償)」の4つです。

ここでは、それぞれの賠償金の考え方を解説します。

治療費・歯科補綴費用は実費で請求できる

事故で必要になった歯科治療の費用は、原則として実費を加害者側に請求できます。

治療中の方がまず押さえておきたいのは、治療費は慰謝料とは別枠で請求できるという点でしょう。対象になるのは、事故との因果関係があり、医学的に必要かつ相当と認められる治療費です。

請求できる治療関係費の例
  • 診察・検査・抜歯などの処置費
  • 仮歯・クラウン・ブリッジ・義歯などの補綴費用
  • インプラント治療費(必要性・相当性が認められる場合)
  • 通院のための交通費

とくに注意が必要なのは、インプラントなど費用の高い補綴でしょう。保険会社が「ブリッジで足りる」として、一部しか認めないことがあります。認められる条件は、3章「インプラント・ブリッジ費用が交通事故の賠償で認められる条件」でくわしく解説します。

領収書は捨てずに、治療が終わるまでまとめて保管しておくと安心ですよ。

通院期間に応じて支払われる入通院慰謝料

入通院慰謝料は、後遺障害等級が付くかどうかに関係なく、通院した期間や日数に応じて請求できます。

現在、歯科や口腔外科に通院中の方は、通った期間がすべて入通院慰謝料の算定対象です。

金額を大きく左右するのが、計算に使う基準の違い。弁護士基準(裁判例をもとにした最も高い基準)なら、通院3ヶ月で73万円が目安になります。この金額は、弁護士が使う「赤い本」という算定基準の本に載っている目安です。

一方、自賠責基準(法律で定めた最低限の基準)は日額4,300円で計算するため、20万円を下回ることもあるでしょう。

3つの基準の違いは、4章でくわしく解説します。

通院した日付をメモしておくと、あとで慰謝料を確かめるときに役立ちますよ。

後遺障害が残った場合に請求できる後遺障害慰謝料と逸失利益

治療を終えても歯の障害が残り、後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料と逸失利益を追加で請求できます。

こちらは、治療を終えた後も歯の障害が残った方向けの賠償金です。

後遺障害慰謝料は、認定された等級ごとに目安額が決まっているのが特徴。逸失利益とは、後遺障害によって将来の収入が減る損害のことを指します。

ただし歯の障害は、仕事の能力に直接影響しにくいと判断されやすい傾向にあります。そのため逸失利益は、否定されたり低く見積もられたりすることが少なくありません。

歯の後遺障害では、仕事への具体的な影響を示せるかが逸失利益のポイントです。
等級ごとの慰謝料の目安は、次の章の一覧表で確認できますよ。

後遺障害が非該当でも入通院慰謝料は請求できる

後遺障害が「非該当」になっても、通院した事実があれば入通院慰謝料は請求できます。

歯の損傷が1〜2本にとどまった方や、申請の結果が非該当(後遺障害等級が認定されないこと)だった方に知っておいてほしい内容です。

等級が付かないと「慰謝料はもらえない」と誤解されがちですが、これは正確ではありません。

治療費と入通院慰謝料は、等級とは関係なく請求できる賠償金。等級が付かない場合に請求できなくなるのは、後遺障害慰謝料と逸失利益だけだと理解しておきましょう。

結果に納得できない場合は、追加の資料を出して再審査を求める「異議申立て」も可能です。

非該当の通知が届いても、あきらめずに一度専門家へ相談してみるとよいですね。

歯の後遺障害等級(10級〜14級)の認定基準と慰謝料相場

交通事故による歯の後遺障害は「歯牙障害」と呼ばれ、歯科補綴を加えた歯の本数で等級が決まります。

認定されるのは10級から14級までの5段階。1〜2本の損傷では等級の対象にならない点に注意が必要です。

3本以上の歯に歯科補綴を加えたことが、歯の後遺障害等級のスタートライン。

ここでは、本数の数え方から等級別の慰謝料、噛む・話す機能の障害まで解説します。

等級認定で数える「歯科補綴を加えた歯」の定義

等級の本数に数えるのは、事故で失ったか大きく欠けた歯に、補綴をしたものに限られます。

これから等級の申請を考えている方が、最初に確認したいポイントです。

歯科補綴とは、失った歯や欠けた歯を、クラウン・ブリッジ・義歯・インプラントなどで人工的に補う治療のこと。自賠責保険では、現実に失った歯か著しく欠けた歯に補綴した場合が対象です。

ブリッジの土台にするために削った健康な歯は、本数に数えません。表面が少し欠けた程度の歯や、変色しただけの歯も原則として対象外です。

自分の歯が何本に当たるかは、担当の歯科医に確認してもらいましょう。

ブリッジで治した場合は、土台の歯が本数に入らない点に気をつけたいですね。

補綴した本数別の後遺障害等級と慰謝料相場一覧

弁護士基準の後遺障害慰謝料は、自賠責基準の約3倍の水準です。

後遺障害の申請を控えた方や、認定結果が届いた方は、下の表で慰謝料の目安を確認してください。

補綴した歯の本数後遺障害等級自賠責基準弁護士基準
14歯以上10級4号190万円550万円
10歯以上11級4号136万円420万円
7歯以上12級3号94万円290万円
5歯以上13級5号57万円180万円
3歯以上14級2号32万円110万円

等級と本数の区分は、自動車損害賠償保障法施行令の別表第二で定められています。自賠責基準の金額は、2020年4月1日以降の事故に適用される自賠責保険の支払基準によるもの。弁護士基準は赤い本に掲載された目安額です。

なお、慰謝料とは別に治療費や入通院慰謝料も請求できるため、受け取る総額は表の金額より多くなります。

保険会社の提示額が表のどちらの列に近いか、見比べてみるとよいですよ。

事故前から差し歯や治療歯がある方の等級の考え方

事故前から補綴していた歯は、事故で増えた分と区別して扱われます。

虫歯治療などで差し歯やクラウンが入っていた方は、等級の判断が複雑になりやすいので注意しましょう。

事故前からすでに補綴していた歯は「既存障害」として扱われます。事故によって障害が重くなった場合に、その差額分を支払う仕組みを「加重障害」といいます。

事故前の歯の状態を証明する基本の資料は、かかりつけ歯科の診療記録。事故前後の変化を示せれば、保険会社に「もともとの損傷」と言われたときの反論材料になります。

事故前に通っていた歯医者さんの名前と時期を、メモしておくと安心ですね。

咀嚼・言語機能の障害が残った場合の後遺障害等級

噛む・話す機能に障害が残った場合は、歯の本数とは別の基準で等級が決まるのが特徴。

あごの骨折などで、食べ物を噛む機能(咀嚼機能)や発音に支障が残った方に関係する内容です。

障害の内容後遺障害等級
咀嚼及び言語の機能を廃したもの1級2号
咀嚼又は言語の機能を廃したもの3級2号
咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの4級2号
咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの6級2号
咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの9級6号
咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの10級3号

認定には「噛みにくい」という自覚だけでなく、噛める食べ物の範囲や発音の検査結果など、客観的な所見が求められます。

歯と咀嚼・言語の障害が両方あると、「併合」(複数の障害をまとめて等級を決める仕組み)で上の等級になることも。

口腔外科で精密検査を受け、後遺障害診断書に具体的な症状を書いてもらうことが大切です。

噛みにくさや話しにくさは、遠慮せず担当医に具体的に伝えることが大切ですよ。

インプラント・ブリッジ費用が交通事故の賠償で認められる条件

歯を失った場合、インプラントやブリッジなど費用の高い治療が必要になることがあります。

ただし、かかった費用がそのまま賠償されるとは限りません。保険会社は「より安いブリッジで足りる」と主張し、差額を認めないことがあるためです。

インプラント費用が認められるかは、「医学的な必要性」を示せるかどうかが分かれ目。

ここでは、インプラント費用が認められる条件と、保険会社への対処法を解説します。

インプラント費用が認められるケースと認められにくいケース

インプラントを選んだ医学的な理由を、歯科医師に書面で残してもらうことが重要です。

これからインプラント治療を始める方や、すでに治療中の方に向けた内容です。

インプラント費用は、ほかの治療では十分に回復できない事情があるかで判断されるのが一般的。

状況インプラント費用の扱い
隣の歯が健康で、ブリッジのために削るのが不適切認められやすい
骨の量や噛み合わせなど、医学的な理由でブリッジができない認められやすい
ブリッジで十分に機能を回復できるブリッジ相当額に減額されやすい
事故前から歯周病などで歯や骨が弱っていた事故との因果関係が争われやすい

結果を左右するのは、歯科医師の診断書や意見書に理由が書かれているかどうかです。

治療を始める前か、始めた直後に「なぜインプラントが必要か」を書面にしてもらいましょう。

意見書の作成費用も、領収書があれば損害として請求できる場合がありますよ。

保険会社がブリッジ相当額しか認めないときの対処法

示談交渉中に、保険会社から「ブリッジ相当額まで」と言われた方向けの対処法です。

この主張には、感情的に反論するよりも医学的な根拠を示すほうが効果的。ブリッジでは同じように回復できない理由を、書面で積み上げていきましょう。

ブリッジ相当額を主張されたときの対処の流れ
  • STEP1:担当の歯科医師に、インプラントが必要な理由を意見書にまとめてもらう
  • STEP2:隣の歯の状態・骨の量・噛み合わせなど、ブリッジを選べない具体的な理由を書いてもらう
  • STEP3:意見書をもとに保険会社と交渉し、難しい場合は弁護士に相談する

意見書を頼むときは「保険会社との交渉に使いたい」と伝えると、必要な内容を書いてもらいやすくなります。

提示額の内訳に「ブリッジ相当額」と書かれていないか、まずチェックしてみたいですね。

インプラントの将来の交換費用・メンテナンス費用の請求

インプラントの将来の交換費用も、必要性を示せれば損害として認められることがあります。

インプラント治療を受けた方、とくに年齢の若い方ほど確認しておきたいポイントです。

インプラントは一生もつとは限らず、将来の交換や定期的なメンテナンスが必要になる場合も。こうした将来の費用も、医師が必要性や費用の見込みを示していれば、損害として認められることがあります。

示談の後に請求することは原則できないため、示談前に将来費用が計上されているか必ず確認してください。

治療計画書に将来の交換時期が書かれているか、担当医に聞いてみるとよいですね。

保険会社の提示額が低くなる理由と3つの算定基準

保険会社から示談金の提示を受けても、その金額が妥当かどうか判断できない方は多いでしょう。

実は慰謝料の計算には3つの基準があり、保険会社は低い基準で計算していることがほとんどです。

弁護士基準で計算し直すだけで、慰謝料が3倍前後になるケースも珍しくありません。

ここでは、3つの基準の違いと、提示額をチェックする方法を解説します。

自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の違い

3つの基準のうち、最も金額が高いのは弁護士基準(裁判基準)です。
基準特徴金額の水準
自賠責基準法律で定められた最低限の補償最も低い
任意保険基準各保険会社が独自に定める非公開の基準自賠責基準よりやや高い程度
弁護士基準過去の裁判例をもとにした基準(赤い本の目安額)最も高い

示談交渉の段階にいる方にとって、どの基準で計算されたかは最も大事な確認ポイントになります。

保険会社が提示するのは、自賠責基準か任意保険基準による金額が一般的。被害者本人が弁護士基準で請求しても、保険会社が応じないケースが多いのが実情でしょう。

弁護士が交渉に入ると、裁判になった場合を前提に、弁護士基準での支払いを求められます。

提示書に「当社基準」などと書かれていたら、増額の余地があるかもしれませんね。

保険会社の提示額をチェックする方法

提示書は「総額」ではなく「費目ごとの内訳」で確認するのが基本です。

保険会社から示談の提示書が届いた方は、署名する前に次の点を確認しましょう。

示談前に確認したいチェックリスト
  • 後遺障害等級の申請・認定が終わっているか
  • 後遺障害慰謝料が、等級別の弁護士基準と比べて低すぎないか
  • インプラント費用が「ブリッジ相当額」に減額されていないか
  • 将来の交換費用・メンテナンス費用が含まれているか
  • 入通院慰謝料が、通院期間に見合った金額になっているか

1つでも気になる項目があれば、提示額が適正でない可能性があります。

判断に迷ったら、署名前に弁護士の無料相談で確認するのが確実です。

一度サインした示談書は原則やり直せないので、焦らず確認したいですね。

弁護士基準で計算した場合の慰謝料のモデル試算

実際にどのくらいの差が出るのか、モデルケースで試算してみましょう。

以下は、公表されている基準をもとにした計算例です。実際の金額は通院状況や過失割合(事故の責任が当事者それぞれにどれだけあるかを示す割合)などで変わるため、目安として参考にしてください。

同じケガでも、計算に使う基準によって慰謝料に100万円以上の差がつくことがあります。

ここでは、14級に認定されたケースと、等級が付かなかったケースの2つを紹介します。

3本の歯を補綴して14級2号に認定された場合の試算

14級2号のケースでは、慰謝料だけで約125万円の差がつくと試算できます。

想定するのは、事故で3本の歯を失い、インプラントで治療した会社員の方。

試算の前提と結果(14級2号)
  • 前歯3本を失い、3本ともインプラントで補綴
  • 通院期間3ヶ月(90日)、実際の通院日数30日
  • 後遺障害等級:14級2号
費目自賠責基準弁護士基準
入通院慰謝料25.8万円73万円
後遺障害慰謝料32万円110万円
合計57.8万円183万円

慰謝料だけで約125万円の差が出る計算です。自賠責基準の入通院慰謝料は、日額4,300円に対象日数をかけて算出。対象日数には、治療期間と実際の通院日数の2倍のうち少ないほうを使います。

治療費は実費で別に支払われるため、この試算には含めていません。逸失利益も、歯の障害では認められにくいことから除外しました。

同じケガでも、計算の基準が違うだけでこんなに差が出るんですね。

1〜2本の損傷で等級が付かなかった場合の試算

等級が付かなくても、入通院慰謝料には基準による差が生じます。

歯の損傷が1〜2本にとどまり、後遺障害が非該当となった方を想定した試算。

試算の前提と結果(後遺障害なし)
  • 歯2本を損傷し、クラウンで補綴
  • 通院期間2ヶ月(60日)、実際の通院日数20日
  • 後遺障害等級:非該当
費目自賠責基準弁護士基準
入通院慰謝料17.2万円52万円

等級が付かない場合でも、入通院慰謝料だけで約35万円の差が出ます。治療費や通院交通費は、これとは別に実費で請求可能です。

「本数が少ないから」とあきらめず、提示額を弁護士基準と比べてみましょう。

1〜2本のケガでも、相談してみる価値は十分にありますよ。

後遺障害の申請から示談までの流れと注意点

歯の後遺障害で適正な賠償を受けるには、申請のタイミングと方法が重要です。

手順を誤ると、本来認定されるはずの等級が付かなかったり、後遺障害分を受け取らずに示談してしまったりするおそれも。

後遺障害の申請は治療を終えてから行い、示談は等級の結果が出てから検討します。

ここでは、治療の終わりから示談までの流れに沿って注意点を解説します。

症状固定のタイミングと後遺障害の申請時期

歯の場合は、補綴治療が終わって口の中の状態が安定した時点が症状固定の目安です。

治療の終わりが近づいている方に向けた内容です。

症状固定とは、これ以上治療を続けても改善が見込めないと医師が判断した状態のこと。後遺障害の申請は、この症状固定の後に行います。

症状固定の前に保険会社から示談を打診されても、応じる必要はありません。症状固定後は、担当医に後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。

症状固定の時期は、保険会社ではなく担当医と相談して決めるものですよ。

後遺障害の申請方法「事前認定」と「被害者請求」の違い

歯の後遺障害のように認定が微妙になりやすいケースでは、被害者請求が有効です。

これから後遺障害の申請をする方は、2つの方法から選ぶことになります。

項目事前認定被害者請求
申請する人加害者側の任意保険会社被害者本人(または弁護士)
書類の準備保険会社が行う被害者が自分で集める
メリット手間が少ない有利な資料を選んで提出できる
デメリット提出資料を自分で確認しにくい書類集めの手間がかかる

被害者請求なら、事故前後の歯の状態を示す記録や歯科医師の意見書を、自分で選んで添付可能。手間はかかりますが、弁護士に依頼すれば書類の準備も任せられます。

結果に納得できない場合は、新しい資料を添えて「異議申立て」をすることもできます。

書類集めに不安があれば、弁護士にまとめて任せるのもひとつの方法ですね。

示談を急かされたときに署名前に確認すること

示談書に署名すると、原則としてあとから金額の変更や追加請求はできません。

保険会社から「早めに示談を」と連絡が来ている方は、焦って署名しないようにしましょう。

とくに注意したいのが、後遺障害の結果が出る前に示談してしまうケース。後遺障害慰謝料や逸失利益が含まれないまま、賠償が終わってしまいます。

示談の時期は、等級の結果と提示額の内訳を確認してから判断しても遅くありません。提示額のチェック方法は、4章の「保険会社の提示額をチェックする方法」を参考にしてください。

急かされても「確認してから返事します」と伝えて大丈夫ですよ。

弁護士に相談するタイミングと弁護士費用の考え方

歯の損傷では、等級・インプラント費用・逸失利益など争点が重なりやすく、示談金の計算も複雑になりがちです。

保険会社とのやり取りに不安を感じたら、示談前に弁護士へ相談するのが安心でしょう。

弁護士費用特約(弁護士費用を保険で補う特約)が使えれば、多くの場合は自己負担なしで依頼できます。

ここでは、弁護士費用特約の使い方と、無料相談で確認したいことを解説します。

弁護士費用特約で自己負担なく依頼できるケース

弁護士費用特約の補償は、一般的に弁護士費用300万円・法律相談料10万円が上限です。

弁護士への依頼を検討している方は、まず自分の保険に特約が付いているか確認しましょう。

弁護士費用特約とは、交通事故の弁護士費用を保険会社が代わりに支払う自動車保険のオプションのこと。家族の保険や火災保険などに付いている特約を使えるケースもあります。

特約だけを使った場合、保険の等級が下がって保険料が上がることは通常ありません。

補償の範囲は保険会社や商品によって異なるため、保険証券を確認するか保険会社に問い合わせてください。

歩いているときや自転車での事故でも、特約が使える場合がありますよ。

無料相談で確認しておきたいことと持参する書類

無料相談は、依頼するかどうかを決めるための情報を集める場として活用しましょう。

初めて弁護士に相談する方は、聞きたいことを事前に整理しておくとスムーズです。

無料相談で確認したいポイント
  • 保険会社の提示額と弁護士基準の差はどのくらいか
  • 後遺障害の等級は適正か、異議申立ての余地はあるか
  • インプラントや将来費用を請求できる見込みはあるか
  • 弁護士費用特約がない場合の費用と、見込める増額幅
相談時に持参したい書類
  • 保険会社からの示談提示書
  • 後遺障害の認定結果の通知書
  • 診断書・後遺障害診断書
  • 治療費の領収書

書類がそろっていると、弁護士も具体的な見通しを伝えやすくなります。相談だけで依頼しない場合は費用がかからない事務所も多いため、気軽に利用してみてください。

聞きたいことをメモにまとめておくと、短い相談時間でも安心ですね。

交通事故で歯を損傷したときによくある質問

最後に、歯の損傷について多く寄せられる質問にお答えします。

ご自身の状況に近い質問から参考にしてください。

歯が1本折れただけでも後遺障害等級は認定されますか?

1〜2本の損傷では、後遺障害等級の対象になりません。

歯の後遺障害で最も低い14級2号でも、3本以上の歯に歯科補綴を加えたことが条件です。

ただし等級が付かなくても、治療費と入通院慰謝料は請求可能。あごの骨折などで噛む・話す機能に障害が残った場合は、別の基準で等級が認定されることもあります。

1本だけのケガでも、治療費や慰謝料はきちんと請求できますよ。

インプラントの治療費は全額補償してもらえますか?

医学的な必要性が認められれば、インプラント費用も補償の対象になります。

ただし、ブリッジで十分に回復できると判断されると、ブリッジ相当額に減額されることがあります。

治療前にインプラントが必要な理由を、歯科医師に書面で残してもらうことが交渉の大きな材料に。将来の交換費用も含めて、示談前に内訳を確認しましょう。

治療方針を決める段階で、担当医に賠償のことも相談しておくと心強いですよ。

後遺障害の申請はいつ・どのように行えばよいですか?

申請は症状固定後に、「事前認定」か「被害者請求」のどちらかで行います。

歯の場合は、補綴治療が終わり口の中の状態が安定した時点が症状固定の目安。

認定が微妙になりやすい歯の後遺障害では、自分で資料を選べる被害者請求が有効です。手続きの詳細は、6章「後遺障害の申請から示談までの流れと注意点」で解説しています。

申請方法に迷ったら、弁護士に相談してから決めても遅くありませんよ。

示談を急かされていますが、すぐに応じてもいいですか?

示談に応じる前に、後遺障害の結果と提示額の内訳を必ず確認してください。

示談が成立すると、原則としてあとから追加の請求はできません。

治療中や症状固定の前に、示談書へ署名する必要はありません。保険会社に急かされても、内容に納得できるまで返事を待ってもらいましょう。

「今すぐ」と言われても、落ち着いて確認する時間をとって大丈夫ですよ。

子どもが交通事故で歯を折った場合、慰謝料の扱いは変わりますか?

子どもの場合は、折れたのが乳歯か永久歯かで扱いが変わります。

後遺障害等級の基準そのものは、大人と子どもで共通です。

ただし乳歯は永久歯への生え替わりが予定されているため、後遺障害として扱われるかはケースごとの判断。生え替わりの見通しについては、歯科医の診断が重要な判断材料になります。

永久歯を損傷した場合は、大人と同じく補綴した本数で等級が判断されるのが基本。成長段階によって治療の時期や方法も変わるため、小児歯科の医師と相談しながら進めましょう。

お子さんのケガは、将来の治療費も見据えて早めに相談しておくと安心ですね。

まとめ:交通事故で歯を損傷したら示談前に提示額を確認しましょう

交通事故による歯の後遺障害は、3本以上の歯に歯科補綴を加えた場合に10級〜14級で認定されます。

この記事のポイント
  • 歯の後遺障害は3本以上の補綴から、10級〜14級の5段階で認定される
  • 1〜2本の損傷でも、治療費と入通院慰謝料は請求できる
  • インプラント費用は、医学的な必要性を書面で示すことが重要
  • 弁護士基準で計算すると、慰謝料が3倍前後になることもある
  • 示談書に署名する前に、等級の結果と提示額の内訳を確認する

保険会社の提示額に疑問を感じたら、示談書に署名する前に弁護士へ相談してみてください。

執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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