交通事故で保険会社に弁護士を紹介されたら|示談交渉はどの弁護士に?

交通事故の示談交渉において、保険会社から顧問弁護士を紹介されるケースがありますが、必ずしもその提案に応じる義務はありません。ご自身の希望に合った、心から信頼できる弁護士を自由に選ぶことが可能です。

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この記事では、保険会社から弁護士を紹介された際の適切な対応方法について解説します。紹介を断っても問題はないのか、ご自身で選んだ弁護士でも弁護士費用特約は使えるのかなど、被害者の方が抱えがちな疑問や不安を解消していきましょう。
執筆・監修者

執筆・監修:豊川祐行

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。 あまた法律事務所へのお問い合わせはこちら

自分で弁護士を選ぶ際のポイント

交通事故の示談交渉を依頼する際は、ご自身の希望や意向をしっかりと汲み取ってくれる弁護士を選ぶことが大切です。ここでは、保険会社の紹介に頼らず、自分で弁護士を探す際の基準について解説します。メディアへの露出が多い有名な弁護士が必ずしもご自身に合うとは限りません。本当に信頼できる弁護士を見極めるための重要なポイントを押さえておきましょう。

きちんと向き合ってくれる弁護士

依頼者一人ひとりに真摯に向き合い、誠実に問題解決に取り組んでくれる姿勢があるかは、弁護士選びにおいて最も重要な要素です。

弁護士も人間である以上、相性の良し悪しは必ず存在します。そのため、人柄や仕事の進め方が自分に合っているかを見極めることが欠かせません。連絡が遅い、進捗報告がないといった対応は論外です。また、専門用語ばかりを使って分かりにくい説明をする弁護士は、依頼者の立場に立っているとは言えません。弁護士への不満や不信感は、示談交渉そのものへの納得感を損なう原因となるため十分注意しましょう。

POINT
弁護士に依頼する際は、まずは実際に直接話を聞いてみて、コミュニケーションが取りやすいか、自分と相性が良いかを確認することが大切です。
いきなり事務所へ足を運ぶのが不安な場合は、電話相談を受け付けている事務所や、ホームページにメール相談フォームが用意されている事務所を選ぶと良いでしょう。

交通事故案件の解決実績が豊富な弁護士

交通事故の示談交渉において納得のいく結果を得るためには、交通事故案件の解決実績が豊富で、この分野を得意としている弁護士に依頼することが不可欠です。損害賠償額にはある程度の目安となる相場が存在するものの、最終的な示談金は交渉の進め方によって大きく変動します。

弁護士にも医師と同じように得意分野があります。とくに交通事故案件は、過去の判例に関する深い理解や高度な医学的知識が求められる専門性の高い分野です。そのため、交通事故解決に特化した弁護士を選ばなければ、本来得られるはずの賠償額を下回る結果になりかねません。

多くの法律事務所は、ホームページ上で所属弁護士の注力分野や過去の解決実績を公開しています。「弁護士資格を持っていれば誰でも同じ」と考えず、確かな実績を持つ専門家を慎重に選びましょう。

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過去の解決実績を見る際は、損害賠償金を実際にどの程度増額できたのか、また、後遺障害等級認定のサポート体制が充実しているかといった点を重点的に確認することをおすすめします。

費用を明確に説明してくれる弁護士

弁護士を選ぶ際は、依頼前に費用体系を分かりやすく明確に説明してくれるかどうかも重要なポイントです。弁護士特約を利用できる場合であっても、費用の問題は多くの方が不安を抱える部分です。

弁護士に依頼する際、もっとも注意すべきなのが「費用倒れ」です。これは、交渉によって損害賠償額が増額したものの、弁護士費用が増額分を上回ってしまい、結果的に手元に残るお金がマイナスになってしまう状況を指します。弁護士費用は事務所ごとに異なり、ホームページの料金表だけではご自身の個別ケースにかかる正確な費用は把握しきれません。

正式に依頼する前に、ご自身のケースではどの程度の費用が見込まれるのか、必ず具体的な見積もりを提示してもらいましょう。良心的な弁護士であれば、費用倒れのリスクがある場合には事前にしっかりと指摘してくれます。

明確な料金体系を提示せず、費用について曖昧な説明しかしない事務所は信頼に欠けます。事前の費用説明が不十分だと、後になって「想定より高額だった」という金銭トラブルに発展しかねません。

POINT
費用の内訳について、どの項目にどれだけの金額がかかるのかを丁寧に説明してくれる弁護士に依頼しましょう。少しでも不明な点や不安なことがあれば、遠慮せずにその場で質問してクリアにしておくことが大切です。

利用者の評判が良い弁護士

過去に交通事故案件を依頼した利用者からの評判が良い弁護士は、質の高いサポートを提供しており、満足のいく結果を得られる可能性が高いと言えます。

法律事務所に対して「敷居が高い」「相談しづらい」といったイメージを持つ方も多いですが、「説明が丁寧で分かりやすかった」「親身に話を聞いてくれた」といった好意的な口コミがあれば、安心して相談できるはずです。もちろん対応の良さだけでなく、実際に賠償金の増額に成功したかなど、確かな結果を出しているかどうかも重要なチェックポイントです。

現在は、口コミサイトやSNS、Googleマップのレビューなどで実際の利用者の生の声を確認できるため、事前に検索して評判を調べてみることをおすすめします。

交通事故で弁護士に依頼するメリット

交通事故の被害に遭われた方が弁護士に依頼すると、加害者側との間で損害賠償額を取り決める「示談交渉」において、以下のような数多くのメリットを享受できます。

メリット1:慰謝料が増額される可能性が高い

弁護士に依頼する最大のメリットは、被害者ご自身で交渉を進める場合に比べて、加害者側に請求できる慰謝料が大幅に増額される可能性が高い点です。

交通事故の慰謝料算定には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」という3つの基準が存在します。このうち、最も高額な慰謝料額となるのが、弁護士に依頼した際に適用される弁護士基準です。

それぞれの基準の違いは以下の通りです。

「自賠責基準」は、すべての車に加入が義務付けられている自賠責保険に基づく算定方法です。あくまで被害者への最低限の補償を目的としているため、3つの基準の中で最も金額が低くなります。

「任意保険基準」は、加害者が加入する任意保険会社が独自に設けている算定基準です。自賠責基準よりは高いと説明されることが多いですが、実際にはわずかに上乗せされる程度で、十分な補償とは言えないケースがほとんどです。

「弁護士基準」は、過去の裁判例に基づいて設定された適正な算定基準であり、3つの基準の中で最も高額な慰謝料を請求できます。「裁判基準」とも呼ばれますが、実際に裁判を起こさなくても、弁護士が代理人として交渉するだけでこの基準を適用させることが可能です。

本来受け取るべき適正な慰謝料を獲得するためには、弁護士基準での請求が不可欠です。この基準を知らずに示談してしまうと、結果的に大きな損をすることになりかねません。

POINT
弁護士基準で算定した場合、自賠責基準と比較して賠償額が2〜3倍に跳ね上がるケースも決して珍しくありません。この弁護士基準による金額こそが、交通事故の被害に遭われた方が受け取るべき「本来の適正な賠償金」と言えます。

メリット2:被害に見合った賠償金を計算してもらえる

弁護士に依頼することで、本来請求できるはずの項目を見落としてしまう「請求漏れ」のリスクを確実に防ぐことができます。

交通事故の被害者が請求できる損害賠償の項目は非常に多岐にわたります。慰謝料ひとつをとっても、ケガの治療期間に応じた「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」、後遺症が残ってしまった場合の「後遺障害慰謝料」、最悪の事態における「死亡慰謝料」など複数存在します。

さらに慰謝料以外にも、事故によるケガで仕事を休んだ減収分を補填する「休業損害」や、後遺障害によって将来得られるはずだった収入が減少したことに対する「後遺障害逸失利益」など、専門知識がなければ見落としがちな重要な賠償項目もあります。

法律の専門知識を持たない一般の方が個人ですべての損害を正確に把握し、漏れなく請求することは非常に困難であり、知らず知らずのうちに損をしてしまう危険性が高いため注意が必要です。

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専門知識を持たずに個人で交渉を進めると、本来受け取れるはずの賠償金を見落とし、結果的に大きく損をしてしまう危険性があります。

加害者側の保険会社は、自社の支出となる支払額をできる限り抑えたいのが本音です。そのため、被害者側の請求に漏れがあったとしても、わざわざ指摘して助けてくれることはまずありません。こうした致命的な請求漏れを防ぐためにも、複雑な賠償金の計算は専門家である弁護士に一任するのが最も確実で安心な方法です。

また、「休業損害」や「入院雑費」といった慰謝料以外の損害項目についても、弁護士が介入することで適切な基準で再計算され、金額がアップするケースが多々あります。交通事故問題に精通した弁護士であれば、あらゆる項目を精査し、賠償金全体の最大化を図ることができます。

メリット3:交渉がストレスなくスムーズに進むようになる

弁護士に交渉を依頼することで、被害者ご自身が直接対応するよりも、圧倒的にスムーズかつ有利に示談交渉を進めることが可能になります。

ご自身で示談交渉を行う場合、相手となるのは交渉のプロである保険会社の担当者です。専門知識と豊富な経験を持つ相手に対し、一般の方が対等に渡り合い、自分の主張を通すことは極めて困難です。よく分からないまま不利な条件で示談書にサインさせられてしまうリスクも否定できません。

また、相手が一般の被害者だと分かると、保険会社の担当者の中には強引な態度に出たり、専門用語を並べ立てたり、対応を後回しにして主導権を握ろうとするケースも見受けられます。ケガの治療で苦しんでいる中、こうした理不尽な対応をされることは、被害者にとって想像以上の精神的苦痛となります。

弁護士に依頼すれば、保険会社との窓口はすべて弁護士になり、ご自身が直接やり取りする精神的負担から完全に解放されます。弁護士が法的な根拠に基づいた毅然とした主張を行うため、保険会社も不誠実な対応ができなくなり、適正な条件での早期解決が実現しやすくなります。

POINT
客観的な証拠と法的な根拠に基づいた主張には強い説得力があります。保険会社は、弁護士が介入することで「交渉が決裂すれば裁判に発展する」というリスクを嫌うため、譲歩を引き出しやすくなります。面倒な交渉をすべて任せることで心理的ストレスがなくなるだけでなく、結果として早期解決に繋がり、適正な示談金をより早く受け取ることができるため、心から納得のいく解決を迎えられるでしょう。

保険会社から弁護士を紹介されるケースとは

交通事故の被害に遭った際、ご自身が加入している保険会社から顧問弁護士を紹介されることがあります。

前述の通り、交通事故の示談交渉において弁護士の介入は被害者にとって非常にメリットが大きいため、弁護士に依頼すること自体は強く推奨されます。しかし、保険会社から特定の弁護士を提案されたとしても、その紹介に必ず応じなければならない義務は一切ありません。ご自身の意思で自由に弁護士を選ぶことができます。

弁護士を紹介してくる2つのケース

保険会社が自社の顧問弁護士を積極的に勧めてくる背景には、主に2つのケースがあります。

1つ目は、被害者が「弁護士費用特約」を利用したいと申し出たケースです。

多くの自動車保険には、弁護士への依頼費用を保険会社が負担してくれる「弁護士費用特約」が付帯しており、被害者にとっては非常に心強い制度です。しかし、この特約の利用を伝えると、保険会社の担当者から「うちの顧問弁護士を紹介しましょうか」と提案されることがよくあります。

その理由は、保険会社側のコストカットにあります。被害者が自分で探した弁護士に依頼した場合、事務所の料金体系によっては保険会社が負担する費用が高額になる可能性があります。

一方で、保険会社が普段から取引をしている顧問弁護士であれば、あらかじめ取り決められた一定の報酬基準(比較的低額な基準)で対応してもらえるため、保険会社の出費を安く抑えることができます。つまり、保険会社は自社の利益を守る目的で、費用が明確かつ安価な顧問弁護士を勧めてくる側面があるのです。

そのため、弁護士特約の利用が見込まれる際には、顧問弁護士を提案してくることになります。

2つ目は、追突事故など被害者に全く過失がない「もらい事故(過失割合ゼロの事故)」のケースです。

被害者にも少しでも過失がある事故であれば、ご自身の保険会社も加害者側へ賠償金を支払う義務が生じるため、当事者の一員として示談交渉を代行してくれます。

しかし、もらい事故のように被害者の過失がゼロの場合、ご自身の保険会社は保険金を支払う義務がないため、法的には「無関係の第三者」という立場になります。

法律(弁護士法第72条)により、利害関係のない第三者が報酬目的で示談交渉の代理をすることは「非弁行為」として厳格に禁止されています。そのため、保険会社の担当者は被害者の代わりに交渉の場に立つことができず、「代わりに交渉してくれる弁護士を紹介します」と提案してくるのです。

保険会社が紹介する弁護士は断っても良い

繰り返しになりますが、保険会社からの弁護士紹介を断っても全く問題ありません。

特約を利用して費用を出してもらう手前、「紹介を断ると気まずい」「保険会社の指定通りにしなければならないのでは」と遠慮してしまう方も多いでしょう。しかし、紹介を断ってご自身で別の弁護士を探したとしても、保険金の支払いが渋られたり、何らかのペナルティを受けたりすることは一切ありません。また、弁護士特約を利用すること自体でノーカウント事故として扱われるため、翌年の保険等級が下がって保険料が上がる心配も不要です。結論として、保険会社の紹介を断るデメリットは存在しません。

さらに、もしすでに保険会社紹介の弁護士に依頼してしまっている場合でも、途中で弁護士を解任し、別の弁護士に変更することは可能です。

「対応が遅い」「自分の味方になってくれない気がする」など、少しでも不満や不信感を持った場合は、我慢せずに早めに別の弁護士への乗り換えを検討しましょう。示談交渉という重要な局面において、信頼できない弁護士に任せ続けてストレスを抱えるのは得策ではありません。

先生
保険会社から特定の弁護士を勧められたとしても、それに従う法的義務はありません。ご自身の納得がいく弁護士を自由に選ぶ権利が被害者には保障されています。

保険会社から紹介された弁護士に依頼しなくていい理由

ここでは、なぜ保険会社から紹介された弁護士を無条件で受け入れるべきではないのか、その具体的な理由について解説します。

「せっかく親切に紹介してくれているのだから」と、深く考えずに依頼してしまう方もいますが、実はそれが被害者にとって不利益に繋がるケースも少なくありません。もちろん、紹介されるすべての弁護士が悪いわけではありませんが、以下の懸念事項を理解した上で、慎重に依頼先を判断することが重要です。

理由①:交通事故の被害者案件に特化していないことがある

保険会社紹介の弁護士に依頼する際のリスクとして、その弁護士が「交通事故の“被害者側”のサポート」に特化していない可能性が挙げられます。

保険会社が紹介してくる顧問弁護士や協力弁護士は、日常的に数多くの交通事故案件を処理しており、示談交渉の経験自体は豊富です。

しかし、保険会社が抱える案件の大部分は「加害者側からの依頼」です。つまり、彼らの主な業務は「いかに被害者への賠償金額を適切に(安く)抑えるか」という加害者側の防衛活動なのです。そのため、実績の大半が加害者案件に偏っている可能性が高く、被害者の利益を最大化するための攻めの交渉ノウハウが不足しているケースがあります。決して被害者側の対応ができないわけではありませんが、被害者救済を本業としている弁護士に比べると、心細さが残るのは否めません。

女性
交通事故の示談交渉を有利に進めるためには、加害者側の弁護活動ではなく、「被害者救済」に特化し、豊富な実績を持つ弁護士を選ぶことが成功の鍵となります。

理由②:弁護士の熱意が高くないことがある

保険会社紹介の弁護士は、案件に対する熱意が低く、被害者が期待するほどの賠償金増額を実現してくれないケースが見受けられます。その主な原因は、弁護士へ支払われる「報酬体系の違い」にあります。

一般的に、被害者が自分で探した弁護士の報酬は、「獲得した賠償金額の〇%(成功報酬)」という形に設定されています。つまり、弁護士の努力で示談金が増額すればするほど、弁護士自身の利益にも直結するため、自ずと交渉への熱意やモチベーションが高まります。

一方、保険会社経由で依頼を受けた顧問弁護士の場合、あらかじめ低い基準で報酬が固定されていることが少なくありません。結果がどうであれ報酬が変わらないのであれば、多大な労力をかけて賠償金を極限まで引き上げようという強いインセンティブが働きにくくなります。保険会社から継続的に案件をもらう手前、機械的でルーチンワークのような対応になってしまう懸念があります。

POINT
もちろんすべての弁護士が報酬額だけで仕事の質を決めているわけではありませんが、努力が正当に評価される仕組みかどうかは、プロとしてのモチベーションに大きく影響する現実があります。事務的に案件を処理しようとする弁護士よりも、被害者の痛みに寄り添い、少しでも有利な結果を引き出すために全力を尽くしてくれる熱意ある弁護士を選ぶべきです。

理由③:被害者の保険を使いたがらないことがある

保険会社紹介の弁護士は、被害者自身が加入している保険の積極的な活用を提案してくれない場合があります。

交通事故の被害に遭った際、加害者側からの賠償金とは別に、被害者ご自身が掛けている自動車保険から補償を受け取れるケースがあります。たとえば、ケガをした場合は「人身傷害保険」や「搭乗者傷害保険」、車の修理には「車両保険」といった特約を活用することで、手厚い補償を受けることが可能です。

しかし、紹介された弁護士は、これらの自社保険の利用を積極的に勧めない傾向があります。「被害者のための弁護士なのに?」と疑問に思うかもしれませんが、弁護士を紹介してくれた保険会社からすれば、自社の保険金支払いが増えれば増えるほど自社の利益が減ることになります。弁護士が保険会社の顔色をうかがい、被害者が本来使えるはずの有利な保険制度を適切に案内してくれない可能性がある点は大きなデメリットです。

先生
弁護士は自分に仕事を紹介してくれる保険会社の懐事情を忖度してしまうため、被害者にとって有利な保険の活用方法について、あえて深く踏み込んだ提案を避ける傾向があるのです。

理由④:後遺障害の認定で力を貸してもらえないことがある

保険会社紹介の弁護士に依頼した場合、適切な賠償金獲得の要となる「後遺障害等級認定」のサポートを十分に受けられないリスクがあります。

保険会社経由の案件では、弁護士が介入するタイミングが「治療が完全に終了し、後遺障害の等級も決まった後の示談交渉の段階」に限定されているケースが少なくありません。そのため、治療中の適切な通院アドバイスや、最も重要な後遺障害の申請手続きそのものを手伝ってもらえないことが多いのです。

しかし実際には、適正な後遺障害等級を獲得するためには、医師の診断書の書き方や必要な検査など、申請前から弁護士の専門的なサポートを受けることが極めて重要です。

認定される等級が1つ違うだけで、後遺障害慰謝料や逸失利益の金額は数十万円から数百万円規模で変動します。この最も肝心な申請段階で弁護士の力を借りられないのは、被害者にとって致命的なデメリットと言わざるを得ません。

 後遺障害認定で適正な結果を得るためには、事故直後や治療中の早い段階から、被害者サポートに注力している弁護士へ相談し、通院や検査に関する適切なアドバイスを受けておくことが不可欠です。

顧問弁護士ではないほうがサポートしてもらいやすい

総合的に見て、保険会社のしがらみがない独立した弁護士にご自身で依頼したほうが、はるかに手厚く親身なサポートを受けられる確率は高くなります。

保険会社の紹介案件はどうしても「効率的な処理」が優先されがちで、手間のかかる手続きや個別事情に配慮した臨機応変な対応を嫌がる傾向が見受けられます。被害者の悩みや不安に寄り添えないのであれば、わざわざ弁護士を立てる意味が半減してしまいます。

被害者救済に強い弁護士を自分で選べば、事故直後の治療段階から最終的な賠償金受け取りまで、一貫して手厚いサポートを受けられます。保険会社との交渉はもちろん、必要に応じて主治医との面談や医療照会まで行ってくれるため、高次脳機能障害やむち打ちなど、立証が難しい後遺障害案件であっても適正な結果へと導いてくれるでしょう。

弁護士費用特約はどの弁護士でも使える

結論から言うと、保険会社の紹介を断って自分で選んだ弁護士に依頼しても、弁護士費用特約は全く問題なく利用できます。

「紹介を断ったら、特約を使わせてもらえないのではないか」と不安に思う方もいるかもしれませんが、そのような心配は無用です。弁護士特約は、被害者が自身の権利を守るために自由に弁護士を選ぶための制度であり、依頼先を制限するものではありません。事故直後の相談から最終的な示談成立まで、幅広い期間の弁護士費用をカバーしてくれます。

保険会社の紹介がなくても弁護士特約は使える

ご自身で探した弁護士であっても、弁護士費用特約の恩恵は完全に受けられます。

この特約を利用すれば、一般的に被害者1名につき法律相談料として10万円まで、着手金や報酬金などの弁護士費用として最大300万円までを保険会社が負担してくれます。大半の交通事故案件はこの上限枠内で収まるため、被害者は費用倒れのリスクを恐れることなく、費用の自己負担実質ゼロで優秀な弁護士に依頼できるという絶大なメリットがあります。

弁護士特約が使えないのは間違い

ごく稀に、保険会社の担当者から「うちが指定する弁護士以外では特約は使えません」といった案内をされるケースがありますが、これは明確な誤りです。担当者の知識不足か、あるいは自社の支出を抑えたいがための不誠実な誘導である可能性が高いです。

万が一、「指定弁護士以外は不可」と言われた場合は、遠慮せずに「保険約款のどの条項にそのような規定があるのか明示してください」と強気に説明を求めてください。

弁護士特約の利用先が保険会社の指定弁護士に限定されることはありません。「自分で探した弁護士で特約を使います」と毅然と主張して全く問題ありません。

また、保険会社から「その弁護士はLAC(ラック)基準に同意していないので特約は使えません」と言われることもあります。

LAC(日弁連リーガル・アクセス・センター)基準とは、保険会社と弁護士会との間で取り決められた弁護士費用の目安となる報酬基準のことです。一部の法律事務所ではこのLAC基準ではなく独自の報酬体系を採用しており、保険会社としては想定以上の費用負担を嫌がるため、難色を示すことがあります。

しかし、独自基準の弁護士であっても特約が使えなくなるわけではありません。LAC基準で算出された金額までは保険会社から特約として支払われ、もしそれを超過する部分があれば、その差額のみを被害者が自己負担することで、ご希望の弁護士に依頼することが可能です(ただし、実際には多くの事務所が弁護士特約利用時の費用上限を考慮して柔軟に対応してくれます)。

女性
保険会社の担当者から複雑な約款の説明を受け、うまく丸め込まれそうになったり疑問を感じたりした場合は、言われるがままにせず、まずはご自身で見つけた外部の弁護士の無料相談を利用してアドバイスを求めてみてください。

弁護士特約が使えないケースもある

ただし、事故の性質によっては、そもそも弁護士費用特約自体が適用されないケースも存在します。

たとえば、被害者側に「故意または著しい重過失」がある場合です。飲酒運転、無免許運転、悪質なあおり運転などに起因する事故では、約款の免責事由に該当するため特約は利用できません。

また、台風などの自然災害による損害(加害者がいない場合)、自転車同士の事故など自動車が一切関与していない事故、仕事中・通勤中の事故(労災が優先される場合など)についても、特約の補償対象外となるのが一般的です。

これらのケースに該当する場合は、保険会社から特約の利用を断られても規定上やむを得ないと言えます。ご自身の事故が対象になるかどうかは、あらかじめ保険証券や約款を確認しておきましょう。

弁護士は自分で選んでも構わない

交通事故に遭い、保険会社から顧問弁護士を紹介されたとしても、それに従う義務は一切ありません。

ご自身で探し出した弁護士に依頼する場合でも、弁護士費用特約はしっかり利用できます。保険会社の紹介する弁護士に安易に任せてしまうと、被害者側の交渉に不慣れであったり、熱意が低く賠償金が適正額まで増額されなかったりといった不利益を被るリスクがあります。そのため、被害者救済に本気で取り組んでくれる弁護士を自ら選ぶことを強くおすすめします。

交通事故の賠償金は、今後の治療費や当面の生活を支えるための非常に大切なお金です。保険会社のペースに巻き込まれることなく、交通事故問題に精通し、心から信頼できる専門家をパートナーに選びましょう。

まずは無料相談からはじめましょう

信頼できる弁護士を見つける第一歩として、多くの法律事務所が実施している無料の法律相談を積極的に活用しましょう。ホームページの実績や口コミも参考にはなりますが、弁護士とのフィーリングや熱意は、実際に直接話してみなければ分からない部分が大きいからです。

実際にコミュニケーションを取る中で、説明の分かりやすさや親身な態度を感じ取り、「この人になら安心して任せられる」と思える弁護士を探してみてください。

ただし、無料相談は「初回30分無料」「60分無料」など時間が限られていることがほとんどです。有意義な時間にするためにも、事前に相談の制限時間を確認した上で、事故の状況や聞きたい質問事項を箇条書きでメモにまとめてから相談に臨むとスムーズです。

執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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