「肋骨は折れても自然にくっつくと言われたのに、いまも痛みが取れない」
「肋骨骨折で後遺障害は認めてもらえるのだろうか」
交通事故による肋骨骨折は、骨が癒合した後も痛みや可動域制限、呼吸時の違和感が残存するケースがあり、症状固定後に後遺障害として認定される可能性があります。
- 認定等級は変形障害・神経症状など複数の類型に分かれており、それぞれ認定条件が異なる
- 慰謝料の金額は「自賠責基準」「弁護士基準」で大きく異なり、等級によって数十万〜数百万円の差が生じる
- 申請方法(被害者請求 or 事前認定)の選択が、認定結果に影響する
治療中の段階から記録・通院状況・画像所見を適切に管理できているか。それが後遺障害認定の可否を左右する分かれ目です。
一つずつ丁寧に解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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この記事の目次
交通事故による肋骨骨折と後遺障害の基本
交通事故で肋骨を骨折した後、痛みや違和感がいつまでも続いているなら、後遺障害として認定される可能性があります。
- 後遺障害とは「症状固定後も残る機能障害・神経症状」のことで、肋骨骨折も対象になりえる
- 症状固定の時期は、肋骨骨折の場合おおむね受傷後3〜6か月前後が目安とされている
- 残りやすい後遺症は「変形・痛み・呼吸機能の低下」の3種類に大別される
- 画像所見が乏しいケースや、骨折本数が少ないケースでは認定が難しくなる
後遺障害の有無は、治療費・慰謝料・逸失利益のすべてに影響します。保険会社から示談の話が出る前に、基本的な知識を押さえておきましょう。
ここでは、認定される条件・症状固定の時期・残りやすい後遺症の種類・認定が難しいケースを順に解説します。
後遺障害として認定される条件
後遺障害として認定されるには、治療を続けても症状がこれ以上改善しない状態(症状固定)になった後も、認定基準に該当する程度の障害が残っていることが前提。
- 症状固定の診断が医師によって行われていること
- 残存する症状が交通事故との因果関係を医学的に説明できること
- 自賠責保険の等級認定基準に該当する程度の障害であること
この3点をすべて満たして初めて、後遺障害等級の申請が可能になります。後遺障害は、自賠責保険の基準において第1級から第14級までの14段階で評価されます。
肋骨骨折が関係するのは主に「変形障害」「神経症状」「呼吸機能障害」の3領域。おおまかな目安として、変形障害は12級前後、神経症状は12級または14級、呼吸機能障害は症状の程度に応じて複数の等級が対応するとされています。
万一「非該当」と判断されても、異議申立という手続きで再審査を求められます。

症状固定とはどういう状態か(肋骨骨折の場合の時期の目安)
症状固定とは、これ以上治療を続けても症状の改善が見込めない状態を指し、医師が判断するものです。肋骨骨折では、受傷後おおむね3〜6か月前後が症状固定の時期の目安です。
ただし、この時期はあくまで目安。骨折の本数・程度・合併症の有無によって変わります。
- 複数本の肋骨を骨折していた場合
- 気胸・血胸などを合併していた場合
症状固定の時期は、慰謝料計算の終期にも直結します。
症状固定の判断は、保険会社ではなく主治医が医学的見地から行うもの。

肋骨骨折で残りやすい後遺症の種類
肋骨骨折後に残りやすい後遺症は、大きく3種類に分けられます。それぞれ認定される等級の根拠が異なるため、自分の症状がどの類型に近いかを把握しておきましょう。
「痛みがある」という訴えだけでなく、診療録への記録の積み重ねが重要になります。
呼吸が苦しい・息切れしやすいといった自覚症状がある場合は、主治医に検査を依頼してみてください。

認定が難しいケースの特徴
肋骨骨折であっても、後遺障害の認定が難しくなるケースがあります。事前に把握しておくことで、対策を講じやすいでしょう。
- 骨折本数が少なく、骨折が完全に癒合しているケース……変形障害や呼吸機能障害の主張が難しく、残るのは神経症状のみとなって等級も限られる
- 画像所見が乏しいケース……初期X線で確認できなかった場合など、受傷との因果関係を説明する資料が不足しやすい
- 通院頻度が低いケース……症状があるにもかかわらず通院が途切れがちだと、「症状が軽微だった」と判断される材料になりえる
症状が続いている間は定期的に受診し、診療録に記録を残しておくことが有効な対策。
なお、後遺障害の申請方法には、保険会社が手続きを代行する「事前認定」と、被害者自身が自賠責保険へ直接申請する「被害者請求」の2つがあります。被害者請求は手続きの手間がかかる一方、提出する資料を自分で選別・追加できるため、認定に有利な書類を揃えやすいとされています。
次は、肋骨骨折で実際に認定される後遺障害等級の種類と、それぞれの認定条件を詳しく見ていきましょう。

肋骨骨折で認定される後遺障害等級と認定条件
交通事故による肋骨骨折では、症状の種類によって認定される後遺障害等級が異なります。
- 骨がゆがんだまま癒合した「変形障害」は12級5号または14級9号が対象
- 痛みや神経症状が残った場合は12級13号または14級9号が対象
- 肺機能の低下など「呼吸機能障害」が残った場合は別の等級体系が適用される
- 骨折した本数・部位・複数障害の有無によって等級が変わる
自分の症状がどの等級に当てはまるかを知らないまま示談交渉に入ると、適切な補償を受けられないリスクがあります。認定条件を正確に把握しておくことが、交渉を有利に進める前提。
ここでは、症状のタイプ別に等級と認定条件を整理します。慰謝料・逸失利益の目安は後半で、非該当だった場合の対処法もこの記事内で解説します。
変形障害(骨がゆがんで癒合した場合)の等級と条件
肋骨骨折が変形したまま癒合した場合、後遺障害として「変形障害」が認定される可能性があります。認定の可否は、変形が外から確認できるか、画像所見で裏付けられるかが鍵。
- 12級5号……鎖骨・肋骨・胸骨などに著しい変形が残り、裸体になったときに外観上明らかに認められるもの
- 14級9号……変形はあるものの、外観上明確には確認できず、局部に神経症状が残るもの
12級5号の認定を受けるには、「裸体で確認できる程度の変形」という条件を満たす必要があります。レントゲン上で変形が写っているだけでは不十分で、外観上の変形が客観的に確認できることが条件。
医師による診察記録と画像診断の両方が、証拠として重要になります。変形が軽微だったり、衣服を着た状態でしか確認できない場合は、14級9号の対象になることが多いでしょう。

痛みや神経症状が残った場合の等級(12級・14級)
骨折部位の痛みや違和感が治療終了後も残る場合、神経症状として後遺障害が認定される可能性があります。認定等級は、症状の証明可能性によって12級13号と14級9号の2段階に分かれます。
- 12級13号……神経症状が医学的に証明できるもの(画像・検査所見で客観的に裏付けられる)
- 14級9号……神経症状が医学的に説明できるもの(客観的証明は困難だが、症状の存在が合理的に説明できる)
2つの等級の差は、「証明できる」か「説明できる」かという点。12級13号は、MRIやCT画像、神経伝導速度検査などの客観的な検査結果が症状の根拠として機能する場合に認定されます。
一方の14級9号は、画像上に明確な所見がなくても、事故の態様や受傷の経緯から症状の存在が合理的に説明できると判断された場合に認定されるもの。肋骨骨折後の痛みは骨折部位の神経損傷や骨膜へのダメージが原因となることが多く、画像に写らない痛みでも14級9号の対象となりえます。
- 月に一定回数以上の通院を継続する
- 毎回の診察で痛みや違和感を医師に伝える
- カルテに記録されている状態を維持する

呼吸機能障害が残った場合の等級
肋骨骨折が重篤な場合、骨折によって肺や胸郭が圧迫・損傷し、呼吸機能に障害が残ることがあります。この場合に適用されるのは、胸部臓器の機能障害という別の等級体系。
呼吸機能障害の等級は、スパイロメトリー(呼吸機能検査)で計測される肺活量比や1秒率などの数値をもとに、低下の程度に応じて設定されています。
| 等級 | 認定される状態 |
|---|---|
| 3級3号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
| 5級3号 | 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外に服することができないもの |
| 7級5号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外に服することができないもの |
| 9級11号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当程度制限されるもの |
| 11級10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
| 13級3号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
肋骨骨折だけでなく、血胸・気胸・肺挫傷などを併発した場合に呼吸機能障害が残りやすい傾向。入院中の治療記録や検査データは、確実に保存しておいてください。

骨折本数・部位と等級の関係
肋骨骨折の後遺障害認定では、何本骨折したか・どの部位かという情報も評価に影響します。ただし骨折本数そのものが直接等級を決めるわけではなく、判断の基準になるのは「残存する症状の種類と程度」。
骨折本数が多いほど変形障害や神経症状が複数箇所に及ぶ可能性が高くなり、複数の後遺障害として申請できる場合があります。複数申請が認められる前提は、それぞれの症状が独立して存在し、部位や原因を区別できることです。
また胸骨(前面の骨)や多発肋骨骨折(フレイルチェスト)の場合は、胸郭の安定性が失われ呼吸機能への影響が出やすいため、呼吸機能障害の等級申請も視野に入れましょう。

複数の障害がある場合の併合について
肋骨骨折では、変形障害・神経症状・呼吸機能障害が同時に残るケースがあります。複数の後遺障害が認定された場合は、「併合」によって最終的な等級が決まる仕組みです。
- 同じ等級の障害が2つある場合……1段階繰り上げ
- 同じ等級の障害が3つ以上ある場合……2段階繰り上げ
- 異なる等級の障害がある場合……上位等級を基準に一定のルールで調整
たとえば変形障害で12級5号、神経症状で14級9号が認定された場合、併合等級は上位等級が適用されて12級。神経症状の14級9号が2つ認定された場合は、1段階繰り上がり13級相当となります。
複数の症状が残っている場合は、それぞれの症状を別個に記録・申請しておきましょう。
等級と認定条件の全体像がつかめたところで、次は認定を確実に受けるために治療中から何をすべきかを見ていきます。

後遺障害認定のために治療中から意識すること
後遺障害認定の結果は、治療が終わった後ではなく、治療中の行動によって大きく左右されます。
- 通院・検査の記録を途切れなく残しておくことが審査の土台になる
- 医師に症状を正確に伝えないと、診断書に記載されない情報が生まれる
- 審査機関は「客観的な証拠」を重視するため、主観的な痛みの訴えだけでは不十分
- 治療の中断は「症状が回復した」とみなされるリスクがある
認定を受けられるかどうかは、症状の重さだけでなく、それを証明できる記録があるかどうかで決まります。治療中の今が、最も重要な準備期間。
すでに数ヶ月が経過している場合でも、今から記録を整え直すことで準備の精度を高められます。
ここでは、認定率を下げないために治療中から実践できる4つの観点を解説します。
通院・検査の記録を継続することの重要性
後遺障害の審査では、症状が継続していたことを客観的に示す記録が不可欠です。通院歴や検査結果の積み重ねが、「症状が事故に起因している」という主張を支える根拠になります。
審査機関が確認するのは診断書だけではありません。通院の頻度・期間・実施された検査の種類など、一連の医療記録全体を通じて症状の継続性と重症度が判断されます。
- 定期的に通院し、受診の間隔が極端に空かないようにする
- 痛みや違和感が残っている間は、医師に検査(X線・CT・MRIなど)を依頼する
- 毎回の受診で症状の変化を医師に報告し、カルテに記録されるようにする
肋骨骨折の後遺障害では、変形癒合や神経症状の有無が判断の焦点。これらは画像検査や神経学的検査によって初めて客観的に確認できるものです。

医師への症状の伝え方と診断書の内容
後遺障害の審査で使われる後遺障害診断書は、医師が記載します。ただし医師が書けるのは、患者から伝えられた情報と検査結果の範囲に限られます。
患者が症状を正確に伝えなければ、実態に合わない診断書が作成されかねません。
- どの部位に、どのような痛み・違和感があるか(「なんとなく痛い」ではなく「深呼吸のたびに右側胸部が締め付けられるように痛む」など具体的に)
- 日常生活のどの動作で症状が出るか(咳、くしゃみ、寝返り、重いものを持つなど)
- 症状が改善しているのか、変わらないのか、悪化しているのかという変化
後遺障害診断書の作成は、医師が「症状固定」と判断した後に依頼するもの。その時点で残っている症状をもとに診断書が作成されます。
症状固定の前から「後遺障害の申請を検討している」と医師に伝えておくと、必要な検査や記録の準備がスムーズになります。

審査機関が何を判断材料にしているか
後遺障害の審査を行う損害保険料率算出機構は、書面審査を基本としています。提出された書類・記録だけをもとに等級を判断するため、審査担当者が直接患者を診察することはありません。
- 後遺障害診断書(症状・検査結果・医師の見解が記載されたもの)
- 画像検査の結果(X線・CT・MRIなど)
- 事故直後からの通院記録・治療経過
- 症状固定までの治療内容と期間
肋骨骨折で多い「変形癒合」の認定には、変形の程度が画像で確認できることが前提。「神経症状」が残っている場合は、事故直後から症状固定時まで一貫して同じ部位・同じ性質の症状が記録されているかが確認されます。
こうした矛盾が記録に残らないよう、毎回の受診で正確に症状を伝えてください。
審査が見るのは「患者が実際に苦しんでいるか」ではなく、「その苦しみが記録によって証明されているか」という一点です。

治療を中断してはいけない理由
治療の中断は、後遺障害認定において大きなリスクになります。自己判断で通院をやめると「症状が回復した」と判断され、後から申請しても等級が認められにくくなるおそれも。
まだ症状が残っている段階で治療を打ち切ると、後遺障害として認定されるべき状態が記録されないまま終わってしまいます。
このような連絡を受けたら、まず担当医に現在の状態を正直に伝え、「症状固定かどうか」の判断を医師に委ねてください。医師が「まだ治療が必要」と判断している間は、治療を継続する権利があります。
治療中の行動が結果を左右するからこそ、次は症状固定後に申請を進める具体的な手順を確認しておきましょう。

後遺障害認定の申請手続きの流れ
後遺障害の認定を受けるには、治療の終了後に定められた手順で申請を進める必要があります。
- 申請方法は「事前認定」と「被害者請求」の2種類があり、どちらを選ぶかで結果に差が出ることがある
- 申請書類には画像検査の資料が含まれ、その内容が審査の精度を左右する
- 申請から結果が出るまでには、おおむね数週間から数ヶ月程度かかる
手続きの全体像を把握しておけば、書類の不備や準備不足による不認定リスクを下げられるはず。
ここでは、申請方法の選び方・必要書類・審査期間の3点を順に解説します。
事前認定と被害者請求の違いと選び方
申請方法には「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。どちらが有利かは状況によって異なりますが、被害者自身がコントロールできる範囲は被害者請求のほうが広いもの。
| 申請方法 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 事前認定 | 保険会社が書類をまとめて提出。手間が少ない | 書類管理の負担を減らしたい場合 |
| 被害者請求 | 被害者が直接提出。提出内容を自分で管理できる | CT画像など有利な資料を確実に含めたい場合 |
事前認定は、相手方の任意保険会社が書類をまとめて損害保険料率算出機構(以下、機構)に提出する方法です。被害者の手間が少ない一方、どの書類を提出するかを保険会社が主導するため、被害者にとって有利な資料が漏れる可能性があります。
被害者請求は、被害者自身が相手方の自賠責保険会社を通じて機構へ書類を提出する方法。提出書類を自分で選定・管理できるため、CT画像や医師の詳細な診断書など、認定に有利な資料を確実に含められます。

申請に必要な書類と画像検査のポイント
申請書類は複数にわたり、なかでも後遺障害診断書とCT・レントゲン画像が審査の中心。書類の内容が不十分だと、実態に即した等級が認定されないリスクがあります。
- 後遺障害診断書(医師作成)
- 診断書・診療報酬明細書(治療全期間分)
- CT画像・レントゲン画像(フィルムまたはCD-ROM)
- 交通事故証明書
- 印鑑証明書・委任状(被害者請求の場合)
このうち後遺障害診断書は、最も重要な書類。「変形の程度」「癒合状態」「痛みの残存」などが具体的に記載されているかどうかが、審査の精度を左右します。
後遺障害診断書を作成してもらう際は、医師に対して具体的な記載を依頼してください。
- 変形の角度やミリ単位での計測値
- 局所の神経症状の有無と部位
- 骨癒合が得られているかどうかの明記
後遺障害申請に特化した記載形式に不慣れな医師もいるため、必要に応じて弁護士に書き方の確認を依頼するのも現実的な対応です。

申請から結果が出るまでの期間の目安
申請書類が受理されてから認定結果が通知されるまでの期間は、おおむね1〜3ヶ月程度が目安。ただし症状や書類の内容によっては、機構から追加資料の提出を求められ、さらに時間がかかる場合があります。
認定結果の通知から示談交渉・支払いまでを含めると、全体で数ヶ月単位の期間を見込んでおきましょう。
- 提出書類に不備や不足がある場合は、補完を求められ期間が延びる
- 症状が複数部位にわたる場合や、等級の判定が難しいケースでは審査が長期化しやすい
- 被害者請求のほうが事前認定より提出書類の管理がしやすく、不備による遅延を防ぎやすい
認定結果に不服がある場合は、異議申立てを行えます。1回目の審査で非該当または低い等級だったとしても、追加の画像資料や医師の意見書を添付して再審査を求めることで、等級が変更されるケースもあります。
認定結果の通知が届いたら、内容をそのまま受け入れる前に、等級が妥当かどうかを弁護士に確認してみてください。

後遺障害等級別の慰謝料と賠償金の目安
後遺障害が認定された場合、受け取れる賠償金の額は「どの基準を使うか」「何級に認定されるか」によって大きく変わります。
- 賠償金の計算基準は「自賠責基準」と「弁護士基準」の2種類がある
- 等級が1段階変わるだけで、慰謝料の金額は数十万円単位で異なる
- 慰謝料とは別に「逸失利益」も請求できる
- 保険会社の最初の提示額は、必ずしも最大額ではない
肋骨骨折の後遺障害で受け取れる金額の相場を事前に知っておくことは、示談交渉で不利にならないための重要な準備。
ここでは、基準ごとの慰謝料の違い・等級別の金額目安・逸失利益の考え方・示談提示額の注意点を順に解説します。
自賠責基準と弁護士基準の違い
賠償金の計算には複数の基準があり、どの基準を使うかによって受け取れる金額が大きく変わります。
- 自賠責基準……自賠責保険が定める最低限の補償額。法律上の下限として機能する
- 弁護士基準(裁判基準)……裁判所の判決や弁護士会が積み上げてきた実務基準。自賠責基準より高額になることが多い
自賠責基準は被害者救済のための「最低ライン」として設定されているため、実際の損害や苦痛を十分に補填できないケースが少なくありません。一方の弁護士基準は過去の裁判例をもとに算出されるため、より実態に即した金額になります。
保険会社が任意で提示してくる示談額は、自賠責基準か、それに近い任意保険基準で計算されていることが多いもの。
弁護士が交渉に介入することで、弁護士基準への引き上げが現実的な選択肢になります。ただし個別の事情によって結果は異なるため、必ず増額されるとは限りません。

等級別の後遺障害慰謝料の金額一覧
後遺障害慰謝料は、認定された等級に応じて金額の目安が定められています。肋骨骨折で認定される可能性がある等級を中心に、自賠責基準と弁護士基準の目安を整理しました。
| 等級 | 自賠責基準(目安) | 弁護士基準(目安) |
|---|---|---|
| 12級 | 約94万円前後 | 約290万円前後 |
| 14級 | 約32万円前後 | 約110万円前後 |
肋骨骨折の後遺障害では、12級または14級に認定されるケースが中心。骨の変形が残った場合は12級13号、痛みや神経症状が残った場合は14級9号が該当しやすい等級です。
自賠責基準と弁護士基準の差は、12級・14級ともに約3倍前後。この差が、弁護士に依頼するかどうかの判断に直結します。

逸失利益の考え方(計算の目安と注意点)
後遺障害が残ると将来にわたって労働能力が低下するとみなされ、その分の収入損失を「逸失利益」として請求できます。慰謝料とは別に計算されるため、賠償総額に大きく影響するでしょう。
労働能力喪失率は等級ごとに定められており、12級では約14%前後、14級では約5%前後が目安。就労可能年数は原則として67歳までとされることが多く、事故時の年齢が若いほど係数が大きくなるため、逸失利益の総額も高くなります。
こうした主張に対抗するには、症状が仕事に与えた具体的な影響を記録しておくことが重要。重いものが持てない・長時間の作業が困難・特定の動作で痛みが出るといった事実を、医師の診断書や職場の証明書で補強してください。

保険会社の示談提示額を鵜呑みにしてはいけない理由
保険会社から届く示談書の金額は、被害者にとっての「受け取り額の上限」ではありません。交渉次第で増額できる余地がある場合が多く、署名・捺印する前に内訳を確認することが不可欠です。
- 自賠責基準または任意保険基準で計算されているため、弁護士基準より低い
- 逸失利益が過小評価されているか、そもそも含まれていない場合がある
- 慰謝料の算定期間(症状固定までの期間)が短く設定されていることがある
弁護士費用特約(弁護士費用を保険会社が負担する特約)が自動車保険に付帯していれば、実質的な自己負担なしで弁護士に交渉を依頼できます。まず自分の保険証券を確認し、特約の有無を調べてみてください。
特約が付いていなかった場合でも、多くの弁護士事務所が成功報酬型の費用体系を採用しており、示談成立時に増額分の一定割合を報酬として支払う形式が一般的。着手時の自己負担を抑えながら依頼できるため、特約がないことを理由に相談をためらう必要はありません。

後遺障害が非該当になったときの対処法
後遺障害の認定結果が「非該当」だったとしても、それが最終的な結論とは限りません。
- 非該当になりやすいケースには一定のパターンがある
- 異議申立という手続きで再審査を求めることができる
- 新たな医学的証拠を追加することで結果が覆るケースがある
- 弁護士のサポートがあると異議申立の精度が上がる
非該当通知を受け取った段階で諦めてしまう方は少なくありませんが、異議申立の手続きを経て等級が認定された事例は実際に存在します。なぜ非該当になったのか原因を把握し、どう対処するかを知っておきましょう。
ここでは、非該当になりやすい原因・異議申立の進め方・結果が変わったケースの特徴を順に解説します。
非該当になりやすいケースとその原因
非該当の通知が届いた場合、多くのケースでは「医学的な証拠が不十分」と判断されています。原因を特定しないまま再申請しても同じ結果になる可能性が高いため、まず原因の把握が先決。
- 画像所見(レントゲン・CT)で骨変形や変位が確認できない
- 症状の記録が診断書に十分に反映されていない
- 治療期間が短く、症状固定の判断が早すぎた
- 「変形」の程度が認定基準に達していないと判断された
肋骨骨折の後遺障害認定では、変形が「裸眼で明らかに確認できるレベル」かどうかが一つの判断軸になります。骨折が治癒していても骨が変形した状態で癒合していれば変形障害として認定される可能性がありますが、画像上で変形が明確に映っていなければ証拠として機能しません。
診断書の記載内容が審査結果に直結する点は、多くの被害者が見落としがちなポイントです。

異議申立の手続きと成功のポイント
異議申立とは、損害保険料率算出機構に対して非該当の判断を再審査するよう求める手続きです。回数に制限はなく、新たな証拠を添付して何度でも申立を行えます。
- STEP1:異議申立書を作成する
- STEP2:追加の医学的証拠(CT画像・医師意見書など)を収集する
- STEP3:損害保険料率算出機構へ提出する
審査にかかる期間はケースによって異なりますが、数ヶ月程度を要するのが一般的。保険会社から示談を急かされていても、異議申立の手続き中は示談に応じる必要がなく、結果が出るまで待てます。
単に「納得できない」という主張だけでは、再審査の結果は変わりません。成功のポイントは、前回の審査で不足していた証拠を補完することにあります。

再申請で結果が変わった事例
異議申立によって非該当から等級が認定されるケースは、実際に存在します。結果が変わりやすいのは初回申請時に証拠が不十分だったケースで、新たな画像所見や具体的な医師意見書の追加によって判断が変わるパターンが多いもの。
- 初回申請時はレントゲンのみで、CT撮影後に骨変形が明確になったケース
- 診断書に「症状固定後も疼痛継続」という記載が追加されたケース
- 主治医の意見書で、変形が視診でも確認できると明記されたケース
- 弁護士が医師と連携して、後遺障害診断書の記載内容を整理したケース
特に初回申請を被害者本人が行い、診断書の内容が不十分だったケースでは、交通事故案件を扱う弁護士が介入して証拠を整理し直した結果、等級が認定されたと報告されることがあります。
非該当通知はあくまで「現時点での証拠に基づく判断」。証拠が変われば、判断も変わる可能性があります。
諦める前に、まず非該当になった原因を弁護士に確認してもらってください。

弁護士に相談・依頼することで変わること
交通事故の後遺障害請求では、弁護士に依頼するかどうかで受け取れる金額や認定結果が大きく変わるケースがあります。
前提として、肋骨骨折で後遺障害が認定される主なケースは「変形癒合(骨が変形したまま癒合した状態)」と「神経症状(痛みや違和感が残存する状態)」の2種類。変形癒合は外見上の変形が確認できれば12級5号、神経症状は画像所見と症状の整合性が認められれば14級9号、それ以上の症状であれば12級13号が認定される可能性があります。
- 弁護士基準(裁判基準)を適用することで、保険会社提示額から慰謝料が数倍規模になる場合がある
- 後遺障害の申請手順・資料準備を適切にサポートしてもらうことで、申請内容の正確性と有利な証拠の網羅性が高まる
- 弁護士費用特約が使えれば、実質的な自己負担なしで依頼できるケースが多い
保険会社との交渉を自分ひとりで進めると、提示された金額が適正かどうかを判断する材料がなく、そのまま示談してしまいかねません。
ここでは、弁護士に依頼した場合に何がどう変わるのかを具体的に解説します。
弁護士基準で慰謝料が増額した解決事例
保険会社が最初に提示する慰謝料は、自社の算定基準(任意保険基準)に基づいています。この金額は、裁判所が認める弁護士基準(裁判基準)と比べると大幅に低いのが一般的。
肋骨骨折の後遺障害(12級・14級)に限定した場合でも、弁護士基準と任意保険基準では後遺障害慰謝料の差が数十万円単位になることが多く、等級が高いほどその差は広がります。
- 保険会社の提示額に対して、弁護士交渉後に2倍前後の金額で解決したケース
- 逸失利益の計算方法を見直すことで、示談金全体が大幅に増額されたケース
- 後遺障害等級が上がったことで、慰謝料の算定基準そのものが変わったケース
弁護士に依頼する際の費用(着手金・成功報酬)を差し引いても手元に残る金額が増えることが多いのは、この基準の差によるもの。
保険会社の提示額を受け取る前に、一度弁護士に金額の妥当性を確認してもらいましょう。

後遺障害申請サポートで認定率が上がる理由
後遺障害の認定は、提出する書類の内容と医学的根拠の整合性によって結果が左右されます。弁護士が申請をサポートする場合、単に書類を代わりに提出するだけではありません。
- 後遺障害診断書の記載内容に漏れや不備がないか事前に確認できる
- 画像所見(レントゲン・CT)と症状の整合性を整理した上で申請できる
- 被害者請求(自分で申請する方法)を選択することで、有利な資料を能動的に揃えられる
肋骨骨折の後遺障害は変形や神経症状の証明が難しく、主治医が「後遺障害に詳しくない」場合には診断書の記載が不十分になることもあります。弁護士は、こうした医療面の課題についても対応策を一緒に検討してくれます。
また保険会社に申請を任せる「事前認定」では、保険会社が資料を選んで提出するため、被害者にとって有利な情報が十分に伝わらないリスクも。弁護士に依頼して被害者請求を選択すれば、申請資料の内容を自分でコントロールできます。

弁護士費用特約を使える場合の費用負担
特約の有無は、加入している自動車保険の保険証券または契約確認書の「特約一覧」欄で確認できます。「弁護士費用特約」「弁護士費用等補償特約」などの名称で記載されているのが一般的。
保険証券が手元にない場合は、保険会社のマイページや電話での問い合わせでも確認できます。
- 自分の保険だけでなく、同居している家族の自動車保険の特約が使えることもある
- 自転車乗車中や歩行中の事故でも適用できる場合があるため、契約内容を確認する価値がある
後遺障害の認定・慰謝料交渉は、知識と経験の差が結果に直結する領域。保険会社の提示額が適正かどうかを自分だけで判断するのは難しく、示談後は原則として金額を変更できません。
相談時には、事故の経緯がわかる書類(事故証明書)・通院記録・保険会社からの提示書面を手元に用意しておいてください。

交通事故による肋骨骨折の後遺障害でよくある質問
肋骨骨折の後遺障害をめぐっては、認定の基準や申請の進め方、示談のタイミングなど、判断に迷う場面が多くあります。
特に保険会社とのやり取りの中で「このまま進めて問題ないのか」と不安を感じる方は少なくありません。ここでは、多くの方が疑問に思うポイントを整理し、落ち着いて対応できるよう解説します。
ご自身の状況に合った判断の参考にしてみてください。
肋骨骨折後に痛みが残っているだけでも後遺障害に認定されますか?
肋骨骨折後に痛みが残存している場合、14級9号または12級13号の神経症状として後遺障害等級に認定される可能性があります。どちらの等級に該当するかは、痛みの程度や他覚的な裏付けがあるかどうかによって判断が分かれます。
認定においては、レントゲンやCTなどの画像所見で骨折の痕跡や変形が確認できるかどうかが重要な判断材料。あわせて、症状の経過や程度を具体的に記載した医師の診断書の内容も審査に大きく影響します。
痛みの自覚症状だけでは認定が難しいケースもあるため、通院期間中から症状を医師に正確に伝えてください。

症状固定の時期は保険会社に従わないといけませんか?
症状固定の時期は、主治医の医学的判断によって決まるものです。保険会社から「そろそろ症状固定にしてほしい」「治療費の支払いを打ち切る」といった連絡が来ることがありますが、それは保険会社側の意向であり、法的に従う義務はありません。
肋骨骨折の後遺障害認定では症状固定のタイミングが等級判断に直結するため、治療が続いている段階で安易に同意するのは避けてください。
打ち切りの連絡を受けた場合は、主治医に治療継続の必要性を確認し、必要に応じて弁護士などの専門家に相談することも選択肢のひとつ。

後遺障害の申請は自分でできますか?
後遺障害の申請(被害者請求)は、ご自身で行うことが可能です。ただし書類の不備や検査記録の不足があると、実態に見合った等級が認定されない、あるいは非該当と判断されるリスクがあります。
肋骨骨折の後遺障害で審査に大きく影響するのは、症状の程度を裏付ける医療記録や検査結果の充実ぶり。準備段階での抜け漏れは避けたいところです。
弁護士に依頼すると、必要書類の確認や医療機関への照会サポートなど、申請の精度を高める対応が期待できます。

後遺障害が認定されなかった場合、示談に応じてしまってよいですか?
後遺障害が非該当と判断された場合でも、異議申立という手続きを通じて再審査を求められます。示談に応じてしまうと原則としてその後の追加請求が認められなくなるため、結果に疑問がある段階では慎重に判断してください。
異議申立では、新たな医学的資料や医師の意見書を添付することで判断が覆るケースもあります。
示談前に弁護士へ相談すれば、異議申立の可否や示談条件の妥当性について客観的な見解をもらえるはず。

入院した場合の入院慰謝料と後遺障害慰謝料は別々にもらえますか?
入院・通院に対して支払われる傷害慰謝料は、治療期間中の精神的苦痛を補償するものです。一方、症状固定後に後遺障害が認定された場合に支払われる後遺障害慰謝料は、将来にわたる苦痛を補償するものであり、両者は性質が異なります。
そのため入院慰謝料(傷害慰謝料)を受け取っていても、後遺障害が認定されれば後遺障害慰謝料は別途請求が可能。
肋骨骨折で後遺障害が残った場合は、どちらの慰謝料も適切に請求できるよう、弁護士などの専門家に相談してみてください。

肋骨が何本以上折れていると後遺障害が認定されやすいですか?
後遺障害の等級は、折れた肋骨の本数のみで機械的に決まるわけではありません。骨がどのように癒合したか、変形が残っているか、痛みや呼吸困難などの症状が継続しているかといった要素が、等級判断の重要な評価軸です。
目安としては、複数本にわたる骨折で変形癒合が認められる場合や、神経症状・機能障害が残存する場合に、認定される可能性が高まる傾向にあります。一方、1〜2本程度の骨折であっても、変形や痛みが明確に残存していれば認定対象です。
認定を受けるためには、症状の経過を医師に正確に伝え、診断書や画像所見に残存症状が適切に記録されるようにしてください。

【まとめ】肋骨骨折の後遺障害は治療中の記録と申請の精度で決まる
交通事故による肋骨骨折の後遺障害は、変形障害・神経症状・呼吸機能障害の3類型に分かれ、それぞれ認定条件が異なります。等級は主に12級と14級が中心で、自賠責基準と弁護士基準では慰謝料に約3倍前後の差が生じます。認定を左右するのは症状の重さだけでなく、それを裏付ける記録が揃っているかどうか。
- 肋骨骨折の後遺障害は「変形障害」「神経症状」「呼吸機能障害」の3類型。中心は12級と14級
- 認定の決め手は通院・検査の記録と、後遺障害診断書の具体性
- 申請方法は、有利な資料を自分で揃えられる被害者請求が適するケースが多い
- 非該当でも異議申立で再審査を求められる。示談は結果を確認してから
非該当という結果が出ても、異議申立で判断が覆るケースは実際にあります。示談書に署名する前に、自分のケースの等級と金額が妥当かどうかを専門家に確認してみてください。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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