交通事故の後遺障害で正座できない!下肢機能障害の後遺障害等級や慰謝料について

交通事故の後遺障害で正座できない!下肢機能障害の後遺障害等級や慰謝料について

交通事故の後遺障害で正座ができなくなってしまった場合の慰謝料はどれくらいになるでしょうか。

この記事では、交通事故のケガで治療後も足の関節に異常が残った場合に認定される後遺障害の等級や請求できる慰謝料額について解説します。

交通事故による下肢機能障害とは

交通事故の後遺障害で正座ができない、足を曲げられない、走れないといった症状が出る場合、足の関節に異常が生じている可能性があります。こうした後遺障害を「下肢機能障害」といいます。

下肢機能障害とは

下肢とは、股関節から膝関節、足関節(足首)、足指から成る、一般的に足(脚)と呼ばれる部分です。下肢には関節の他にも、大腿骨、脛骨・腓骨(下腿)、足根骨、中足骨など太い骨が含まれており、事故によって骨折や変形、切断、脱臼など関節や骨に異常が生じると、様々な後遺障害が残ります。

下肢に発生する後遺障害は、「欠損障害」や「変形障害」「短縮障害」「機能障害」などです。

欠損障害下肢の一部が失われてしまう障害
変形障害骨折や脱臼によって下肢の一部で骨や関節の形が変わってしまう障害
短縮障害骨折などの結果、足が短くなってしまい、足の長さに左右差が出てしまう障害
機能障害関節の可動域制限などによって足の動きが悪くなってしまう障害。正座ができない、足を曲げられないなどの症状は機能障害に分類されます

後遺障害の認定では、特に股関節・膝関節・足関節(足首)を「下肢3大関節」と呼んで、足関節より先の障害は別に取り扱っており、機能障害にはこの3大関節が大きく関わっている場合が多いです。

下肢機能障害で認定される後遺障害等級

交通事故の結果、正座ができないなど下肢機能障害が残ってしまった場合、後遺障害等級の認定を受けると、加害者に対して後遺障害慰謝料等を請求できるようになります。

下肢機能障害では、どのような症状でどういった等級が認定されるかをみていきましょう。

交通事故の後遺障害等級とは

はじめに、後遺障害等級とはどのようなものかを説明します。交通事故における後遺症は後遺障害と呼ばれ、ケガの治療費や傷害慰謝料とは別に後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できます。

しかし、どのような後遺症でも認められるわけではなく、慰謝料を請求するには、専門の機関に申請を行い、後遺障害の認定を受ける必要があります。

POINT
後遺障害は、症状の部位や障害の程度などによって1級~14級(および要介護1級・2級)の等級に分類されています。1級が最も症状が重く、2級、3級と数字が大きくなるほど症状は軽くなっていきます。

下肢機能障害で認定される可能性のある後遺障害等級

下肢3大関節の機能障害で認定を受ける可能性のある等級には以下のものがあります。

等級認定基準後遺障害の詳細
1級6号両下肢の用を全廃・3大関節の全てが強直*した状態。
・3大関節+足指の全てが強直*した状態。
*強直…「関節が完全に動かない」または「それに近い状態(関節の可動域角度が健測時の10%以下に制限されている)」。つまり、両足の股関節以下の関節全てが完全に動かなくなった状態をいいます。
5級7号片方の下肢の用を全廃・左右どちらかの足で3大関節全てが強直した 状態。
・片方の足で3大関節+足指の全てが強直した状態。
6級7号片方の下肢の3大関節のうち2つの用を廃した場合「関節の用を廃した場合」とは、左右どちらかの足の3大関節のうち2つで、以下の1~3のいずれかに当てはまる状態を指します。
1、関節が強直。
2、関節の完全弛緩性麻痺*またはそれに近い状態。
3、人工関節・人口骨頭が挿入置換された関節で可動域角度が健測時の2分の1以下に制限される状態。
*完全弛緩性麻痺…筋肉における末梢神経の機能が全てなくなり、筋肉が弛緩したままになってしまう状態。筋肉を動かそうとしても動かすことはできず、だらんとした状態になり、受動運動のみとなります。
8級7号片方の下肢の3大関節のうち1つの用を廃した場合左右どちらかの足の3大関節のうち1つで、上の1~3のいずれかに当てはまる状態。
10級11号片方の下肢の3大関節のうち1つに著しい機能障害が残った場合「著しい機能障害」とは、左右どちらかの足の3大関節のうち1つで、次のいずれかに当てはまる状態を指します。
1、関節の可動域角度が健測時の2分の1に制限されている状態。
2、人工関節・人口骨頭が挿入置換された関節で、可動域角度が制限されるが、2分の1以下までには制限されていない状態。
12級7号片方の下肢の3大関節のうち1つに機能障害が残った場合「関節に機能障害が残った状態」とは、左右どちらかの3大関節のうち1つの関節で、可動域角度が健測時の4分の3以下に制限されている状態を指します。

交通事故による下肢機能障害での慰謝料相場

交通事故で「正座ができない」など、下肢に機能障害が残ってしまった場合、加害者に請求できる慰謝料は具体的にどれくらいになるでしょうか。下肢機能障害での慰謝料相場について解説します。

交通事故の慰謝料算定基準は3種類

交通事故の慰謝料は計算するときの算定基準が「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3種類あります。

自賠責基準

自動車を運転する上で必ず加入が義務づけられている「自賠責保険」に基づく慰謝料の算定基準です。全ての車が加入しているので、加害者が任意保険に入っていない場合でも、必ずこの基準での慰謝料は受け取れます。

しかし、交通事故における最低限の補償を目的とする保険のため、請求できる慰謝料は3つの基準のうちで最も低額になってしまいます。

任意保険基準

加害者が加入している任意の自動車保険会社が定めている慰謝料の算定基準です。計算方法は各社が自由に決められ、通常は外部に非公開とされているため、各社がどのような計算方法で慰謝料を導き出しているか詳細は分かりません。

一般的には自賠責保険より高額になるといわれていますが、実際には数十万円程度の差である場合がほとんどで、それほど金額が変わるわけではありません。

 保険会社も民間企業であり、支払う保険金はなるべく低く抑えたいと考える傾向にあるため、相手方に言われるままにしていると、低額の慰謝料で示談させられてしまう可能性もあります。
弁護士基準

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼した場合に適用される算定基準で、3つのなかで最も慰謝料が高額になります。別名「裁判所基準」ともいわれ、交通事故の慰謝料で裁判に訴えたときにも適用される基準ですが、弁護士に依頼すれば訴訟を起こさなくても、こちらの基準で慰謝料を請求可能です。

自賠責基準と比較して、慰謝料額が2倍~3倍になるケースもあり、弁護士基準こそ、交通事故の被害者が本来受け取るべき慰謝料の金額といえるでしょう。

交通事故で請求できる慰謝料は2種類

交通事故で後遺障害が残った場合に請求できる慰謝料には、「傷害慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2つがあります。

傷害慰謝料(入通院慰謝料)

交通事故でケガを負い、病院に入院・通院して治療しなければならなくなったことに対する肉体的・精神的苦痛への慰謝料です。

後遺障害慰謝料

交通事故で後遺障害が残ったことへの精神的・肉体的苦痛に対する慰謝料で、後遺障害等級の認定を受けられた場合のみ請求できます。正座ができない、足が曲げられないといった下肢機能障害の場合は、上で説明した6つの等級のいずれかに認定された場合に慰謝料が受け取れます。

傷害慰謝料の相場

実際の慰謝料相場を3つの基準に分けてみていきます。まずは傷害慰謝料から、治療期間半年で入院2か月・通院4か月(ひと月あたり10日通院)として計算します。

自賠責基準

自賠責基準では、入院または通院した日数に応じて金額が決定され、1日あたり4300円で、
①4300×入通院期間
②4300×実入通院日数×2

のうち金額の低いほうが実際の請求金額として適用されます。

①4300×180日(6か月)=77万4000円
②4300×(60日(入院2か月)+40日(月10日通院))×2=86万円

となり、このうち低いほうが適用されるので、もらえるのは①の金額77万4000円になります。

任意保険基準

任意保険基準の計算方法は非公開のため、正確には分かりませんが、以前、すべての保険会社共通の基準として使われていた「旧任意保険支払基準」があり、ここからある程度の目安を導き出せます。

旧任意保険支払基準をもとにした入院および通院の慰謝料算定表

入院→
通院↓
0か月1か月2か月3か月4か月5か月6か月
0か月025.250.475.695.8113.4128.5
1か月12.637.86385.7104.6121134.8
2か月25.250.473.194.5112.2127.3141.1
3か月37.860.581.9102.1118.5133.6146.1
4か月47.969.389.5108.4124.8138.6151.1
5か月56.776.995.8114.7129.8143.6154.9
6か月64.383.2102.1119.7134.8147.4157.4

単位:万円

上の表から、入院2か月・通院4か月の慰謝料は、89万5000円になります。

自賠責基準よりは高いものの、それほど大きな差はありません。

弁護士基準

弁護士基準も任意保険基準と同様、公益社団法人「日弁連交通事故相談センター」から発刊されている「交通事故損害額算定基準」(通称:青本)や「日弁連交通事故センター東京支部」から刊行されている「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称:赤い本)などをもとに算定表が決められています。

弁護士基準の算定表には軽症用と重症用の2種類がありますが、今回は重症用を使用して計算します。

弁護士基準重傷用算定表

入院→
通院↓
0か月1か月2か月3か月4か月5か月6か月
0か月053101145184217244
1か月2877122162199228252
2か月5298139177210236260
3か月73115154188218244267
4か月90130165196226251273
5か月105141173204233257278
6か月116149181211239262282

単位:万円

表より、弁護士基準での慰謝料は165万円になります。3つの基準の中で弁護士基準が最も高額で、任意保険基準・自賠責基準と比べると約2倍の金額になっているのがわかります。

後遺障害慰謝料の目安

続いて、後遺障害等級の慰謝料目安をみていきます。後遺障害慰謝料は、等級によってもらえる金額がある程度決められています。以下の表では、下肢機能障害に関係のある6つの等級について抜き出しました。

任意保険基準は明確に分からないため省略しますが、傷害慰謝料と同様に、自賠責基準プラス数十万円程度が相場と考えられます。

等級自賠責基準弁護士基準
1級6号11502800
5級7号6181400
6級7号5121180
8級7号4191000
10級11号331830
12級7号94290

単位:万円

例えば、5級7号の「片方の下肢の用を全廃」した状態の場合、自賠責基準では618万円、弁護士基準では1400万円の慰謝料を請求できます。ここでも、弁護士基準が自賠責基準と比べて2倍以上の金額になっており、慰謝料額が1桁違ってきます。

傷害慰謝料と後遺障害慰謝料を合計すると、
自賠責基準:77万4000円+618万円=695万4000円
弁護士基準:165万円+1400万円=1565万円

となります。

POINT
このように、交通事故の慰謝料は弁護士基準で請求できると、もらえる金額が大きく変わってくるため、損害賠償請求をお考えの方は、一度、弁護士に相談してみることをおすすめします。

下肢機能障害で後遺障害認定を受けるためのポイント

後遺障害慰謝料を受け取るためには、等級の認定を受ける必要があり、交通事故で正座ができないなどの症状が出たとしても、必ずしも慰謝料を請求できるとは限りません。後遺障害で認定を受けるには等級に関わらず、以下の3点が重要になります。

  • 後遺障害と交通事故に因果関係がある。
  • 医師から病状固定の診断を受けている(病状固定とは、これ以上治療を続けても症状が改善しない状態)。
  • 医師に後遺障害診断書を書いてもらう。

これを踏まえて、後遺障害認定を受けるにはどういった点に注意すればいいのか、認定のポイントを解説します。

検査によって事故と症状の関係を証明する

後遺障害と交通事故の因果関係を証明するには、きちんと医学的な証拠を揃える必要があります。下肢機能障害では、医師の診断書だけでなく、レントゲンやCTやMRIなどの精密検査による画像資料を添付すると、より説得力を高められます。

時間が経過すると、事故との関連性を疑われる場合もあるため、事故後、早い段階からこうした検査を受けるようにしましょう。

病状固定と診断されるまで治療を続ける

認定率を高めるため、きちんと医師から病状固定といわれるまで通院と治療を継続してください。事故当日は必ず病院へ行って診察を受け、その後も病状固定といわれるまで、最低月1回程度は通院するようにしてください。

 被害者の中には、家庭の事情や仕事が忙しいなどの理由から、自分の判断で通院を止めてしまう方もいますが、治療が中途半端だと、「たいしたケガではないのでは」「もう治ったのではないか」と思われて認定も受けにくくなってしまいます。

診断書はしっかりと記載する

認定が認められるかどうかに大きく影響するのが、後遺障害診断書です。診断書を書くのは医師の仕事ですが、内容に関しては、事故後の被害者の態度が関係する部分もあります。

例えば、症状は一貫して主張すること。途中で訴える内容を変えたり、治ったと思って治療を止めてしまったりすると、医師も事故との関連性を書きづらくなってしまいますし、事故との関連性を疑われて認定を受けるのが難しくなる可能性があります。

少しでも何らかの症状を感じるのであれば、医師から病状固定といわれるまで治療を継続するようにしてください。また、診断書には自覚症状を記す欄もあるので、ここでは常に同じ症状に悩まされることを主張しましょう。

POINT
例えば、正座ができないなら、常にできないと書くようにします。ある姿勢のときだけ正座がしづらいなど、時と場合で症状が変化するようだと、認定が受けにくくなる可能性があります。

以上のように、後遺障害認定を受けるには、いくつか注意すべきポイントが存在します。なかには、医師だけでは対応できない、法律の知識や後遺障害認定に関する知識やノウハウが必要になる場合もあります。

そのため、認定を希望される方は、交通事故の後遺障害認定に関する経験の豊富な弁護士に相談することをおすすめします。弁護士と相談しながら申請手続きを進めれば、認定の確立が上がる可能性が高くなります。

また、後遺障害等級の認定率はそれほど高いとはいえず、認定を受けられずに「非該当」になってしまう可能性も十分あります。そんなときも、弁護士がいれば、異議申し立てに関する相談ができます。

最初は非該当だったものが、異議申し立てによって認定され、慰謝料がもらえるようになった事例もあり、後遺障害等級の認定では最後まであきらめないことが大切といえます。

認定に関して不安なところがある、申請をしたけれど認められず納得がいかない、という方は一度、弁護士への相談を検討してみてください。

まとめ

交通事故で「正座ができない」「足が曲げられない」「走れない」などの後遺症が出たときは、後遺障害等級の申請を行えば、下肢機能障害として認定を受け、後遺障害慰謝料を請求できるようになります。

認定を受けるには注意すべきポイントがあり、事故後、早い段階から認定に向けた対応が求められますが、一般の方には分かりづらい部分もあるため、弁護士と相談しながら手続きを進めることをおすすめします。

弁護士であれば、弁護士基準で請求できる慰謝料も高額にあり、非該当になった場合の異議申し立てについても相談に乗ってもらえます。交通事故で後遺障害認定を受けたいと考えている方は、一度、弁護士への依頼を検討してみてください。

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