後遺障害認定の結果に至るまでどのくらいかかる?遅くなるケースや対処法

後遺障害認定の結果が出るまでどのくらいかかる?遅くなるケースや対処法

交通事故の被害に遭い、治療後も何らかの症状が残った場合、後遺障害の認定をもらって補償を受けられるようになるのは、どれくらい時間が必要なのでしょうか。

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本記事では、後遺障害申請の流れや結果が出るまでの期間、遅くなるケースと対処法を開設します。

後遺障害認定の結果が出るまでどのくらいかかる?

後遺障害の申請から結果が出るまでに必要な期間は、事故や障害の内容によって異なりますが、一般的には1か月、遅くとも2~3か月程度で結果が出ます。「2021年度(2020年統計)自動車保険の概況」によると、後遺障害認定までの日数は次の通りです。

30日以内72.70%
31~60日12.90%
61~90日7.10%
90日越7.40%

参考:「2021年度 自動車保険の概況」

自賠責損害調査事務所のデータによると、70%以上で1か月以内に、90%以上で2か月以内に結果が出ています。ただ、約14%では2か月以上かかっているケースもあり、なかには3か月を超える場合もある点には注意が必要でしょう。

後遺障害認定の結果が遅くなるケース

認定の結果が出るのが遅れたり、平均より時間を要したりする理由としては、次のようなものがあげられます。

1、記載内容への照会

認定の妥当性や事故との因果関係など、審査を行う上で書類だけでなく、直接事故当時者の話を聞いたり、医療機関に問い合わせる「医療照会」を行ったりするケースでは、面談に時間がかかったり、病院からの回答が遅い場合など、さまざまな事情で遅れが生じる可能性があります。

2、後遺症の審査内容が難しい

通常、後遺障害認定の審査は脳の障害などのように審査の難しい後遺症については、慎重かつ丁寧な審査が行われる分、結果が出るまでの期間は長くなってしまいます。

POINT
複雑な後遺症では、通常は都道府県ごとの自賠責損害調査事務所で行われる審査をさらに上部機関である地区本部で実施したり、弁護士や医師などが参加する審査会で調査したりする場合があり、特に高次脳機能障害などでは、半年~1年かかるケースも珍しくはありません。

3、提出書類の不備

申請書類に不備が見つかった場合も、審査期間が長引くケースの1つです。書類の内容が不十分だと、書類の修正や追完などを求められ、やり取りなどに時間をとられてしまいます。

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書類提出の前には、弁護士などとも相談して、不備がないかをよくチェックするようにしましょう。

4、後遺障害が複数ある

複数の後遺障害について申請を行っている場合も、ひとつひとつの審査を実施する必要があるため、時間がかかる可能性が出てきます。複数の後遺症を1つにまとめる併合認定も判断も難しく、審査が長引く原因になりやすいといえます。

5、保険会社での手続きが進んでいない

審査そのものではなく、保険会社から審査機関への書類提出に時間がかかっているため、手続きが遅れているケースです。

 保険会社は常に多くの案件を抱えているため、申請のタイミングによっては処理が後回しにされてしまう可能性があります。特に保険会社に手続きを一任する事前認定で起こりやすいといえるでしょう。

6、画像の取得

任意保険会社から医療機関への画像取得に時間がかかるケースで、取り付けのため面談を求められたり、複数の医療機関から提供を受けたりする場合は特に遅れてしまう原因になります。

7、被害者の重過失減額

被害者の重過失のために保険金の減額が行われる重過失減額の場合では、重過失の有無が決まるまで後遺障害認定の結果が出ない原因となります。重過失減額では、事故態様に争いが生じるケースも多く、当事者双方への聞き取りなど調査に時間がかかってしまう場合も多いのです。

8、異議申立の場合

はじめの認定で非該当になってしまった場合に行う異議申立では、より慎重な審査が実施されるために時間がかかり、結果が出るまで3か月程度かかるのが一般的です。

交通事故による後遺障害とは?

交通事故で負傷し、治療を行った後も完全に回復せず、何らかの症状が残ってしまった状態を「後遺障害」といいます。

日常生活でも、病気や怪我などの後、症状が残存している状態を指す用語として「後遺症」が使われていますが、後遺症と後遺障害は厳密には意味が異なり、後遺障害は交通事故による症状のみに使用されます。

また、後遺障害はどのような症状でも認められるわけではなく、損害賠償請求を行うためには専門機関へ申請して認定を受けなければなりません。後遺障害には以下のような定義が決められており、認定を受けられるのは次の4つすべてを満たす場合のみです。

後遺障害の定義
1、交通事故によるケガの治療後も欠損や機能障害、神経症状など、何らかの症状が残存しており、将来においても完治するのが難しいと見込まれる状態である。
2、症状が医学的に証明でき、事故との間に相当因果関係(ある原因と結果について、その行為からその結果が生じると社会通念上認められる関係)が認められる。
3、症状のために労働能力の低下または喪失が生じている。
4、症状が「自動車損害賠償保障法施行令」に定められる後遺障害等級のいずれかに該当している。

後遺障害と認められるには、症状の存在や事故との関係を医学的に証明でき、症状が労働力に影響をおよぼしており、自賠責施行令に定められた症状に当てはまっている必要があります。

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そのため、単に症状が残っているからといってすべてが損害賠償請求の認められる「後遺障害」として認定されるわけではないのです。

後遺障害の認定とは

交通事故による後遺症が、自賠責保険の後遺障害等級に該当していると認められれば、後遺障害の認定を受けられるようになります。後遺障害は症状があれば自動的に認定されるものではなく、補償を受けるためにはきちんと「申請」をして「認定」を受ける必要があります。

後遺障害は1級~14級までの等級に分かれており、数字が小さくなるほど症状が重く、補償も手厚くなるのが特徴です。

後遺障害の申請は書面で行われる

後遺障害の認定には、申請書類の内容のみで審査が実施される書面主義が採られます。ひとくちに後遺障害といっても外見や画像から判断できる障害だけでなく、本人の感覚でしか分からない神経症状もありますが、どのような症状であっても後遺障害等級の申請は書面で行わなければなりません。

 そのため、申請書類の書き方は非常に重要で、誤りや不備があると、本当に症状が残っている場合でも認定を受けられない恐れがあります。

後遺障害が認定されるとどうなるか

後遺障害の認定を得られると、等級に応じて次のような賠償金を請求できるようになり、請求できる損害賠償額が大きく変わります。

・後遺障害慰謝料……後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償。
・後遺障害逸失利益……後遺障害により、仕事を続けられなくなったり、働けなくなったりして、将来得られるはずだった給与等が入らなくなってしまう損害に対する補償。

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全損害賠償額に占める後遺障害分の損害額の割合はかなり高くなるケースもあり、交通事故の損害賠償請求において、後遺障害認定を受けられるか否かは非常に大切といえるでしょう。

自賠責保険の先取り

認定を受けられた場合、加害者との示談交渉が済む前から自賠責保険分の賠償金を先取りできる制度が利用可能になるため、事故後の治療費や生活費の不安が軽減されます。

自賠責保険の先取りには金額の上限が定められており、後遺障害の場合は等級により異なりますが、75万~4,000万円までです。

自分の保険を請求できるケース

後遺障害認定により、加害者の保険からだけでなく、被害者が加入している保険からも保険金を受け取れる可能性があります。

搭乗者傷害保険」や「人身傷害補償保険」などのプランをもつ保険や共済に加入している場合は補償対象になる場合があるため、約款や保険会社への確認を行ってみてください。

後遺障害の等級認定の流れ

実際に交通事故で後遺症が残った場合、どのようにして申請を行えば良いのでしょうか。ここからは、後遺障害等級認定の申請方法やかかる期間、流れなどを解説します。

申請はいつ行うか

後遺障害の申請は、病院で医師から「症状固定(治癒)」の診断を受けたタイミングで可能になります。

症状固定とは、これ以上治療を続けても症状が改善する見込みがないと判断される状態です。症状固定になると治療やリハビリは終了して保険会社からの治療費などの支払いも停止され、治りきらなかった症状は後遺症として扱われます。

申請はどこに行うか

症状固定になると医師から診断書などをもらえるようになるため、必要な書類をそろえて事故の相手方が加入している自賠責保険会社から「損害保険料率算出機構」の「自賠責損害調査事務所」へ提出して申請を行います。

POINT
自賠責損害調査事務所は交通事故の自賠責保険金について、公正な損害調査を実施するための機関で、申請書類をもとに障害や損害賠償請求の妥当性、損害額の計算等を行って総合的に後遺障害認定の適否を判断します。

申請はどのように行うか

後遺障害の申請方法には、保険会社に依頼する「事前認定」と本人が手続きを行う「被害者請求」の2種類があります。

事前認定

加害者の加入している任意保険会社を通じて申請を行う方法で、診断書など最低限の必要書類を提出するだけで、申請書の作成やその後の手続きなどをすべて保険会社が行ってくれます。

メリット

・保険会社が手続きをすべて行ってくれるため、申請にかかる手間や時間が省ける。
・手続き上のミスが生じる可能性がなくなるため、初めてで申請方法がわからず不安のある場合は安心できる。
・申請に必要となる画像資料などを用意するための費用を保険会社に負担してもらえる。

デメリット

・保険会社はなるべく支払う保険金を低く抑えようとする傾向があるため、書類不足により後遺障害の申請を行っても非該当になったり、思っていたより低い等級での認定になってしまったりする恐れがある。したがって、手続きの透明性に疑問が残る。
・保険金は一括支払いが前提となるため、自賠責保険の先取りの制度が利用できなくなる。経済的に余裕がない場合は注意が必要。

被害者請求

被害者本人が必要書類をすべて準備して、加害者の加入している自賠責保険会社に提出し、申請を行う方法です。

メリット

・自分で納得できるまで書類や資料をそろえて申請を行える。
・自賠責保険の先取り制度を利用でき、相手方との示談成立前でも保険金の一部を受け取れるようになる。
・手続きの透明性が高くなり、低い等級での認定など納得できない結果になる可能性が少なくなる。

デメリット

・申請書類や資料などをすべて自分で準備する必要があり、作成の手間と時間がかかる。
・画像資料の発行など医療情報を入手するための費用は自己負担になる。

後遺障害等級申請の流れ

ここからは、治療終了後に後遺障害の申請を行い、結果が出るまでの一連の流れをみていきましょう。

1、症状固定

後遺障害認定を申請するには、まず医師から症状固定の診断を受ける必要があります。症状固定のタイミングは、ケガの状態や程度によって異なるため、医師の判断に従うのが大切です。

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症状固定の診断をもらうまでは、きちんと通院を続けるようにしてください。

2、必要書類の作成

症状固定といわれたら、申請に必要となる次のような書類の作成をはじめましょう。

後遺障害診断書

医師の作成する診断書で後遺障害の申請には必須の書類です。書式が決まっているため、自賠責保険会社から取り寄せるか、webからダウンロードしたものを医師に渡して書いてもらってください。

画像、検査等の資料

レントゲンやCT、MRIなどの画像資料、ジャクソンテストやスパークリングテスト、反射テストなどの神経学的検査などです。

後遺障害を客観的に証明できる資料を添付すると認定を受けられる可能性が高くなり、「むちうち」のように外見からではわかりにくい症状を証明するときに特に有効といえるでしょう。

意見書(医師が書いてくれた場合)

主治医によって作成され、症状や所見、今後の見込みや生活等への影響などを記載した書面です。医学的な視点から後遺症の程度や認定の相当性、事故との因果関係などに関する意見がもらえるため、検査資料等と同様に認定を受けられる可能性が高くなります。

3、保険会社への書類提出

必要書類がそろったら、加害者の加入している保険会社に提出して申請を行います。前述のように、申請方法は以下の2種類があります。

  • 事前認定:加害者の任意保険会社を介して申請。
  • 被害者請求:加害者の自賠責保険会社を介して申請。

申請手段によって必要書類も変わり、事前認定では後遺障害診断書など一部を用意するだけですが、被害者請求ではすべてを自分で準備しなくてはいけなくなります。

4、損害保険料率算出機構による審査

提出した書類をもとに損害保険料率算出機構の自賠責保険調査事務所によって審査を実施します。

後遺障害の認定は書面主義をとっており、基本的に書類に記載されている内容のみで行われるため、きちんとした書類作りが重要です。また、顔の傷のように外見からも判断できる一部の障害では本人との面談を実施する場合があります。

5、結果の通知

審査が終了すると結果の通知が行われ、事前認定の場合は保険会社へ、被害者請求では本人(弁護士を通じて依頼した場合は弁護士のもと)に結果が通知されます。認定を受けられた場合は該当する等級が、認められなかった場合は「非該当」の旨を記載した書面が送られてきます。

後遺障害の申請する前に注意したいこと

後遺障害の申請時や書類を提出してから結果を待っている間は次のような点に注意しましょう。

書類に不備がないか事前に確認する

提出書類に不備があると審査が遅れる原因になるため、申請前にはよくチェックしておきましょう。医師は後遺障害申請には特化しているわけではないため、診断書等の書き方に慣れていなかったり、どういった資料を用意すればいいかわかっていなかったりする場合があります。

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そのため、書類作成時には、後遺障害申請に詳しい弁護士などに相談してアドバイスをもらうとともに、不備がないかをしっかりと確認してもらいましょう。

消滅時効が迫っている場合は対応を

交通事故の損害賠償における後遺障害部分は症状固定から5年で時効により請求権が消滅してしまう恐れがあります(民法724条の2、民法724条)。時効が成立してしまうとたとえ認定を受けられても損害賠償の請求ができなくなってしまいます。

時効が迫っている場合は、訴訟等による「請求」や「催告」、「承認」など完成猶予の対策がとれるため、弁護士などと相談のうえ、対応を検討するようにしてください。

示談金を早く受け取る方法

示談金は示談成立後に支払われるもので、示談交渉は基本的に後遺障害認定が終わらなければ始められないため、通常なら後遺障害の審査や示談交渉が終わっていない時点でお金は受け取れません。

しかし、なかには治療費や生活費など事故の影響や経済的な事情によりお金が早く必要になる方もいるでしょう。全額は難しいのですが、示談金の一部であれば、次のような方法で早く受け取れる可能性があります。

・内払い金……相手方の任意保険から保険金の一部を先に支払ってもらえる制度。
・仮渡金……相手方に自賠責保険に保険金の前払いを請求できる制度。

後遺障害認定の結果がなかなか出ないときの対処法

説明したように、後遺障害認定では、さまざまな理由から審査手続きが遅れてしまうケースがあります。もし申請を行ったものの、なかなか結果が通知されない場合には、どういった対応をとれば良いのでしょうか。

こうすれば良いという確実な方法はないものの、何もせずに過ごすよりは何らかの対策を行うほうが手続きもスムーズに進む可能性も出てきます。

保険会社の対応が遅いために申請が進んでいないようなら、こまめに連絡をとれば、手続きを後回しにされてしまう可能性を減らせるかもしれません。また、どうしても保険会社に任せておけないと感じたら、本人が手続きを行う被害者請求に切り替えるのも1つの方法です。

POINT
自分で申請を行うのが難しそうだと感じる方も、交通事故を得意とする弁護士などに相談してアドバイスをもらえば、一緒に手続きを進めていけますので、結果がなかなか出ないとお悩みの場合は一度検討してみてください。

弁護士(費用)特約の利用を

弁護士に依頼する際、多くの方が躊躇する理由として費用の問題があります。もし弁護士に依頼したいけれど、費用について迷っておられる場合は、「弁護士(費用)特約」が利用できないかを確認してみましょう。

弁護士(費用)特約とは、任意の自動車保険に付帯している特約の1つで、交通事故の被害者になった場合の弁護士費用や法律相談費用を補償してもらえるものです。弁護士費用は、加入している任意保険会社により異なりますが、例えば、300万円まで、法律相談は10万円までが補償対象となっており、弁護士特約が利用できれば、ほとんどの事故で弁護士費用に関する心配はなくなります。

弁護士特約は加入者本人だけでなく、家族の保険でも利用できる場合があり、また、火災保険やクレジットカード、個人賠償責任保険など、自動車保険以外にも付帯しているケースもあるため、後遺障害等級の認定について弁護士に相談したいと思ったときは、利用できるものがないか、よく調べてみるようにしてください。

まとめ

交通事故による怪我で治療後も何らかの症状が残る後遺障害は、きちんと申請を行わなければ認定を受けられず、損害賠償請求もできません。さらに、申請しても非該当になるケースも多く、さまざまな原因によって申請手続きが遅れてしまう可能性もあります。

後遺障害等級の認定について、待っているのに結果がなかなか出ない、認定を受けられなかったと悩んでおられる方は、一度、交通事故に詳しい弁護士などに相談してみましょう。

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