インターネットの誹謗中傷に対する規制強化と今後の流れ

インターネットの誹謗中傷に対する規制強化と今後の流れ

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現在、ネットでの匿名による誹謗中傷に対する規制の強化に向けた動きが進んでいます。世論もこの流れを指示していて、国会での法改正により、これまでより発信者の特定が容易になるとみられます。

この記事では、ネットの誹謗中傷に対する法改正と今後の見通しを解説します。

誹謗中傷の法改正への議論が本格化

昨今、女子プロレスラーが亡くなった事件など、ネットやSNSにおける匿名での誹謗中傷が社会的な問題になっています。

規制強化を求める世間の声を受けて、国会でも誹謗中傷に対応する関連法改正の動きが出ています。

ネットでの誹謗中傷が社会的な問題に

2020年5月、女子プロレスラーの木村花さんが出演した番組での発言を理由にネット上でバッシングに遭い、亡くなった事件は世間に大きな衝撃を与え、スマホやSNSの普及とも相まって、ネット上での悪質行為に対する規制強化を望む声が大きくなりました。

日本財団が2020年6月に実施した「18歳意識調査」でもSNSの法整備について「必要である」と回答した人が全体の75.5%にのぼっており、SNSを普段から利用している若い世代でも多くの人が何らかの規制が必要と考えていることがわかります。

 タイムリーな話題として、2021年7月に開幕する東京オリンピックでは、日本オリンピック委員会(JOC)が初の試みとして出場選手へのネット、SNSでの誹謗中傷を監視するチームを設置する予定です。

オリンピックで注目が高まる選手を保護するのが目的で、Twitter社などと連携し、悪質な書き込みについては捜査機関に通報も考えられています。

国際的なイベントでも対策がとられるほどネット上での誹謗中傷に対する社会的な関心が高まっており、こうした流れを受け、国会でも誹謗中傷を規制するための議論が本格化しています。

ネットでの誹謗中傷に対する規制強化と法改正の動き

2021年2月26日、政府はネット誹謗中傷などの被害を受けた際、加害者を特定するためのプロバイダー責任制限法改正案を国会に提出しました。

菅義偉首相は2021年1月18日に行われた第204回施政方針演説で「発信者情報の開示命令などの裁判手続きを整備し、被害者の迅速な救済につなげる」と表明しました。

政府としても誹謗中傷の被害者救済に本腰を入れて取り組む方針をみせており、今後は発信者の特定だけでなく、厳罰化を含めた法改正が検討される可能性もあります。

規制強化によってどうなっていく?

それでは、実際に法改正によってどのように規制が変化するのでしょうか。また、今後のネット上での誹謗中傷に対する規制の流れはどうなるかについてもみていきます。

法改正で何が変わる?

今回の改正法が施行されれば、ネットで誹謗中傷の被害に遭った際、被害者による発信者の特定が容易になります。

改正の対象になったプロバイダー責任制限法は、ネットで誹謗中傷を受けた際に発信者を特定するための情報開示請求の手続きなどを定めた法律です。

これまでは、加害者を特定するのに、サイト管理者などのコンテンツ事業者と通信事業者であるプロバイダーの両方に開示請求する必要がありました。

時間がかかるだけでなく、拒否された場合の裁判も2回行わなければならないなど手間と費用もかかってしまい、被害を受けても開示を断念して泣き寝入りしてしまうケースもありました。

POINT
改正法では、開示請求が裁判所を通じた1回の手続きで済むようになり、業者が保有しているアクセス記録などの情報が削除されないよう裁判所から命令を出すこともできるようになります。
これによって、現在は1年ほどかかることもある開示の手続きが半年に短縮でき、請求者側の負担も軽くなります。

事業者・業界団体も独自の規制を強化

サイト運営会社やプロバイダーなどインターネットでビジネスを行う企業や業界団体でも、こうした誹謗中傷は問題になっており、法律とは別に独自の対策や規制を実施しています。

SNS事業者で構成される一般財団法人「ソーシャルメディア利用環境整備機構」では、木村花さんの事件を受けて、「名誉毀損や侮辱を意図した投稿を禁止し、違反者のサービスの利用停止を徹底する」と緊急表明し、総務省、法務省と共同でSNSでの投稿削除の方法や被害を受けた際の相談先などを紹介する誹謗中傷対策サイト「NoHeartNoSNS」を開設しました。

これを受けてSNS運営企業でも、Twitterでは2020年8月から投稿に返信できるユーザーの範囲を自分で制限できる機能を追加しており、Yahooでは運営するネット掲示板で、人工知能(AI)を使って不適切な書き込みを検出し、削除する取り組みをはじめるなど、それぞれ自主ルールや規制の強化を進めています。

過度な規制には問題も

こうした誹謗中傷に対する規制強化の流れについては、言論の萎縮や制度の悪用など問題点を指摘し、慎重な法改正を求める声もあります。

誹謗中傷になることを恐れてネットやSNS上での自由な発言が阻害されたり、開示請求の簡略化が発信者を委縮させるために悪用される可能性もあり、言論の自由・表現の自由の侵害を懸念する意見が出ています。

そのため、今後は規制と表現の自由のバランスをどのようにとるかが問題になってくると考えられます。

今後も法の整備は進んでいく見通し

誹謗中傷への規制強化の動きは、今回の法改正だけにとどまらず、今後も続いていくものとみられます。

提出されたプロバイダー責任制限法改正法、は2021年4月21日に参院で全会一致により可決・成立しました。2022年末までに施行され、今後は誹謗中傷の加害者を特定するための手続きが大きく変わり、これまでより加害者を特定しやすくなります。

ただ、今回の法改正は誹謗中傷そのものを規制する法律ではないため、根本的な解決にはつながらないとして、問題点を指摘する声もあります。

POINT
開示請求の悪用を防ぐには、なにが誹謗中傷にあたるのかをはっきりさせた上で取り締まる必要もあるでしょうし、誹謗中傷に対する厳罰化などを含め、今後も法律による規制強化の動きが続いていくものとみられます。

まとめ

インターネットやSNSにおける誹謗中傷は、今や大きな社会問題になっており、規制強化を望む声を受けて法整備に向けた議論が進められています。

4月には投稿者の情報開示に関する法律の改正案が成立し、手続きがこれまでより簡略化され、加害者の特定が容易になりました(ただし、2022年末までに施行)。

こうした規制強化の流れは続いていくものとみられますが、一部ではネット上での言論の萎縮を懸念する意見もあり、今後どうなっていくのか慎重に見守る必要があります。

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