インターネットの誹謗中傷は人権侵害になる?どんな書き込みが該当するかについて解説

インターネットの誹謗中傷は人権侵害になる?どんな書き込みが該当するかについて解説

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誰でも手軽に自由な意見を投稿できるのがネットやSNSの魅力ですが、どんな書き込みでもできることから、知らない相手の人権を侵害していることもあります。

本記事では、表現の自由と人権侵害の違いや相手の人権を侵害しないようにするために注意すべきことを解説します。

その書き込みは人権侵害にあたるかも?

普段、ネットやSNSに投稿するとき、人権侵害を意識する人はあまりいないと思います。

日本では憲法で保障された表現の自由があるため、自由な意見や考えを発表することが認められており、なにを書くのも自由だと思っている人もいるかもしれません。

ですが、他人の人権を侵害する書き込みは表現の自由では許されず、場合によっては犯罪に問われることもあります。

表現の自由として許される場合と人権侵害になる場合とで、その違いはどこにあるのでしょうか。

表現の自由とは

表現の自由は日本国憲法第21条1項の中で保障されている権利の1つで、自分の意見や考え、主張などを他人に向けて自由に発表したり表現したりする権利です。

言論の自由が代表的ですが、他にも音声や画像にも適用され、報道の自由や出版、放送の自由なども含まれます。

表現の自由は歴史的に民主主義とともに発展してきた経緯があり、今でも民主主義を守るための大切な柱の1つと考えられています。

表現の自由が認められていることにより、国民は説明責任を果たさない権力者を自由に批判することができます。これによって、権力に対する国民の監視機能が働くことになり、民主主義に役立つことになります。

逆に表現の自由が保障されていなければ、国民は政府や権力に対して声をあげる手段を失ってしまいます。

表現の自由は、常に危機に晒されており、特に独裁的といわれる国家ではその傾向が顕著で、タイムリーなところでは中国が香港の民主化運動を弾圧した事件が一例として挙げられます。

香港国家安全維持法により共産党への批判が犯罪になり逮捕される可能性が生まれ、人々は自由な発言ができなくなり、最近では香港の新聞「リンゴ日報」が廃刊に追い込まれたことも記憶に新しいところです。

このような状況では国民が様々な自由を得ることや民主主義が実現されることは難しくなります。表現の自由が民主主義にとっていかに重要かがわかります。

POINT
最近では、トランプ前大統領のTwitterアカウントが凍結されたケースのように、インターネットの発達により、国家だけでなく、特定の企業やメディアによる言論・表現の規制も出てきており、ますます、表現の自由を守る意識が重要になってくると考えられます。

人権侵害とは

人権蹂躙とも呼ばれ、憲法が保障している基本的人権を侵害することを指します。

人間であれば誰でも生まれながらにして必ず持っている権利のことで、自由権・社会権・平等権などからなり、すべての個人がもっている他人に譲ることのできない固有の権利です。

今でこそ、当たり前に誰でももっていると言われるようになった基本的人権ですが、人類社会で基本的人権が確立されるまでには長い努力と闘いの歴史がありました。

基本的人権は、フランス人権宣言やアメリカ独立宣言に代表されるように、国家に侵されることのない個人の自由な権利を保障するべきという考え方として、近代に現れました。

当初、基本的人権の範囲は表現の自由、職業選択の自由といった自由権が中心でしたが、その後、生存権や教育を受ける権利、労働権といった社会権が加わりました。また、現代では、知る権利やプライバシーの権利などが保障を受けるようになり、人権の範囲は拡大されています。

人権侵害も、もともとは国家による国民の権利侵害を指す言葉でしたが、現在では私人間(しじんかん:一般の人同士)にも適用されるようになりました。

現在では、国民は1人1人が基本的人権をもっているものの、それによって他人の人権まで不当に侵害することはできないという考えが一般的です。

 表現の自由の例で言うと、週刊誌の記者が記事を書く行為が表現の自由で保護されているとはいえ、政治家や芸能人の名誉を不当な仕方で傷つけることは許されません。

このように、基本的人権は大切な権利ですが、他人の人権を侵害する場合には制限を受ける場合があります。

なんでも表現の自由で済まされるわけでない

日本には表現の自由があるので、ネットでもどんな書き込みでも許されると考えている人は多いかもしれませんが、上で説明したように自由権も場合によっては制限されることがあります。

ネットやSNSの投稿でも同様に、他人の尊厳を傷つけるような内容であれば、表現の自由を通り越して人権侵害にあたり、許されるものではなくなります。

どこまでが表現の自由でどこからが人権侵害になるのかは実は線引きが難しいところでもあり、そのため、表現の自由を勘違いして意図せず人権を侵害してしまうような投稿をしてしまう方もいるようです。

しかし、他人の悪口を言ったり、あることないことを書き込んで社会的評価を下げるような誹謗中傷の投稿は人権侵害となる可能性が高く、表現の自由で保護されない可能性があります。

人権侵害になる書き込みの例

それでは、具体的に人権侵害にあたる書き込みとはどのようなものでしょうか。

最近ではネット上の誹謗中傷問題に注目が集まるようになっており、加害者が警察に逮捕されたり、被害者が裁判に訴える例も見られますが、それだけが人権侵害とはいえません。

 誹謗中傷の中には明らかな名誉毀損や侮辱罪など法律上の犯罪にあたるものもありますが、それ以外にもネットいじめやいやがらせ、プライバシーの侵害など、明確に犯罪とはいえないまでも他人を傷つけている行為もあります。

私たちには表現の自由もあるため、このあたりの線引きには微妙な部分もありますが、人権とは人が生まれながらにもっている権利ですから、他人の尊厳を傷つける行為は人権侵害にあたる可能性があります。

ですから、たとえ犯罪に該当しなかったとしても一般常識で考えて、倫理的に問題のある書き込みの投稿は避けるべきだといえるでしょう。

それでは、どのような書き込みが人権侵害にあたるか、もしくはあたる可能性があるか、一例をみていきたいと思います。

他人を誹謗中傷する書き込み

「バカ」「きもい」といった単なる悪口や差別的な発言、「○○は犯罪者」といったデタラメな内容で他人を誹謗中傷する書き込みは人権侵害だけでなく、刑法上の侮辱罪や名誉毀損といった犯罪に該当する可能性もあります。

他人に対する脅迫的な書き込み

「〇〇しないと殺す」など殺害予告や爆破予告などで相手を脅迫する書き込みで、本人だけでなく家族に対するものも該当し、刑法上の脅迫罪や威力業務妨害罪などにあたる可能性があります。

他人のプライバシーを侵害する書き込み

他人のプライバシーに関する情報を勝手に書き込む行為は、法律上明確に犯罪として規定されているわけではありませんが、情報が悪用される可能性もあり、明らかに他者の権利を侵しているといえるため、人権侵害にあたると考えられます。

なりすまし

他人になりすまし、相手の意思に反する内容を書き込む行為は人格権を侵害する行為であり、人権侵害の一種といえます。

インターネットの書き込みで人権侵害をしないためにできること

手軽に書き込みや投稿ができるのがインターネットの魅力ですが、知らないうちに誹謗中傷などで他人の人権を侵害してしまう恐れもあります。

すでに述べたように、法律上の違法行為だけが人権侵害といえるわけではなく、たとえ犯罪とまではいえなくとも、他人の尊厳を傷つけるような投稿は人権侵害と判断される可能性があるため、控えるべきです。

そのために、掲示板やSNSを利用するにあたってはルールやマナーをも守るとともに以下の点にも注意する必要があります。

ネットの向こうに人がいることを認識

ネットの書き込みは不特定多数の人に見られることが普通です。

自分には何気ない内容のつもりでも、それを見た誰かを傷つけることがないか、不快な思いをさせないか、投稿する前にもう一度確認するようにしましょう。

なんでも正しいと信じ込まない

最近のネットでの誹謗中傷の傾向として、他人の書いた嘘の投稿を信じて、誰かをバッシングするケースがみられます。

ネットの情報には嘘や不確かなものも多いため、安易に信じて他人を攻撃するのではなく、本当に正しい情報なのか、なんでも信じ込まずに自分自身でなにが正しいのか判断する必要があります。

一度書き込むと簡単には消せない

ネットの書き込みは簡単に削除できるように思われがちですが、Twitterのリツイート機能などで拡散されることも多く、完全に削除するのは難しいことからデジタルタトゥーと呼ばれています。

誹謗中傷の投稿も、いったん書き込むと、永遠に消えずにネットに残り続ける可能性があることを理解する必要があります。

書き込みの前にセルフチェックを

人権侵害にあたる書き込みをしないため、投稿の前には、自分の投稿が誰に見られてもいいものか、もし消せなくなっても大丈夫かどうかをもう一度、冷静に考えるようにしましょう。

自治体で配布されている以下のようなチェックリストもありますので、使ってみてください。
https://www.pref.osaka.lg.jp/jinken/internet/index.html

人権侵害の書き込みへの対処法

これまではネットでの誹謗中傷による人権侵害の加害者にならないための方法を紹介してきましたが、ここからは逆に自分がネット上の書き込みで人権侵害の被害に遭ってしまった場合の対処法を解説します。

人権侵害を受けたとき

人権侵害にあたる書き込みをされた場合、以下のような対応をとることができます。

書き込みの削除

サイトやSNSの運営に問い合わせ、該当の書き込みの削除を依頼します。
もしサイト側が対応してくれない場合は、裁判所に削除仮処分の申立ができます。

書き込んだ相手の特定

サイト運営者やプロバイダに発信者の情報開示を請求することで、書き込んだ相手を特定できます。
最初にサイト運営者への開示請求を実施し、もし対応してくれない場合は、裁判所に開示仮処分の申立を行います。
開示されたIPアドレスをもとにプロバイダを特定し、相手の氏名や住所など個人情報の開示を請求します。

プロバイダが対応してくれない場合は、情報開示請求訴訟によって開示を求めることになります。

損害賠償請求・刑事告訴

特定後は民事における損害賠償の請求が可能です。
人権侵害とみなせる投稿であってもすべてが法律上の犯罪にあたるとはいえませんが、このような場合でも、民事上被害者から投稿者に対する慰謝料請求が認められる可能性があります。

もちろん、相手の書き込みが名誉毀損などの犯罪にあたると認められる場合には、刑事事件として刑事告訴することもできます。

人権侵害をしてしまったとき

反対に自分が人権侵害にあたるかもしれない書き込みをしてしまった場合にはどうすればいいのでしょうか。

書き込み削除

まずは問題の書き込みを削除することが大切です。
ですが、すでに書いたように、もとの書き込みを消したとしても、ネット上の投稿は簡単に消去できるとは限らず、拡散されて残り続けるかもしれません。

 その場合、あなたが意図していなくても誹謗中傷が継続している状態になり、相手から訴えられてしまう可能性もあります。
困ったら専門家に相談を

訴えられないか不安に思われる方は、自分の書き込みが訴訟の対象になる可能性はあるのか、一度、弁護士など法律の専門家に相談されることをおすすめします。

自分一人で対処するのは難しいと思われますので、誹謗中傷の被害に遭われた方も、加害者になってしまった方も、一度、弁護士に相談するようにしてみてください。

まとめ

インターネットでは、誰でも気軽に書き込みができるため、気づかないうちに誹謗中傷による投稿が人権侵害につながっている可能性もあります。

加害者にならないため、ネットだから何を書いてもいいわけではなく、ネットの書き込みは簡単には消せないかもしれないと理解しておくことが必要です。

反対に、被害に遭ってしまったときは書き込みの削除や相手の特定、訴訟などの対応がとれます。

どちらの場合でも、対応するには法律知識が必要ですので、弁護士など法律の専門家に相談するようにしてください。

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