発信者情報開示請求を拒否したその後はどうなる?弁護士がわかりやすく解説

発信者情報開示請求を拒否して起こることとは?

発信者情報開示請求が届いても、回答は任意であり拒否することは可能です。

ただ、拒否すると不利になってしまうため、応じたほうがよい状況もあります。

”豊川弁護士”
この記事では、発信者情報開示請求を拒否したら、その後はどうなるのか弁護士が解説します。

発信者情報開示請求とは

発信者情報開示請求は誹謗中傷されたと主張する人が、掲示板やSNSなどネット上に投稿した発信者の氏名や住所といった個人情報の開示をプロバイダに請求を行うことです。

プロバイダ責任制限法第4条1項に定められた誹謗中傷の加害者を特定するための手続きです。民事責任や刑事責任を追及するためには名前や住所などの個人情報を取得し発信者の特定を行う必要があるため、発信者情報開示請求が利用されます。

発信者情報開示請求が行われると、個人情報を開示しても良いか確認する意見照会書がプロバイダから送られてきます。だいたいはNTT等のインターネットプロバイダから届き、掲示板サイトなどを運営するコンテンツプロバイダから送付だれることは少ないのが現状です。

一般的に意見照会書は届いてから7日~14日以内に回答するように求められます。拒否することもできますが、拒否しない方が良いケースもあります。また、指定の期間内に返答せず無視すれば、開示の意思はないものと判断されます。

発信者情報開示請求を拒否するとどうなるか?

発信者情報開示請求をした請求者に個人情報を伝えたくなければ、意見照会書に正当な理由を記載し拒否してもかまいません。しかし、拒否することで訴訟の提起がなされるなど面倒な事態になる可能性があります。

発信者情報開示の拒否は一時的に個人情報を守ることに繋がりますが、請求者には不誠実と見られ被害者感情を逆なでする恐れがあります。結果、高い損害賠償金を請求される、示談による和解の芽を自ら摘んでしまうといった事態を悪化させてしまう危険性があるため注意が必要です。

発信者情報開示請求訴訟を起こされる

意見照会書が届いても開示請求に対して拒否する回答を送れば、プロバイダは拒否の理由を精査し個人情報を開示するか決定します。開示しないと決まれば、請求者は個人情報の取得を諦めるか裁判手続きを通じ法的に情報を開示させる手段を取ることになります。

 発信者が拒否しても、請求者から発信者情報開示請求訴訟を起こされる可能性があります。

民事訴訟で損賠賠償金を請求される

発信者情報開示請求訴訟で請求者が勝訴すると、裁判所が開示を認めます。

その後、請求者が民事訴訟を提起すれば、投稿者に不法行為に対する損害賠償や慰謝料を請求する内容証明が届く可能性があります。

開示請求を拒否しても、民事裁判でも敗訴すると請求者に賠償金を支払わなければならなくなります。慰謝料の金額は10万円~50万円程度が多いですが、悪質な内容であると判断され100万円以上と相場よりかなり高額の支払いを命じた例もあります。また、開示を行うために係る費用を請求されることが多いです。裁判費用や弁護士費用なども含めると、明らかに大きな負担になると考えられます。

さらに、開示請求の拒否は請求者への誠意がないと見なされ示談が上手く行かず、和解しづらくなったり請求金額が増えたりするリスクがあります。

刑事事件に発展する恐れがある

インターネットでの誹謗中傷行為は、名誉毀損罪や侮辱罪などの犯罪に当てはまる可能性があります。

名誉毀損罪や侮辱罪などは親告罪に当たり、罪にするかは相手の意思が大きく影響します。情報開示の請求を拒否すると、他人を傷つけた行為をしたのに反省の態度がないと受け止められかねません。最終的には請求者に刑事告訴され、事件に発展する可能性を高めてしまうという見方もできます。

請求者が告訴すれば民事だけでなく刑事事件でも裁判が起こり、投稿者が敗訴すれば罰金や懲役といった刑罰が科されます。勾留や逮捕される可能性も出てきます。

 起訴されれば前科が付きます。

発信者情報開示請求を拒否するメリットは?

発信者情報開示請求の拒否にはメリットもあります。請求者の主張に対し納得がいかないとき等、安易に個人情報を教えるべきではないケースは存在します。

相手に個人情報を知られずに済む

発信者情報開示請求を拒否すれば、請求者側に個人情報を知られずに済みます。

請求に同意すれば無条件で投稿者の個人情報は請求者に知られてしまいます。しかし、拒否すればプロバイダが契約者の個人情報を第三者に渡すことは基本的にありません。本人の許可なく他人に個人情報を教えることはプロバイダにとって大きなリスクを伴う行為であるという理由からです。

もちろん、請求者が裁判を提起すれば、開示が認められる可能性はあります。ただ、拒否すれば一時的ではあっても、ほぼ確実に投稿者の個人情
報を守れる
わけです。

裁判で開示されるとは限らない

発信者情報開示請求は個人情報に関わるため、裁判手続きの要件が通常より厳しくなっています。そのため、裁判所に訴えたとしても、提起した請求者のほうが必ず勝てるとは限らないのは事実です。裁判で認められなければ、投稿者の個人情報が開示されることはありません。

”豊川弁護士”
情報開示請求を拒否し裁判で争うことで、損賠賠償金の支払いなどを免れる可能性が出てきます。

発信者情報開示請求を受けたらやるべきこと

発信者情報開示請求が行われ、意見照会書届いた後の流れを紹介します。拒否するか否かはメリットとデメリットの両面を考慮したうえで、ケースバイケースの適切な判断が求められます。

落ち着いて行動する

開示請求を受け取った時は、落ち着いて冷静に行動することが大切です。いきなり家に開示請求の意見照会書が届けば誰でも驚きますし、大きな不安を感じるのは仕方ありません。

認めるか拒否するか、判断を誤れば投稿者が大きく不利になる状況。になる可能性が出てしまいます。あせらず冷静に自分が置かれた状況を判断し検討することが重要です。

内容に心当たりがあるか考える

発信者情報開示請求を拒否するか判断する上で大切なのが、自身に請求者の言い分に思い当たる事実があるのかになります。

発信者情報開示請求の意見照会書が届いたのは、投稿者の書き込みが誹謗中傷など権利侵害に該当すると判断したためです。とは言っても、請求者が主張する内容にはまったく身に覚えがない場合はあり得ます。事実に反して開示請求が実施されるケースはあるためです。

POINT
請求者の主張に思い当たるところがなかったり反論があるなら、無闇に個人情報を開示する必要はなく拒否してもかまいません。

弁護士に相談する

発信者情報開示請求を拒否するか否かは、その後の展開に大きな影響を与える可能性があります。少し大げさにいえば、運命の分かれ道とも言えるでしょう。

法律の知識がない個人で正しい判断を下すには難しいものがあります。自分一人だけで決めるよりも、法律問題に詳しい弁護士に依頼するのがおすすめです。

無料相談サービスを行っている弁護士事務所なら、普段は弁護士に接点がない人でも気軽に相談できるでしょう。

”女性”
発信者情報開示請求をはじめインターネット上でのトラブル解決が豊富な弁護士は心強い味方になってくれます。

まとめ

発信者情報開示請求は拒否しても構いませんが、訴訟を起こされたり警察に捜査されたりするリスクがあります。

ただし、誹謗中傷をした覚えがないのであれば個人情報の開示に応じる必要はありません。

発信者情報開示請求が届いた段階で、弁護士に相談しその後の対応を決めるのが良いでしょう。弁護士は状況に応じた最適な案を考えてくれますので、開示請求に関する不安を取り除けます。

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