もし、自分のところに発信者情報開示請求が送られてきた場合、拒否してしまってもよいのでしょうか。
個人情報を開示するには抵抗がありますが、拒否して自分の不利とならないかも心配です。
発信者情報開示請求を拒否するとどうなるか?
発信者情報開示請求とは、ネット上の投稿などに対して、プロバイダに登録した発信者の氏名や住所といった個人情報の開示を請求することです。
もし、あなたの書き込みが誹謗中傷にあたると思われた場合、相手から開示請求を受けることになる可能性が高いです。
その場合、プロバイダから意見照会書が送られてきて、開示を許可するか返答することになります。多くの場合、14日以内に回答するように求められ、もしこの期間に返答しなかった場合は、開示の意思はないものと判断されます。
もし、相手に個人情報を伝えたくない場合は、請求を拒否することになるのですが、もしも拒否した場合、どのようなことが起きるのかをみていきたいと思います。
相手に発信者情報開示請求訴訟を起こされる
もしあなたが開示請求に対して拒否する回答を送れば、プロバイダは個人情報を開示しません。その場合、相手は諦めるか、もしくは、裁判手続きを通じて情報を開示させることになります。
情報が開示されれば民事訴訟に
では、あなたが訴訟に敗れ、裁判所に開示が認められればどうなるでしょうか。
その場合、次に相手はあなたに対して不法行為に対する損害賠償、慰謝料を請求する内容証明が届いたり、民事訴訟を行うでしょう。
もし、こちらの裁判でも負けてしまえば、相手に対して賠償金を支払わなければならなくなります。たとえあなたが情報開示を拒否したとしても、こうしたリスクをゼロにすることはできません。
さらに、開示請求を拒否したことで相手への誠意がないとみなされ、請求金額が多くなったり、和解しづらくなったりすることもありえます。
刑事事件に発展する恐れも
訴訟が民事だけにとどまればまだよいのですが、ネット上での誹謗中傷行為は、名誉毀損や侮辱罪などの犯罪に当てはまる可能性があります。
こうした罪は親告罪にあたるため、事件にするかどうかは相手の意思によるところが大きいのですが、あなたが情報開示請求を拒否していた場合、相手に誠意のない対応と受け止められかねません。
その結果、刑事告訴に発展する可能性を高めてしまうという見方もできます。
情報開示を拒否すれば事態を悪化させることも
このように、発信者情報開示を拒否すれば、一時的には個人情報を守ることにつながるものの、相手には不誠実と見られてしまいます。
拒否をすることでいいこともある?
たとえ情報開示請求を拒否したとしても、結局は裁判になってしまうケースがあることを紹介しました。では、請求を受けた場合は大人しく認めてしまえばいいのでしょうか。
実はそうともいえません。相手の主張に対して納得がいかないなど、安易に個人情報を教えるべきではないケースも存在します。
相手に個人情報が開示されるのを防止できる
情報開示請求を拒否することで、あなたの個人情報が相手側に知られてしまうのを防止することができます。請求に同意してしまえば、無条件であなたの個人情報は相手に知られてしまいます。
しかし、あなたが拒否すれば、基本的にプロバイダは相手にあなたの個人情報を渡すことはありません。本人の許可なく他人に個人情報を教えることはプロバイダにとっても大きなリスクを伴う行為なのです。
もちろん、相手が裁判手続きを行えば、その後に開示が認められてしまうこともあるでしょう。しかし、開示を拒否することで一時的ではあっても、ほぼ確実にあなたの個人情報を守ることができるのです。
裁判手続きが有利になる場合もある
情報開示請求は個人情報に関わるため、裁判手続きも普通より要件が厳しくなっています。そのため、相手が裁判所に訴えたとしても必ず勝てるとは限りません。
発信者情報開示請求を受け、やるべきことは?
上記のように、発信者情報開示請求を拒否することには、メリットもあれば、デメリットも存在します。
そのため、これらを考慮したうえでケースバイケースの適切な判断が求められることになります。では、具体的に開示請求が届いた場合になにをすればよいのでしょうか。
落ち着いて行動する
開示請求を受け取った場合、まずは冷静になり、落ち着いて行動することが大切です。いきなり家に開示請求の意見照会書が届けば、誰でも驚きますし、大きな不安を感じることでしょう。
しかし、ここで認めるか拒否するかは、その後の訴訟の展開や結果にも大きく影響を及ぼします。判断を誤れば自分の状況を大きく不利にしてしまう可能性もないとはいえません。
ですから、まずは落ち着いて、冷静に自分が置かれた状況を判断し、今後の選択を検討することが重要になります。
心当たりがあるかどうか
開示請求に対して、状況を判断する上で大切なのが、相手の言い分に思い当たるところがあるかどうかです。
発信者情報開示請求が送られてくる場合、相手はあなたのネットへの書き込みが誹謗中傷など権利侵害にあたるものだと思っています。
ですが、相手の言い分にまったく身に覚えがない場合もあるはずです。誹謗中傷が事実無根で行われるように、開示請求も事実に反して行われるケースもあります。
弁護士など法律の専門家に相談する
発信者情報開示請求への対応は、自分に思い当たる節があるかどうか、請求を拒否するか否かで、その後の展開にも大きく影響します。少し大げさにいえば、運命の分かれ道といえるところです。
いくら冷静になったとしても、個人の判断では本当に正しいのかどうか不安になることでしょう。そんな時は、自分一人だけで決めてしまうのではなく、弁護士など法律の専門知識をもった専門家に相談するようにしましょう。
まとめ
発信者情報開示請求を拒否した場合、その後の訴訟などにも影響するため、どのような回答をするか慎重さが求められます。
ですが、拒否したからといって必ずしも不利になるものではなく、必要以上に不安がることはありません。
弁護士など専門家の助言や判断をもらいながら、状況に応じて最適な対応を考えるようにしましょう。