インターネット上の書き込みの中には、他人への「誹謗中傷」や「批判」となっているものが数多くあります。最近はSNSの流行も相まって、誹謗中傷・批判のコメントが多くなっています。
誹謗中傷と批判を同じ意味で混同している方もいますが、実は両者は意味が異なります。法的な線引きも異なってくるので、注意しなければいけません。
誹謗中傷と批判はどう違う?
「誹謗中傷」と「批判」は似たような言葉に見えますが、実は意味が異なります。それぞれどのような違いがあるのか、詳細を確認していきましょう。
批判とは
批判とは、「相手の誤った箇所や悪い部分に対して、根拠を示し論理的に指摘、改善を求めること」です。
必ずしも批判はマイナスの意味を持っていません。相手を評価した上で、改善案を示すことも批判の一種です。
たとえば、現在国が行っているコロナウィルス対策について、現状の施策を評価した上で、よりよくするための代替案を示すことは「批判」となります。
少し話のスケールが大きくなりますが、現代の民主主義は「表現の自由」と「批判の自由」によって支えられています。自身が表現したいことを自由に表現・主張して、かつそれに対して自由に批判を行うことが、民主主義を支える根幹になります。
表現する自由・批判する自由がないと、言論が統制されることになるので、独裁主義や権威主義に繋がってしまいます。事実、現代社会に存在する独裁主義の国では、表現の自由・批判の自由は認められていません。
民主主義を成立させるために、表現の自由と批判の自由は必須の権利になります。
誹謗中傷とは
誹謗とは、他人へ悪口を言ったり罵ったりする行為です。また、中傷とは根拠のない嘘やでらめを述べる行為です。
相手の主張に対する反論でなく、相手の人格に対して根拠のない悪口を発することが誹謗中傷になります。
誹謗中傷は、民事的・刑事的な責任を問われます。相手の人格を否定するような発言は、法的に責任を問われる可能性が高いのです。
名誉棄損にはインターネット上の書き込みも含まれます。「少し悪口をネットに書き込むことぐらい平気」と考えてしまうことは非常に危険です。
ネット上の書き込みは、一度公開されると一気に広がっていきます。誹謗中傷の書き込みを消したいと思っても、すでに他のユーザーに広く認知されている可能性が高いのです。
特に、SNSに書き込んだ誹謗中傷の書き込みは、他のユーザーや誹謗中傷を受けた相手によってすぐに拡散されることが多いです。誹謗中傷の投稿を一度削除したとしても、相手に画面のスクリーンショットを取られてしまうと証拠は残ってしまいます。
誹謗中傷と批判の線引き
誹謗中傷と批判の線引きは、「人格攻撃の有無」で判断することが多いです。
批判の場合は、相手の人格を攻撃するのではなく、あくまでも相手の主張に対して反論を加えることです。よりよい改善案・代替案を示すことが批判の目的であるため、こちらは人格攻撃には該当しません。
これに対して、誹謗中傷の場合は相手を人格的に侮辱することですので、批判とは毛色が異なります。主張に対して反論する訳ではなく、単に相手を侮辱することは建設的な批判とはいえません。
自分の中では「批判」と考えている発言が、実は「誹謗中傷」になっているケースも少なくありません。批判をしていく中で、つい感情的になってしまい、相手への人格攻撃が加わってしまうこともあります。
感情的な発言は、常に誹謗中傷に繋がるリスクがある点を理解しておかないといけません。
SNSや掲示板に書き込む際に気を付けること
SNSや掲示板に書き込みを行う際は、「相手の立場」になって書き込みを行うようにしてください。
自分が他の人から言われて嫌なことは、多くの場合他の人も同様に嫌な感情になってしまいます。相手が言われて嫌なことは、SNSや掲示板に書き込んではいけません。
書き込んだところで、何か得をすることはありません。むしろ、法的な責任を問われるリスクが生じてきます。
SNS・掲示板で誹謗中傷の書き込みを平気で行う人もいますが、この要因はこれまで法的な責任が実際に問われてこなった点だと推測できます。
最近は、個人の誹謗中傷の書き込み対して、実際に訴訟が発生する事例が増加してきています。
芸能人や有名人が実際に裁判を起こしているニュースもよく目にするようになりました。SNS・掲示板上での誹謗中傷は、もはや他人事ではありません。誹謗中傷の書き込みをしないよう、細心の注意を払う必要があります。
誹謗中傷になるかわからない場合の対処法
自分がインターネット上で投稿した内容、もしくは自分が他人からされたことが誹謗中傷に該当するか分からない際は、法律のプロである弁護士に相談することをおすすめします。
誹謗中傷であるかの判断は「人格攻撃」の有無が焦点になります。人格攻撃の有無は、非常に抽象的なものです。自分と相手では、人格攻撃と感じるか否かが異なることもしばしばです。
法律のプロである弁護士であれば、書き込みが誹謗中傷にあたるかどうか、客観的に判断してくれます。これまでの裁判や訴訟の事例を踏まえて判断してくれますので、実際に訴訟を起こす、もしくは起こされてしまうかの判断も付けてくれます。
まとめ
誹謗中傷と批判は、同じ意味合いで利用されることが多いですが、実際は内容が大きく異なってきます。批判は「相手の主張に対して、代替案を示すために行われるもの」、誹謗中傷は「相手への人格攻撃を行うもの」になります。
誹謗中傷の場合は、感情的に相手の人格を攻撃することになるため、相手の主張に反論するものではありません。広く言えば「悪口」と同じ意味になります。
ネット上で他の人に向けて誹謗中傷を行うと、民事的・刑事的に訴えられる可能性があります。たとえ匿名の書き込みであっても、誰が誹謗中傷の書き込みを行ったかは手続きさえ踏めば発覚します。「バレはしないだろう」という安易な気持ちで誹謗中傷の書き込みを行ってはいけません。
自分が誹謗中傷の書き込みを行ってしまった、もしくは他人から誹謗中傷の書き込みをされた場合は、弁護士など法律のプロに相談することをおすすめします。法的な手続きに沿って問題を解決していきましょう。