借金の負担を少しでも軽くするためには、借金を減額することが必要です。
借金を減額する方法としては、主に3つ挙げられますが、それぞれにはメリット・デメリットがあります。
1 合法的に借金を減額する方法
借金には、たとえば、消費者金融からの借入れやクレジットカードのキャッシング枠、住宅ローンなど、さまざまな種類があります。
これらの借金を合法的に減額する方法としては、主に、以下の3つの方法があります。
(1)債務整理
「債務整理」とは、主に、任意整理と個人再生、そして、自己破産の3つの手続きを総称したものです。
このうち、任意整理では、借金の減額までを見込むことはできず、また、自己破産については、借金の支払いを免除するための手続きであるため、ここでは、個人再生について、詳しく見ていきたいと思います。
「個人再生」とは、裁判所を通して、民事再生法に基づき、借金を大幅に減額してもらうための手続きです。
・借金額が100万円~500万円以下の場合は100万円
・借金額が500万円~1,500万円以下の場合はその5分の1
・借金額が1,500万円~3,000万円以下の場合は300万円
・借金額が3,000万円~5,000万円以下の場合はその10分の1
にまで借金額を減額できる可能性があります。
このように、個人再生では、最大で10分の1にまで借金を減額することが可能です。
(2)過払い金請求
「過払い金」とは、支払い過ぎた利息のことをいいます。
現在でこそ、貸付利率は利息制限法の範囲内におさまっていますが、2010年に貸金業法が改正されるまでは、貸金業法が定める上限利率が利息制限法所定の上限利率を上回っていたため、いわゆる「グレーゾーン」として社会問題にもなりました。
そのため、2010年以前から取引を開始している場合は、過払い金が発生している可能性があります。過払い金が発生している場合には、その分を元金に充当することになるため、結果として、借金を減額することができます。
また、過払い金を元金に充当し債務が消滅してもなお過払い金が残る場合には、その分を返還するよう債権者に請求することもできます。
(3)おまとめローン カードローン乗り換え
「おまとめローン」とは、借金を一本化することにより、複数あった借入先を一社に減らすためのものです。
借入先が多くなるにつれて、返済日の管理などが煩わしくなっていきますが、借金を一本化することにより、この煩わしさを解消することができます。
一般的に、おまとめローンは、利息制限法が定める上限利率よりも低い利率で貸し付けていることが多いため、その分だけ、金利の負担が軽くなり、支払うべき借金を減額することが可能です。
2 借金減額手段別のメリット・デメリット
借金を合法的に減額する方法は、先に見たとおり、主に3つありますが、それぞれにはメリットとデメリットがあります。
実際に減額を試みる場合には、これらのメリット・デメリットをきちんと踏まえたうえで、方法を選択する必要があります。
(1)債務整理
債務整理は、主に、任意整理と個人再生、自己破産の3つの手続きがありますが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
①任意整理のメリット・デメリット
任意整理では、元金を減額することまでは見込めないというデメリットはあるものの、将来利息をカットしてもらえる可能性があります。
任意整理に着手するまでは、利息の支払いに悩まされることが多いため、この点はメリットといえます。
もっとも、任意整理をすると、ブラックリストにその旨の情報が登録されるため、完済後およそ5年間は新たに借入れをしたり、クレジットカードを作ることが難しくなるというデメリットがあります。
②個人再生のメリット・デメリット
個人再生では、借金を大幅に減額できるという大きなメリットがあります。加えて、持ち家がある場合には、住宅資金特別条項を利用することにより、持ち家を残しながら、借金を整理できるというメリットもあります。
一方で、個人再生は、裁判所を通さなければならないため、手続きを利用するための条件が厳しくなっており、手続き自体も複雑であるというデメリットがあります。
具体的には、継続して安定した収入を得られる見込みのあることが、個人再生を利用するための条件となっています。
また、個人再生をすると、その旨が官報に掲載されることになっています。ここでいう「官報」とは、国が定期的に刊行している機関紙のことです。
③自己破産のメリット・デメリット
自己破産は、裁判所を通して、一部例外を除く借金を免除してもらうための手続きであるため、裁判所から免責が下りれば、債務者は、借金の支払いを免除されることになります。
とはいえ、自己破産では、一部の財産が処分されてしまうという大きなデメリットがあります。
このように、債務整理は、手続きごとにメリットとデメリットがあります。
また、先に見たように、債務整理は一般的に、弁護士などの専門家に依頼することが多いため、この手段をとる場合には、弁護士費用も必要になってきます。
■個人再生と自己破産の場合は、これらの費用のほかに、1万円程度の実費と個人再生委員(個人再生委員が選任される場合のみ)や破産管財人に対する予納金が少なくとも20万円以上必要になります。
(2)過払い金請求
過払い金が発生している場合、その過払い金を借金の元本に充当して、借金を減らすことができ、また、完済後に過払い金を請求する場合には、過払い金を取り戻すことができるというメリットがあります。
もっとも、過払い金を借金の元本に充当してもなお、借金が残るような場合、過払い金請求をすることで、ブラックリストに登録されてしまうというデメリットがあります。
なお、過払い金請求に関しても、債権者との交渉が必須となるため、弁護士などの専門家に依頼することが一般的になっています。
具体的は、着手金と報酬金は合計で4万円~5万円程度が相場となっており、これとは別に、過払い金を回収した際にかかる報酬金の相場が、回収額の20%~25%程度となっています。
(3)おまとめローン カードローン乗り換え
おまとめローンは、先に見たように、貸付利率が利息制限法が定める上限利率より低めに設定されていることが多いといえます。
そのため、計画性をもって返済していくことができれば、複数の債権者に対して返済する場合よりも返済総額を抑えることが可能です。
もっとも、おまとめローンで注意しなければならないことは、返済期間が長期化する危険性があるということです。
そのため、返済のシミュレーションをするなどして、適切な時期に完済できるように月々の返済額を設定する必要があります。
3 自分に合った借金減額方法の見つけ方
借金を効果的に減額するためには、自分の状況に合った方法を選択することが重要になってきます。特に検討することもせずに、自分に合わない方法を選んでしまうと、かえって状況が悪化する可能性すらあります。
たとえば、借金を大幅に減額できるというメリットにだけ飛び付いて、個人再生を選択したとしましょう。
先に見たように、個人再生の手続きを利用するためには、継続的に安定した収入が得られる見込みがあることが条件となっています。また、裁判所を通す分、手続きも複雑になっているため、個人再生を選択する場合には、手続きの流れやその中で求められる対応等を事前に把握しておく必要があります。
また、個人再生には、メリットもある反面デメリットも存在します。
たとえば、個人再生をすると、ブラックリストにその旨の情報が登録され、官報にもその旨が掲載されます。このようなデメリットが自分の状況にどう影響を及ぼすか、ということもきちんと確認しておかなければなりません。
もっとも、自分に合った方法を検討・判断することは決して簡単なことではありません。
その点、弁護士などの専門家に相談すれば、自分に合った方法を提案してくれますので、安心して手続きを進めていくことができます。
以上に見てきたように、各方法には、メリットもありますがデメリットもあります。メリットやデメリットがどのように本人に作用するかは、本人の状況によっても異なります。
誤った選択をしないためにも、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
4 まとめ
借金を合法的に減額する方法は、大きく分けて3つありますが、それぞれには独自の特徴があるため、方法を選択する場合には、これらの点もきちんと考慮する必要があります。
誤った判断をしてしまうと、借金を減額するつもりが、かえって増えてしまったなんてことにもなりかねません。
債務整理をはじめ、自分に合った借金の減額方法を見つける際には、弁護士などの専門家に相談した方が無難でしょう。