誹謗中傷の示談金はどのくらい?相場や示談の流れについて解説

誹謗中傷の示談金はどのくらい?相場や示談の流れについて解説

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ネットやSNSで誹謗中傷の被害に遭ったとき、警察への通報や裁判に訴える方法もありますが、ほかに示談によっても解決でき、こちらのほうがメリットの大きい場合もあります。

この記事では、誹謗中傷で示談が成立するのはどんなケースで、示談金の相場はいくらくらいか解説します。

誹謗中傷で示談になるケース

この記事ではネットの誹謗中傷で示談になるケースはどのような場合なのかについてみていきたいと思いますが、その前に、まずは示談や和解といった言葉の意味について解説していきます。

示談とは何か?

示談とは、民事や刑事の紛争を裁判所に訴えることなく、当事者間の話し合いによって解決する方法を示談といいます。

示談が成立した場合、基本的にはどちらか一方がもう一方に示談金として金銭を支払い、その代わり

  • 相手と裁判を起こさない
  • 告訴を取り下げる
  • 事件のことを家族や第三者に話さない/li>

などの取り決めを交わします。

示談では、示談金の額は双方の合意があればいくらにしてもかまわないことになっています。ただ、あまりに相場とかけ離れた金額だと、適正でないと判断され、あとで示談が無効になるケースもあります。

通常は双方が弁護人を立てて示談交渉を行うことになり、示談が成立した場合には、証拠として、示談書といわれる書面を作成し、双方で取り交わします。

示談は口頭での約束だけでも効力をもちますが、後で約束を反故にされたり、問題を蒸し返されたりすることのないよう「示談書」を作成するのが一般的です。

示談に似た手続きとして、簡易裁判所で行われる調停と呼ばれるものがあります。

調停では、当事者同士だけでなく、中立な第三者である調停人を立てて話し合いが行われ、双方の合意を目指すもので、どちらか一方にだけ圧倒的に不利な条件になりにくくなっています。

和解とは

和解も双方の話し合いによって紛争を解決することを指す言葉で、上で説明した示談は、法律上は和解契約にあたります。

和解には、裁判所を介さず当事者同士で話し合う和解(和解契約)と、裁判中に双方が譲り合って合意する和解(裁判上の和解)の2種類があります。

和解が成立すると、和解契約の場合には示談書が、裁判上の和解では和解調書が作成されます。和解調書は判決と同じ効力をもち、一度調書が出されると、同じ問題に関して裁判で異なる判決を得ることはできなくなります。

POINT
まとめると、示談ないし和解は裁判によらず、当事者同士の合意によって問題を解決する方法です。
ここでの合意は、裁判の結果とほぼ同じ意味をもち、一旦和解した後で、やっぱり納得がいかないと再び争うことはできなくなっています。

示談が成立するケース

では、ネット上における誹謗中傷で示談が成立するのはどのようなケースなのでしょうか。

ひとことで言うと、裁判で判決を出すよりも示談にしたほうが双方にとってメリットがある場合です。

示談だと示談金の額も自由に決められるため、加害者側に不利になるようにも思えます。一方、被害者側も裁判できちんと白黒つけてほしいと思うかもしれません。

しかし、示談することで双方にメリットがもたらされるケースが多くあります。

示談のメリットを中心に紛争が示談で解決される理由を紹介していきます。

加害者、被害者双方が訴訟になるのを防ぎたいケース

示談することで被害者側に民事裁判の訴えを取り下げてもらうことができます。

これにより紛争の解決が早くなることで、加害者にとってだけでなく被害者にとってもメリットがあります。双方が裁判に時間やお金をかけなくてもよくなります。被害者がこのメリットを求める場合には、示談が成立する可能性があります。

加害者が刑事事件になるのを防ぎたいケース

示談することで、被害者側に刑事告訴を取り下げてもらうこともできます。

特に、誹謗中傷事件で問われることの多い名誉毀損や侮辱罪は親告罪にあたるため、被害者が訴えを取り下げれば刑事事件になることはありません。

もし刑事裁判で有罪になれば前科がつくことになりますし、それならば、示談金を払う方が加害者にとってはメリットがあります。

加害者が民事事件での慰謝料や損害賠償を安く押さえたいケース

示談では、慰謝料や損害賠償の金額を話し合いで自由に決定できるため、示談するほうが加害者の支払う金額が安く済むケースがあります。

また、示談はお互い条件に納得したうえで合意するため、判決の場合よりも、加害者が慰謝料の支払いを履行してくれる可能性が高いといえます。

誹謗中傷で示談金が支払われた例・支払われずに終わった例

実際に起きたネットでの誹謗中傷事件で示談が成立し示談金が支払われた事例、示談金が支払われずに終わった例を見ていきます。

女優・春名風花さんのケース 示談金315万4000円

女優の春名風花さんがTwitter上で自身や両親に対する誹謗中傷を受けた事件です。

春名さんは投稿者の情報開示を求めるとともに警察に刑事告訴を行っていましたが、その後、示談金315万4000円で示談が成立しました。

名誉毀損の刑法上の罰金額は50万円のため、示談金としてはかなり高額になりますが、この金額は加害者側から申し出のあったものでした。

 春名さんは当初、裁判できちんと判決を出してほしいと考え、示談を拒否していましたが、実際には刑法上の罰則のほうが軽いため、示談に応じることを決めました。

松井一郎大阪府知事と新潟県知事とのTwitterを巡るトラブル

2017年、当時の新潟県知事だった米山隆一氏が当時の松井一郎大阪府知事に対して「異論を唱える人間を叩き潰して党への恭順を誓わせる」などとTwitterに書き込んだのを、松井知事が名誉毀損として訴えたものです。

松井知事は550万円の損害賠償を請求し、2018年9月、大阪地裁は33万円の支払いを命じる判決を下しました。

その後、2人の間では和解が成立し、お互いに今後は一切誹謗中傷をしないことや双方賠償義務を負わないことで合意しています。

 一旦、賠償金の支払いを命じる判決が出たものの控訴がなされ、その後和解が成立したことにより、慰謝料の支払いが必要なくなった事例です。

誹謗中傷の示談金の相場はいくらくらい?

では、実際にネットで誹謗中傷の被害に遭い、加害者と示談になった場合、示談金の相場はいくらぐらいになるのでしょうか。

損害賠償・慰謝料・示談金や訴訟における慰謝料の額はそれぞれのケースで異なる

金額は示談にした場合の示談金と裁判の判決による慰謝料・損害賠償によっても変わってきます。

損害賠償と慰謝料の違いは、損害賠償とは民法上の不法行為に対する賠償金のことを指し、例えばケガをした場合の治療費なども含まれるのに対して、慰謝料は損害賠償のうち、精神的苦痛に対する賠償金を指す言葉です。

誹謗中傷による示談金や訴訟における慰謝料の相場は、被害者相手が個人か、それとも商店などの事業主か、あるいはまたは企業などの法人かによっても異なります。

示談金の相場

被害者が個人である場合の示談金の相場は、多くても50万円ほどで、刑法における名誉毀損の罰金額が最高50万円と定められていることも目安の1つになっています。

また、示談金には被害者が書き込みの削除や投稿者の情報開示にかかった費用も含まれることがあります。

ただ、被害者が事業者や企業、芸能人のように社会的な評価に大きく影響される場合には、示談金も高額になりますし、50万円~100万円、もしくはそれ以上になる可能性もあります。

なお、上で紹介した春名さんの示談金は相場からするとかなり高額な事例ですが、示談金は双方が合意すれば、公序良俗に反しない限り金額を高額にしてもかまわないのでケースによっては相場より高額な示談金になります。

訴訟における慰謝料請求の相場

裁判で決定する名誉棄損の慰謝料・損害賠償の相場は、

  • 個人の場合:10万円~50万円
  • 事業主・企業の場合:50万円~100万円

と示談金の場合と大きく変わるわけではありません。

ただ、これはあくまでも相場ですから、裁判での請求金額では数百万円が請求されるケースもありますし、判決でも個人に対して100万円を超える支払いが命じられた事例もあります。 

示談金が支払われるまでの流れ

ここまでの内容で実際に誹謗中傷の解決手段として、「示談」が有効であることがわかったと思います。それではここからはネット上で誹謗中傷の被害を受けてから、相手を特定し、示談に持ち込むまでの流れを解説します。

書き込みを見つけたら証拠保全を

ネットで誹謗中傷の書き込みを見つけたら、多くの人はすぐに消してほしいと考えるかもしれません。

ですが、その前に証拠保全を行う必要があります。削除の前にURL付きで書き込みをプリントアウトするか、スクリーンショットや画面の写真撮影などで必ず証拠を残すようにしてください。

 書き込みだけが消されると誹謗中傷の証拠がなくなって裁判等で不利になる恐れがあります。

IPアドレス開示請求

証拠をとったら、次は書き込んだ犯人の特定です。投稿者を特定し、訴訟に必要な相手の個人情報を入手するには、二度の情報開示請求が必要です。

一度目は、投稿があったサイトやSNSの運営・管理者に対して行うもので、相手のIPアドレスやタイムスタンプの開示を求めます。

任意ですんなりと開示されればよいのですが、もし拒否されてしまった場合には、裁判所に開示仮処分の申立を行います。

プロバイダへの情報開示請求

裁判所から開示の仮処分が出されてIPが開示されたら、それをもとに相手の利用しているプロバイダを特定し、プロバイダ責任制限法第4条に基づき、発信者の情報開示請求を行います。

プロバイダは開示の可否を投稿者に尋ね、相手が許可すれば個人情報が開示されるのですが、たいていは拒否されるでしょう。

任意での開示が無理だったときは、裁判所に開示を求める訴訟を起こします。

あなたの主張が認められた場合には、裁判所からプロバイダに情報を開示するよう命令が出され、相手の氏名や住所といった個人情報が分かるようになります。

民事での慰謝料請求・刑事告訴

加害者を特定した後は、民事での慰謝料請求や名誉毀損など何らかの犯罪に該当する場合には刑事告訴も可能です。

民事・刑事ともに裁判による判決によって解決することもできますし、加害者との話し合いによる合意が成立すれば示談することもでき、示談金が支払われます。

個人での対応が難しい場合は弁護士への相談を

ここまでの流れを見てきて、分かると思いますが、相手を特定するまでに二度裁判所に訴える必要があり、さらにその後も民事訴訟などを起こす必要があるため、これらの手続きを個人でやるのはかなり大変です。

そこで、もしネットで誹謗中傷の被害に遭ったときには、一度、弁護士など法律の専門家に相談されることをおすすめします。

弁護士であれば、訴訟の手続きや相手側との示談交渉はもちろん、あなたの受けた被害がどういった犯罪にあたるのか、裁判と示談どちらにするほうが良いのか、などアドバイスをもらうこともできます。

ネットの誹謗中傷問題は、情報開示など手続き自体も複雑になっていますので、自分一人では無理だと感じたら、専門家の助力を得るようにしてください。

まとめ

ネットで誹謗中傷の被害に遭った場合、裁判で慰謝料を請求するほかに、当事者同士の話し合いで示談することもできます。示談のほうが早く解決につながり裁判にかかるコストが省けますし、示談金の金額も両者の話し合いで自由に決めることができます。

加害者は刑事告訴を取り下げてもらって前科がつくのを防げるといったメリットもあります。

ただ、示談が成立するまでの流れは複雑ですし、書き込みをした投稿者を特定する情報開示の手続きや示談の交渉などは一般の人には難しいといえるため、個人で対処できないと感じたら、弁護士など法律の専門家に相談してみてください。

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