ネットニュースにとりあげられた誹謗中傷関連ニュースを紹介

ネットニュースにとりあげられた誹謗中傷関連ニュースを紹介

ネットのSNSや掲示板等で、誹謗中傷の書き込みが後を絶ちません。

単なる悪口だけでなく、ありもしないデマ情報が拡散されるケースもあります。ネット上にはどのような誹謗中傷のニュースが取り上げられているのでしょうか。

この記事では、ネットニュースにとりあげられた誹謗中傷関連ニュースと、誹謗中傷への対処法も合わせて詳しく解説します。

yahoo!ニュースなどに掲載された誹謗中傷の例

大手ネットニュースサイトのyahoo!ニュースでは、様々な誹謗中傷に関するニュースが報じられています。中でも芸能界やスポーツ界など、著名人の被害が深刻化しています。

木村花さんのケース

フジテレビ系の「テラスハウス」というテレビ番組に出演していたプロレスラー・木村花さんに対するSNSの誹謗中傷で、自らの命を絶ったことが大きく報道されました。

番組は、男女の共同生活を配信する恋愛リアリティー番組です。

ある放送回で木村さんは、男性出演者と口論になりました。その後、出演男性が番組を卒業したことがきっかけとなり、SNS上でのバッシングが始まったとされています。

「死ね」「消えてくれ」「ブス」など悪質な投稿が相次ぎ、木村さんのTwitterで亡くなる直前に「毎日100件近く率直な意見。傷ついたのは否定できなかったから。」などとツイートしていました。

2020年12月には、木村さんを中傷する内容を投稿したとして、20代の男が侮辱容疑で書類送検されました。この男性は「性格悪いし、生きてる価値あるのかね」「いつ死ぬの?」などと書き込んでいたとみられています。

男性は容疑を認め「番組での木村さんの態度が許せなかった。(共演男性)に代わり、復讐するため」などと供述しています。

この誹謗中傷する投稿については、遺族側が刑事告訴をしていました。告訴を受けた警視庁はSNSに投稿された内容を復元し、およそ600アカウント、1200件の投稿、このうち約300件の中傷コメントを確認していたということです。

2021年3月には、別の男性がTwitterで「お前の自殺のせいで(番組が)中止。最後まで迷惑かけて何様?地獄に落ちなよ」などと投稿した事案で、遺族の心情を傷付けたとして、およそ294万円の損害賠償を求め提訴しました。

 ところが第1回口頭弁論では、男性は出廷せず、これまでに答弁書も提出しないまま反論もなかったということです。今後どのような裁判結果となるかが注目されます。

伊藤詩織さんのケース

2020年6月には、Twitterで誹謗中傷するイラストを投稿したとして、ジャーナリスト・伊藤詩織さんが漫画家・はすみとしこさんに対し、550万円の損害賠償と投稿の削除などを求め提訴しました。

また、イラストの投稿をリツイートした男性2人に対しても220万円の損害賠償と投稿の削除を求め、合わせて提訴しました。

伊藤詩織さんの事案は、2015年4月に元TBSワシントン支局長から性的暴行を受けたとして、2017年に実名を公表し、明らかにしたことがきっかけです。

はすみさんは、伊藤さんに似たイラストを描き「安倍総理に近い記者に枕営業を仕掛けるも、二年後『レイプ被害者』として彼の目の前に現れる」など、イラスト画像やテキストを投稿していました。

しかし、はすみさんは「風刺画はフィクションで実際の人物や団体と関係ない」などと主張しました。

裁判では、伊藤さんは「私の魂を深く傷つけた」「性被害の被害者をセカンドレイプといえる言動で攻撃する人、インターネットでセカンドレイプの拡散に加担する人が大勢います、同じ被害に苦しむ多くの人たちのために、裁判を始めた」などと訴えていました。

別の事案では、Twitterで伊藤さんを誹謗中傷する複数の投稿に「いいね」を押したとして、自民党・杉田水脈衆院議員に対し、220万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴しました。

訴状によると、2018年6月から7月にかけて「枕営業の失敗」「日本を貶めている」などと誹謗中傷した13件の投稿に「いいね」を押したとしています。

第1回口頭弁論を終えた伊藤さんは「シェアされる言葉の暴力性について、今回の裁判が、一人ひとりが責任を持って向き合う機会になってほしいと思っています。」などと訴えていました。

 杉田議員側は出廷せず、答弁書で請求棄却を求めています。今後は争う姿勢を示しています。

はあちゅうさんのケース

作家でブロガーのはあちゅうさんは、2018年7月にセクシー男優との事実婚を発表した頃から誹謗中傷が相次ぎました。

2019年12月に放送されたネット配信ニュースでは、「18歳のときからネットで発信を続けてきて、あらゆる嫌がらせを受けてきた」などと語りました。

第1子妊娠を公表した際には「流産しろ」と心ない誹謗中傷を受けたも明かしていました。

ブログでは、「Twitterのアンチアカウントから児童虐待の通報運動が起こり、家に警察が来た」などと明かしています。

亡くなった木村花さんについては、Twitterで『「あなたの指で打った言葉が花さんの命を奪ったのだ」と本人に突き付けたい。せめて罪を自覚してほしい。』などと指殺人の恐ろしさを訴えました。

指殺人」とは、パソコンのキーボードやスマホで悪口などの書き込みを行うことで死に追いやる意味を指します。

一方、訴訟準備をしていた時期からは、誹謗中傷をしていたアンチから謝罪メールが届いていることも報告していました。2020年6月には、ブログで発信者情報開示請求が認められたことを報告しています。

 これまで5回の申し立てを行い、2020年11月段階で「明白な権利侵害がある」などとして、合計およそ240件の開示請求が認められたと報告しています。

ネット上での誹謗中傷への対処法

任意の削除依頼

ネット上の誹謗中傷被害に遭った場合、まずはサイト管理者やブログ管理人、サイトの専用フォーム、削除依頼フォーム、メールなどで任意での削除依頼を求めます。

個人で削除依頼も可能ですが、あらかじめ法律の専門である弁護士に相談しておくと、具体的な削除依頼の文章作成やアドバイスを受けることができます。

しかし、実際には任意の削除依頼に応じてもらえないことが多いです。

送信防止措置

削除依頼に応じていただけ場合は、プロバイダ責任制限法による「送信防止措置」を取ることが考えられます。

「送信防止措置」とは、ネット上の誹謗中傷などで書き込みをされた人やその代理人がプロバイダー等へ送信防止措置を依頼することです。

送信防止措置の請求は、プロバイダに「送信防止措置依頼書」を送る必要があります。送信防止措置の依頼ができるのは、権利侵害された本人と弁護士のみです。

 弁護士以外のものが報酬を得る目的で法律事務を代理などを行うと、非弁行為となります(弁護士法72条)。場合によっては、刑事罰が科されることもあります。

  • 送信防止措置依頼書の記載事項
  • 掲載されている場所
  • 掲載されいる情報
  • 侵害されたとする権利(名誉権、プライバシー権、著作権など)
  • 権利が侵害されたとする理由

送信防止措置依頼書を送ると、投稿者に対し削除して良いかどうかを確認する「意見照会書」を送ります。送信防止措置依頼書の結果は、およそ1ヶ月程度かかります。

プロバイダ責任制限法では、送信防止措置依頼に対する義務について規定されていないので、削除するかどうかはプロバイダに委ねられます。したがって、削除に応じてもらえない場合もあります

発信者情報開示の仮処分命令申立て

任意の削除に応じてもらえない場合は、発信者情報開示の仮処分命令申立てを行います。

発信者情報開示請求とは?
ネット上の誹謗中傷で発信者を特定するため、サイト管理者やプロバイダに発信者情報を開示する手続きを言います。

仮処分命令の申立てでは、裁判所に対し発信者のIPアドレスやタイムスタンプ等の開示を暫定的な救済として求める方法です。民事保全法に規定されています。

仮処分命令の申立てを行う理由

アクセスログの保存期間がおよそ3~6ヶ月程度であるため、この期間を過ぎると発信者を特定することが難しくなるからです。

仮処分命令の申立て必要書類

  • 仮処分命令申立書
  • 日本国内を管轄とする上申書(外国法人がサイト管理者となっている場合)
  • 証拠説明書
  • 陳述書
  • 疎明書類を添付
管轄裁判所

相手方の普通裁判籍(原則として住所地)です。相手方が海外の事業者であった場合は、東京地方裁判所が管轄となっています。審理では「債権者面接」と「双方審尋」などが行われることが多いです。

仮処分命令の申立てが認められれば、サイト管理者等にIPアドレスなどを開示してもらうことができます。

発信者情報開示請求訴訟

通常の裁判(本案訴訟)で経由プロバイダ(携帯電話のキャリアなど)に対し、発信者(住所、氏名、携帯の電話番号など)の開示を求めます。

訴訟提起した後は、発信者へ「発信者情報開示に係る意見照会書」が届くケースがあります。

「発信者情報開示に係る意見照会書」とは
誹謗中傷などの書き込みをした発信者の個人情報を開示して良いかどうかを尋ねる書面のこと。これは、プロバイダ責任制限法4条2項に根拠が示されています。

一般的には、インターネットプロバイダから送られてきます。およそ2週間程度で回答を求められますが、期間内に応じないからといって罰則があるわけではありません。

権利侵害が明白であり、開示を受けるべき正当な理由がある場合には、発信者の個人情報が開示されます。

民事上の請求

損害賠償請求

発信者を特定した後は、相手方に損害賠償請求を行います。名誉権、プライバシー権の侵害による慰謝料として、通常は内容証明郵便などで任意の請求を行います。(民法709条、710条)

応じてもらえなければ、損害賠償請求訴訟を提起します。

名誉回復の措置

被害者は加害者に対して損害賠償請求だけでなく、名誉を回復するため必要な措置を求めることができます。

刑事告訴

ネットの誹謗中傷により、悪質な投稿が改善されないケースでは、名誉毀損罪、脅迫罪、侮辱罪、威力業務妨害罪などで刑事告訴を検討します。

刑事告訴は、司法警察員(犯罪捜査機関など)や検察官に対し、犯罪の事実を申告し処罰を求める意思表示をすることです。

まとめ

本記事では、ネットニュースにとりあげられた著名人による、誹謗中傷関連のニュースを取り上げ、その対処法までを解説しました。

誹謗中傷の被害を最小限に抑えるには、

  • 発信者情報開示請求の流れを理解しておく
  • 放置せずに早急に削除依頼をする
  • 早めに法律の専門家である弁護士相談する

などの対策が必要です。

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