誹謗中傷と批判・非難の違いは?線引きはどこなのか法律を踏まえ弁護士が解説

誹謗中傷と批判はどう違う?感想や意見との線引きはどこ?違いについて解説

誹謗中傷と批判や批判には違いがありますが、はっきりとした線引きはありません。知らないうちに誹謗中傷してしまうことはありますが、誹謗中傷は他者の権利を踏みにじる行為であり法的措置の対象になってしまいます。

”豊川弁護士”
この記事では、誹謗中傷と批判、避難の定義や違い、どのように線引きされているのかを弁護士が解説します。

誹謗中傷・批判・非難の定義

誹謗中傷、批判、非難はどのようなものが該当し、どのような違いがあるのか、それぞれの定義を解説します。

誹謗中傷の定義

誹謗中傷」は法律用語ではなく「誹謗」と「中傷」を合わせた言葉です。

誹謗」の意味は「他人を悪く言うこと」「そしること」です。「中傷」は「根拠のないことを言いふらし他人の名誉を傷つけること」です。

つまり、誹謗中傷は「根拠なく他人を悪く言い名誉を傷つけること」という意味になります。悪口の類義語とも言え、例えば、「ゴミ」「無能」などの言葉は誹謗中傷に該当します。

批判の定義

批判」は「ものごとに検討を加え判定・評価すること」「人の言動などの誤りや欠点を指摘し正すべきであると論じること」です。

”女性”
例えば、「感染者が増加しているコロナ禍でオリンピックを開催するのはおかしい」という意見は批判にあたります。

そして、批判に似た意味を持つのが「感想」や「意見」です。

感想は「自分が感じたことを述べる」もので、意見は「自分が正しいと思うことを相手に提案する」という意味があります。

ただ、一般的に批判は否定的な評価に使用されますが、感想や意見は必ずしも悪いことばかりではありません。そのため、厳密には批判と感想・意見は意味合いが異なります。

非難の定義

非難」は「人の欠点や過失などを取り上げ責めること」を指します。

非難する目的は改善点の提案ではなく、単にダメ出しをして相手を責めるものです。例えば、「議会で失言があったのだから〇〇議員は辞職するべきだ」というコメントは非難にあたります。

誹謗中傷と批判や非難の線引きはどこにある

誹謗中傷と批判や非難の線引きが明確にされているわけではありませんが、誹謗中傷は名誉毀損罪や侮辱罪、信用毀損罪などの罪に問われる可能性があります。

しかし、日本国憲法では表現の自由を保障しており、過度な規制強化は表現の自由の侵害につながりかねません。正当な批判活動が抑圧されてしまわないように、誹謗中傷と批判や非難の線引きは必要であると言えます。

”豊川弁護士”
誹謗中傷と批判・非難を線引きする基準はどこにあるのか、憲法が保障している表現の自由に触れながら解説します。

刑事罰による線引き

誹謗中傷は法律用語ではありませんが、刑事罰の対象になる可能性が高いす。一方、批判や非難は法律に違反する行為にはなりません。法に抵触するか否かで誹謗中傷と批判や非難の線引きをすることができます。

誹謗中傷が該当するのは、以下のような刑事罰です。

名誉毀損罪

事実を摘示して相手の名誉を毀損した場合に適用されます。この事実とは真実か虚偽かは問われません。

例えば、「タレントの〇〇さんは不倫している」という情報を拡散すると、不倫の事実が真実でも虚偽でも名誉毀損罪に問われる恐れがあります。

侮辱罪

相手を侮辱する発言をした場合に適用されます。名誉毀損罪と異なるのは、具体的な事実を述べる必要はない点です。

そのため「バカ」「アホ」「きもい」などの抽象的な悪口、「ブス」「デブ」といった身体を揶揄する悪口などは、侮辱罪に問われるおそれがあります。

信用毀損罪

嘘の情報を伝えることで他人の経済的信用を傷つけた場合に適用されます。信用毀損は企業に対するもの多くなっています。

例えば、「あの会社は倒産寸前だから融資しない方がいい」といったデマの情報を拡散すると、信用毀損罪に問われるおそれがあります。ただし、法人に限定しているわけではなく、個人が被害者になるケースも想定されます。

”豊川弁護士”
実際にネット上の誹謗中傷で刑事罰の成否が問われた実例を見ていきましょう。

侮辱罪【木村花さん誹謗中傷事件】

女子プロレスラーの木村花さんがリアリティ番組「テラスハウス」に出演した際の言動をネット上で激しく中傷され、遺書のようなメモを残して自ら命を絶ちました。

その後、木村さんの母親による告訴を受けた警視庁は、木村さんのスマホのネット閲覧履歴などを復元し、約600アカウントによる約1200件の投稿を精査しました。

結果、数回にわたり木村さんのX(旧ツイッター)に「顔面偏差値低いし性格悪いし、生きてる価値あるのかね」といったコメントを書き込んでいた大阪府に住む男性を特定しました。

男性は侮辱罪で略式起訴され、東京簡裁は科料9000円の略式命令を出しました。

脅迫罪【堀ちえみさん誹謗中傷事件】

タレントである堀ちえみさんは、がん闘病中にネットで誹謗中傷の被害を受けました。2019年2月に舌がんの手術を受けたとき、堀さんのブログのコメント欄に「死ね消えろ馬鹿みたい」という書き込みがされました。さらに、食道がんの手術を受けた4月以降には「癌なのにあちこちでたたかれて笑えるわ。次はどんな病気?(笑)」「死ねば良かったのに」など、数ヶ月に渡り何度も悪質な誹謗中傷のコメントが投稿されていました。

堀ちえみさんの関係者は警視庁に被害届を提出し、同年6月には投稿した北海道在住の50代主婦が脅迫容疑で書類送検されました。

民事上の人格権による線引き

人格権は個人の人格的利益を保護するための権利を意味します。人格権は私法上の権利でありプライバシー権、肖像権、平穏生活権、氏名権などの権利が裁判における救済の対象に含まれています。

これらの権利を侵害する発言は、批判や非難ではなく誹謗中傷と判断される可能性があります。

例えば、他人の過去の犯罪歴をネット上で拡散することは、プライバシー権の侵害に該当することがあります。刑法で規定されていない権利のため刑事責任の追及はできませんが、民事上では慰謝料などの損害賠償請求ができます。

言葉の意味による線引き

誹謗中傷と批判、非難はそれぞれ言葉の意味が異なり、具体的には、根拠の有無と目的で3つの言葉を線引きできます。

  • 批判」…発する言葉に根拠があり、正しい方向へ導くための建設的なものになっている発言
  • 非難」…根拠はあるが、目的が他者への攻撃であるダメ出し
  • 誹謗中傷」…根拠なく他者を攻撃するもの

また、「批判」には相手に対する思いやりがあります。しかし非難と誹謗中傷にはありません。

”豊川弁護士”
言葉の意味による線引きは、根拠の有無と目的、相手の人格を尊重しているか否かがポイントになります。


参考:Weblio辞書・誹謗中傷

表現の自由との関係

表現の自由は個人が持っている思想・意見・主張・感情などを外部に表現し発表する自由と定義されています。日本国憲法第21条1項では集会・結社・言論・出版その他一切の表現を保障し、2項では検閲の禁止と通信の秘密を保障しています。

さらに、憲法では自らの精神活動を表現するために表現の自由が保障されています。表現の自由が保障されている以上、誹謗中傷と正当な批判を区別せずに制限することは、言論活動の萎縮につながるリスクが生じてしまいます。

インターネット上で増え続ける「誹謗中傷」が社会問題になり「いままでの法制度では対処できないから新しい法規制が必要だ」といった主張はありますが、大切な表現の自由を狭めることに繋がりかねません。しかし、表現の自由が認められているとはいえ、他人の権利を不当に侵害するような表現活動は許されないでしょう。

”女性”
誹謗中傷は他人の名誉を傷つける行為であり、被害者の申し立てにより刑事罰や損害賠償の支払いといった法的措置を受ける可能性があるのです。


参考:外務省

誹謗中傷しないためにできること

批判や意見のつもりでも、根拠のない悪口に見なされれば誹謗中傷になります。誹謗中傷しないためには、それぞれの意味の違いを知ることが大切です。

SNSや掲示板などに書き込むときは、自分が言われてどう思うか考えるようにしましょう。投稿する前に内容を見直し自分が言われて嫌な気持ちになるのであれば、他の人、を傷つける可能性が高いと言えます。

POINT
相手へのリスペクトや根拠があり、正しい方向へ導くための発言は「批判」、根拠はあるが攻撃性のあるただのダメ出しは「非難」、根拠が無いただの悪口は「誹謗中傷」と分けられます。

誹謗中傷の心当たりがあるときの対処法

過去に誹謗中傷をした心当たりがあれば、削除依頼や弁護士に相談しましょう。誹謗中傷は法に触れる可能性があり、何もせずに放置しておくのは危険です。

X(旧ツイッター)やインスタグラムなどのSNSは、自身の投稿はあとから削除できる機能があります。掲示板など自分で削除できない場合は、誹謗中傷が掲載されているサイトの運営に削除依頼を行います。サイトのお問い合わせフォームなどからコンタクトを取ってください。

しかし、すでに投稿が拡散されていると、自身の投稿を削除しても誹謗中傷のコメントはずっと残ってしまいます。また、サイトの運営側が、削除に応じてくれないケースも想定されます。

心配なときは、弁護士に相談してください。自身の投稿内容が誹謗中傷に当たるのかの判断をしてもらえますし、ケースに合わせた対処の仕方をアドバイスしてもらえます。弁護士は費用がかかるのが難点ですが、初回の相談は無料としている弁護士事務所なら気軽に相談できます。

 被害者に訴えられて有罪が確定すれば、前科がつきます。会社をクビになるといった社会的な制裁を受けるリスクもあります。最悪の事態を避けるためにも、すぐに投稿を削除したり、弁護士など専門家への相談をしたりして対策しましょう。

まとめ

誹謗中傷と批判、非難の線引きはあいまいであり、自分は批判だと思っても相手に誹謗中傷と捉えられる可能性はあります。

誹謗中傷に該当すれば刑事事件として逮捕、起訴されたり、民事事件として損害賠償を請求されるリスクが発生します。

自分の書き込みが誹謗中傷なのか不安、誹謗中傷してしまったけれどどう対処して良いかわからないといった悩みがあれば、弁護士に相談し解決を図ってください。

執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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