自営業者や個人事業主が自己破産するとその後どうなる?

自営業者や個人事業主がそれらで生計を立てている場合、事業資金として銀行などからお金を融資してもらいながら運営していくことも多いでしょう。事業が順調ならば毎月の返済も問題ないものの、業績が悪化すると返済が厳しくなり、運営資金をさらに融資してもらうという悪循環になることも多いです。

返済が不可能になって、自己破産と言う手段を考えた場合、個人の破産手続きとどこか違いがあるのでしょうか?

この記事では、自営業者や個人事業主が自己破産するときの手続きの流れや、発生するデメリットなどについて解説しています。

個人と自営業者の自己破産の違いは?

一般的な自己破産の手続きは以下のような流れになります。

1.弁護士への相談~受任
無料相談などで弁護士に相談し、弁護士に依頼して自己破産を行うことが決定したら、各債権者に対して、弁護士は受任通知を送付します。

この時点で、債権者が直接の取り立てや連絡を行うことはできなくなり、全ての交渉は弁護士を通じて行われるようになります。

借金の返済も、ストップになります。

2.必要書類の取り揃え
債権者から開示された取引履歴を確認し、正当な利息に照らし合わせて引き直し計算を行い、正確な債務の金額を確定します。引き直しすることで、過払い金が発生しているかどうかについても判明します。

金融機関からの取引履歴が開示されるまで、平均して1~3ヵ月の期間が必要なので、同時に裁判所へ提出する書類についても準備をします。

3.裁判所への申し立て
裁判所で受付を済ませた後に、東京地裁の場合には、裁判官と即日面接があります。ここで、同時廃止にするか管財事件にするかが決められます。なお、即日面接に出席できるのは、申立代理人となった弁護士だけです。

4.破産手続き開始
裁判官との面接で問題がなければ、破産手続きが開始されます。ここで、手続きが同時廃止か、管財事件かどちらの方法で進められるかについても決定します。

同時廃止の場合は、破産手続きが開始されると同時に手続きが終了して、免責の手続きや審尋に進みますが、管財事件になると、破産管財人による財産の処分や、債権者集会などがあり、手続きが終了するまで長い時間が必要になります。

5.免責確定
裁判官と免責審尋を行い、特に問題がなければ免責が確定します。免責が確定することで、借金の返済義務がなくなり、破産することで一時的に職業が制限されていた場合も、復権し、制限されていた職業に再び就くことができます。

自己破産の手続きの流れについては、個人の場合も自営業者や個人事業主の場合も違いはありませんが、準備に必要な書類などは数が多く、債務の金額の計算も複雑になります。
また、個人の自己破産の場合は、資産の保有状態や、免責不許可事由などによって、同時廃止か管財事件のどちらかで手続きが進められますが、自営業者や個人事業主の場合は、資産の処分が必要になるので、同時廃止になることはほとんどなく、管財事件として手続きが進められます。

個人の自己破産で管財事件になった場合、申し立てから免責まで、少額管財では3ヵ月から6か月、管財事件では6ヵ月から1年程度かかりますが、個人の場合よりも、処分すべき資産が多くなること、従業員などとの契約の清算が必要となることから、自営業者や個人事業主の方の場合は、さらに期間が長くなるのが一般的です。

自営業者や個人事業主が自己破産した場合のデメリット

自営業者や個人事業主が自己破産した場合、どのようなデメリットが発生する可能性があるのでしょうか?

契約の解消

自営業者や個人事業主が自己破産をした場合、融資を受けていた金融機関との取引はできなくなります。また、自己破産によって、自分達の売掛金や債券が帳消しとなってしまった取引先との契約が無くなるだけではなく、融資された資金を返済する能力がない人物と見做されてしまうため、新しく取引を行う場合でも、リスクの高い取引先として契約することを敬遠されてしまいます。

資産の処分

自己破産をすると、所有している財産は処分され、債権者への返済に充てられます。
その時に所有できるのは「新得財産」、「99万円以下の現金」と「差押えが禁止されている財産」です。また、自由財産の拡張が裁判所に認められれば、それらも手元に残せます。

家や不動産などの高額資産を所有している場合も、換価処分の対象となります。

自由財産以外の、車輛や機械設備、原材料など事業の継続に必要な資産は、自由財産の拡張が裁判所に認められなければ、換価処分の対象となるため、今まで通り所有することができなくなります。

ブラックリスト

個人の自己破産と同様に、自営業者や個人事業主が自己破産をした場合も、信用機関の情報に事故情報が記載されます。事故情報は一般的にブラックリストと呼ばれるもので、銀行や信用金庫、消費者金融などの金融機関が新規の融資の際に情報を共有するものです。

自己破産してから5~10年間、事故情報が掲載されるので、ブラックリストに掲載された情報が消去されるまでは、新たな融資を受けることができなくなります。

自己破産後も自営業者や個人事業主を継続できる?

資産の所有が不可能になったり、新たな融資を受けることができなくなるので、自営業者や個人事業主がそのまま事業を継続することは難しいですが、事業を継続する方法はあるのでしょうか?

事業廃止が原則

破産開始手続きが為されると、自由財産を除く破産者が所有していた全ての財産は、破産財団に組み込まれて、財産の処分や管理については破産管財人に一任されるため、事業で使用していた機器や車輛などは使用できなくなります。

破産法では、破産手続きが開始された後でも、裁判所の許可を得た上で、破産者の事業を継続できると定められていますが、この場合の事業継続というのは、売掛金の処分や、事業譲渡などの業務になり、財産処分や事業の譲渡が完了した時点で、破産管財人による事業継続は終了し、事業は廃止されるのが原則となっています。

小規模個人再生を利用する手も

自己破産をすることで、借金は帳消しになりますが、同時に事業の継続が実質できなくなってしまいます。それでは、事業を続けながら債務整理を行う方法はないのでしょうか?
「個人再生」という方法があります。

個人再生は、自己破産とは違い、借金の返済が免除されるわけではありませんが、原則3年間の分割払いで借金の残額を返済することを条件にして、概ね5分の1まで借金が減額されます。

また、自己破産では原則として自由財産以外の資産の処分が必須でしたが、個人再生の場合は、資産を処分することが必須ではないため、事業の継続に必要な資産を保有して、今まで通りに事業を継続することが可能です。

但し、負債の金額が5,000万円以下将来的に安定もしくは反復した収入が見込めるなど、個人再生の手続きを行うためには、条件がありますので、注意が必要です。

これからも事業を継続したいと考えているならば、自己破産を選択せずに個人再生といった手段を取るのも一つの方法です。

自営業者の自己破産はまず弁護士へ相談

個人の自己破産手続きと比べると、個人事業主や自営業者の手続きに必要な書類は多く、計算方法なども複雑になります。

また、自営業者や個人事業主の場合、破産手続きが管財事件として進められますが、裁判所によっては、弁護士による少額管財で手続きを進めることができます。

少額管財の場合、裁判所へ納める予納金の金額が安くなるので、弁護士への依頼費用がかかることを考えても全体的には料金が抑えられる可能性があります。

回収前の売掛金についても、自己破産の手続きを行った後は、保有資産として処分されてしまいます。破産手続きの前に、どのようなことをやっておくのがいいのか?などについてもアドバイスをしてもらうことで、自分の中でも具体的な今後のプランを考えることができるようになると思います。

自己破産を前提に相談にいくのではなく、これから自分はどのようにしたいのか?そのためにやらなければならないことはどんなものなのか?ということを明白にするためにも、無料相談に行って、弁護士からアドバイスを受けることをおすすめします。

まとめ

自己破産をすれば、借金は帳消しになりますが、反面、今住んでいる家や車が処分されてしまうため、なかなか自己破産の決断ができない人が多いのが事実です。

自営業者や個人事業主の場合、資産の没収などの他に、今まで世話になった取引先の企業に迷惑をかけてしまうということを恐れて、ギリギリまで我慢して事業を継続している方も少なくありません。

しかし、ギリギリまで我慢して、体力がなくなった時に自己破産をすると、従業員の給与の支払ができなかったり、賃貸ビルから引っ越すことができなかったりと、さらに状況は悪くなってしまい、多くの方に迷惑を及ぼす可能性があります。

また、無理に資金繰りを行うために、違法な業者から融資を受けたりすることは、取り返しのつかない状況に陥る可能性があり、自己破産の手続きにおいても、免責不許可事由に該当してしまう恐れがあります。

借金の問題は時間が解決するものではなく、時間が経てば経つほど問題が悪化していくものなのです。

弁護士法人あまた法律事務所は、過去に5000人もの方々を債務整理により救って来たという実績があります。個人だけではなく、自営業の方や個人事業主の方の借金の相談も受け付けをしておりますので、自分一人で悩むのではなく、是非一度無料相談を利用してみてください。

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