個人で自己破産した場合のメリット・デメリットを解説

シングルマザー

自己破産は所有財産を処分する必要があります(残せる財産もあります)が、借金の免除を受けることができる債務整理の一種です
自己破産は個人でも法人でも手続きを行うことが可能ですが、個人で自己破産手続きを行うと、どのようなことが起きるのでしょうか。

個人が行う破産とは?

自己破産の手続きは株式会社などの法人だけではなく、個人も手続きを行うことが可能です。

ここで言う個人には、個人で仕事を営んでいる個人事業主や、自営業者はもちろんのこと、会社勤めをしているサラリーマンや主婦の方、無職の方も含まれます。

実際、自己破産という言葉は個人の破産について使われることが多く、法人が破産した場合は「法人破産」という言葉が使われます。

自己破産は原則的に所有する財産を処分します。どの程度財産を所有しているかによって手続きの内容や費用が変わります。個人と法人では、所持している資産の大きさからも違うので、手続きの内容が異なる部分があるのです。

個人破産と法人破産の違い

自己破産を行う目的は、免責を裁判所から認めてもらい借金の支払い義務を法的に無くしてもらうことです。個人と法人どちらも借金をなくすという目的は同じですが、手続きの期間や費用が異なります。

同時廃止と管財事件

個人破産の約7割は、費用も手間も自己破産の中で少ない「同時廃止」という手続きになると言われています。残りの約3割は「管財事件」となります。

同時廃止は、破産管財人が選任されず、破産手続き開始と終了が同時に行われます。
このため、申立てにかかる費用のほかには費用が掛からず、期間も短くて済みます。ですので、債務者にとっては同時廃止が望ましいと言えるでしょう。

管財事件の場合は、破産管財人が選任されて、借入や財産、免責不許可事由の調査や財産の処分などの手続きを行います。

個人の自己破産で管財事件として扱われるのは、債権者に分配する資産を保有しているときや、自己破産の理由などが免責不許可自由に該当しているときなどです。
管財人への報酬という金額面だけでなく、時間的にも資産の状況把握を含む管財人の調査期間が必要になります。
このため、債務者にとって管財事件は同時廃止に比べ、費用も手間もかかると言えます。

法人の破産は、必ず「管財事件」になります。
法人の場合でも管財事件になると、裁判所から「破産管財人」が選任され、破産管財人への報酬を支払う必要があります。

管財事件のポイント
「管財事件」になってしまうと、上記に加えて
・約3ヶ月の期間は送られてくる郵便物が破産管財人の所に転送されてしまう
・破産管財人の打ち合わせにも出席する必要がある
など、さまざまな負担が生じることになります。

自己破産の中でも同時廃止を目指すのが一般的です。

個人の自己破産のデメリット

どんなに多額の借金があっても、免責が許可されれば、返済の義務がなくなるというのは自己破産のメリットですが、デメリットも発生することを忘れてはいけません。

一定の価値以上の財産を手放さなければならない

「自由財産」以外は原則的に処分の対象となります。
この「自由財産」とは、手続き後に生活を送るために必要な衣服や食料などで、必要最低限とみなされる資産のことを指します。
自由財産以外のもので一定の価値があると判断された場合は没収され、返済に充てられることになります。
このため、家や車などを所有している場合、手放さなければいけない可能性が高いと言えるでしょう。

家族に影響を及ぼす可能性がある

所有財産を処分しなければならないため、持ち家を手放すことになれば、同じ家に住んでいる家族に影響が出てしまうことになるでしょう。
多くの場合は引っ越しが必要になるため、子どもの転校や生活リズムの変化などの影響が考えられます。

ブラックリストに載る

他の債務整理と同様に、自己破産した場合は信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に事故情報として掲載されます
破産手続きは、事故情報として扱われるので、ブラックリストに情報が載っている間は、現金の借入や、新規のクレジットカード発行などがほぼ認められないという制限がかかります。

このデメリットは、任意整理、個人再生を行った場合でも生じます。
また、債務整理をせずとも、返済の延滞を繰り返している場合もブラックリストに載っている可能性があるため、自己破産固有のデメリットということではありません。

官報に個人情報が載る

自己破産をしたときは、政府が定期的に発行する機関誌「官報」に掲載されます。官報自体は、ごく限られた職業の方が読むものなので、一般の人が目にする機会はほぼないと言われていますが、情報を知られる可能性はゼロではありません。

一定期間は就けない職業がある

破産手続きが終了するまでは、就けない職業があるということもデメリットの一つになります。
弁護士などの士業、貸金業、建築業、生命保険の営業、警備業など、一部の職種に就くことができません。業務ができない期間は、破産手続きを開始してから免責が許可されるまでの間です。自己破産の手続きが全て完了すれば、制限はなくなります。

元々これらの業種に就いていた場合は、休職の申請を出して自己破産の手続きが終わるのを待つか、職業制限とは関係のない業種に転職をする必要があります。

保証人に迷惑がかかる

保証人に迷惑がかかるという部分も気になる点の一つです。
自己破産を行うと、そのタイミングで保証人のもとに借金の返済請求通知が届きます。

保証人が一括請求に応じられない場合は、保証人の方も債務整理を行わなければならない可能性がでてきます。

このように自己破産ではメリットとデメリットが存在しています。まずはこれらのことを理解し、自分の生活への影響を考え、自己破産をするべきか否かを検討していきましょう。

自己破産をするにはどうしたらいいの?

自己破産の手続きに関しては、本人が自力で進めることも可能です

しかし、手続きを行うためには、法律の知識が必要となります。法律に詳しくない個人が行う場合、書類の訂正や裁判所への出頭回数が増えてしまうなど、時間がかかってしまうことでしょう。
基本的に裁判所に出頭するのは平日になるので、会社員の方などは時間的にも厳しいでしょう。

また、債権者側から残金の一括返済を求められた場合は債権者との交渉の必要があるため、本人で行うことが難しく、手続きは弁護士へ依頼するケースが多いと言えます。弁護士へ依頼した場合は、相談から免責認定まで包括的なサポートを受けることが可能です。

弁護士と同様、法律の専門家である司法書士に自己破産手続きを依頼する方も少なくありません。依頼費用については若干、司法書士の方が安い傾向がありますが、弁護士に依頼した場合と司法書士へ依頼した場合では、次のような違いがあります。

弁護士と司法書士に依頼した場合の違い
・代理人になれる
弁護士は債務者の代理人として自己破産手続きを行います。そのため、書類を作成するだけではなく、代理人として裁判所へ出頭したり、申し立てを行ったりします。司法書士は代理人にはなることができず、あくまでも書類作成代行を行うだけになるので、裁判所へ提出する書類は作成してもらえますが、裁判所へ出頭したり、手続きを行ったりするのは自分自身でやらなければなりません。

・少額管財事件を取り扱える
仮に管財事件となった場合、司法書士よりも弁護士のほうが有利になるケースがあります。
弁護士であれば、管財事件の手続き始めに破産者が裁判所へ支払う予納金が安くなる可能性があります。
また、弁護士が代理人となっている場合、少額管財を扱うことができます。少額管財とは通常の管財事件よりも安い予納金で手続きが可能です。

司法書士に依頼した場合は本人申立てとなるため、通常の管財事件となります。

2014年に行われた調査では95%以上が弁護士・司法書士へ依頼しており、その中でも弁護士への依頼は約8割を占めていました。


自己破産の手続きの流れ

自己破産の手続きには以下の書類が必要になります。

自己破産の手続きに必要な書類
・ 自己破産申立書
・ 陳述書
・ 住民票・戸籍謄本
・ 給与明細など収入が分かる書類
・ 預貯金通帳の取引明細のコピー
・ 源泉徴収票・課税(非課税)証明書
・ 居住地が分かる証明書
・ 資産目録
・ 債権者一覧表
・ その他、事情を説明する上で必要な書類

本人の職業などによって、必要書類は変わってきますので、会社員で退職金がある場合は、退職金の見込み金額の証明なども必要になります。

裁判所で発行される書類や、市町村役場まで取りに行かなければならないもの、会社で用意するものなど、様々な書類が必要となります。弁護士に依頼することで、詳しく教えてもらえるので、書類を取りそろえるための負担は軽くなります。

弁護士に自己破産手続きを依頼した場合、債権者全員に受任通知が発送されます。受任通知が届いた後は、債権者から債務者に直接返済を請求することができなくなるので、返済の督促や取り立ても止まります。

また、自己破産手続きが終了するまでの間は、月々の返済もストップになります。

裁判所へ提出する書類作成が完了し、必要書類を全て取りそろえたら、裁判所への申し立てを行います。弁護士に依頼している場合は、申し立ての際に裁判所へ行く必要はありません。

申し立て後に、裁判所と弁護士、債務者本人による三者での面談が行われ、借金をした理由や破産に至った経緯などの質問を受けます。

破産申立てを行うと、裁判所によって、破産手続きが「同時廃止手続き」か「管財事件」のどちらで進められるか決められます。
管財事件の場合は、破産管財人が選定されます。同時廃止の場合は、破産手続き開始と同時に手続きが廃止され、破産の手続きが終了します。

手続き終了後、裁判所から免責審尋が行われ、問題がなければ、後日、免責が認められることになります。管財事件の場合は、債権者集会や財産の処分などを経て、破産手続きが終了します。手続き終了後に同時廃止と同様に免責審尋を経て、免責の可否が判断されます。

他の債務整理との違い

債務整理の方法には自己破産の他にも任意整理や個人再生があります。これらの債務整理方法と自己破産はどこが違うのでしょうか?

・借金の減額
自己破産では、免責が認められたら多くの借金の返済義務がなくなります。個人再生の場合、借金の総額を概ね5分の1程度に減額することができますが、減額された借金を原則3年間で返済しなければなりません。

任意整理では、将来的に発生する利息や、遅延損害金などをカットできる可能性はありますが、借金の総額はほとんど減額されることはありません。

このように個人再生、任意整理では借金が残り返済が続くことになる一方、自己破産は、借金をなくすことができる手続きになります。

・官報への掲載
自己破産と個人再生は裁判所を通す手続きなので、官報に個人情報が掲載されます。

任意整理は、業者との直接交渉によって、今後の支払い方法を決定する債務整理方法なので、官報に掲載されることはありません。

・財産の処分
自己破産は、自由財産を除き、原則として所有している財産を処分しなければなりません。

任意整理・個人再生では、財産を処分されることはありません。ただ、個人再生やローン支払中の商品を含めて任意整理をした場合、引き上げられてしまう可能性があります。ただし、個人再生の場合、住宅資金特別条項を利用して、住宅のローンを支払い続けることもできるので、そのまま家を所有し続けることが可能な場合があります。

・保証人への影響
自己破産と個人再生の手続きは全ての債権者が対象となります。そのため、保証人がついている借金がある場合は、即座に保証人に請求がいってしまいます。

任意整理では、整理する業者を選択できます。
保証人つきの業者を対象にしなければ、その後も自分で返済し続けることができるので、保証人へ迷惑をかけることもありません。

まとめ

どんな借金の金額が大きくても、返済の義務がなくなる自己破産という手段は、人生をリセットして、再起するための手段とも言えるでしょう。
しかし、状況によっては自己破産をしなくても、他の債務整理で借金問題を解決できる可能性もあります。個人再生や、任意整理ならば、返済義務はなくなりませんが、デメリットは自己破産に比べ小さくなります。
どの程度の借金ならば自己破産か?任意整理で対応できるか?それは借金の総額だけでは決めることはできません。今の収入や将来の収入予測、過払い金の可能性などを含めた総合的な判断で、債務整理の方法を決めるのがよいでしょう。
弁護士法人あまた法律事務所は、借金問題の解決に特に力を注いでおり、現在までに5,000人以上の借金に苦しむ方を救ってきた実績があります。無料相談で、現在の状況を話していただければ、各債務整理の手続きにどんなメリットがあるかをアドバイスできます。
借金問題は、1人で考えるよりも他人に話した方が精神的にも楽になり、より良い解決方法が見つかりやすくなるでしょう。

1人で抱えるのではなく、ぜひ一度、無料相談を利用してお悩みをお聞かせください。

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