「一度任意整理をしたことがあるけど、もう一度任意整理をしたい」
経済事情の変化は誰にでも起こりえることですから、無理をせずに早めに任意整理などの手続きを考えるのは悪いことではありません。でも「2回目は大丈夫なの?」と思われる方もいらっしゃることでしょう。
任意整理は、裁判所の手続きによるものではなく交渉で進める借金解決の方法です。ですので、債権者と合意できればよく、法律で任意整理の期間や回数が規定されているということはありません。つまり、過去に任意整理をした経験があっても任意整理は可能です。
任意整理ってなに?
2回目の任意整理をご説明する前に、そもそも任意整理とは何かを軽く説明していきます。
任意整理とは、貸金業者との交渉で将来の利息をカットし、返済方法、返済期限などを再度定めて計画的な返済をしていけるようにしていく手続きのことです。
自己破産や個人再生のように裁判所を介する必要はなく、交渉で借金問題を解決します。任意整理をすると信用情報(いわゆる、「ブラックリスト」)に掲載されますが、官報に掲載されることはありません。また、裁判所を介する必要がないため、決まった条件がなく、手続きも比較的簡素で、また債務整理をする貸金業者を自由に選択できるという特徴があります。
任意整理の費用はどれぐらい?
任意整理の費用は依頼する弁護士や司法書士事務所によって決められています。
貸金業者の数、減額できた金額に応じて費用が決まるというのがよくみる報酬形態です。
相場としては貸金業者1社あたり3~5万円、減額できた金額の10~20%となっています。
たとえば、A社40万円、B社60万円の2社から借金があり、任意整理によって返済額がA社30万円、B社45万円と減額できた場合の費用を考えます。
A社:40万円⇒30万円 減額10万円
B社:60万円⇒45万円 減額15万円
交渉する貸金業者が2社のため、3~5万円×2社=6~10万円
減額できた金額(10万円+15万円=25万円)への報酬として25万円×10~20%=2.5~5万円
よって弁護士や司法書士への報酬としては8.5~15万円ほどになります。
任意整理の費用が減額する金額を上回ることはある?
少額の借金、金利が低い場合を除き、費用が減額金額より高くつくということはないと言えるでしょう。
というのも、任意整理は成功報酬型でやっている事務所が多く、減額できなかった場合の費用が発生しません。
また、相談を受ける中で債務者にメリットのない場合はそもそも依頼を受けないという事務所が大半です。
任意整理は2回目でもできる?
任意整理は交渉により借金問題を解決するものなので、過去に任意整理をした経験があっても再度交渉をすることは可能です。自己破産や個人再生(ただし、小規模個人再生は除く。)をした場合は確定から7年間は破産手続そのものができませんが、任意整理には特に期間などは定められていません。
ですが、2回目の任意整理は、場合によっては貸金業者との交渉が難しいこともあります。
2回目の任意整理に必要な期間
2回目の任意整理に必要な期間は、1回目の任意整理より長くなることがあります。というのも、1回目より2回目の方が、債権者との交渉に時間かかるケースがあるからです。もちろん、スムーズに交渉が進むこともあります。
では、なぜ2回目だと交渉に時間がかかるのか…それは、貸金業者…つまり債権者側からすれば「なぜ2回目の任意整理が必要なのか」「返済はできるのか」など理由を丁寧に説明する必要があるからです。債権者にとっては”理由”はとても重要な要素といえます。どうして2度目の任意整理が必要になったのかについて「それなら仕方がないよね」と思える理由であれば、任意整理に応じてくれる可能性は高くなります。
こういった事情の説明に時間を要するケースがあるので、1回目の任意整理よりもある程度長く時間がかかると考えておく方がよさそうです。
2回目の任意整理の費用
2回目の任意整理の費用については、1回目とほとんど変わりません。法律事務所ごとに料金が定められていますので、その料金に従って費用の請求がされます。任意整理の費用は事務所によって異なり、1件当たり40,000円から80,000円程度と事務所により幅があります。
ですが、先ほど説明した理由で交渉が難航することが予想され、弁護士費用を上乗せされることもあります。また事務所によっては、別途実費や、裁判所出廷の日当等が発生することもあるので、個別に弁護士事務所に問い合わせをしてみましょう。
2回目の任意整理が難しいケース
2回目の任意整理は交渉は可能ですが、債権者が応じてくれないケースもあります。
2回目の任意整理で交渉が難航しやすいケースとしては、1回目の任意整理のときに交渉した債権者と再度交渉するケースです。
債権者からすると、一度任意整理という形で譲歩(将来利息のカット、返済計画の見直し)したわけです。それにも関わらず、再度の譲歩を求められると難色を示すのも無理がないことです。
例えば、1回目の任意整理の後で経済的な事情が変わってしまい、今まで通りの支払いが難しくなったので、再度支払期限についての交渉をする、ということも可能ではあります。ですがこのような場合は、債権者が再度の交渉に難色をしめすことがあります。
成功させるためのポイント
2回目の任意整理は1回目より難しいケースもあるわけですが、成功させるためにはポイントがあります。
・完済する意志を伝えて明快な返済計画を立てる
・2回目の任意整理であることを弁護士に伝える
任意整理そのものは、契約者本人が債権者と交渉をしても法律的には問題ありません。ですが、実質上、契約者本人が任意整理の交渉をするのは1回目であっても難しくオススメできません。
また弁護士に依頼する際には、2回目の任意整理であることを隠さずにあらかじめ伝えておくことも大切です。「2回目の任意整理なんて言いにくい」とか「黙っておこう」なんてことをしてしまうと、交渉に影響する可能性もあります。恥ずかしがることはありませんし、弁護士には守秘義務があるので弁護士の口から情報が外部に洩れることはありません。ですので、隠さずに事情を説明しましょう。
2回目の任意整理となると、交渉は1回目より難航する可能性大です。ですので、成功させるためには自分で交渉をせずに弁護士に依頼するのが無難です。
仮に1回目の任意整理は自分で交渉できたという方でも、2回目の交渉は弁護士に依頼されることをオススメします。
2回目の任意整理に失敗したら?
これまでご紹介してきた通り、任意整理は2回目でも交渉することは可能です。もちろん、弁護士は手段を尽くして相手方と交渉していきますが、2回目となると交渉が難航することもありますし、任意整理に応じて貰えないケースも考えられます。
これは、法律の効力で借金を減らす個人再生や、借金そのものを0にする自己破産とは違って、任意整理には法的な強制力がなく、どうすることもできない部分でもあります。
粘り強く交渉をしたとしても、それでも、どうしても相手が交渉に応じてくれない場合は、任意整理は失敗となってしまいます。
自己破産
任意整理に失敗しても、自己破産という方法があります。自己破産は裁判所の手続きを経て行うものですが、任意整理の交渉をしていたから自己破産ができないということはありません。
自己破産は
- 官報に名前が掲載される
- 特定の職業(資格)について一定期間制約を受ける
- 家や車などの財産(基本的には20万円以上の財産)がなくなる
- 任意整理に比べると手続きが複雑で書類の準備が大変
というデメリットがあります。
そして、信用情報に掲載されてしまいますが、これは任意整理と同じです。
ですが、裁判所が自己破産を認めた場合、破産の対象となる債権者はその決定には従わなければなりません。なので、任意整理で交渉失敗しても、自己破産をするという方法もあります。
個人再生
自己破産以外にも、個人再生という救済方法があります。
個人再生も自己破産と同じ様に裁判所の手続きが必要です。所定の書類を提出して、認可されれば借金は原則1/5に減額されます。そして、減額された借金を3年~5年程度(原則3年)の分割で支払っていくことになります。
自己破産のようにすべての借金がなくなるわけではありませんが、法律の効果で借金を減額できるので、債権者が交渉に応じてくれなくても、裁判所が認可すれば借金をに減らすことができます。
個人再生のデメリットは
- 官報に名前が載る
- 信用情報に掲載される
- 任意整理に比べると手続きが複雑で書類の準備が大変
という点です。ですが、個人再生には自己破産にはない大きなメリットがあります。
それは、一定の条件を満たしている場合は、自宅を手放さなくてもよいという点です。住み慣れた家を手放したくない…家族に迷惑をできるだけかけたくないという場合、個人再生という方法もあります。
信用情報に掲載されるというデメリットは、任意整理や自己破産と同じですが、自宅を残せる可能性があること、そして、法的に借金を減額できるのは大きな魅力です。
裁判所の認可が降りた場合は、債権者はこれに従う他ありません。ですので、債権者が任意整理に応じてくれなくても個人再生の手続きをするという方法があります。
まとめ
今回は2回目の任意整理についてご説明しましたが、いかがでしたか?
任意整理は2回目だからできないということはなく、特に法律で期限・回数なども定められていません。ですが、場合によって交渉に時間がかかるケースや債権者が交渉に応じないという可能性も高くなります。