誹謗中傷は誰にでも起こりうる
最初に、誹謗中傷とはどういったものなのか、誹謗とは、中傷とは、といった言葉の意味の解説とどういう人が誹謗中傷の被害に遭っているのかを説明していきます。
誹謗中傷は、一部の芸能人や有名人だけではなく、誰の身にも起こる可能性のあることです。
誹謗とは? 中傷とは?
誹謗中傷とは、根拠のない他人の悪口を言いふらしたり、他人を罵ったりする行為です。
「誹謗」とは他人の悪口を言うことで、「中傷」は根拠のない内容で他人の名誉を侵害することを指す言葉です。もともと、別々に使われてきた2つの言葉が結びついて、近年、誹謗中傷という言葉として広く使われるようになりました。
決して許される行為ではありませんが、インターネットの普及により、匿名で他者を攻撃しやすくなったことから、最近ではネット上での誹謗中傷が社会的な問題になっています。
また、誹謗中傷とよく混同されやすいものに「批判」がありますが、批判の場合は何らかの根拠をもとにして相手を評価する行為で、誹謗中傷のようにデタラメをいうわけではありませんし、悪いところだけでなく良い点をきちんと認める点が異なります。
誰もが誹謗中傷の被害に遭う可能性がある
ネットやSNSが生活に浸透にともない、近年では、ネット上での誹謗中傷が問題視されるようになっています。
女子プロレスラー木村花さんが誹謗中傷により亡くなった事件は世間から大きな注目を詰め、特に芸能人やスポーツ選手への誹謗中傷がよくニュースで取り上げられるようになりました。
ですが、誹謗中傷の被害は有名人に限ったものではなく、ごく普通の人の身にも起こりうることですし、ネットだけに限らず、リアルでも被害に遭う場合があります。
大人の間でも職場の同僚のように顔見知りからネット上の全く知らない人まで、誹謗中傷の被害を受ける可能性がありますし、2017年に起きた東名高速でのあおり運転事故で無関係の会社が犯人の勤務先としてデマの情報を流された事件のように、個人商店や企業が被害に遭い業務にも支障が出るケースも増えています。
また、誹謗中傷はネットでだけ起こるものではなく、2017年6月には、同僚を中傷するビラを病院のトイレに貼った女性研修医が逮捕される事件も起きており、リアルで被害を受けることもあります。
誹謗中傷をしているのはこんな人
ここまで、誹謗中傷の内容と、誰もが被害を受ける可能性があることを述べてきました。
実際に誹謗中傷の被害に遭ったときの精神的苦痛は、とても辛いものですし、相手の見えないネットだと、言葉によって傷つくだけでなく、どんな人が自分を攻撃しているのかわからず相手に恐怖心をもってしまうこともあるでしょう。
いったい加害者は、どういった理由でこんなことをしているのか、疑問に思うかもしれません。
そこで、ここからは、ネットやSNSで誹謗中傷している人とはいったいどんな人なのかを解説していきます。
自分にコンプレックスをもっている人
自分の学歴や容姿、経済力などに何らかのコンプレックスを抱えている人には、プライドや嫉妬心から他人を攻撃する人がいます。
本来自分の劣等感は自分自身で解決しなければならないものですが、それができないため、他人を中傷することで憂さ晴らしをしようとするタイプで、自分にはないものをもっているというだけの理由で全く面識のない相手に誹謗中傷を繰り返すこともあります。
社会に対する不満を抱えている人
他人や社会に対する不満を抱えている人も、ネットでの誹謗中傷をストレスのはけ口に利用することがあります。
自分が上手くいっていないのは、他人や社会が悪いからだと思っているため、自分より幸せそうな相手や人生が順風そうな相手をターゲットに攻撃してきます。
このタイプも、被害者本人に恨みがあるわけでなく、多くの場合は、たまたま目についた相手を攻撃しているだけです。
歪んだ正義感をもっている人
ネット上には歪んだ正義感や行き過ぎた正義感をもち、自分が「悪」とみなした相手を執拗に攻撃してくる人がいて、バイトテロのようにトラブルを起こした人や犯罪に関わった人に対して、個人を特定できる情報を投稿したり、炎上に加担したりすることが問題になっています。
やっているほうは相手が悪い人間だから何をやってもいいと思っている傾向がありますが、たとえトラブルや犯罪を起こした人でも、その人に対してどんなことをしても許されるわけではありませんし、個人を特定できる情報を無闇に拡散すれば人権侵害にあたります。
また、東名高速のあおり運転事故でのデマ事件のように、まったくのデタラメな情報によって炎上が起きているケースもあります。
相手の反応をみて楽しんでいる人
わざと相手を傷つけたり、相手を困らせるような書き込みを行い、やられたほうの反応をみて楽しんでいる愉快犯です。
かなり悪質なタイプですが、世の中にはそういったサイコパスな面をもつ人もいます。
誹謗中傷をするのは自分を幸せだと思っていない人
以上、誹謗中傷をするのはどういった人なのか、いくつか紹介してきましたが、全体としていえるのは、他人を誹謗中傷するのは、自分の現状に不満を抱いていたり、自分を不幸だと思っている人だということです。
今の自分に満足している人や幸せを感じている人が、わざわざネット上で見知らぬ相手に誹謗中傷を書き込んだりすることはありません。
もし、あなたが誹謗中傷の被害に遭ったとしても、画面の向こうにいるのは、あなたよりも幸せではない人生を送っている人ですし、そんな相手のためにあなたが辛い思いや怖い思いをする必要はないですし、ましてや命を絶とうなどとは絶対に考えないでください。
誹謗中傷に辛いと感じたときにできること
ここからは、ネットやSNSで実際に誹謗中傷の被害を受けてしまったとき、どのように対応すればいいのかを解説していきます。
見ない・気にしない
ネットで誹謗中傷の被害を受けたとき、一番いいのは、嫌な書き込みを見ないこと、見ても気にしないことです。
ほとんどの場合、相手は顔も名前もわからない人間ですし、深い理由があってあなたを攻撃しているわけではありません。
スルーできない場合はどうすればいいか
とはいっても、自分を誹謗中傷する書き込みを見れば、誰しも辛いものですし、スルーすればいいといわれてもそう簡単にはできないこともあるでしょう。
顔も見えない相手から攻撃されることはやはり恐怖を感じるものですし、ネット上に自分の悪口が書き込まれていると考えると、見ていなくても辛い気持ちになってしまい、完全にスルーすることはできないという方もいるかもしれません。
ネットやSNSが生活に浸透している現在、これに触れずに生活していくことは不可能ですが、ネットに触れれば誹謗中傷が目に入ってしまうこともあります。
書き込みの削除依頼
誹謗中傷の書き込みは、投稿されているサイトやSNSの管理者に依頼することで削除してもらえます。削除依頼を出す前には、証拠を残しておくようにしましょう。
書き込みが消えてしまうと、誹謗中傷の証拠が無くなってしまうため、後から訴訟になったときなど不利に働く可能性があります。
証拠保全は書き込みをURL付きでプリントするか、スクリーンショットやケータイでの写真撮影など、なにか形に残るものなら大丈夫です。
ひとりで抱え込まずに相談を
誹謗中傷問題は、ひとりで抱え込むとさらに辛くなって精神的苦痛が増加してしまうこともあります。
国や民間、法律相談所などでは、誹謗中傷を受けたときの相談窓口を設置していますので、被害に遭ったときは、ひとりで悩まずこうした機関に相談してみると対処法のアドバイスをもらえます。
・「違法・有害情報相談センター」(総務省)
ネット上での有害な書き込みに対する相談と削除依頼の方法などアドバイスをもらうことができます。
・「インターネット人権相談」(法務省)
法務省人権擁護局が運営している人権相談窓口で、削除方法に関するアドバイスのほか、悪質なケースに関しては直接プロバイダに連絡してくれる場合もあります。
・「サイバー犯罪相談窓口」(警察)
誹謗中傷や不正アクセス、詐欺などネットでの犯罪を対象に各都道府県の警察に設けられている専門の窓口です。
・「法テラス」(日本司法支援センター)
国民が広く法律サービスを受けられるよう設立された法律問題の総合案内所です。弁護士への相談が行えて、一定の収入基準を満たせば無料で相談を受けることも可能です。
・「誹謗中傷ホットライン」(セーファーインターネット協会)
有志のインターネット企業によって運営されている民間の窓口で、ネット上での誹謗中傷の無料相談を受け付けています。悪質なケースについては適切な対応をしてもらえるようプロバイダに働きかけてくれます。
・弁護士や法律事務所の相談窓口
ネットでの誹謗中傷問題は弁護士や法律事務所でも相談することができます。
法律の専門家から、それぞれのケースにあわせたアドバイスをもらうことができますし、削除依頼を断れた場合でも、裁判所に削除仮処分を申し出ることで書き込みを削除可能です。
国や民間の窓口は相談することができても、削除依頼などは自分でやらなければならない場合がほとんどですが、弁護士ならこうした手続きもあなたに代わって行ってくれますし、犯人の特定や訴訟などをその後の対応を依頼することもできます。
こうした手続きは個人でも不可能ではありませんが、専門の法律知識を必要とするため、やはり専門家に任せるほうがスムーズで安心できます。
まとめ
ネットが普及した現在、誹謗中傷は有名人だけのものではなく、誰に身にも起こりうる問題です。
こうした書き込みをしているのは、世の中に不満をもっている人など、現状に満足していない人がほとんどで、真剣に対応すべき相手ではありません。
できればスルーするのが良いのですが、やはりこうした書き込みを見れば辛い気持ちになったり、恐怖を感じたり、難しい場合もあるでしょう。
そんなときは、ひとりで抱え込んだりせず、国や民間機関、法律事務所などが設けている誹謗中傷の相談窓口を利用してみてください。