交通事故の示談交渉で保険会社から顧問弁護士を紹介されることがありますが、かならずしも応じる必要はありません。自分に合った信頼できる弁護士を選ぶことはできます。
自分で弁護士を選ぶ際のポイント
交通事故の示談交渉を依頼するなら、あなたの希望に沿って進めてくれる弁護士がおすすめです。保険会社の紹介以外では、どんな弁護士を選べば良いのか解説します。メディアによく登場する有名な弁護士が良いとは限りませんので、選ぶさいのポイントを押さえておいてください。
きちんと向き合ってくれる弁護士
依頼者一人一人にきちんと向き合って誠実に問題解決に取り組んでくれる弁護士かどうかは、弁護士選びで一番大切といえます。
弁護士も人間ですから、必ず相性はあります。人柄や仕事の進め方が、自分に合っているかどうかも重要しょう。連絡が遅い、進捗状況をなかなか報告してこないのはダメです。説明に難しい言葉ばかり使い内容がわかりづらい弁護士は、依頼者の立場を考えていないといえるでしょう。不満点があると、納得して示談交渉を進めることが難しくなるので注意してください。
いきなり事務所に足を運ぶのが難しい場合は、電話での相談やホームページにメールでの相談フォームが用意されている事務所を選ぶのがおすすめです。
交通事故案件の解決実績が豊富な弁護士
交通事故の示談交渉では、やはり交通事故の事案の実績が高く、得意としている弁護士に依頼することが大切です。損害賠償の相場はある程度決まっていますが、実際に示談金の額がどれくらいになるかは交渉によって左右される部分も大きいです。
弁護士にもそれぞれ得意分野があります。特に交通事故の示談交渉では、過去の判例や医学的な知識を求められることもあるため、交通事故を得意分野にしている弁護士を選ばないと失敗してしまいます。
多くの弁護士事務所ではホームページで弁護士がどの分野に精通しているか、これまでどのような案件を担当しており、どのような実績があるかを紹介しているので参考にして選んでください。弁護士の資格があるならどんな人でも良いとはならないので、気を付けましょう。
費用を明確に説明してくれる弁護士
依頼するときは、費用面を明確に説明してくれる弁護士を選びましょう。弁護士に依頼するとき、多くの人が不安に思うのが費用の問題です。弁護士特約を使ったとしても、費用は大きな心配点になります。
弁護士に依頼すると、「費用倒れ」が発生することがあります。損害賠償を増額できても、弁護士費用が増額分よりも多くなり赤字になってしまう状況です。弁護士費用は事務所によって異なりますし、ホームページの説明だけでは個別の案件にいくら費用がかかるかまではわかりません。
依頼の際には、自分の案件でどれくらいの費用がかかりそうか、最初に見積もりを提示してもらいましょう。費用倒れになりそうであれば、弁護士が指摘してくれるはずです。
はっきりした料金体系を示さず費用をあいまいにするようであれば、信頼できる弁護士事務所とは言い難いです。最初に金額の提示がないと「話が違う」となり、のちのちトラブルに発展しやすくなってしまいます。
利用者の評判が良い弁護士
実際に交通事故の案件を依頼した人の評判が良い弁護士は、満足できる可能性が高いでしょう。
初めての利用だと弁護士事務所は敷居が高いイメージがありますが、説明がわかりやすい、親切に接してくれる、といった対応が良いという口コミがあると、依頼しやすいのではないでしょうか。また交通事故では賠償金を増額できたなど、結果をしっかりと出してくれるかもチェックしてください。
現在は口コミサイトやSNSなどで評判がわかりますので、検索してみるのがおすすめです。
交通事故で弁護士に依頼するメリット
交通事故で弁護士に依頼すると、加害者に請求する損害賠償の金額を決めるための話し合いである「示談交渉」で以下のように様々なメリットがあります。
メリット1:慰謝料が増額される可能性が高い
弁護士に依頼すると、個人で話し合いを進めた場合と比べて加害者に請求できる慰謝料が増額されます。
交通事故の慰謝料は、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3種類の算定基準があり、この中で極めて高額の慰謝料を支払ってもらえるのが弁護士に依頼したときに適用される弁護士基準です。
それぞれの算定基準について簡単に説明すると、まず「自賠責基準」は、すべての自動車が加入を義務づけられている自賠責保険による算定方法で、3つの中では最も低額になります。最低限の補償しかしてもらえません。
「任意保険基準」は、交通事故の加害者が加入している自動車保険の保険会社が使用している慰謝料算定基準です。自賠責保険よりは高額といわれますが、実際には少し高い程度でそれほど変わらない金額です。
「弁護士基準」は弁護士に依頼したときに適用される算定基準で、3つの中でも一番高額な慰謝料を請求できます。裁判基準とも呼ばれ、訴訟になった場合もこちらの算定基準が適用されます。ただ、裁判を起こさなくても弁護士に依頼するだけでこの基準が適用できます。
交通事故の慰謝料を請求するなら、弁護士基準がおすすめです。弁護士基準を選択しないと、損をするとも言えます。
メリット2:被害に見合った賠償金を計算してもらえる
弁護士に依頼することで、損害賠償として請求できるお金を請求しないで終わらせてしまう「請求漏れ」のリスクがなくなります。
交通事故で請求できる慰謝料には様々な種類があります。慰謝料だけをとっても、ケガの治療に対する「傷害慰謝料」や後遺症が残った場合の「後遺障害慰謝料」、被害者が死亡した場合に受け取れる「死亡慰謝料」と複数存在します。
なかには、事故で仕事を休んだことに対する補償である「休業損害」や後遺障害が残ったことで将来受け取れるはずだった利益が手に入らなくなることに対する補償である「後遺障害逸失利益」など一般の方にはあまり知られていない賠償金もあります。
法律の知識がない個人だと、複雑すぎて請求を忘れてしまう事項が出てくる危険性が高いので気を付けましょう。
相手方の保険会社はなるべく支払う金額を抑えたいと考えるため、請求漏れがあっても指摘してくれない可能性は高くなります。請求漏れのリスクを回避するためにも、慰謝料の計算は弁護士に任せるほうが安心です。
また、「休業損害」や「入院雑費」など、慰謝料以外の項目についても弁護士に依頼することで増額されるものがあります。交通事故に強い弁護士であれば、慰謝料等の賠償金額の増額が期待できます。
メリット3:交渉がストレスなくスムーズに進むようになる
弁護士に依頼することで、被害者が個人で進めるよりもスムーズに示談交渉を行えるようになります。
個人で示談交渉を行う場合、加害者の保険会社を相手に話し合いをする必要があります。相手は交渉にも慣れており、一般の方が自分の主張を通すのは難しいのが現状です。不利な条件を提示されたまま、示談させられてしまうリスクもあります。
また、保険会社は個人が相手だと強引な交渉をしてきたり、わざと対応を遅らせたりして主導権を握ろうとしてくる手段を使うこともあります。被害者にとっては時間をとられれるだけでなく、大きなストレスも受けてしまいます。
弁護士に依頼すれば、あなた自身が交渉にあたる必要はなくなります。弁護士はきちんと法律に基づいた主張をしますので、保険会社も強気の姿勢ではいられなくなり示談もスムーズに進みます。
保険会社から弁護士を紹介されるケースとは
交通事故のさい保険会社が顧問弁護士を紹介してくるケースがあります。
交通事故の示談交渉では弁護士に依頼すると多数のメリットがあります。なので弁護士への依頼を検討するのはおすすめです。ただし、自分が加入している保険会社が弁護士の紹介を提案してきても、自分で弁護士を選びたいのであれば応じる義務はありません。
弁護士を紹介してくる2つのケース
保険会社が弁護士の紹介を提案するケースは主に2つあります。
1つ目は、「弁護士特約」を利用する旨を伝えたときです。
自動車保険には交通事故で弁護士を依頼するとき費用を補償してくれる弁護士特約が付帯しているものがあります。交通事故ではぜひとも利用すべき弁護士特約ですが、利用を申請したとき保険会社から「弁護士を紹介しましょうか」と提案されることがあります。
弁護士特約を使用すると、弁護士費用は保険会社が負担することになります。弁護士費用は依頼するところでさまざまで、人気がある弁護士だとかなりの高額になることもあります。報酬が高額な弁護士を利用されてしまうと、負担が大きくなってしまいます。
保険会社の顧問弁護士は、報酬が一定額となっていることが多いです。あらかじめ弁護士費用がどのくらいかかるかの把握ができますし、費用もそれほど高額にならないように設定されています。紹介した顧問弁護士で示談交渉をしてくれれば、保険会社の損害を低く抑えられるわけです。
そのため、弁護士特約の利用が考えられるときは、顧問弁護士を紹介してくるのです。
2つ目は「もらい事故」です。
もらい事故だと、保険会社が加害者と直接交渉できないため、代わりに被害者に弁護士を紹介することがあります。双方に責任のある交通事故なら、あなたの保険会社にも保険金の支払い義務があるので、事故の当事者として相手方の保険会社と話し合いができます。
しかし、あなたに責任のないもらい事故だと、保険会社は保険金の支払い義務がなく、全くの部外者になってしまいます。
無関係の者が示談交渉を行うと、弁護士法72条で禁止されている「非弁行為」にあたる可能性があります。そのため保険会社は弁護士に示談交渉をやってもらおうと考え、弁護士を紹介してくるのです。
保険会社が紹介する弁護士は断っても良い
交通事故のさいに保険会社が弁護士を紹介してきても、応じる義務はありません。
保険会社から弁護士を紹介されるとほとんどの方は、「特約を利用するのだから」「保険会社が交渉できないのだから」と紹介してもらった弁護士に依頼しないといけないような気持ちになるかもしれません。しかし断ったとしても、何のペナルティもありませんので安心してください。翌年の保険料が上がるなら弁護士特約を使用しないほうが良いのでは?とも思いますが、等級には影響がなく保険料も変わりません。保険会社の紹介を受けなくても、特にデメリットはないといえるのです。
また、保険会社が紹介してきた弁護士を利用した場合、途中でチェンジすることができます。
保険会社がおすすめしてきたけど満足できない…といったときは、早めに連絡をして変えてもらいましょう。我慢してストレスをためるよりも、さっさと別の弁護士に示談交渉をしてもらうのがより良い選択です。
保険会社から紹介された弁護士に依頼しなくていい理由
保険会社から紹介された弁護士に依頼しなくてもいい理由を解説します。
せっかく保険会社が弁護士を紹介してくれているのに、断ってしまっても大丈夫なのかと思われる方もいるかもしれません。しかし被害者にとっては逆にデメリットが生じる場合もあります。決して保険会社の弁護士が全て悪いわけではないのですが、提案を受けるかどうかは慎重に判断すべきです。
理由①:交通事故の被害者案件に特化していないことがある
保険会社に紹介してもらえる弁護士に依頼するとき注意したいのは、交通事故の被害者側に立った示談交渉に慣れていない可能性があることです。
保険会社が紹介してくれる弁護士は、保険会社と契約している顧問弁護士や協力弁護士です。普段から交通事故案件を多く受け持っていて、示談交渉にも慣れている場合が多いです。
しかし、保険会社の示談交渉とは、多くの場合、事故の加害者側に立って損害賠償の交渉を行うことです。そのため、弁護士も加害者案件に特化している可能性が高いでしょう。被害者側の示談交渉ができないわけではないですが、得意としているわけではないのなら、あえて依頼すべきとは言えません。
理由②:弁護士の熱意が高くないことがある
保険会社から紹介される弁護士は熱意が低く、損害賠償も期待したほど増額してくれないことがあります。なぜ熱意が低くなるかというと、支払われる報酬が低いという問題があるためです。
通常、交通事故の示談交渉では弁護士の報酬は「加害者から得られる経済的利益の〇パーセント」というように、相手方に請求する損害賠償額に応じて決まります。示談金を増額すればそれだけ報酬が増えるので、弁護士のモチベーションにもつながります。
しかし、保険会社と契約している弁護士は顧問契約で報酬額が一定になっている場合が多く、示談金を増額しようとする意欲が湧きにくくなっています。なかには、保険会社から継続して仕事をもらうため報酬が一般的な金額より低くなっていることもあります。
お給料が低すぎると、仕事のやる気がなくなってしまう…なんてことはありますよね。弁護士にも同じことが言えます。親身になりしっかり仕事をしくれる弁護士に依頼するべきです。
理由③:被害者の保険を使いたがらないことがある
保険会社から紹介される弁護士は、被害者が加入している保険の利用に積極的でない場合があります。
交通事故の被害者は相手方の保険会社から示談金として保険料を受け取るほかに、自身の加入している保険を利用して保険金を受け取ることも可能です。例えば、人身事故の場合は「人身傷害保険」「搭乗者傷害保険」、物損事故の場合は「車両保険」などから治療費や修理費を支払ってもらえます。
しかし、保険会社から紹介された弁護士は、こうした保険の利用に消極的な可能性があります。保険会社の弁護士なのに、その保険会社の保険を使わせたがらないというのは不思議に思えますが、保険会社の傾向として少しでも保険金の支払いを抑えようとするためです。支払う保険金が高くなるほど、保険会社の負担も高くなり損をしてしまいますからね。
理由④:後遺障害の認定で力を貸してもらえないことがある
保険会社が紹介する弁護士だと、後遺障害等級の認定で協力してもらえないことあります。
保険会社の弁護士は、治療が終わり、後遺障害等級の認定が済んでから活動するため、まだ治療中の段階や後遺障害等級の認定を申請する段階では力を貸してもらえないことが多いです。しかし、後遺障害等級の認定にあたっては弁護士に手続きしてもらうことが非常に重要になります。
後遺障害等級は後遺障害慰謝料の金額に関係しており、等級が1つ違うだけで、数十万から数百万の差が出ます。ここで弁護士の助力が得られないのは、被害者にとって大きなデメリットです。
顧問弁護士ではないほうがサポートしてもらいやすい
保険会社の顧問弁護士ではないほうが、交通事故の対応をサポートしてもらいやすいでしょう。
保険会社が紹介してくる弁護士は事務的で臨機応変な対応もしてくれにくく、複雑で手間がかかることは手をつけたくないという傾向があります。困っていることに真摯に向き合ってくれないなら、弁護士を依頼する意味はなくなってしまいます。
交通事故に強い弁護士を選べば、ケガの治療や通院から賠償金を受け取るまでお任せできます。交通事故の相手だけでなく医師や医療機関などにも働きかけてくれるので、後遺障害等級認定の中でも難しい高次脳機能障害などの事例にも対応できやすくなっています。
弁護士費用特約はどの弁護士でも使える
保険会社の紹介を断っても弁護士特約が利用できます。
保険会社の申し出を断ると弁護士特約が使えなくなるのでは、という不安があるかと思います。しかし、実際のところどのような手段を使って依頼をしても、弁護士特約は使えます。基本的には、交通事故直後から示談交渉が成立する期間までは使えます。
保険会社の紹介がなくても弁護士特約は使える
交通事故の示談交渉にかかる弁護士費用を補償してくれる弁護士特約は、保険会社から紹介される弁護士に依頼した場合でも問題なく使えます。
弁護士特約を利用すると、通常、被害者1人につき相談料10万円、弁護士費用を最大300万円まで保険会社から支払ってもらえるため、費用面での心配がなくなるというメリットが大きいです。
弁護士特約が使えないのは間違い
保険会社によっては、紹介した弁護士以外では特約が使えないと説明されることもあるようですが間違いです。保険会社の担当に知識が全くないか、弁護士特約を使わせたくないと考える悪徳な保険会社であるとも考えられるでしょう。
もし弁護士特約が使えないと言われたら、保険の約款に書かれているどの条項が当てはまるのか、説明を求めてください。
弁護士特約を利用できるのは保険会社が指定した弁護士に限定されません。被害者自身が自分で依頼した弁護士に対しても利用できると主張しても構わないのです。
また、LAC基準に対応していない弁護士には特約を使えないと言われることもあります。
LAC基準とは、日弁連リーガル・アクセス・センター(LAC)が保険会社と取り決めしている費用の基準のことです。LAC基準に対応していない弁護士だと、費用が高額になる可能性が高いため、保険会社は特約を使わせたくないと考えるのです。ただ、LAC基準に対応している弁護士であれば、自分で選んでも特に問題はないでしょう。
もしLAC基準を超える報酬となる弁護士に依頼したい場合は、LAC基準との差額を自腹で支払うことにすれば保険会社も応じるしかなくなります。
弁護士特約が使えないケースもある
そもそも弁護士特約が使用できない交通事故もあります。
弁護士特約は「故意または重過失がある場合」は適用できないとしている保険会社がほとんどで、飲酒運転やあおり運転、無免許運転などあきらかな過失が認められる事故では使用ができないことになっています。
また自然災害など加害者がいない場合、自転車事故など自動車の事故ではない場合、業務中の事故なども、弁護士特約の対象となりません。
保険会社に弁護士特約を使えないと言われても、仕方がないでしょう。
弁護士は自分で選んでも構わない
交通事故のさいに保険会社から顧問弁護士を紹介されることがありますが、応じる義務はありません。
自分で選んだ弁護士であっても、弁護士特約は使えます。保険会社の弁護士に任せると賠償金が増額されない、交通事故の事案に不慣れな弁護士に当たるといった問題が起きる可能性もあり、できるなら自分で弁護士を選ぶのが望ましいといえるでしょう。
交通事故の示談金はケガの治療や今後の生活に関わる重要なお金です。保険会社の言いなりにならず、交通事故に強く信頼できる弁護士を選んでください。
まずは無料相談からはじめましょう
弁護士を選ぶ際は、多くの事務所が行っている無料の法律相談サービスを利用しましょう。口コミやホームページなども参考になるのですが、弁護士との相性は実際に会って話をしてみないとわからない部分は多いです。
事務所内の雰囲気や相手の話し方や態度などから、信頼して任せられそうだと思える弁護士を見つけてみてください。
ただ、相談時間は決まっていることが多く、だらだらと質問を続けると時間切れになる可能性があります。無料相談は何分までなのかを事前に確認しておき、聞きたいことを考えてメモっておくと良いでしょう。
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