反面、誹謗中傷の書き込みが多いことも特徴です。
5ちゃんねるとは
「5ちゃんねる(5ch)」は、かつては「2ちゃんねる(2ch)」の名前で運営されていたネット掲示板です。はじめに5chの歴史や2ちゃんねるとの違い、誹謗中傷が発生しやすい理由について説明していきます。
5ちゃんねるの歴史
2chは、1999年に「ひろゆき」こと西村博之氏が設立した掲示板サイトです。
「ハッキングから今日のおかずまで」をキャッチコピーに幅広い分野をカバー。「2ちゃんねらー」と呼ばれたユーザーは多い時で1100万人にも上りました。
しかし、2014年、管理者権限を巡りひろゆき氏とジム・ワトキンス氏が対立。2chは今までの「2ch.net」とひろゆき氏が新たに作ったサイトである「2ch.sc」の2サイトに分裂します。ワトキンス氏はその後、自身のサイトを他の会社へ譲渡。
新しい運営会社は、ひろゆき氏が日本国内で「2ch」や「2ちゃんねる」の商標権を保有していたため、サイトの名称を「5ちゃんねる(5ch.net)」に変更。現在は、元2chである5chとひろゆき氏が運営する2chの2つのサイトが存在しています。
なぜ誹謗中傷が起きやすいのか?
5chの最も大きな特徴といえるのが、すべてのユーザーが匿名での書き込みができる点です。
他のSNS等と違い、5chでは名前を表記せず「名無し」のままで書き込みを投稿できます。一部、固定のハンドルネームを使うユーザーもいますが少数です。
匿名であることも手伝って、2ch時代から、他人を攻撃する書き込みやリアルでは不謹慎と思われる書き込みも多く投稿されています。
「炎上」のように特定の個人などに集中して中傷的な書き込みが行われることもありますし、「釣り」と称して嘘の情報を書き込み、他のユーザーを騙す文化もあり、虚偽の投稿や誹謗中傷の書き込みが起こりやすくなっています。
反面、スレッドの数が膨大で、独自のスラングも多用されるため、誹謗中傷されていても気づきにくい可能性もあります。
2つのサイトの見分け方
両サイトは、トップページやサイトの作りは違っているものの、スレッドに関してはよく似ているため、見た目では区別しづらくなっています。
2chでは定期的にクロールして5ちゃんねるの情報をコピーしているため、同じ内容がコピペによって転載されている場合があり、内容はほとんど変わらないといえます。
両サイトを見分けるときはドメインに注目。5chは「5ch.net」に、2chは「2ch.sc」になっています。また、コピーされた5chのレスは、2chで表示すると末尾に「.net」がつきます。一方、5chではコピーを行っておらず、2chの投稿が転載される心配はないといえます。
5ちゃんねるの書き込み削除基準
5ちゃんねるで誹謗中傷の書き込みの被害に遭ってしまった場合には、どうすれば削除できるのでしょうか。
5chでは利用規約や法律に違反する場合、書き込みの削除を申請できます。
5ちゃんねるの削除方針は、「削除要請(入口)」ページの注意書きと「削除ガイドライン」に基準などが定められています。削除申請を行う際には、事前にこの2つはよく読んでおきましょう。
5chの削除ガイドラインでは、表現の自由は最大限保障するとしていますが、個人の権利を侵害する書き込みについては削除を行うと定めています。
削除の対象になる書き込み
対象となる書き込みの基準は、
- 名誉を侵害するもの(個人や法人の社会的評価を低下させる内容)
- プライバシーに関する情報(人の名前[個人を特定できるならイニシャル等も]、住所、家族の名前、電話番号など)
- 他人に危害を加えることを予告するもの(殺害予告など)
- 社会に害悪を及ぼす情報(爆弾の製造方法や薬物の売買に関する情報など)
の4つです。
書き込み削除は削除人が行う
書き込みを削除するかどうかの判断を「削除人(削除屋)」と呼ばれるボランティアのユーザーが担っているのが5chの削除の特徴です。
通常、インターネットのサイトやSNSで削除依頼を行えば、書き込みを削除するかどうかはサイトの運営会社が判断します。しかし、5chではユーザーがその役割を果たします。
削除人は公正中立な立場で削除の判断を行ってくれると思いますが、削除申請のルールを守らなかったり、マナーのなっていない言葉遣いをするなど削除人の心証を悪くする行為があれば、悪質な書き込みであってもきちんと対応してもらえないことも考えられます。
5ちゃんねるの誹謗中傷を削除する方法
それでは、実際に削除依頼を行う方法を説明していきます。
5chでの削除には、
- メールでの削除依頼
- 削除申請フォームでの削除依頼
- 5ちゃんねるが認めた弁護士に依頼
- 削除仮処分の申請
の4つの方法があります。以下、それぞれの詳細を解説します。
メールでの削除依頼
件名を「削除申し立て」としてメールを作成し、
・URL
・レス番号
・削除理由
を記載。
さらに資料として、
・本人確認のための資料(免許証、健康保険証など)
・(もしあれば)理由を根拠付ける資料
を添付して「meiyokison@5ch.net」にメールを送ります。
削除依頼フォームによる削除依頼
もう1つ、運営への削除依頼を行う方法として「削除要請板」と「削除整理板」の2つにある削除依頼フォームを利用できます。
ここに「名前」や「依頼するスレッド」「対象アドレス」「削除理由」を入力して申請を行います。ただ、ここで注意しなければならないのは、どのような形であれ依頼は公開するとされていることです。
そのため、フォームから依頼するときは、内容が公開されることを前提に入力する必要がありますし、削除したい書き込みの内容が個人情報に関するものである場合には、公開されることで二次被害につながる可能性もあります。
5ちゃんねるが認めた弁護士への削除依頼
削除ガイドラインでは、5chが「過去に受けた請求から、表現の自由を配慮したリーガルマインド」をもっていると認めた弁護士からの請求を受けた場合も削除の対応を行うと書かれています。
ですが、ここには、5chが認めた弁護士とはどの事務所のどの先生かまでは書かれていないため、誰が5ch運営の認める弁護士なのかは自分で探さなければなりません。
そのため、該当する弁護士が見つかりそうな場合以外では、利用するのが難しい方法といえそうです。
裁判所への削除仮処分の申立
裁判所に対して、5chの運営会社「Loki Technology Inc.」を名宛人にする削除仮処分を求める方法です。
仮処分とは、裁判の判決が出るまで現状を放置すると被害者が不利益を蒙ると考えられる場合に暫定的措置を認める処分で、通常の裁判よりも早く結果が出るのが特徴です。
裁判所から削除仮処分が命じられた場合には、疎明資料を添付したメールをmeiyokison@5ch.netに送信し、削除請求を行えば5ch運営は原則裁判所の命令に従うとしています。
削除仮処分の申立は個人でも行うことが可能ですが、手続きが非常に複雑なため、弁護士など法律の専門家に依頼するのが普通です。
仮処分の手続きは変更されていることもあるため、依頼する場合には、削除依頼などを得意分野にしている弁護士を探すようにしてください。
スレッドごと削除依頼する場合
5ちゃんねるでは、スレッドをまるごと削除依頼することもできます。
削除対象になるスレッドについては削除ガイドライン内で条件が記載されており、
- 利用者の気分を害するため、利用者を揶揄するために作られたと判断したもの
- 全く情報価値の無いもの、真面目な議論や話し合いを目的としないもの、客観的な意見を求めないものなどに複数該当するスレッド
は削除の対象とされています。
ただ、「掲示板の趣旨に関係があり、論理的で主観だけではない批判は残します」と書かれているため、客観的な批判を目的としたスレッドなら削除対象にはならないといえます。
5chへの書き込みは2chにコピーされている可能性あり
上にも書いたように、2ちゃんねる(2ch.sc)は5ちゃんねるのスレッドをコピーしているサイトです。
そのため、5chと同じ書き込みが2chにも書かれている可能性があり、5chへの削除依頼だけでは2chの書き込みは残ってしまいます。5chに削除依頼する際には、2chへの削除依頼も忘れず行いましょう。
2chではメールによる削除依頼はなく、削除請求フォームを利用し、削除の判断は5ch同様ボランティアの削除人が行います。こちらも、運営がきちんと削除してくれない場合には、裁判所への削除仮処分の申立が可能です。
5ちゃんねるの誹謗中傷に対する発信者特定や訴訟について
ここからは、5ちゃんねるで誹謗中傷を受けた際に、発信者情報開示請求によって加害者を特定し、刑事・民事での訴訟を起こす方法を解説します。
発信者情報開示請求による加害者の特定
5ちゃんねるに限らず、インターネット上で誹謗中傷を受け、加害者を特定する場合には、プロバイダ責任制限法第4条に定められた発信者情報開示請求という制度を利用します。
通常、加害者を特定するには2回の開示請求を行う必要があります。
最初は、誹謗中傷を受けたサイトの管理者、この場合は5ちゃんねる運営に対して開示請求を行い、投稿者のIPアドレスやタイムスタンプ等の情報を開示してもらいます。
もし、5ちゃんねるが開示を拒んだ場合には、裁判所に対して開示仮処分の申立を行います。
次に、5ちゃんねるから開示を受けた情報をもとに加害者が利用しているインターネットサービスプロバイダ(経由プロバイダ)を特定し、訴訟に必要な相手の氏名や住所といった個人情報の開示を求めます。
開示請求を受けるとプロバイダは加害者に開示を認めるかどうかを尋ねる書類を送付します。加害者が自ら開示を認める可能性は低く、またプロバイダ自体も個人情報を開示することには消極的なため、拒否される可能性が高いといえます。
上で解説したように、開示請求は最低2回必要で、さらに法的手続きも要する可能性が高く、非常に時間がかかるのが特徴です。裁判等を行った場合、半年から長ければ9カ月ほど要することになります。
このとき問題になるのが、プロバイダに保存されているアクセス記録の保存期間が3か月から半年程度だということです。もし裁判に勝っても、保存期間が経過しており、ログが削除されていたのは判決が無意味になってしまいます。
加害者を刑事・民事で訴える
開示請求により加害者の特定ができれば、法的手続きによって相手を訴え、刑事・民事上の両方で責任を追及することが可能です。
インターネット上の誹謗中傷は、名誉毀損や侮辱罪など刑法上の罪にあたる可能性があり、警察に刑事告訴することが可能です。
名誉毀損は何らかの具体的な事実に基づき誹謗中傷を行った場合、侮辱罪は「バカ」「消えろ」など相手を侮辱する発言に対して適用されます。また、殺害予告を受けた場合には、脅迫罪に該当すると考えられます。
企業の場合は、虚偽の情報により信用を毀損された場合には信用毀損罪、それによって業務に支障が出た場合には偽計業務妨害罪、殺害予告や爆破予告などで業務に支障を来たした場合には威力業務妨害罪が適用される可能性があります。
被害届または告訴状の提出後、警察による捜査が行われ、場合によっては相手が逮捕されることもありますし、起訴されて刑事裁判で有罪になれば、罰金刑や懲役刑など刑法上の罰則を受けることになります。
刑事上の罰則とは別に、ネットでの誹謗中傷は民法上の不法行為にあたると考えられるため、民事裁判でも損害賠償・慰謝料の請求が可能です。
慰謝料の相場は誹謗中傷の内容や該当する罪の種類によって変わります。
- 名誉毀損 個人の場合……10万~50万円 企業・法人の場合……50万~100万円
- 侮辱罪……1~10万円
- 業務妨害……数万~50万円
- 脅迫罪……数万円~100万円
上の金額はあくまでも目安であり、実際には個別の案件ごとに変わりますので、詳しいことは弁護士など法律の専門家に相談するようにしてください。
また、民事訴訟だけに限らず、5ちゃんねるで誹謗中傷を受けた場合、書き込みの削除依頼程度なら個人でも対応可能ですが、そこから先、加害者を特定するための開示請求や訴訟になると、個人の力では難しい部分が大きくなります。
まとめ
多数のユーザーが利用する掲示板サイトとして有名な5ちゃんねるですが、同時に誹謗中傷の書き込みが多いことでも知られています。もし、5chや2chで自分に関する中傷書き込みを見つけた場合、まずは運営に削除依頼を行いましょう。
そのうえで、加害者に責任をとらせたい場合には、開示請求で個人を特定し、刑事・民事で訴えることが可能です。
削除依頼ぐらいであれば個人でもできますが、それ以降は手続きが複雑になっているため、法的措置を検討している方は、ぜひ一度、弁護士など法律の専門家に相談してみてください。