内容証明郵便の書き方には決まりがあり、ルールを守らなければなりません。
内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、郵送した文書の内容を、予め郵便局に知らせておき、必要なときに送付した事実とその文書の内容の不変性を証明してもらう事が出来る郵便サービスです。
通常の手紙(普通郵便)では、送り主と受取人しか手紙の内容を知らないため、受取人に「そんな内容は知らない」と言われてしまうと、手紙の内容を立証することは困難になります。
一方で、内容証明郵便は、郵便局が差し出し日から5年間保存しており、送達した事実とその文書の内容の不変性を証明してくれるので、後で、受取人にしらを切られる心配がなくなります。
誹謗中傷で内容証明郵便はどのように使う?
内容証明郵便は、文書の内容や発送日時が記録として保存されます。
そのため、何かしらの意思表示をするときに、受取人に配達されたことの証明ができます。ここからは、どのようなときに内容証明郵便を使用するか説明します。
法律上の請求をする場合
裁判では内容証明郵便で送った文書を証拠として提出できるため、慰謝料請求などの意思表示をするときに使用します。
内容証明を送ることで、裁判前から自分の主張が一貫していることを立証することができます。送付の際は、支払い期限を設定し、「期限が過ぎたら訴訟を提起する」といった文言をつけておくと、相手方に心理的圧力を加えて支払いを促しやすくできます。
また、内容証明郵便を送って「催告」をすることで、時効の成立を阻止することも可能です。
相手からの請求に反論する場合
相手から不当な請求をされた場合に、請求を拒否する旨を伝えるときにも使用します。
例えば、相手の要求が法的に成立しない場合や、法的に成立するけど請求額が過大である場合は、請求内容の誤りを指摘して、こちら側が要求を拒否する旨を伝えます。
たとえ相手の請求が間違った内容であっても、無視すると相手方から訴えられる可能性があります。内容証明郵便に回答せず、訴訟になってから反論すると、裁判官から不合理な弁解であると判断されるリスクがあります。
掲示板サイトに書き込みの削除請求をする場合
掲示板サイトの運営者などに、書き込みの削除請求をするときなどにも内容証明郵便を使います。
まず、掲示板サイトの管理者、運営者が守るべきルールを定めた法律にプロバイダ責任制限法があります。
この法律は、「サイトの管理者、運営者が書き込みの削除をすることが技術的に可能で、問題となる情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたか、知ることができたと認められる相当の理由がある場合でなければ、サイトの管理者、運営者が書き込みの削除をしなかったとしても損害賠償責任を負わない」と規定しています。
そのため、「問題となる情報の流通によって他人の権利が侵害されていること」を管理者や運営者に知らせることが必要になります。
そして、権利が侵害されていることを伝えるためには、削除請求したことを後々立証するために書面を提出しなければならなくなる可能性も考慮し、通常の郵便ではなく、内容証明郵便を使う必要があります。
誹謗中傷の慰謝料請求における内容証明郵便の書き方・注意点
誹謗中傷の慰謝料請求における内容証明郵便の書き方や注意点について説明します。
内容証明郵便の出し方
内容証明郵便は全ての郵便局において差し出し可能というわけではありません。差し出しできるのは「集配郵便局」と「支社が指定した郵便局」のみなので、事前に対応可能な郵便局を確認しておきましょう。
対応している郵便局が見つかったら、次は必要書類を用意します。
まず、受取人に送る内容文書の原本を用意します。内容文書の原本とは受取人に配送されるものです。
次に、その原本をコピーした謄本を2部用意します。郵便局が謄本の1部を保存し、差出人がもう1部を保存します。
さらに、差出人および受取人の住所・名前を記載した封筒を用意します。これに内容文書の原本を入れて、受取人宛に送付します。
最後に、内容証明の加算料金を含む郵便料金を用意します。郵便局の窓口で発送する場合の料金は、基本料(84円)、内容証明料(440円)、書留料(435円)、配達証明料(320円)を合わせて1,279円になります。
内容証明郵便の書き方
内容証明郵便を書く方法を知りたい人向けに、慰謝料請求するときと請求に対して反論するときを例にして説明します。
慰謝料請求するときの書き方
慰謝料請求書を書くときの手順は以下の通りです。
まずは「請求書」という表題と文書を作成した日付を書きます。
相手の住所と名前を書きます。また、自分の住所と連絡先、名前も記入します。電話番号は必ず書く必要はないですが、相手が連絡しやすいので書いておくことをおすすめます。
次に、請求内容を書いていきます。日時、場所、相手方の行為の内容と自分が受けた損害を細かく記載し、請求金額についても記載しておきます。
慰謝料は支払期限を設定しておきます。期限をつけておかないと、相手が応答してくれないおそれがあるためです。支払期限に何らかの応答がなければ、民事訴訟や刑事告訴をする意思を表明しておき、相手に返事を促すと良いでしょう。
事実と異なるデマを拡散された場合は、謝罪とデマ情報の訂正を要求する文言(謝罪広告)の投稿などを求めましょう。
慰謝料の振り込みを求める場合は、銀行口座を書いておきます。口座を表記するときは「銀行名」「支店名」「預金の種類」「口座番号」「口座名義人」を伝えます。
相手方の請求に反論するときの書き方
相手方から何らかの請求をされたときに、請求を拒否する旨を伝える反論書の書き方は以下の通りです。
請求書と同じように、表題と作成日付を書きます。表題は「回答書」や「ご回答」などが適切です。
次に、相手方の住所と氏名を書きます。次に、差出人である自分の住所、氏名、連絡先を書きます。電話番号については、教えたくないのであれば記載する必要はありません。
次に、反論の内容を記載していきます。例えば、名誉毀損にもとづく慰謝料請求への反論をする場合、「自分の発言は名誉毀損にあたらない」「名誉毀損したことは認めるが請求金額が多すぎる」などの内容が考えられます。
名誉毀損に当たらないと主張する場合、自分の発言が誰に向けたもので、どういう意図で発言したかを詳しく記載します。請求金額の減額を主張する場合は、なぜ金額が過大である根拠を指摘します。
慰謝料の支払いを拒絶する場合、「慰謝料は支払えない」と明示しておきましょう。結論が記載されていない場合、こちらが慰謝料を支払う意思を有しているかわからないからです。
内容証明郵便を弁護士からも送るメリット
内容証明郵便は、弁護士に依頼して送ってもらうことができます。ここからは、弁護士に依頼して送ってもらうメリットを説明します。
弁護士名義で送ることで支払いを促しやすい
内容証明郵便には、請求に応じない相手に、「法律上の措置をとる」といった旨を記載し、支払いを催促する効果があります。
しかし、自分の名義で作成して送った場合、単なる冷やかし行為と思われてしまい、支払いを催促する効果が期待できなくなるケースも存在します。
相手方の請求に反論することができる
内容証明郵便には、相手方からの請求に対して、「請求額を支払う意思はない」などと反論する目的で使用するケースがあります。
そこで、弁護士に作成を手伝ってもらうことで、請求に応じる意思の不存在を伝えるだけでなく、請求の法的根拠がないことを指摘することができます。その結果、相手が請求を取り下げて、裁判に発展するリスクを回避できます。
裁判にも備えることができる
内容証明郵便を送る場合、その後裁判で争うケースも多くあります。内容証明郵便には「自分が主張している内容が裁判前から変わっていない」ことを裁判内で立証する効果があります。
内容証明郵便の作成を弁護士に依頼することで、後の交渉や訴訟も見越した上で、自分の主張を記載してくれるので、後の裁判で有利に立つことができるかもしれません。
相手方との連絡を弁護士にまかせることができる
弁護士に内容証明郵便の送付を依頼することで、相手方からの連絡の対応をすべて弁護士にまかせることができます。
内容証明郵便を弁護士名義で発送する場合、弁護士名と弁護士事務所の電話番号を記載し、「これ以降の連絡は弁護士にお願いします」と明記することが一般的です。
これにより、内容証明郵便を受けとった相手方は、それ以降弁護士に連絡することになり、弁護士に相手方との交渉のすべてを任せることが可能になります。
まとめ
誹謗中傷してきた加害者を訴えたい場合は、内容証明郵便を送付して加害者に応答を促します。内容証明郵便の書き方は決まっており、ルールに従って記載する必要があります。
できあがったものに自信がない場合や素人判断による余計なリスクを抑えて確実に手続きを進めたい場合には、法律の専門家である弁護士に相談してアドバイスを受けることをお勧めします。