「個人再生の手続き中に転職しても大丈夫なの?」
「転職したら再生計画は認められなくなるのでは……」
個人再生の手続き中に転職を迫られたとき、このような不安を感じるのは自然なことです。
結論から言えば、手続き中の転職は法律上禁止されていません。転職を理由に手続きが即座に止まることもありません。
- 収入の増減が再生計画の「履行可能性」に直結する
- 担当の弁護士・司法書士への報告タイミングが重要
- 手続きの時期によって影響の大きさが異なる

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
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この記事の目次
個人再生の手続き中に転職しても問題ないのか
手続きの最中に転職せざるを得ない状況になると、「手続きが止まってしまうのでは」「再生計画が認められなくなるのでは」と不安を感じるのは自然なことです。
ただし、安全に手続きを進めるために押さえておきたいポイントがあります。
- 個人再生法には転職を禁止する条文が存在しない
- 転職そのものは手続き停止の直接的な原因にならない
- 収入の変動が再生計画の「履行可能性」に影響することがある
- 担当の弁護士・司法書士への速やかな報告が必要になる
転職が与える影響は「転職した事実」ではなく、収入がどう変わったかにかかっています。この点を正しく理解しておくことが、手続きを安全に進める第一歩です。
ここでは、法律上の根拠・手続きへの影響の有無・自己破産との違いの3点を順に見ていきましょう。
【手続き中の方へ】個人再生法に転職を禁止する規定はない
個人再生法には、手続き中の転職や就労形態の変更を禁止する条文はありません。手続き中であっても、職業選択の自由は保障されています。
個人再生は「返済計画を立て、裁判所の認可を得て返済を続ける」手続きです。申立て後に求められるのは誠実な情報開示と計画どおりの返済であり、どこで働くかを縛る仕組みにはなっていません。
実務でも手続き中に収入が変わるケースは珍しくなく、専門家や裁判所はその変動をもとに計画を見直せるか判断します。つまり問題になるのは転職の事実ではなく、変動後の収入水準と返済計画のバランスなのです。

転職だけで手続きが止まることはない
影響の大きさは、いま手続きのどの段階にいるかによって変わります。段階ごとの扱いを整理しておきましょう。
- 申立て・認可前:収入変動が判明すると、担当専門家が収入見込みを再計算し、再生計画案の修正が必要になることがある。修正後の計画を裁判所に提出し、改めて認可の審査を受ける
- 認可後の返済中:毎月の返済額を維持できていればそのまま継続できることが多い。大きく減少した場合は、担当専門家を通じて返済額の変更申請(小規模個人再生なら再生計画の変更申請)が必要になることがある
- いずれの段階でも:転職の事実を報告しないまま進めることが問題になりやすい
報告のタイミングは、転職が内定・決定した時点でまず担当の弁護士または司法書士に連絡するのが実務上の目安です。収入が確定してからでは遅くなる場合があり、特に認可前は計画案の作成スケジュールに影響します。
再生計画の返済額を維持できるかが問われる。大幅な減少が見込まれるなら、計画の修正や変更申請が必要になる可能性が高い。 収入が上がる・変わらない場合
返済継続の見通しが保たれるため、手続きへの影響は限定的なことが多い。ただし報告義務は変わらない。
報告を怠ると、収入状況の変化を裁判所や債権者に隠したとみなされるおそれがあります。虚偽申告に準じる扱いとなり、手続きの廃止や計画の不認可につながる可能性があるため、変動の有無にかかわらず速やかに連絡してください。

自己破産と個人再生で転職の扱いが異なる理由
自己破産では手続き中に一部の職業へ就けなくなる「資格制限」が生じますが、個人再生にこの制限はありません。この違いは、両手続きの目的の差から来ています。
自己破産:債務をゼロにする代わりに、財産の清算と一定期間の制限を受け入れる手続き。
個人再生:債務を圧縮したうえで返済を続ける手続きで、継続的な収入が前提になる。
個人再生は「働いて返済し続けること」が制度の根幹にあるため、職業選択を制限する合理的な理由がそもそも存在しません。「個人再生を選んだから転職できない」という誤解は、自己破産との制度的な違いを知ることで防げます。
次の章では、「履行可能性」という観点から、収入変動が計画に与える仕組みを詳しく見ていきましょう。

転職が再生計画に影響する仕組み:履行可能性とは
個人再生の手続き中に転職すること自体は禁止されていませんが、収入状況が変わると「履行可能性」という要件に影響が生じる場合があります。履行可能性は、再生計画の認可・不認可を左右する核心的な要件です。
- 再生計画が認められるには、返済を続けられる収入があることの証明が必要
- 収入が大きく変動すると、履行可能性の評価に直接影響する
- 収入が下がった場合は計画の修正が必要になることがあり、返済額を大幅に下回るほど減ると認可が困難になるリスクがある
- 無収入期間が生じる場合は、特に慎重な対応が求められる
転職を検討している方、または転職が決まった方は、この仕組みを正しく理解しておくことが大切です。ここでは、履行可能性の意味から収入変動が手続きに与える具体的な影響まで、順を追って見ていきましょう。
【申立〜手続き中】個人再生が認められるために必要な収入条件
民事再生法では、再生計画案の認可要件として履行可能性が明示されています。具体的には、申立人が計画期間(原則3年、最長5年)にわたって毎月の返済額を支払い続けられる収入を、継続的に得られる見込みがあるかどうかが審査されます。
- 毎月の返済額をまかなえる可処分所得があること
- 収入が継続的・安定的に見込めること
- 給与明細・源泉徴収票・雇用契約書など、収入を裏付ける書類を提出できること
ここでいう「安定した収入」は、必ずしも正社員であることを意味しません。パートタイムや契約社員でも、返済計画を履行できる水準の収入が継続的に見込めれば、履行可能性が認められる場合があります。
重要なのは雇用形態よりも、返済に充てられる金額を毎月確保できるかという点です。

収入が下がると再生計画はどうなるか
転職で収入が下がると、再生計画の履行可能性に疑問が生じ、手続きの進行に影響が出る可能性があります。影響の程度は、収入減少の幅・タイミング・手続きの進捗状況によって変化するでしょう。
- 計画案の提出前:新しい収入水準をもとに返済額を再設定して対応できる場合がある
- 計画案の提出後・認可前:計画の修正申立てが必要になることがある
- 認可後:返済の継続が困難になった場合に、計画変更の申立てを検討する
収入減少の幅が小さく、手取りから返済額と生活費を差し引いてなお余裕が残る水準であれば、計画の大幅な見直しが不要なケースもあります。一方、返済額を大幅に下回るほど減少した場合は、計画の認可が困難になるリスクに注意しましょう。
裁判所への直接の届出が必要かどうかは、一般に担当の弁護士または司法書士を通じた報告・対応で足りるケースがほとんどです。むしろ報告なく収入状況が変わっていた場合のほうが、手続き上の信頼性に響きやすいとされています。

【退職時】転職先未定・無収入期間が生じる場合の注意点
転職活動中に無収入期間が生じるケースは、履行可能性の観点から最も慎重な対処が必要です。
収入がゼロの期間は返済原資が失われ、計画の履行見込みを示しにくくなります。
- 無収入期間の長さ:数週間なら貯蓄等で返済を継続できる場合もあるが、数か月に及ぶと計画への影響が大きくなる
- 次の就職先の見通し:内定済みか活動中かによって、担当専門家の対応方針も変わる
- 手続きの時期:計画案の提出前後、認可前後のいずれかによって対処の選択肢が異なる
無収入期間が発生しそうなときは、発生する前の段階で担当の弁護士または司法書士に伝えることが重要です。「まだ決まっていないから」と報告を先送りにせず、収入が途切れる可能性がある時点から一緒に対策を考えてもらいましょう。
次に気になるのは「手続きのどの段階で転職するかによって、影響の大きさは変わるのか」という点ではないでしょうか。次の章では、手続きの時期別に転職の影響を比較・整理します。

手続きの時期別に見る転職の影響
個人再生の手続き中に転職する場合、その影響の大きさは時期によって大きく異なります。自分の状況に近いケースを確認しながら読み進めてください。
- 申立て前後は、収入証明の再提出が必要になるケースが多い
- 手続き開始決定後は、再生計画案の収入見込みに直接影響する
- 認可後・返済中は、計画変更の手続きが必要になることがある
- 会社都合退職の場合は、自己都合とは異なる考慮が入ることがある
どの段階にいるかを正確に把握しておくことで、担当の弁護士・司法書士への報告内容や優先度が変わります。ここでは、4つのケースに分けて具体的に見ていきましょう。
申立て前・申立て直後に転職するケース
個人再生では、申立て時に直近数か月分の給与明細や源泉徴収票などの収入証明を提出します。申立て前に転職した場合は、転職後の収入実績がまだ少ない状態で申立てを行うため、収入の安定性をどう示すかが課題になるでしょう。
申立て直後に転職した場合は、すでに提出済みの収入証明と実態が乖離します。裁判所や再生委員から収入に関する追加説明を求められることがあり、放置すると手続きの進行に支障が出るおそれもあります。
- 月収が申立て時より大幅に増加:弁済額の見直しを求められることがある
- 月収が申立て時より減少:再生計画の実現可能性を改めて示す必要が生じる
この時期の転職は「報告すれば対応できる」ケースがほとんどですが、報告が遅れるほど手続きの修正コストが上がります。転職が決まった時点で、日程を問わず担当専門家に連絡しましょう。

手続き開始決定後に転職するケース
再生計画案には、毎月いくら返済できるかという弁済計画を記載します。その前提となるのが、申立人の月収そのもの。転職で月収が変わると弁済可能額の根拠が変わるため、計画案の数字を修正する必要が生じます。
この時期は計画案の提出期限が設定されていることが多く、時間的な余裕が限られます。転職が決まった段階で、できるだけ早く担当専門家に状況を伝えてください。

再生計画認可後・返済中に転職するケース
再生計画が認可され返済が始まった後の転職は、手続きそのものへの影響が比較的小さい時期です。
認可後は、確定した再生計画に沿って毎月の返済を続けることが求められます。転職で収入が増減しても、計画どおりに返済を続けられている限り、手続き上の問題は生じません。
この手続きは認められるハードルが高く、すべてのケースで使えるわけではありません。それでも、返済が滞ってから動くより、困難が生じた早い段階で相談するほうが選択肢が広がります。特に収入が大きく変動した場合は、返済計画への影響を専門家の目で確認してもらいましょう。

会社都合(リストラ・倒産)による退職の場合
自己都合ではなく、会社のリストラや倒産で職を失った場合は、手続きへの影響の考え方が変わります。突然の収入喪失という点で影響は大きいものの、裁判所や担当専門家が「やむを得ない事情」として考慮するケースが多いのが特徴です。
一方、次の転職先が決まるまで長引くと、収入の空白期間が生じ、弁済スケジュールに影響する可能性があります。会社都合退職が決まった時点で速やかに担当専門家へ連絡し、今後の収入見込みと返済計画の整合性を確認してください。
いずれの段階でも、転職の事実・時期・新しい収入見込みを担当の弁護士または司法書士に早めに相談することが、手続きをスムーズに進める最も確実な対処です。

転職先に個人再生がばれるリスクはあるか
転職を検討するとき、「採用面接で聞かれたら答えなければならないのか」「転職先の会社に知られてしまうのでは」という不安は、多くの方が感じるところです。
この章では、採用選考での申告義務の有無・官報掲載という公開情報の現実的なリスク・給与差押えが転職先にばれる経路の3点を整理します。
これらを理解しておくことで、必要以上に不安を抱えず転職活動を進める判断材料が得られます。
採用選考で申告義務はあるか
個人再生をしていることを採用選考で申告する法的な義務は、原則としてありません。面接で聞かれていない限り、自ら開示する必要はないのが基本です。
- 金融機関・信用金庫・保険会社など、信用調査を厳格に行う業種では、採用条件として信用情報の確認が行われる場合がある
- 採用時に「債務整理の有無」を直接質問された場合、虚偽の申告は後から問題になる可能性がある
- 公務員・士業(弁護士・司法書士・税理士など)・一部の国家資格職(宅地建物取引士など)では、資格取得・維持に影響が出るケースがあるため、該当しそうな方は担当専門家に確認する
一般的な民間企業の採用選考では、個人信用情報機関(CIC・JICCなど)への照会は行われません。これらの機関への照会は、本人同意のもとで金融機関が与信審査を行う際に限られており、採用企業が勝手に閲覧できるものではないのです。
したがって、一般企業への転職であれば、選考の過程で個人再生が発覚するリスクは低いといえます。

官報への掲載と実務上の発覚リスク
個人再生の手続きが進むと、裁判所の決定内容が官報に掲載されます。これは法律上定められた公示手続きであり、誰でも閲覧できる公開情報。この点が「ばれるリスクがゼロではない」理由のひとつです。
- 官報は国が発行する機関紙であり、一般の人が日常的に閲覧するものではない
- 転職先の採用担当者が特定の人物名を官報で検索するケースは、現実的にはほとんど想定されない
- 官報の電子版に有料の検索サービスは存在するが、一般企業が採用目的で使う慣行はほぼない
つまり官報掲載は「公開情報として存在する」事実はあっても、転職先の担当者が実際に確認しに行くかどうかは別の話です。ただし、信用調査会社を通じた調査が行われる業種・職種(金融業、警備業など)では、採用審査の一環として官報情報が調査対象に含まれることがあります。こうした業種への転職を検討している場合は、調査の有無も含めて担当の弁護士や司法書士に事前相談のうえ方針を決めましょう。

転職時に給与差押えが転職先にばれる経路はあるか
個人再生の申立てを行うと、裁判所から中止命令・禁止命令が発令され、債権者による強制執行は停止されるのが通常の流れです。手続きが順調に進んでいれば、転職先に給与差押えの通知が届く事態は基本的に生じません。
- 手続きが途中で廃止・棄却された場合、差押えが再開される可能性がある
- 再生計画が認可される前の不安定な時期に、何らかの事情で手続きが止まった場合も同様
- 税金・社会保険料など公租公課の滞納がある場合は、個人再生とは別の経路で差押えが行われることがある
転職で勤務先が変わると、仮に差押えが発生した際には新しい勤務先に通知が届くことになります。また、転職で収入が変動すると再生計画で定めた返済額の履行が難しくなるケースがあり、その場合は計画の変更手続きが必要になることもあります。
こうした事態を防ぐためにも、転職の事実と新しい収入見込みを早期に担当専門家へ共有し、手続きが滞りなく進むよう管理してください。
個人再生が転職先に「自動的に知られる」仕組みはありませんが、業種・職種によっては一定の確認が行われる場合もあります。次の章では、転職後に担当専門家への報告が必要かどうか、何をいつ伝えるべきかを具体的に解説します。

転職したら弁護士・司法書士への報告は必要か
手続き中の転職は法律上禁止されておらず、転職を理由に手続きが無効になったり申立てが却下されたりはしません。ただし、担当の弁護士または司法書士への報告は必要です。報告を怠ると、再生計画の認可に支障が出たり手続きが滞ったりするリスクがあります。
- 転職が決まった時点で、できるだけ早く担当者に連絡する
- 新しい勤務先・雇用形態・収入見込みを具体的に伝える
- 収入が変動する場合は、再生計画の修正が必要になる可能性がある(修正が生じても手続き自体は継続できるケースがほとんど)
- 裁判所への直接報告が求められるケースもある(詳細は後述)
なお、自己都合の転職だけでなく、リストラや会社倒産など会社都合の転職でも、報告義務の考え方は基本的に同じです。収入状況が変わる事実に変わりはないため、理由にかかわらず早めに担当者へ伝えましょう。
ここでは、報告のタイミングと内容・裁判所への直接報告が必要なケース・準備しておくと役立つ書類の3点を解説します。
報告すべきタイミングと伝えるべき内容
転職が決まったら、内定承諾の時点で担当の弁護士または司法書士に連絡するのが基本です。退職後・入社後に報告するのでは対応が遅れるケースがあります。
報告のタイミングが重要なのは、再生計画の認可審査が進行中の場合、収入の変動が計画の実現可能性に直結するからです。担当者が早期に把握することで、必要な修正や裁判所への説明を適切なタイミングで行えます。
- 転職先の会社名・業種・雇用形態(正社員・契約社員・パートなど)
- 転職の時期(退職予定日・入社予定日)
- 新しい月収の見込み額(手取りベース・額面ベースの両方)
- 収入が現在より増えるか減るかの方向性
特に収入が減少する転職では、担当者が再生計画の弁済額を維持できるか確認する必要があります。逆に収入が増える場合でも計画上の弁済額に影響が出ることがあるため、報告は増減を問わず欠かせません。口頭連絡だけでなく、後からメールなど記録が残る形で補足しておくと、手続き上のトラブルを予防できます。

裁判所への直接報告が求められるケース
担当の弁護士・司法書士への報告とは別に、裁判所への直接報告が必要になる場合があります。すべての転職で求められるわけではありませんが、一定の条件下では対応が必要です。
- 再生計画案の提出前後に収入が大幅に変動した
- 裁判所から「収入の変動があれば報告するよう」指示を受けていた
- 小規模個人再生で、弁済額の算定根拠となる収入が変わった
自己判断で「報告不要」と決めてしまうと、後から問題になるリスクがあります。転職の事実を担当者に伝えれば、裁判所への対応が必要かどうかも含めてアドバイスをもらえます。

相談時に準備しておくと役立つ情報・書類
担当者への相談をスムーズに進めるために、事前に情報や書類をまとめておくと、やりとりの回数を減らせます。
- 転職先からの内定通知書または雇用契約書(写し)
- 給与の見込みを示す書類(雇用条件通知書など)
- 現在の勤務先の直近の給与明細(比較のため)
- 退職日・入社日が確認できるもの
これらがそろっていない段階でも、まずは口頭で状況を伝えることが優先です。書類は後から追加提出できる場合がほとんどで、「まず連絡をもらえれば書類は後から確認する」という対応をとる担当者もいます。書類が未整理であることを理由に、連絡を遅らせる必要はありません。
転職の事実・時期・新しい収入見込みを担当の弁護士または司法書士に早めに相談することが、手続きを安全に進めるうえで最も重要な一歩です。次の章では、転職のタイミングの考え方と、収入が下がったときの対処法を解説します。

転職のタイミングと収入低下への対処法
個人再生の手続き中に転職を検討しているなら、タイミングと収入変動への備えが重要です。
前提として、転職は手続きを即座に失敗させるものではなく、転職したこと自体が再生計画の認可を直接妨げるわけではありません。ただし、収入状況の変化は「履行可能性」に影響するため、適切な対応が必要になります。
- 転職のタイミングによって、再生計画案への影響の大きさが変わる(認可前か認可後かで対応が異なる)
- 収入が大幅に下がった場合でも、計画変更や返済額の見直しという選択肢がある
- 住宅ローン特則を利用している場合は、追加の確認事項がある
- いずれのケースも、担当の弁護士・司法書士への早期報告が対処の起点になる
手続きへの影響を最小限に抑えるには、「いつ・どのように動くか」が判断の分かれ目になるでしょう。ここでは、転職タイミングの考え方・収入低下時の選択肢・住宅ローン特則利用者の注意点を順に解説します。
転職タイミングの考え方
とくに影響が大きいのは、裁判所に再生計画案を提出する前後のタイミングです。提出前なら新しい収入見込みをもとに計画を組み直す余地があるものの、提出後や認可後の収入変動では計画変更の申立てが必要になることも。
- 再生計画の認可前:収入証明の再提出や計画案の修正が必要になる可能性がある
- 再生計画の認可後:計画変更の手続きが必要になる場合がある
- どちらの段階でも:転職が決まった時点で速やかに報告することが原則
認可前に収入が大きく変わり、裁判所が「この水準では計画どおりの返済が難しい」と判断すると、計画案の修正を求められたり手続きが遅延したりする可能性があります。転職の時期を「認可が下りてから」と調整できる状況であれば、担当専門家に相談のうえでスケジュールを検討してください。
一方、会社都合の解雇や職場環境の問題など、やむを得ない事情で時期を選べない場合は、その旨を正直に伝えることが大切です。会社都合の転職は「本人の意志によらない収入変動」として受け止められることが多く、自己都合と一律に不利に扱われるわけではありません。

収入が大幅に下がった場合に取れる選択肢
転職後に収入が大幅に下がった場合でも、手続きが即座に破綻するわけではありません。状況に応じて複数の選択肢があるため、早めの相談で対処の幅が広がります。
再生計画が認可された後に収入が減少した場合、民事再生法では「再生計画の変更」という手続きが用意されています。ただし変更が認められるかどうかは、収入減少の程度や理由、返済の継続可能性などを総合的に判断して決まるため、必ず認められるとは言い切れません。
- 再生計画の変更申立てにより、返済額の見直しができる場合がある
- 収入の回復見込みがあれば、その見通しを計画変更申立てや債権者との調整に反映させる交渉ができる
- 個人再生での解決が困難と判断された場合は、他の債務整理手続きへの切り替えを検討する
収入低下が一時的なら、転職先での給与が安定するまでの期間を見越した計画修正を専門家と検討できます。一方、長期的に返済が困難な水準まで落ち込む見込みなら、自己破産への手続き変更を含めた選択肢を早期に検討することが、結果的に負担の軽減につながる場合もあります。

住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用している場合の注意点
この特則を利用して自宅を守りながら個人再生を進めている場合、転職による収入変動は通常のケース以上に慎重な対応が必要です。
特則を利用している場合、住宅ローンの返済と再生計画に基づく返済の両方を続けられる収入水準を維持することが求められます。転職で収入が下がると住宅ローンの返済が滞るリスクが生じ、返済が滞ると特則の適用を維持できなくなる可能性があり、最終的に自宅を失うリスクにつながりかねません。
転職を予定している場合は、新しい職場での給与水準が確認できた段階で、すぐに担当の弁護士または司法書士に連絡してください。住宅を守るための計画が成立するかどうかを専門家と一緒に確認することが、リスクを回避する最短の道です。
転職の事実・時期・新しい収入の見込みの3点をセットにして担当の弁護士または司法書士に早めに相談することが、対処できる選択肢を広げる近道です。

個人再生の手続き中に転職した場合のよくある質問
転職のタイミングと個人再生の手続きが重なると、収入の変動や届け出の要否など、判断に迷う場面が少なくありません。「正直に申告すべきか」「計画が崩れてしまわないか」といった不安を感じている方も多いでしょう。
ここでは、手続き中の転職に関して特に多く寄せられる疑問について整理してお伝えします。
転職したことを裁判所に黙っていても大丈夫ですか?
収入状況の変化は、手続きの根拠となる重要な情報。時期によっては新たな収入証明書の提出や、裁判所・個人再生委員への報告義務が生じることがあります。これを黙ったまま進めると、再生計画の認可が下りなかったり、手続き自体が棄却されるリスクがあります。
転職のタイミングや収入の増減によって対応内容が異なるため、気づいた時点で担当の弁護士や司法書士に速やかに連絡してください(詳しくは「裁判所への直接報告が求められるケース」をご覧ください)。

転職で収入が下がった場合、再生計画は変更できますか?
収入が減少した場合でも、あきらめる必要はありません。転職で収入が大きく下がり、計画どおりの返済が困難になった場合は、再生計画変更の申立てを裁判所に行うことで、返済額や期間の見直しを求められる可能性があります。
ただし、変更が認められるかどうかは、収入減少の程度・理由・残りの返済状況によって変わる点に注意が必要です。
変更申立てが難しいケースでは、任意整理への切り替えという選択肢もあります。いずれの手続きも放置すると再生計画が取り消されるリスクがあるため、収入の変化が生じた時点で速やかに動きましょう。
取りうる手段は状況によって異なるので、早めに弁護士や司法書士に相談してください(対処法は「収入が大幅に下がった場合に取れる選択肢」でも解説しています)。

会社都合で退職してから転職先が決まるまでの間、無収入になっても手続きは続けられますか?
無収入期間が生じた場合でも、状況次第で手続きを継続できるケースがあります。個人再生では、履行可能性(再生計画に基づいた返済を続けられるか)が重要な判断基準となるため、無収入の期間が生じると、この評価に影響が及びかねません。
ただし、失業給付の受給見込みや再就職活動の状況など、収入回復の見通しを具体的に示すことで、手続きを継続できると判断されるケースもあります。無収入になった場合は、速やかに担当の弁護士や司法書士へ状況を報告し、対応策を相談しましょう。
無収入期間の長さや再就職の見通しによっては手続きの進め方を見直す必要が生じることもあるため、早期の相談が対処の選択肢を広げます。

転職先の給与が前職より高い場合、返済額は増えますか?
認可済みの再生計画の返済額は、原則として転職後の収入増加によって変わることはありません。手続きが完了し裁判所に再生計画が認可された後は、その計画に基づく返済額が原則として固定され、給与が上がっても認可済みの計画を遡って変更することは基本的に行われません。
ただし、手続き中(認可前)に収入が大幅に増加した場合は、可処分所得テストの計算に影響し、最低弁済額が変わる可能性があります。可処分所得テストとは、一定期間の可処分所得の合計額を返済額の下限として設定するルールで、収入が増えると基準額が上がる場合があります。
手続き中に転職を検討しているなら、事前に担当者へ相談し、返済計画への影響を確認しておきましょう。

住宅ローン特則を使っている場合、転職による収入変動はどう影響しますか?
住宅ローン特則を利用している場合、転職による収入減少は通常よりも大きなリスクになります。再生計画に基づく返済と住宅ローンの返済を同時に続ける必要があるため、収入が下がると、両方の支払いが同時に苦しくなりやすい点に注意が必要です。
収入が大きく変動した場合は、どちらかの支払いが滞るリスクが高まるため、早めに担当の弁護士や司法書士へ状況を報告することが重要です。収入の変動を放置したまま返済が滞ると、特則の適用が取り消されて自宅を失う可能性もあるため、軽視しないようにしてください。
収入が増える転職なら大きな問題になりにくいものの、減少する場合は再生計画の変更手続きが必要になるケースもあります(注意点は「住宅ローン特則を利用している場合の注意点」をご確認ください)。


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