「交通事故の示談交渉は報酬の安い弁護士にお願いしても大丈夫?」
「弁護士費用を抑える方法はある?」
交通事故の示談交渉は、報酬が安い弁護士に依頼しても問題ありません。
ただし、「費用の安さ」だけを基準に選んでしまうと、後悔やトラブルの原因になるため注意が必要です。

執筆・監修:豊川祐行
2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。 あまた法律事務所へのお問い合わせはこちら
この記事の目次
交通事故で弁護士に支払う報酬の内訳

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼する際、一定の弁護士費用が発生します。
弁護士報酬の料金体系は法律事務所ごとに独自に定められているため、設定額には幅があります。リーズナブルな事務所もあれば比較的高額な事務所もありますので、ご自身の予算や状況に照らし合わせて最適な依頼先を検討しましょう。
相談料【30分5000円~10000円程度】
正式に依頼する前に、弁護士へ事故の状況や今後の見通しを相談するための費用です。
相談したからといって、必ずその場で契約しなければならない決まりはありません。法律相談は弁護士との相性や信頼性を見極めるための大切な機会です。できれば複数の事務所で相談を受け、最も信頼できると感じた弁護士を選ぶことをおすすめします。
近年では、交通事故の初回相談を無料で受け付けている法律事務所が増加しています。まずは各事務所の公式ホームページなどで料金体系を確認してみましょう。
着手金【10万円~】
示談交渉や手続きを弁護士に正式に依頼する段階で支払う初期費用です。
着手金は事件の進行自体にかかる費用であるため、最終的な示談結果の成否や納得度にかかわらず、依頼時に必ず発生し原則として返還されません。
着手金の計算方法は事務所ごとに異なりますが、相場としては最低10万円程度から設定されているのが一般的です。なお、初期費用の負担を軽減するために「着手金0円(完全成功報酬制)」を採用している事務所も多く見られます。
成功報酬【経済的利益の10~30%程度】
示談交渉が成立し、加害者側から賠償金を獲得できた段階で支払う費用です。金額は経済的利益の10~30%程度が目安とされています。
ここで言う経済的利益とは、弁護士の介入によって得られた賠償金の総額、より正確には「弁護士が交渉したことで増額できた上乗せ金額」を指します。獲得できた金額が高くなるほど、支払う成功報酬も大きくなります。
成功報酬の計算方法は事務所ごとに様々で、着手金が発生する代わりに報酬率を抑えているところや、着手金を無料にする代わりに報酬率をやや高めに設定しているところなどがあります。
なお、日弁連(日本弁護士連合会)が定めていた弁護士報酬基準は2004年に廃止され、現在は報酬が自由化されています。しかし、現在も旧規定をベースに報酬基準を定めている事務所が多いため、以下の表は費用目安を把握する上で参考になります。
| 経済的利益 | 報酬金の算定基準 |
|---|---|
| 300万円以下 | 16% |
| 300万円越え3000万円以下 | 10%+18万円 |
| 3000万円越え3億円以下 | 6%+138万円 |
| 3億円越え | 4%+738万円 |
例えば、獲得した示談金の合計が500万円の場合、旧基準を目安に計算すると「500万円×10%+18万円=68万円(税別)」が成功報酬の目安となります。差し引きすると、被害者側が手元に残る金額は432万円(実費等を除く)となります。
日当
弁護士が現場調査や出張、裁判所への出廷などで事務所外での活動を行った場合に発生する費用です。
目安としては半日で3~5万円、1日で5~10万円程度が一般的ですが、移動距離や拘束時間、活動日数によって金額が決定されます。
実費費用
示談交渉や各種手続きを遂行する上で、実際に発生した諸費用のことです。いずれもかかった金額がそのまま実費として請求されます。
・交通費……弁護士が事故現場の確認、警察署や病院、裁判所などの関連機関へ出向く際に発生した移動費です。
・収入印紙代……裁判所へ調停や訴訟を起こす際に国へ納める手数料です。あらかじめ裁判になると分かっている場合は、依頼時に「預り金」として概算額を請求されることもあります。
・通信費……被害者ご本人や相手方保険会社、医療機関等と書類のやり取りを行う際にかかった郵送料や切手代などです。
消費税【弁護士費用の10%】
弁護士費用(着手金、報酬金、日当など)には、原則として10%の消費税が課税されます。
弁護士の選び方と注意点

報酬が安い弁護士に依頼して問題が起きるかどうかは、個々の弁護士の実力や事案によってケースバイケースです。「費用が安い=質が低い弁護士」と一概に決まっているわけではありません。
費用を節約できるのであれば、一番費用が安い事務所に依頼したいと考えるのは自然なことです。交通事故の弁護士費用は事案によって数十万円から、場合によっては100万円を超えることもあるため、なるべく出費を抑えたいと思うのは当然と言えます。
納得のいく結果を手にするためにも、安さだけに惑わされず、以下の注意点を踏まえて弁護士を選ぶようにしてください。
交通事故に強い弁護士を選ぶ
弁護士にも医師と同じように専門分野があります。弁護士費用がどれほど安くても、交通事故分野の専門性や実務経験が乏しければ、満足のいく示談金を引き出すことは難しくなります。
依頼を検討する際には、必ず事務所のホームページで主な取扱分野に交通事故が含まれているか確認しましょう。
これまでの解決実績や具体的な解決事例が豊富に掲載されている弁護士を選ぶことが、成功への第一歩です。
安くても気になる点があれば注意が必要
費用がどれほど安く魅力的であっても、以下のような懸念点を感じた場合は、安易に即決せず別の弁護士を探すことをおすすめします。
相性が良くない
弁護士も一人の人間である以上、性格やコミュニケーションの相性が存在します。なんとなく話しにくい、違和感を覚えると感じる弁護士に無理をして依頼を続けると、やり取りそのものが大きな精神的ストレスになってしまいます。
担当弁護士に不信感や苦手意識を抱いてしまうと、示談結果に対しても納得がいかない可能性が高くなります。相性に不安を感じる弁護士は避けるのが賢明です。
連絡が遅い
問い合わせへの返信が遅い、現在の進捗状況をなかなか報告してこないなど、対応の不誠実さを感じさせる弁護士には十分な注意が必要です。なかには、こちらから何度連絡しても折り返しがなく、音信不通同然になってしまうようなトラブル事例もあります。
多数の案件を抱えて忙しいことを理由に、依頼者への連絡を後回しにする弁護士は信頼できません。詳しい状況が分からないままだと、依頼した側は「きちんと手続きを進めてくれているのだろうか」と強い不安を抱えることになります。
方針が食い違っている
弁護士との間で交渉のゴールや方針が食い違っていると、最終的な解決内容に不満が残る原因になります。
例えば、被害者側は「早期にお金を受け取りたいので示談成立のスピードを最優先してほしい」と考えているのに対し、弁護士は「時間をかけてでも賠償額を極限まで増額したい」と考えているようなケースです。
認識のズレを感じているにもかかわらず、十分な対話や説明をしてくれない弁護士は、いくら費用が安くても任せるべきではありません。
説明がわかりにくい
説明が不親切で分かりにくい弁護士への依頼も避けたほうが良いでしょう。
専門的な難しい法律用語ばかりの説明や、「条文に書かれている通りの手続きです」とだけ言われても、専門知識のない一般の方には理解しにくく不安が募るばかりです。納得して任せられない状態では、後悔のない示談結果を迎えることはできません。
難しい法律用語を避け、分かりやすい言葉に噛み砕いて丁寧に説明してくれる弁護士を選ぶことが大切です。
時間がかかる
弁護士の対応が鈍く、手続きの進行に時間がかかりすぎることも大きな不満の種になります。
交通事故の示談交渉において、解決までに一定の期間を要すること自体は珍しくありません。特に後遺障害等級の認定申請では、結果が出るまでに数週間から数か月待たされるのが一般的です。また、相手方保険会社の返答待ちなど、弁護士側ではコントロールできない理由で進行が止まる場合もあります。
そのため、時間がかかっているからといって、直ちに弁護士の怠慢とは限りません。
しかし、単に依頼が後回しにされていたり、スケジュール管理がルーズでだらだらと放置されている可能性もあります。
正当な理由もなく時間がかかりすぎ、自分の案件がおろそかにされていると感じる場合は、責任を持って迅速に動いてくれる別の弁護士を探したほうが良いでしょう。

弁護士特約で費用を安く済ませる

弁護士費用が高額になることを恐れて、専門家への相談をためらってしまう被害者の方は少なくありません。そうした際、費用を大幅に抑えながら弁護士を利用できる有効な制度が「弁護士費用特約」です。
弁護士特約は費用を節約できる
「弁護士費用特約」を活用すれば、弁護士費用の自己負担を劇的に節約できます。
弁護士特約とは自動車保険などの任意保険に付帯しているオプションの一つで、弁護士への法律相談料や事件解決にかかる着手金・報酬金を保険会社が補償してくれる特約です。現在では、自動車保険の5割~7割に自動付帯されていると言われています。
原則として、法律相談料は10万円、弁護士費用は被害者1人につき最大300万円まで補償されます。死亡事故などの重大事故でない限り、示談交渉の弁護士費用は300万円以内に収まるケースがほとんどです。特約を利用すれば、実質的に自己負担0円で弁護士に依頼することも可能です。
弁護士費用特約は、ご自身の自動車保険だけでなく、火災保険やクレジットカード、あるいは同居の親族が加入している保険に付帯している場合もあります。交通事故に遭ったら、まずは利用できる保険がないか約款を確認してみてください。特約が使えるのであれば費用の心配は一切なくなり、無理に「安い弁護士」に絞って探す必要もなくなります。
弁護士を途中で替えるさいは注意
弁護士特約を利用している最中に、担当弁護士を変更(交代)する場合は注意が必要です。
特約で補償される最大300万円の限度額は、弁護士が替わってもリセットされません。
特約から支払われる費用は「1人目と2人目の弁護士費用を合算して300万円まで」です。そのため、2人目に依頼すると特約の枠をオーバーしてしまい、超過分が自己負担となるリスクが生じてしまいます。

特約が使えなくても諦めないで
ご自身やご家族の保険に弁護士特約が付帯していなかったとしても、諦める必要はありません。できる限り費用負担を抑えて弁護士に依頼できる方法は存在します。
まずは無料の法律相談を活用しましょう。現在、多くの法律事務所では無料法律相談を実施しています。相談する段階では費用がかからないため、金銭的負担なく利用できる大きなメリットがあります。
また、手元資金に余裕がない場合は、費用面について正直に相談してみましょう。着手金を無料にする完全成功報酬制を採用していたり、示談成立後に獲得した保険金から費用を後払いで清算できるように配慮してくれるなど、支払いの不安を軽減する提案をしてくれる事務所もあります。
法律相談は、信頼できる弁護士を見つける上で不可欠なプロセスです。実際に直接話してみることで、自分と相性が良いか、親身になって話を聞いてくれるかをしっかり判断できます。事前に複数の事務所を比較検討した上で、最も納得できる依頼先を選びましょう。
交通事故で弁護士に依頼するメリット

交通事故の被害に遭った際、示談交渉を弁護士に依頼することで被害者側には数多くのメリットがもたらされます。
一定の費用が発生するという側面はありますが、精神的・時間的な負担が大幅に軽減され、金銭的にも増額されるメリットが大きいため、弁護士への依頼を前向きに検討することをおすすめします。
メリット1:示談交渉の負担を軽減できる
示談交渉を弁護士に一任することで、被害者ご自身にかかる手間や精神的負担を劇的に軽減できます。
交通事故の示談交渉は、加害者側が加入している保険会社の担当者を相手に行います。弁護士に依頼しない場合、被害者本人が直接交渉の席に着かなければなりません。
交渉のプロである保険会社に対し、専門知識のない一般の方が対等に渡り合うのは困難を極めます。相手のペースに巻き込まれてしまい、不本意な条件のまま示談書にサインしてしまうケースも少なくありません。

メリット2:相手への法的主張が可能になる
法律の専門家である弁護士に依頼することで、加害者側に対して法的な根拠に基づいた毅然とした主張ができるようになります。その結果、示談交渉そのものが有利かつスムーズに進みやすくなります。
保険会社の担当者の中には、交渉を自社に有利へ運ぶためにわざと難解な専門用語を使ったり、強引な態度で話を進めたりと、被害者への配慮に欠ける対応を取る人もいます。
弁護士が間に入れば、法的な根拠や過去の裁判例に基づいて交渉を進められるため、被害者が不当に損をするような示談内容になる心配はありません。
また、結果として早期解決に結びつき、示談金をより早く受け取れるようになるという利点もあります。
弁護士が介入すると、交渉が決裂した際には裁判に持ち込まれる可能性が高くなります。保険会社としても裁判で争うと負けるリスクやコストが増えることを知っているため、理不尽な引き延ばしを控え、態度を軟化させて譲歩してくる傾向があるのです。
メリット3:慰謝料が増額されやすい
弁護士が介入することで、被害者ご自身で交渉した場合と比べて2倍、事案によっては3倍近くまで慰謝料が増額される可能性が高まります。
交通事故の慰謝料を算定する基準には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」という3つの異なる計算基準が存在します。
「自賠責基準」はすべての自動車に加入が義務づけられている自賠責保険に基づく基準です。被害者への最低限の補償を目的としているため、3つの基準の中で最も低額な金額にとどまります。
「任意保険基準」は加害者が加入している保険会社が独自に定めている基準です。自賠責基準よりは若干高めに設定されているのが一般的ですが、実際にはわずかな差にとどまるケースがほとんどです。
3つの中で最も高額な適正額を受け取れるのが、弁護士に依頼した際に適用される「弁護士基準(裁判基準)」です。
裁判を起こした際に用いられる基準ですが、裁判を起こさずとも弁護士が代理人として交渉するだけで、この適正な基準を適用させて請求することが可能です。
メリット4:慰謝料の請求漏れがなくなる
弁護士に依頼することで請求項目の見落としを防ぎ、実際の被害に見合った適切な賠償金を漏れなく請求できるようになります。
交通事故による損害賠償項目には、怪我によって仕事を休んだ減収分を補償する「休業損害」や、後遺症が残ったことで将来得られるはずだった収入の減少を補う「後遺障害逸失利益」など、一般にはあまり知られていない複雑な項目が数多く存在します。
個人で計算して交渉していると、本来受け取れるはずの項目を請求しないまま終わらせてしまい、大きな損をしてしまう恐れがあります。
加害者側の保険会社は支払う保険金を少しでも抑えたいと考えるため、請求から漏れている賠償項目を親切に教えてくれることはありません。

示談交渉時の弁護士の選び方についてまとめ
交通事故の示談交渉において、報酬体系が安い弁護士に依頼すること自体は全く問題ありません。
弁護士費用は事務所ごとに異なるため、安いに越したことはありません。ただし、単純な費用の安さだけで決めるのではなく、交通事故案件への専門性や解決実績、誠実に対応してくれるか、自分との相性が良いかなどを総合的に見極めて選ばなければ、納得のいく結果を得にくくなるため注意しましょう。
また、弁護士費用特約を利用すれば、実質的な自己負担なしで費用を抑えることが可能です。「安すぎる弁護士は不安」「どの事務所を選べばいいか分からない」という場合でも、費用の心配をせずに依頼できます。万が一特約が使えない場合でも、完全成功報酬制や後払いなど無理のない支払い方法を提案してくれる事務所がありますので、まずは無料相談を利用してみることをおすすめします。

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。
▶︎柔軟な料金設定
・初回相談【無料】
・ご相談内容によっては【着手金無料】
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