YouTubeとは
YouTubeは、アメリカのカルフォルニア州に拠点を置く動画共有プラットフォームです。2005年12月に提供が開始され、現在は61の多言語に対応した動画が世界中に配信されています。
世界中の人たちが利用しているためユーザー数が非常に多く、日本版公式ブログでは、Youtubeの月毎のユーザー数は世界20億人を超え、投稿される動画は毎分500時間に達していると明かしています。
ユーザーは、音声付きの動画を自由に閲覧でき、動画に対する評価、コメントができます。また、自らが動画を公開して、広告収入による収益を稼ぐことも可能です。
昨今では、広告収入システムで生計を立てる「ユーチューバー」が増え始めたことでも注目を集めています。小中学生などの若い世代を中心に、ユーチューバーになりたいという人が増えており、実際、小学生で活躍しているユーチューバーも存在します。
YouTubeによる誹謗中傷などの悪影響
YouTubeは世界規模で人気であるサイトである反面、中には他者を傷つける動画投稿やコメントをする者もいます。たくさんの人が視聴していますので、誹謗中傷を含む動画やコメントが残ったままでいると、風評被害に繋がりかねません。
ここからは、実際にYouTubeで発生した誹謗中傷の事例について見ていきます。
迷惑系ユーチューバーによる誹謗中傷の事例
2021年10月25日、ユーチューバーとして活動していた「よりひと」氏が、株式会社VAZに所属する女性ユーチューバーの名誉を毀損した疑いで逮捕されました。よりひと氏は、芸能人や人気ユーチューバーの不祥事や何かしらの疑惑に対して、過激な内容の発言をすることで人気を得ていたユーチューバーです。
よりひとさんは3月に自身のYouTubeチャンネルで、VAZに所属する女性ユーチューバー・桜さんが小学生の時にイジメを行っていたとする内容の動画を公開しており、これに対してVAZはよりひと氏に動画の削除を求めていました。
小学生ユーチューバーが誹謗中傷された事例
小学生ユーチューバーとして活動している「ゆたぼん」氏が、誹謗中傷に対して法的措置を進めていると、自身の「少年革命家ゆたぼんチャンネル」で明かしました。
ゆたぼん氏は弁護士の福永活也氏に相談し、2020年7月24日に公開した「誹謗中傷アンチをガチで訴えた!」というタイトルの動画で、発信者を訴える手順について福永氏に説明してもらっています。
福永氏は2020年7月17日に「【少年革命家】ゆたぼんの誹謗中傷と戦う」というタイトルの動画を公開し、その中で、ゆたぼん氏の父が「死ね」「殺す」といった脅迫めいたツイートも寄せられていることを明かしました。
その後、発信者情報開示請求で悪質な書き込みをした相手に連絡を取ったところ、20人近くの人が謝罪してきたことを発表しました。また、謝罪しにきた人の約半数から賠償金を得たことを明かしています。
パチスロ系ユーチューバーが誹謗中傷された事例
パチスロ系ユーチューバーの「桜鷹虎」氏が、同じくユーチューバーとして活動している「シバター」氏に対して、刑事告訴と損害賠償の準備をしていることを自身のyoutube動画で明らかにしました。
シバター氏は、物申す系ユーチューバーとして炎上商法で活躍しており、桜鷹虎氏が新型コロナウイルス状況下での自粛期間中のパチンコの動画をアップしたことを自身の動画で痛烈に批判しました。
シバター氏が投稿した動画のタイトルは以下の通りです。
「桜鷹虎、自粛期間中に新台実践動画を配信!そりゃねーだろ!」
「いまだに新台動画をUPし続ける桜鷹虎の正体を明かします」
「桜鷹虎の潰し方、教えます」
「桜鷹虎の謝罪?動画を見て本当に腹が立った」
なお、これらの動画は現在、非公開状態または削除されているため閲覧することはできません。
桜鷹虎氏は、上記のシバター氏の投稿内容・発言によって、なりすましや殺害予告などの嫌がらせを受けたことを明かしています。
YouTubeの削除基準
全てのユーザーが安心してコンテンツを利用できるように、YouTubeでは不適切な動画やコメントを削除するためのルールを設けています。ここでは、動画やコメントの基準を定めた利用規約を紹介します。
コミュニティガイドライン
YouTubeの「コミュニティガイドライン」では、安全で活気のあるコミュニティを維持するために、禁止行為に関するルールを定めています。たとえば、ポルノ、暴力行為、嫌がらせ、悪意のある表現などは禁止行為に当てはまります。
コミュニティガイドラインに違反する行為が発覚すると、運営から警告が言い渡されます。違反警告を90日間のうちに3回受けた場合(悪質な嫌がらせ行為は1回)、または、スパムアカウントなど違反行為をすることのみを目的としたチャンネルと判断された場合は、チャンネル停止の措置を受けます。チャンネル停止措置を受けると、そのチャンネルの動画はすべて削除されます。
プライバシーガイドライン
「YouTubeプライバシーガイドライン」は、ユーザーの個人情報保護を目的とする規約です。
動画コンテンツの中で、個人の顔写真、音声、フルネーム、政府発行の個人番号、銀行口座番号、住所、メールアドレスなどの個人情報が掲載されており、個人をはっきりと特定できる場合は削除対象になります。
YouTubeの不適切動画の削除方法
動画の内容がコミュニティガイドラインに反している場合、削除申請することができます。特に風評被害につながる表現を放置してしまうと、更なる被害の発生につながりますので、早急に対策しましょう。
ここでは、規約違反している動画の削除方法について解説します。
動画ページ内から報告する
規約に反している動画を見つけたときは、動画ページ内から運営に報告できます。
手順としては、まず、動画プレーヤーの下部(スマホ・タブレットでは上部)にある「…」のアイコンをクリックします。
次に、プルダウンメニューにある「報告」を選択すると、報告理由が一覧になって表示されるので、適切な選択肢をチェックして運営に報告します。その後、YouTubeのスタッフが24時間体制で、報告された動画をチェックし、規約に違反していないか判断します。
プライバシー侵害の申立てをする
自分の個人情報や自身が写りこんでいる動画が勝手にあげられている場合は、プライバシー侵害を理由に削除依頼できます。この場合は、専用フォームから「プライバシー侵害の申立て」を送信することで、運営に確認してもらえます。
また、投稿者に直接報告することで削除対応してもらう方法もあります。こちらの方法で連絡した場合は、投稿者が過ちに気づいて早期に削除してもらえる場合もあります。
YouTubeの不適切コメントの削除方法
YouTubeのコミュニティガイドラインはすべての利用者に対して、他者への誹謗中傷、名誉毀損などを目的とした嫌がらせ発言を禁止しています。全てのユーザーに向けられた規約ですので、投稿者だけでなく、動画に対してコメントする者も規約に従う必要があります。
不適切なコメントを削除したい場合は、各コメントの右端にある「⁝」ボタンから運営に報告しましょう。運営がチェックした結果、不適切と判断された書き込みは削除されることになります。
不適切な動画をアップしているYouTubeチャンネルの削除方法
YouTubeでは、ユーザーがコミュニティガイドラインに違反しているチャンネルを報告したとしても、個人の意思で他人のアカウントを削除することは不可能です。
ただし、違法なコンテンツを大量に公開している、または、他者を攻撃するために作成されたアカウントなどは、運営の裁量によってチャンネルごと削除される場合があります。
また、弁護士に依頼した場合は、裁判によるアカウントの削除請求が可能です。ただし、YouTubeはアメリカのGoogle社が運営しています。海外法人を相手にして裁判するときは、手続きを進めるのにかなりの時間がかかってしまう点に注意しましょう。
YouTube動画やコメントが削除ができなかった場合の対応
YouTube投稿者や運営スタッフに削除申請しても、必ずしも動画やコメントが削除されるわけではありません。しかし、明確な権利侵害があった場合は、風評被害が拡大して取り返しがつかなくなる危険があるため、黙って見過ごすわけにはいきません。
そのため、削除申請が認められなかった場合は、法的な手段を取ることで対処していきます。ここからは、動画やコメントの投稿主を法的な手段で訴える方法を解説します。
動画やコメントの投稿者を特定する
誹謗中傷された場合、投稿者に対して精神的苦痛に対する慰謝料や発生した損害に対する賠償請求が可能です。ただし、実名を出して動画配信している人を除き、YouTubeは匿名で利用できますので、投稿者の身元を特定しなければ相手を訴えることができません。
そこで、プロバイダ責任制限法に規定されている「発信者情報開示請求」という制度を利用して、投稿者の氏名や住所などの個人情報を割り出す手続きを進める必要があります。
まず、YouTubeに対して裁判を起こし、投稿のIPアドレスとタイムスタンプの開示をしてもらいます。
次に、入手したIPアドレスから、投稿者が利用している携帯キャリアなどのプロバイダを特定します。さらに、判明したプロバイダに対して情報開示の裁判を起こすことで、契約者の個人情報を得ることができます。
発信者情報開示請求によって投稿者を最終的に特定するには、およそ半年から1年程度かかります。また、投稿者を特定するために必要なIPアドレス・タイムスタンプ情報は、投稿から3か月程度しか保管されません。そのため、情報が消えてしまわないように、保存手続きが必要になります。
投稿主に訴訟を提起する
発信者情報開示請求によって誹謗中傷の犯人を特定できれば、民事・刑事裁判によって犯人に法的な責任を問うことができます。
通常は、民事裁判によって損害賠償を請求し、犯人に対して金銭の支払いを要求することになります。ただし、脅迫行為などの悪質な誹謗中傷を受けてきた場合は、警察に被害届を提出することで刑事責任を追及することも可能です。
まとめ
YouTubeは世界中で人気を集めている動画共有サイトですので、動画内やコメントで誹謗中傷されると多くの人たちの目に晒されることになります。そのため、悪口や根も葉もない噂話をされた場合は、風評被害が拡大する前に早急に対策を始めましょう。
悪質な動画やコメントによる誹謗中傷については、ガイドラインにしたがって報告することで削除申請することが可能です。
ただし、削除申請したからといって、不適切なコンテンツの削除が保証されるわけではありません。対応されなかった場合は弁護士など専門家に対策を進めましょう。