他人の借金の保証人となることのリスクと責任の範囲

親しい間柄の友人や知人に保証人を頼まれた場合どうしたらいいでしょうか?
無下に断りづらいけれど、保証人や連帯保証人は怖いものと思っている人も多く、本当に悩んでしまうことになると思います。

保証人になると、自分が借りてもいないお金を返済しなければいけなくなる可能性があり、なるべくなら引き受けたくないものでしょう。

この記事では、保証人になったときに生じる責任と、保証人と連帯保証人のそれぞれが持つリスクの違いを具体的に解説しています。

保証人となる場合は、自分が負う借金の範囲を知っておきましょう!

連帯保証人となった場合の責任

借金の連帯保証人になると、借りたお金に対して主債務者と同じ返済の責任が課されることになります。
実際にお金を借りた主債務者が、何らかの理由で返済ができなくなったときは、もちろんのこと、主債務者に請求することなく、いきなり連帯保証人に返済を請求してきても拒否することはできないのです。

また、通常の連帯保証では、主債務者が契約時に借りたお金に対しての返済義務が生じますが、連帯保証の契約が「根保証契約」の場合、極度額の範囲内で、契約時に借りたお金だけではなく、主債務者が後からした借入も返済しなければなりません。

根保証契約の場合は、保証人となった時よりも金額が大きく増えている可能性もありますので注意しましょう。

保証人と連帯保証人の責任範囲の違いは?

保証人と連帯保証人、どちらも主債務者が返済できなくなった場合、債務者の代わりに残債を返済する点では同じです。

ただし、保証人には返済において、催告の抗弁権、検索の抗弁権、分別の利益といった3つの権利が認められています。しかし、連帯保証人はこの3つの権利がありません。連帯保証人は、文字通り、主債務者と連帯して、同様の返済の責任を負うことになります。

・催告の抗弁
保証人に対して返済の請求をする前に、主債務者へ返済請求するように主張できる権利です。
連帯保証人には、この権利がありませんので、主債務者が返済できる状態であるかどうかには関わらず、いきなり借金の返済を迫られた場合でも、拒否することはできません。

・検索の抗弁
主債務者に弁済資力があり、かつ執行が容易であることを証明して、まずは、主たる債務者に対して執行するよう請求できる権利です。
連帯保証人には「検索の抗弁」の権利はありませんので、主債務者が返済するのに十分な資産があり執行が容易であることを証明しても、債権者から返済を請求された場合は、返済に応じなければなりません。

・分別の利益
保証人が複数いるならば、借金の残債の金額を保証人の数で頭数で割ったものが、保証人1人の返済額になります。例えば、100万円の残債があり、保証人が2人いる場合は、それぞれの保証人の返済義務は50万円までになります。

連帯保証人には、分別の利益の権利はなく、それぞれの保証人が残債全額を返済する義務を有します。
このため、残債が100万円あるなら、連帯保証人が2人いる場合でも、1人で100万円を返済する義務を負うことになります。

債務者が債務整理した場合の流れ

主債務者が「任意整理」「個人再生」「自己破産」といった債務整理をおこなった時、それぞれ保証人にはどのような影響が発生するのでしょうか?

任意整理の場合

任意整理は、貸金業者などの債権者と直接交渉を行うことで、将来的に発生する利息をカットしたり、返済期間を長期化することにより、月々の返済金額を減らす債務整理の方法です。

しかし、保証人がついている借金を任意整理した場合、主債務者との交渉にはならずに、保証人に残債を一括返済するように請求がきます。
債権者側からすると、任意整理で和解するより、保証人に請求するほうが多くの金額を取り戻せる可能性が高いためです。

かといって保証人がついている借金が一つでもあれば任意整理は諦めなければいけない、ということではありません。
任意整理は、個人再生や自己破産とは違い、全ての債権者が整理対象になるのではなく、債務者の意思によって、任意整理を行う業者を選択できるので、保証人がついている借金を外すことにより、保証人に影響が及ぶことを避けられます。

個人再生の場合

個人再生手続きを行うことは、全ての債権者に通知されるので、そのタイミングで保証人に借金の返済請求があります。保証人は一括で支払う必要があります。

自己破産の場合

自己破産も個人再生と同様に、全ての債権者が対象となります。自己破産手続きを開始したことが全ての債権者に通知され、保証人は一括で支払う必要があります。

このように、任意整理であれば、主債務者のやり方次第で、保証人への請求を避けることができます。

保証人が返済した借金は債務者や他の保証人に請求できる?

保証人には、債務者本人に代わって支払った返済金を、債務者に請求できる権利(求償権)があります。これは保証人も連帯保証人もどちらも保有している権利なので、返済金額を主債務者に請求する事は可能です。

また、連帯保証人や保証人が複数存在していて、他の保証人が返済を行っていない場合も、自分以外の保証人に対して、返済金額を請求する事ができます。

但し、主債務者に対しての請求は返済金全額が可能なのに対し、他の保証人に請求する場合は、分別の利益により決められる負担が必要な金額の以上に支払った場合になります。

(例)100万円の返済を保証人が主債務者に代わって支払い、保証人が2人ついている場合
主債務者に請求できるのは、返済した100万円ですが、もう一人の保証人に請求できるのは、100万円を保証人の人数で頭割りした50万円までになります。

主債務者が債務整理した場合はどうなる?

保証人が返済した借金については、求償権が認められているため、後から主債務者に対して請求することができます。
ですが、主債務者が債務整理をしていた場合は求償権が認められなかったり、減額されてしまったりするケースがあります。

・自己破産の場合
保証人には「求償権」の権利がありますが、主債務者が自己破産した場合、求償権は免除されてしまうため、返済した金額を債務者に対して請求することができなくなります。

・個人再生の場合
個人再生の場合は、求償権自体はなくなりませんので、主債務者に対して自分が肩代わりして支払った分を請求する事は可能です。しかし、主債務者の債務は大幅に圧縮されていますので、保証人の求償権は減額されて支払義務が発生している金額までにしか及びません。

例)
500万円の借金を個人再生し、主債務者の返済義務が100万円になった場合、保証人は債権業者に対して500万円返済しなければなりません。しかし、主催者本人にも100万円の返済義務があるため、保証人が一括請求で業者に500万円支払った場合、主債務者の支払分100万円の請求を行うことができます。

・任意整理の場合
任意整理は、債務者の判断で借金を整理する業者を選ぶことができるので、保証人つきの借金の整理を外してもらうように話すことが第一です。保証人になっている借金を任意整理されて、業者に肩代わり返済した場合、返済した金額全てを主債務者に請求する事ができます。

まとめ

保証人は主債務者の借金を返済しなければいけないリスクがあり、とりわけ連帯保証人の責任は主債務者と遜色ないほど大きなものになります。

なるべくならば、保証人は引き受けない方がいいですが、人間関係によっては、どうしても断れないこともあると思います。その場合は、自分の返せる金額を部分的に負担するということもできます。
どんなに信頼できる相手でも、未来に何があるかはわかりません。保証人になるならば、最悪の事態を想定して、自分で返済ができるように用意をしておきましょう。

お金を借りた本人が返済できなくなって、一括請求されたときでも、慌てずに、まずは法律の専門家に相談してみましょう。

この記事でも説明したように、保証人には3つの権利が認められています。どのように権利を行使したらいいかわからないときは、無料相談で弁護士からアドバイスを受けてください。

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