どういう状況ならば債務整理ができるのか?疑問に感じている人も多いのではないでしょうか?
「借金が返済できない」「借金の返済に追われて生活が厳しい」
このような状況ならば、すぐにでも債務整理を検討してみるべきだと思います。
債務整理とは?
債務整理は、借金の返済に苦しむ人の生活を立て直すためのものです。
個人の収入や資産状況によって、返済が困難と見做される金額は異なりますので、いくら以上になったら債務整理を考えるというのではなく、返済を行いながら無理のない生活が行えるかどうか?というのが債務整理を考える基準の1つとなります。
債務整理を検討したほうがいい基準
返済を行いながら無理のない生活が送れているかどうか?以下のような状況になっているのであれば、債務整理を検討した方がいいと言われています。
・返済してすぐに新たな借り入れをしている
その月の返済金が用意できても、生活費が捻出できないと言う状態で、返済したお金と同額をすぐにキャッシングする状態は、既に返済ができない状態と考えていいでしょう。
業者に対して、利息分だけを延々と支払っている状態になるため、早く債務整理を行うことにより、無駄に支払うお金を減らすことが可能です。
・他の貸金業者から借りて返済を行っている
毎月の返済ができずに、他の業者から新たに借り入れを行っている場合、目先の返済はできていても、借金の総額は増えています。この状態が長く続いて、借入が出来なくなった頃には、いまよりもさらに多大な借金に苦しむことになります。
・最低返済金額で支払い続けている
カードローンなどは、一応、毎月の返済金額が決められていますが、同時に最低返済金額も決められており、返済金額が支払えない場合、最低金額さえ入金すれば、その月の返済は完了します。
この最低返済金額は、借入に対して発生している利息分の金額なので、毎月、最低金額を支払っているだけでは、借金の総額はほとんど減りません。
将来的に退職金が入るとか、ボーナスが出るまで、一時的に返済金額を少なくしているのであればいいですが、将来、返済金額を増やせる予定もなく、利息分だけ支払続けている状態であれば、債務整理を検討する必要があります。
・借金総額が収入の3分の1以上ある
総量規制により、年収の3分の1以上借金がある人への融資は禁止されています。つまり、借金の総額が3分の1を超えている人は、既に危険信号が点灯している状態であると言えるでしょう。
ショッピングのリボ払いやクレジットカードの利用などは、総量規制の枠の中には入らないものなので、貸金業者からの借り入れが総量規制以内であっても、全ての借金の総額を計算したら、年収の3分の1を遥かに超えていたという場合も多いです。
債務整理には3種類ある
債務整理には「自己破産」「個人再生」「任意整理」の3つの方法があります。
それぞれ手続きや、借金の減額の度合いが違います。
自己破産 | 個人再生 | 任意整理 | |
手続き | 裁判所へ申し立て | 裁判所へ申し立て | 業者との交渉 |
手続き期間 | 約3ヵ月~1年 | 約6ヵ月~1年 | 約3ヵ月~6ヵ月 |
借金の減額 | 支払いが免除される | 最大で総額の5分の1まで減額 | 将来的な利息分がカットされる |
対象業者 | 全ての債権者 | 全ての債権者 | 任意で交渉業者を選べる |
債務整理のメリット
債務整理を行うメリットは次のようなものがあります。
月々の返済額を減らせる
任意整理は、借入をしている貸金業者や金融機関と直接交渉を行い、完済までの今後の支払について取り決めをします。交渉によって、借金の元金自体を減額してもらうことは難しいですが、今後発生する利息分についてはカットしてもらえる可能性が高いです。
任意整理を行う前は、返済金額のかなりの割合を利息が占めているので、なかなか元金が減っていきませんが、任意整理を行うと、返済金額の全てが元金に充当されるため、支払った金額だけ元金が減少します。
借金が軽減、もしくは免除
元金自体が減額もしくは免除となる債務整理の方法に「個人再生」と「自己破産」があります。
個人再生では、裁判所に再生計画を提出し、それが認められたら、借金の総額を概ね5分の1まで減額し、減額された借金を原則3年間返済すれば借金がなくなります。
自己破産は、今後の収入や、所有している資産を処分しても、全ての借金が返済できない場合、裁判所に申し立てを行い、財産を換価し債権者に配当し、残った債務についての支払が免除されるという債務整理の方法です。
但し、支払が免除されるには、裁判所から免責を認めてもらう必要があり、借金の原因や、破産手続きへの協力が為されていない場合は、免責が認められない可能性もあります。
督促がストップする
債務整理を弁護士に依頼すると、弁護士から債権業者に対して受任通知が送られます。この通知により、債権者との交渉窓口は全て弁護士が引き受けることになりますので、業者から直接取り立ての電話が来たり、督促状が送られてくることがなくなります。
債務整理のデメリット
借金が減額されるというのは大きなメリットですが、発生するデメリットについても知っておく必要があります。
いわゆるブラックリストの問題
ブラックリストに掲載されてしまうのは、前述した3つの債務整理方法に共通するデメリットです。
金融機関や貸金業者は、信用情報機関の会員になっており、金融事故情報などを共有しています。債務整理を行うと金融事故となり、情報が登録され、情報が消去されるまでの間は新たな借り入れを行ったり、ローンを組んだりすることはできなくなります。
これが所謂ブラックリストに掲載されると言われるものです。金融事故は債務整理だけではなく、度重なる延滞などによってもブラックリストに掲載されることがあります。
保証人への影響
借金をする際に、保証人や連帯保証人を付けていた場合、債務整理後に、保証人に借金残額の返済が請求されます。個人再生や自己破産の場合は、全ての債権者が債務整理の対象となるため、保証人に迷惑がかかってしまう可能性がありますが、任意整理であれば、保証人をつけている借金については除外して交渉を行うことができます。
財産への影響
自己破産は、一定の評価額(20万円以上)の資産については、全て換価配当の対象となるため、現在住んでいる家や車などが回収されてしまう可能性が高いです。
任意整理や個人再生の場合、ローンを支払い中の住宅、車、家電製品などは、ローンが完済するまで担保となっている場合が多いため、債務整理を行うことで商品が引きあげられてしまう可能性があります。
債務整理を選ぶ基準
自分にはどの債務整理の方法が合っているのか?
債務整理を選ぶ基準について紹介します。
任意整理
・月々の返済額を減らすことで支払が可能になる
任意整理で、借金の元金を大幅に減らすことは難しいですが、将来的に発生する利息分をカットしたり、返済期間を延長することで、月々の返済負担を減らすことが可能です。
定期的な収入はあるけれども、現在の返済額では生活するのが少し厳しいという状態であるような場合は、債務整理の中でもデメリットが最も少ない任意整理を選択するのがいいと思います。
・車や住宅、保証人などの関係で債務整理したくないものがある
任意整理を行う業者を選択することができるので、車や住宅のローン会社を外して、今までと同じように、家に住んだり、車を利用しながら債務整理を行うことが可能です。
個人再生
・定期的な収入がある
借金の総額は大幅に減額されますが、減額された残金の支払を原則3年間続ける必要があります。そのため、無職の方や、定期的な収入が見込めない方は個人再生を利用する事はできません。
・住宅ローンを支払っている
住宅資金特別条項を利用することで、個人再生を行っても、住宅ローンの支払は続けながら、今の家に住み続けることが可能です。自己破産の場合は、住宅に住み続けることはできなくなるので、住宅ローン支払い中であれば、個人再生を検討することをおすすめします。
自己破産
・収入の見込みがない
失業や病気などの理由で、今後の収入の見込みがなく、借金が支払えない場合は、個人再生や任意整理は利用することができないため、自己破産手続きを行うことを検討した方がいいです。
・借金の総額が5,000万円以上
多額な借金残額がある場合、個人再生を利用することができません。目安は総額5000万円以上かどうか?ということになるので、5,000万円以上の借金を抱えているのであれば、自己破産を検討する必要があります。
債務整理を検討するなら弁護士へ相談を
3つの債務整理の方法がありますが、どの方法を選ぶ場合でも、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士に相談するメリット
・どの債務整理方法を選ぶべきか適切にアドバイスをもらえる
弁護士事務所の無料相談を利用して、自分の借金の状況や、収入の見込みなどを伝えることにより、3つの債務整理方法のどれを選ぶことで、大きなメリットがあるのかアドバイスをしてもらえます。
・書類の準備などを全て任せられる
裁判所を通して手続きを行う、自己破産や個人再生は用意しなければならない書類も多く、正確な記載が求められます。働きながら時間を作って書類を準備することは大きな負担になってしまうでしょう。
・業者との交渉
任意整理は業者との交渉によって、今後の支払方法が決められます。業者の代理として弁護士が交渉の席に着く可能性もあり、また、業者もそれなりに知識がありますので、一般人が交渉することで、自分に不利な条件で和解となってしまう可能性も高いです。
また、任意整理で交渉を行うことは強制ではないため、交渉相手が弁護士ではない場合、業者から交渉を拒否される場合もあります。
・督促がストップする
債務整理の手続きが完了するまでの期間は長いですが、弁護士に依頼して受任通知を業者に対して送った時点で、返済の督促や取り立てがストップします。
どれぐらいの人が債務整理をしている?
2018年度の自己破産の申立件数は7万3千件です。リーマンショックの影響が大きかった2003年には24万件もの申し立てがあり、年々減少傾向にありましたが、それでも1年間に7万件以上の申し立てがあります。
2020年以降はコロナウィルスの影響のため、減少傾向にあった申立件数も再び爆発的に増加するのではないかと考えられています。
任意整理を利用した人の数は、一般的に自己破産の30倍~50倍と推測されていますので、1年間に約200万人程度の方が任意整理を利用していると推測されています。
まとめ
借金問題は時間が経過すればするほど不利な状況に追い込まれてしまいます。
早いうちに、解決に乗り出せば、選択できる手段も多く、手続き後、新たなスタートを切れる時期も早くります。