追い越し事故の過失割合は?状況別の基本割合と修正要素を解説!

「相手が追い越してきたのに、なぜ自分にも過失があると言われるの?」

「保険会社が提示した過失割合は、本当に正しいの?」

過失割合は、示談が成立すると原則として後から変更できません。保険会社の提示に納得できないまま、示談書にサインしないよう注意してください。

追い越し事故の過失割合は、過去の裁判例をもとにした基準で決まります。

特に影響が大きいのは、事故が起きた「場所」と「事故の形」の2点。

本記事では、追い越し事故の基本の過失割合を状況別に整理し、割合を変える修正要素や、納得できないときの対処法を解説します。

保険会社の提示が妥当かを確かめたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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この記事の目次

追い越し事故の基本の過失割合を状況別に確認する

追い越し事故の過失割合は、追い越した側が重く、追い越された側が軽くなるのが基本です。

ただし、その数字は事故が起きた場所や事故の形によって変わります。

まずは下の表で、自分の事故に近い状況を探してみてください。

事故の状況追い越した車相手の車
交差点以外・追い越し禁止でない場所で割り込み80%20%(追い越された車)
交差点以外・追い越し禁止の場所で割り込み90%10%(追い越された車)
追い越し禁止の交差点で右折車を追い越し90%10%(右折車)
優先道路の交差点で、中央に寄らずに右折した車を追い越し50%50%(右折車)
追い越し中に対向車と衝突100%0%(対向車)

表の数字は、裁判実務で使われる「別冊判例タイムズ38号」の基準にもとづく基本割合です。

ここでは、それぞれの状況について、過失割合の目安と理由を解説します。

交差点以外で追い越し車が割り込んだ事故の過失割合(80:20/90:10)

この類型は、追い越し車が対向車を避けようとして、追い越された車の前に割り込んだときに多く起こります。

割り込まれた直後に、追い越された車が追突してしまったケースも含まれます。

追い越し禁止でない道路なら、基本の過失割合は追い越した側80%・追い越された側20%。

坂の頂上付近や交差点の手前30m以内など、追い越し禁止の場所なら追い越した側90%・追い越された側10%となり、追い越した側がより重くなります。

禁止された場所での追い越しは、それ自体が道路交通法違反にあたるためです。

交差点以外の追い越し事故の基本割合
  • 追い越し禁止でない場所:追い越した側80%・追い越された側20%
  • 追い越し禁止の場所:追い越した側90%・追い越された側10%

追い越された側として「20%」と言われた方は、事故現場が追い越し禁止の場所でなかったかを確かめてみましょう。

同じ割り込みでも、場所しだいで追い越された側の過失が半分になるんですね。

右折しようとした車が追い越された事故の過失割合(90:10/50:50)

交差点で右折しようとした車を、後ろの車が中央線を越えて追い越し、衝突する事故があります。

交差点とその手前30m以内は、原則として追い越し禁止の場所。

そのため、ふつうの交差点では追い越した側90%・右折車10%が基本の割合となります。

一方、優先道路を走っている場合は、交差点でも追い越しが禁止されていません。

このとき右折車が道路の中央に寄らずに右折すると、基本の割合は50%:50%まで変わります。

右折車の過失が増える主なケース
  • 右折の合図を出さなかった、または合図が遅れた
  • あらかじめ道路の中央に寄らずに右折した
  • 右折車に著しい過失や重過失があった

右折しようとしていた方は、合図を出したタイミングと、中央に寄っていたかを思い出しておきましょう。

右折の合図を早めに出していたかどうかが、大事な分かれ目になりますよ。

追い越し車が対向車と衝突した事故の過失割合(対向車は原則0%)

追い越しのために中央線を越えた車が、対向車線を走る車と衝突するケースです。

この場合は、中央線をはみ出した「センターラインオーバー」の事故として判断されます。

対向車は自分の車線を走っていただけなので、基本の過失割合は追い越した側100%・対向車0%。

ただし、対向車に速度違反などがあると、対向車の過失が加算されることがあります。

対向車の過失が加算される主なケース
  • 時速15km以上の速度違反:10%程度加算
  • 時速30km以上の速度違反:20%程度加算
  • 著しい過失:10%程度加算
  • 重過失:20%程度加算

対向車として事故にあった方は、保険会社から過失を求められても、まずその根拠を確かめてください。

正面衝突は大きなけがにつながりやすいので、早めに専門家へ相談したいですね。

追い越された側にも1〜2割の過失がつく理由

「追い越されただけなのに、なぜ過失があるの?」と感じる方は少なくありません。

その理由は、道路交通法27条が追い越される側にも義務を課していることにあります。

追い越される側の主な義務(道路交通法27条)
  • 追い越しが終わるまで、速度を上げてはいけない(1項)
  • 車両通行帯のない道路で、追い越す車が通る余地がないときは、左側に寄って道を譲る(2項)

基本の過失割合は、追い越される側もこれらの義務を負うことを前提に決められています。

そのため、特に違反がなくても1〜2割の過失が基準として残る仕組み。

逆に、これらの義務に違反すると、追い越された側の過失はさらに増えます。

何もしていなくても過失がつくのは、こうした義務があるからなんですね。

追い越し事故の過失割合を変える修正要素

基本の過失割合は、あくまで出発点にすぎません。

実際の割合は、事故当時の運転の仕方に応じて「修正要素」で上下します。

保険会社の提示が基本割合と違うときは、どの修正要素が使われたのかを確認しましょう。

ここでは、追い越された側・追い越した側・右折車のそれぞれについて、主な修正要素を解説します。

追い越された側の過失が増える修正要素(道を譲らない・加速する)

追い越された側の過失が増えるのは、主に道路交通法27条の義務に違反した場合です。

交差点以外の追い越し事故での加算の目安は、次のとおり。

追い越された側の過失が増える主なケース
  • 左側に寄って道を譲らなかった(27条2項違反):約10%加算
  • 追い越しが終わる前に加速した(27条1項違反):約20%加算

たとえば追い越し禁止でない場所で加速すると、追い越された側の過失が20%から40%まで増える計算です。

一方、相手が追い越しをかけてきたのに速度を落とさなかっただけで、加速とされるとは限りません。

自分が速度を上げていないことは、ドライブレコーダーの映像で示すのが確実です。

なお、わざと追い越しを妨害した場合は、この目安によらず個別に判断されます。

加速したと言われたら、映像で速度を確かめるのが一番ですよ。

追い越した側の過失が増える修正要素(著しい過失・重過失)

追い越した側の運転に大きな落ち度があれば、追い越された側の過失はその分だけ小さくなります。

判断の目安となるのが、「著しい過失」と「重過失」という2つの区分。

著しい過失と重過失の主な例
  • 著しい過失(10%程度):酒気帯び運転、スマートフォンを使いながらの運転、脇見などの著しい前方不注意、おおむね時速15km以上30km未満の速度違反
  • 重過失(20%程度):酒酔い運転、居眠り運転、無免許運転、おおむね時速30km以上の速度違反

追い越された側の過失が20%の事故で相手に重過失があれば、0%まで下がる可能性もあります。

相手の速度違反や飲酒は、警察の記録やドライブレコーダーで裏付けることが大切。

相手側の落ち度が疑われる場合は、早めに証拠を残しておきましょう。

相手の飲酒や大幅な速度違反は、過失割合を大きく動かす事情になりますね。

右折車の過失が増減する修正要素(合図・中央への寄り方)

交差点で右折しようとして追い越された場合、右折車の運転の仕方も修正要素になります。

特に問題になるのは、右折の合図と、あらかじめ道路の中央に寄っていたかどうかの2点。

道路交通法34条2項は、右折するときはあらかじめ道路の中央に寄るよう定めています。

右折車の過失が増減する主なケース
  • 増える:右折の合図を出さなかった、または遅れた
  • 増える:あらかじめ道路の中央に寄らずに右折した
  • 減る:追い越した側に著しい速度違反や重過失があった

右折車の修正要素は事故の状況による幅が大きいため、提示された数字の根拠は必ず確認しましょう。

中央に寄って右折していたなら、そのことをしっかり伝えたいですね。

追い越しが禁止されている場所と「追い抜き」との違い

事故現場が追い越し禁止の場所だったかどうかは、過失割合を大きく左右します。

また、「追い越し」と「追い抜き」の区別も、どの基準をあてはめるかに関わるポイント。

ここでは、追い越しが禁止される場所と場面、追い抜きとの違いを解説します。

道路交通法が追い越しを禁止している場所(30条)

道路交通法30条は、事故の危険が高い場所での追い越しを禁止しています。

標識や標示で禁止された区間に加えて、次の場所は標識がなくても追い越しができません。

標識がなくても追い越しが禁止される場所(30条)
  • 道路の曲がり角付近
  • 上り坂の頂上付近、勾配の急な下り坂
  • トンネル(車両通行帯がない道路の場合)
  • 交差点とその手前30m以内(優先道路を通行している場合を除く)
  • 踏切・横断歩道・自転車横断帯と、その手前30m以内

また、黄色の中央線が引かれた区間では、中央線をはみ出して追い越すことができません。

事故現場がどれにあたるかは、事故直後の写真や、人身事故で警察が作成する実況見分調書で確認できます。

Googleマップのストリートビューで、標識や中央線の色を見ておくのも一つの方法です。

交差点の手前30m以内も禁止なのは、意外と知られていないかもしれませんね。

場所に関係なく追い越しが禁止される場面(二重追い越し・右折車の右側)

追い越しは、場所だけでなく「場面」によっても禁止されています。

代表的なのは、次の2つの場面。

場所を問わず追い越しが禁止される場面
  • 二重追い越し:前の車がほかの自動車を追い越そうとしているときに、追い越しを始めること(29条)
  • 右折車の右側からの追い越し:前の車が右折のために道路の中央に寄っているときは、左側を通らなければならない(28条2項)

これらに違反した追い越しで事故が起きれば、追い越した側の重い落ち度として評価されます。

右折しようとしていた方は、自分が中央に寄っていたかどうかで、相手の違反の有無も変わる点に注意してください。

中央に寄った右折車を追い越すなら左側から、というルールがあるんですよ。

「追い越し」と「追い抜き」の違い

道路交通法2条では、進路を変えて前の車の横を通り、その前に出ることを「追越し」と定めています。

一方、「追い抜き」という言葉は法律で定義されていません。

一般には、進路を変えずに前の車の横を通り過ぎることを指して使われます。

項目追い越し追い抜き
進路の変更ありなし
法律上の定義あり(道路交通法2条1項21号)なし
具体例隣の車線に移って前の車の前に出る車線を変えずに、隣の車線の車より前に出る

事故の場面が追い越しにあたるかどうかで、あてはめる過失割合の基準が変わることがあります。

自分の事故が「進路変更を伴っていたか」を整理しておくと、保険会社の説明も理解しやすくなるでしょう。

相手が車線を変えて前に出てきたなら、追い越しにあたる可能性が高いですね。

保険会社の過失割合に納得できないときの対処法

保険会社から提示された過失割合は、決定事項ではありません。

根拠を確認し、証拠をそろえて交渉すれば、割合が見直されることもあります。

ここでは、提示に納得できないときに取るべき行動を順に解説します。

提示された過失割合を基本割合と照らし合わせる手順

保険会社から過失割合を提示されたら、すぐに受け入れず、次の手順で確認してください。

過失割合を確認する手順
  • STEP1:事故の状況が、記事前半の表のどれにあたるかを確認する
  • STEP2:事故現場が追い越し禁止の場所だったかを確認する
  • STEP3:基本割合と提示された割合の差を出す
  • STEP4:差の理由として、どの修正要素が使われたのかを担当者に聞く

修正要素の説明は、後で見返せるようにメールや書面でもらうのがおすすめです。

説明に納得できない場合や、事実が相手の言い分だけで決められている場合は、弁護士への相談を考えましょう。

担当者の説明は、口頭ではなく書面で残しておくと安心ですね。

過失割合の交渉に役立つ証拠を事故直後から残す

過失割合の交渉では、言い分よりも客観的な証拠が重視されます。

過失割合の交渉で役立つ主な証拠
  • ドライブレコーダーの映像
  • 事故直後の現場写真(標識・中央線・車の位置)
  • 目撃者の連絡先と証言
  • 実況見分調書(人身事故として届け出た場合に作成)

なかでもドライブレコーダーの映像は、追い越しの開始時点や加速の有無を示せる有力な証拠。

上書きで消えないよう、映像はすぐに別の媒体へコピーしてください。

物損事故として届け出ると実況見分調書は作成されないため、けががある場合は人身事故への切り替えも検討しましょう。

ドライブレコーダーは上書きされやすいので、まずは保存が大事ですよ。

交渉がまとまらないときに使える第三者機関

当事者同士の交渉で解決しない場合は、中立の機関に間に入ってもらう方法があります。

代表的なのは、次の2つの機関。

過失割合の争いで使える主な第三者機関

どちらも利用は無料ですが、あっせんでも合意できなければ、調停や裁判に進むことになります。

手続きが長引きそうな場合は、早い段階で弁護士に任せるのも一つの選択肢です。

無料で相談できる窓口があるのは心強いですね。

弁護士費用特約を使って弁護士に依頼する

弁護士費用特約は、弁護士への相談料や依頼費用を保険会社が負担してくれる自動車保険の特約です。

補償の上限は、一般に弁護士費用300万円、法律相談料10万円とされています。

特約を使っても、等級が下がらないのが一般的。

自分の保険に付いていなくても、家族の保険の特約が使える場合もあります。

使えるかどうかは、保険証券を見るか、保険会社に問い合わせて確認してください。

弁護士に依頼する主なメリット
  • 基準や裁判例にもとづいて過失割合を主張してもらえる
  • 保険会社とのやり取りをすべて任せられる
  • 過失割合だけでなく、慰謝料など賠償額全体も見直せる

弁護士に任せれば、過失割合の交渉だけでなく賠償額全体の見直しまで期待できます。保険会社とのやり取りに疲れたときこそ、依頼を検討してみてください。

特約が付いているか、まずは保険証券を確認してみてくださいね。

追い越し事故の過失割合に関するよくある質問

最後に、追い越し事故の過失割合について、よく寄せられる質問にお答えします。

追い越された側の過失が0%(10:0)になることはありますか?

基本割合のままでは、追い越された側にも10%か20%の過失が残ります。

ただし、追い越した側に重過失がある場合などは、修正によって0%に近づくことがあります。

また、追い越し中の車が対向車とぶつかった事故では、対向車の過失は基本0%。

0%を目指すなら、相手の落ち度を示す証拠をそろえることが欠かせません。

追い越された直後に割り込まれ、追突してしまった場合の過失割合は?

通常の追突事故では、追突した側の過失が100%となるのが基本です。

しかし、追い越し車が前に割り込んだ直後の追突は、追い越し事故として判断されることがあります。

その場合の基本割合は、追い越した側80%・追い越された側20%(追い越し禁止の場所なら90%:10%)。

「追突したから自分が100%悪い」と決めつけず、割り込みの状況を説明できるよう準備しておきましょう。

物損事故と人身事故で過失割合は変わりますか?

過失割合の基準そのものは、物損事故でも人身事故でも同じです。

ただし人身事故では、治療費や慰謝料などが加わり、賠償額が大きくなりやすい傾向にあります。

過失割合が10%違うだけで、受け取れる金額が大きく変わることも。

けがをした事故では、提示された割合をより慎重に確認しましょう。

弁護士に依頼すると過失割合は変わりますか?

証拠がそろっていれば、弁護士の交渉で過失割合が見直されることがあります。

弁護士は、基準や裁判例をもとに、どの修正要素が当てはまるかを法的に主張できるためです。

ただし、証拠が乏しいと見直しが難しいことも少なくありません。

まずは弁護士費用特約の有無を確認し、無料相談で見通しを聞いてみてください。

まとめ:追い越し事故の過失割合は基本割合と修正要素で決まる

追い越し事故の過失割合は、事故の状況ごとの基本割合に修正要素を加えて決まります。追い越し禁止の場所で起きた事故ほど、追い越した側の過失は重くなる仕組みです。

本記事の要点
  • 交差点以外の割り込み事故は、追い越された側の過失が基本20%
  • 追い越し中の車とぶつかった対向車の過失は、基本0%
  • 交差点や踏切の手前30m以内などは、標識がなくても追い越し禁止
  • 示談書にサインする前なら、過失割合はまだ交渉できる

提示された過失割合に納得できないときは、まず事故直後の証拠をそろえましょう。そのうえで、交通事故にくわしい弁護士に相談してみてください。

執筆・監修者:豊川祐行 弁護士
弁護士法人あまた法律事務所 代表弁護士(東京弁護士会所属・2016年登録)
早稲田大学を卒業後、同大学大学院法務研究科を修了。2016年に東京弁護士会で弁護士登録し、都内の法律事務所での勤務を経て、弁護士法人あまた法律事務所を設立。
執筆・監修者、豊川祐行弁護士

2010年、早稲田大学卒業後、同大学大学院法務研究科を修了し、2016年東京弁護士会にて弁護士登録。都内法律事務所での勤務を経て独立し、数多くの人を助けたいという想いから「弁護士法人あまた法律事務所」を設立。

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